浜岡原子力発電所の安全対策について~今、総力を結集して~(動画紹介)

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カテゴリ: 第14回
1.はじめに
浜岡原子力発電所は、従来から常に最新の知見を反映 し、安全性向上に努めてきました。 東京電力福島第一原子力発電所の事故以降も、津波対 策や重大事故等対策を自主的に進めるとともに、新規制 基準を踏まえた追加対策に取り組むなど、安全対策を積 み重ねています。 「福島第一のような事故を起こさない」 浜岡原子力発電所では、この決意のもと、今、全力で 取り組んでいます。 2.浜岡原子力発電所の安全対策について 原子力発電の安全を守る基本は、「止める」「冷やす」 「閉じ込める」です。 原子力発電は、運転を「止めた」あとも、燃料から熱 が発生し続けます。そのため、原子炉への注水などによ って燃料を「冷やし」続け、放射性物質を 「閉じ込め る」ことが重要です。 福島第一の事故を振り返ります。 原子炉は地震による大きな揺れを感知して自動停止し ました。送電鉄塔の倒壊などにより、外部からの電源供 給が途絶えましたが、非常用の発電機が正常に働き、ポ ンプなどに電源を供給することができたため、「冷やす 機能」を維持しました。 しかし、地震発生からおよそ40分後、敷地高さを上回 る津波が押し寄せ、敷地内および建屋内が浸水。海水を 使って冷やすためのポンプや非常用の発電機などの重 要な設備が使えなくなり、さらに、蓄電池が切れ「冷や す機能」を失いました。 その結果、燃料から発生する熱を冷やすことができず に燃料が溶けるという重大事故に至り、その後、格納容 器の破損や水素爆発を起こして、放射性物質を放出しま した。 福島第一では、津波の浸入や重大事故に備える対策が 不十分でした。 浜岡原子力発電所では、同様の事故を起こさないため、 内閣府が想定する南海トラフ巨大地震の検討状況など も踏まえ、 (1)巨大地震に耐える、 (2)津波を浸入させない、 (3)冷やす機能を確保し重大事故に至らせない、 などの対策を実施しています。 さらに、重大事故が発生した場合にも備え、放射性物 質の放出を抑制する対策などを実施しています。 (1)巨大地震に耐える 浜岡原子力発電所は、想定東海地震の震源域内に位置 することを踏まえ、建設当初から余裕を持たせた耐震設 計としています。燃料が納まる原子炉建屋は、地表から およそ20m掘り下げ、かたい岩盤に直接設置。基礎面積 を広く・厚く、厚い壁を多く・規則正しく配置し、ピラ ミッドのように重心を下げることで、地震の揺れに強い 安定した構造としています。 さらに2005年には、中央防災会議による想定東海地震 も考慮したうえで、岩盤上でおよそ1,000ガルという揺 れの強さを当社独自に設定。これに対し耐震性を確実に 保てるよう、建屋内の配管などへのサポート改造工事や 排気筒の改造工事を実施するなど、耐震性の向上に取り 組んできました。 - 186 - (3)冷やす機能を確保し重大事故に至らせない また、東海・東南海・南海地震の3連動地震に対し、耐 震性が確保されていることを確認しています。 ここからは、万が一、福島第一と同様に「冷やす機能」 2013年9月には3連動地震よりも更に大きな南海トラ を失った場合の対応について、ご説明します。 フ巨大地震などを踏まえ、3号機、4号機について追加対 「冷やす機能」に必要な、電源供給、注水、除熱につ 策の実施を公表。 いて、複数の代替手段を講じます。 その対策の前提となる地震の揺れについては、最大ク その柱となるのが、「電源供給」です。 ラスとして想定された内閣府モデルに基づいて評価し 浜岡原子力発電所では、3ルートの送電線から受電がで た地震動、最大1,000ガル程度を踏まえ、「1,200ガル」 きる対策や、非常用の発電機を浸水から守る対策などを を設定。また、2009年8月の駿河湾の地震において、5 実施していますが、そのうえで、これらがすべて使えな 号機の揺れが他号機に比べ大きかったことを踏まえ、こ い場合にも備えます。 の増幅を仮想的に反映した地震動、最大1,900ガル程度 海抜40mの高台にガスタービン発電機を新たに設置し、 をもとに、「2,000ガル」を設定。 この電源を用いて大容量のポンプを動かして原子炉へ 耐震設計上重要な施設などを対象に、敷地内の地震観 注水します。また、海水を使って冷やすためのポンプを 測結果を踏まえ、顕著な増幅が見られない観測点周辺の 防水構造の建屋内に新設しており、このポンプにもガス 施設は1,200ガル、顕著な増幅が見られた観測点周辺の タービン発電機から電源供給することで、原子炉から発 施設は2,000ガルを用いて、必要な工事をすることとし 生する熱を取り除きます。 ました。 さらに、ガスタービン発電機が使えない場合は、蓄電 具体的には、3号機および4号機の配管などへの更なる 池から電源供給し、原子炉停止後の余熱蒸気の圧力を使 サポート改造工事、5号機周辺の防波壁の地盤改良工事 ってポンプを回し原子炉へ注水します。また、必要な場 などを実施しています。なお、原子炉建屋や原子炉圧力 所に移動できる電源車の電源でポンプを回し、原子炉へ 容器などについては、評価の結果、改造工事が必要ない 注水する手段も備えます。 ことを確認しています。 仮に、電源がなくなった場合でも、可搬型の注水ポン プによって、海抜30mの高台に新設した緊急時淡水貯槽 (2)津波を浸入させない や、貯水タンク、敷地の西側を流れる新野川などを水源 浜岡原子力発電所では、津波を敷地内に浸入させない とし原子炉につながる配管につなぎ注水します。 よう、海岸側の敷地前面およそ1.6kmにわたり、高さ海 こうした代替手段を幾重にも講じることで、「冷やす機 抜22mの防波壁を建設しています。この壁は、深いとこ 能」を確保して、重大事故への進展を防ぎます。 ろで地下30mの堅い岩盤まで基礎を根入れし、津波や地 それでも、もし、何らかの理由で、「燃料が著しく損傷 震にも強い構造としています。 するような重大事故に至った場合」も仮定して、対策を また、敷地側面からの津波の浸入を防ぐよう、敷地の 実施しています。 東西に、海抜22m~24mの「改良盛土」を設置していま まず、格納容器の破損を防止するため、容器の上蓋の す。さらに、海とトンネルでつながる取水槽からも海水 接合部や容器内の蒸気を冷やす設備の強化、容器内に溶 を流入させないようその周囲に壁を設置するなどの対 け落ちた高温の燃料を冷やす設備の設置などを実施し 策をおこなっています。 ています。 これらの対策をおこなうことで、最大クラスとして想 次に、フィルタ付きのベント設備を設置し、放射性物 定された内閣府モデルによる津波に対しても、敷地内へ 質の大規模な放出を防ぎます。 の浸入を防ぎます。 格納容器内の圧力を下げるため、気体を外部へ放出す 仮に、津波が防波壁を越えた場合にも備えます。 る際は、放射性物質を吸着するフィルタを通して排気す 原子炉建屋の防水扉を水密扉に取り替え、強化扉を新 ることで、セシウムなどの粒子状の放射性物質の放出量 設して二重化するなど、建屋外壁の耐圧性・防水性を強 を1,000分の1以下に抑えます。 化しています。 - 187 - 3.おわりに 2013年7月、福島第一の事故や海外の知見などを踏ま え、新たな規制基準が施行されました。2014年2月には、 4号機について、2015年6月には3号機について、新規制 基準への適合性の確認審査を受けるため、原子力規制委 員会へ申請をおこないました。 今後とも、さらなる安全性の向上に努め、地域をはじ め、社会の皆さまにご理解を賜るよう取り組んでまいり ます。 今後とも原子力規制委員会による審査に真摯に対応し、 新規制基準に適合しているとの確認をいただけるよう、 最善の努力を尽くしてまいります。 参考文献 [1] 動画の掲載アドレス(中部電力ホームページ内) http://www.chuden.co.jp/corporate/publicity/pamphlet/ どれだけ設備面の対策を講じたとしても、最終的には、 movie/anzensei/movie_201310/index.html 「人の対応力」が重要です。 浜岡原子力発電所では、防災体制の整備や訓練の充実 を図り、緊急時対応の実効性向上など「現場対応力」を 強化。重大事故に陥った場合などにも対応できるよう、 「防災訓練」を繰り返し実施しています。 具体的には、本店と現地に「対策本部」を設置。社長 の指揮の下、連携をとり、情報収集や災害対応に当たり ます。 また、発電所の頭脳ともいえる中央制御室を模擬した、 シミュレーターによる訓練を行って、福島第一のような 事故を想定し、緊急事態に対応できるようにしています。 このほか、「電源を接続する訓練」、「ポンプを用いた注 水訓練」、など、「個別訓練」を繰り返し実施しています。 安全性をさらに追及するため、リスクと向き合い、安 全を確保します。 原子力災害のリスクに対し、多重・多様な対策を講じ、 リスクを低減します。 まず、事故の発端となるトラブルの発生を防止します。 「仮に」トラブルが発生しても、トラブルを早期に発 見し、原子炉の運転を止めるなどの対応により、事故へ の進展を防止します。 「たとえ」、事故に発展しても多重・多様な対策により 著しい炉心損傷・重大事故を防止します。 「万が一」、炉心が損傷したとしても、機動性の高い可 搬型の電源・注水・除熱設備なども活用した柔軟な対応 によって重大事故の影響を緩和します。 このように「仮に」「たとえ」「万が一」が重なり、放 射性物質の重大な放出を伴うような原子力災害が発生 した場合に備えます。 浜岡原子力発電所の安全対策について~今、総力を結集して~(動画紹介) 鈴木 直浩,Naohiro SUZUKI
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