特集記事 「核融合エネルギー開発の現状」(3)核融合エネルギーの開発計画


著者:
岡野 邦彦 Kunihiko OKANO 笠田 竜太 Ryuta KASADA
発刊日:
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カテゴリ: 特集記事

概要

我が国の核融合研究開発は、平成4年の原子力委員会による決定「第三段階核融合研究開発基本計画」[1]に沿って実施されている。この第三段階の中心となる装置は、実験炉 ITER(イーター)である。ITERは、磁場によって高温プラズマを閉じ込めるトカマク型とよばれる方式で、核融合反応により、約 50万キロワットの熱出力を取り出せる計画になっており、出力規模としては実機レベルに近い。現在、フランスのカダラッシュに国際協力で建設中で、2025年頃の完成を目指している。 平成 17年の原子力委員会核融合専門部会の決定「今後の核融合研究開発の推進方策について」[2]では、 ITERと同じトカマク型の原型炉計画を中核とする「第四段階」に向けた具体的な方針が示された。 平成 21年の原子力委員会核融合専門部会の報告書「原子力政策大綱等に示している核融合研究開発に関する取組の基本的考え方の評価について」[3]では、原型炉の実現に向けたロードマップを策定した。 平成 26年には「原型炉開発のために必要な技術基盤構築の中核的役割を担うチーム(合同コアチーム)」が、核融合原型炉の開発に必要な技術基盤構築の在り方を、我が国の核融合コミュニティの総意を踏まえて検討し、「合同コアチーム報告」[4]を取りまとめた。 この報告を受け、平成 27年 3月において、核融合研究開発の総合的な進捗状況等を俯瞰的に把握し、アクションプランの策定をはじめとする事項を審議する「原型炉開発総合戦略タスクフォース」(以下 TF)が、核融合科学技術委員会  (文部科学省 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 核融合科学技術委員会 )のもとに設置された。また、 TFの指導のもとに、オールジャパン体制により原型炉開発の技術基盤構築を進めることを目的に、「原型炉設計合同特別チーム」(特別チーム)が結成され、原型炉の概念設計及び研究開発が進められている。 このような原型炉開発に向けたこれまでの種々の検討を参照しつつ、最新の研究開発の進捗状況と ITER計画を始めとする内外の状況を考慮した、原型炉研究開発についての報告書として、核融合科学技術委員会により平成 29年 12月に決定されたのが、「核融合原型炉研究開発の推進に向けて」[5]であり、それに付随する形で、「原型炉開発に向けたアクションプラン」とその「項目別解説」[6]が公開されている。 平成 30年度には、上記アクションプランに基づき、開発の優先度やマイルストーン、国際協力項目なども含めて総合的に開発工程をまとめた原型炉開発ロードマップの構築が行われた [7]。そこに示されたロードマップの全体像を付録1に示した。


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