易しい破損解析講座 破面から読み解く破壊の原因 その2 -破面から何が判るか-


著者:
野口 徹
発刊日:
公開日:
カテゴリ: 解説記事

概要

2.1 破面から読み取れる情報  前回の解説、その1 では破損破壊の原因を究明するための破損解析では調査の順序が大切であることを示しました。その中で、まず破損物の破面と破損状況から、破壊の種類と起点を判定することの重要性を述べました。  破面から色々な情報を読み取る技術を破面解析、フラクトグラフィ、と言いますが、これには目視から数倍程度のルーペ、実体顕微鏡等による巨視フラクトグラフィと、主としてSEM(走査型電子顕微鏡)による微視フラクトグラフィがあります。  破面の観察、破面解析によって、破壊の種類と破壊の起点の他、 破壊の伝播経路と終点、作用した応力(荷重)の方向とおよその大きさ、材料欠陥の寄与の有無、環境要因の寄与の有無、破壊の経過など、色々な情報を読みとることができます。  破面解析でもその順序が重要です。多数の破損個所があるような事故や、複数の部材の破損がからむ場合には、まず1/10(離れた位置から)破壊部全体の様相を観察し、記録する必要があります。次に1倍(目視)で破損品の破面を個別に観察し、第1破損の部材と起点部、全体の破壊経過を推定した後に、10倍、100倍と倍率を上げ、最後にSEMによる1000倍など高倍率で観察します。一般に、高倍率ほど正確で多くの情報が得られると考えがちですが、実は高倍率では全体の情報が抜け落ちてしまうことに留意する必要があります。確かに高倍率では局部的には詳細な情報は得られるのですが、例えば全体に変形があるかどうか、破壊の発生点はどこかなど、抜け落ちる情報もまた多いのです。目視による巨視的な破面観察で、必要な情報の85%が得られると言われています。本解説では特に、この目視破面解析、破面観察の重要性を示し、その手法を解説しています。環境脆化ではその判断にSEM観察が必要でが、これは後に述べます。


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