新人プラント運転員に規定作業の遂行を身につけさせる トレーニングマニュアルに必要な要素の検討

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カテゴリ: 第14回
1.緒 言
近年,プラント運転の現場においては,熟練運転 員の高齢化といった観点から,人材育成は大きな課 題の 1 つである[1].プラント運転員に対する訓練は, OJT(業務を交えた訓練)やシミュレータ訓練によ るものが主となっている.しかし OJT は,訓練者だ けでなく指導者にとっても業務との両立が難しく, うまく機能していない場合が多いと考えられる.新 人運転員や中核人材の育成は重要事項であると同時 に,時間や手間が大きくかかるタスクである. 運転員が事前にプラントに関する熟達した知識を 有していることもあり,プラント運転において使用 されるマニュアルは簡素な文章での記述が大半であ る.しかし新人運転員は知識を有しているといえど も,実際のプラントを運転した経験は乏しく,プラ ント運転について精通しているとは言えない.また, 団塊世代の大量離職問題から,ノウハウなどの技術 伝承が急務となっている[1].しかし,ノウハウは経 験や勘によるところも大きく,習得するには一通り の知識を有している必要があると考える.よって, まずは一通りの現場操作に耐えうる新人を増やすこ とが,今後のプラント業界全体にとって有益と考え られる.そのため,まずは少なくともマニュアル通 りの操作ができるよう,新人を育成する必要がある. マニュアルの中には見落としやすい項目や実施し 忘れが生じやすい項目,すなわち新人にとって身に つきにくい項目がある[2][3].マニュアル通りの操作 を行える新人育成を実現するには,規定通りに作業 が遂行されていない箇所や内容を分析し,それらを 身につかせるよう工夫する必要がある.そのため新 人に身につきやすいトレーニングマニュアルを活用 して訓練することが,新人育成の観点からは良いと 考えられる. そこで本研究では,ボイラー型の発電プラントの 系統を模擬した実験室レベルの装置(模擬ボイラー 発電プラント)の操作実験におけるタスク抜けの分 析を行うことで,育成課題である新人運転員に定着 しづらい作業内容を調査した.さらに,調査結果を 元に新人訓練に向けたトレーニングマニュアルに必 要とされる要素を検討した.
2.対象者の定義および対象機器 2.1 対象とする運転員 トレーニングマニュアルの使用者として考えられ る操作員は,新人運転員だけではない.装置の更新 によって変更された操作や装置の位置などを理解す るための限定的な期間中の熟練運転員なども,本来 はトレーニングマニュアルの使用者となる.しかし, 本研究ではトレーニングマニュアルの対象者はプラ ント全体の知識・スキルが不足している点が操作の身につきにくさに関係していると考え,新人運転員 を対象とする.ここでの新人運転員とは,経験年数 が低く,プラントの大まかな概要は理解しているが, 個々の機器やその役割についてはあまり理解してい ない操作者とする.
2.2 対象とする機器 本研究において対象とする操作機器は,実機と操 作盤から成る模擬ボイラー発電プラントである.通 常の火力発電プラントのボイラーでは蒸気を発生さ せるが,模擬ボイラー発電プラントでは温水を生成 するプロセスで代替している.蒸気の代用に温水を タービン復水器部に供給し,そこで温水を冷却し, 冷却された水は給水ポンプに戻る.以上より,ボイ ラー型火力発電プラント操作における作業を再現す ることが可能である.本研究では,プラントの起動 前準備からポンプ運転までの操作を対象とした. 3.タスク抜けの分類結果および考察 3.1 操作実験におけるタスク抜けの分類 3.1.1 タスク抜け率推移 新人運転員が身につけづらい作業の内容を調査す るため,参加者のタスク抜けの分類を実施した.著 者らがこの本研究に先立って取り組んだバイオレー ションに関する研究[2]における,模擬ボイラー発電 プラントの操作実験をタスク抜けの観点から再分析 した.この実験では,参加者 10 名が本文と備考欄か ら成る操作マニュアルを用いて,模擬ボイラー発電 プラントを 6 回ずつ操作している.操作内容はプラ ントの起動前準備からポンプ運転までであり,作業 毎にタスク系列で区切られている.参加者には操作 作業後の状態確認や,数値・状態などの確認作業の 際に指さし呼称を義務付けている.また,不安定な 動作を避けるために操作盤を操作する際に椅子に座 ること,マニュアルの流れ通りに作業を行うことも 義務として指示している. 上記の実験で発生したタスク抜けについて,マニ ュアルの記載箇所別に内容別タスク抜け率(タスク 抜け数/タスク抜け発生機会数)の操作回数に対する 推移をまとめた.Fig.1 に本文における内容別タスク 抜け率推移,Fig.2 に備考欄における内容別タスク抜 け率推移を示す.
タスク抜けとして数えた内容は,タスクそのもの を飛ばしたことの他に,上記の義務付けた作業であ る指さし呼称,操作盤作業における椅子への着席, マニュアルの流れ通りの作業を行わなかった場合, すなわちタスク順番の後回しが含まれている.また, 実験 1 回における参加者一人あたりのタスク抜け発 生機会数は,本文記載タスクが 33 回,備考欄記載タ スクが 30 回となっている. Fig.1 A transition of task omission rate in the text Fig.2 A transition of task omission rate in the remarks column Fig.1,2 の指さし呼称の不実行の結果からは,本 文・備考欄ともに実験回数を増やすに連れて増加す る傾向が見られた.タスク飛ばしは本文・備考欄と もに実験回数による影響は確認できず,備考欄で多 く発生していることが分かる.椅子への不着席は本 文・備考欄ともに実験を重ねるに従ってわずかなが ら増加する傾向が見られた.タスク順番の後回しは 本文ではほぼ見られず,主に備考欄で見られた. Fig.1,2 よりタスク抜けの中でも発生頻度が高く, かつ回数による影響がなかったタスク飛ばしについ て着目し,タスク飛ばしが高頻度で発生しているタ スクを分析した.ここでは,タスク飛ばしが合計 10 回以上発生しているタスクを,タスク飛ばしが高頻 度で発生しているとした.分析の結果,ボイラーに 水を張る際の実機のモーターバルブ全開確認(10回) および全開再確認(31 回),モーターバルブを閉じ た後の操作盤でのボイラー水位確認(14 回),操作 盤での流量表示確認(12 回),操作盤でのモーター バルブ全閉再確認(22 回),補助給水ポンプを運転 するために補給水前弁を開けた後のバルブ漏れ確認 (11 回),給水後弁を開けた後のバルブ漏れ確認(10 回)という 7 つのタスクが確認された.上記のタス クは全て備考欄記載の確認タスクである. 上記の高頻度タスクにおけるタスク飛ばしの合計 は 110 回であった.タスク飛ばしの全体の合計が 170 回であることから,タスク飛ばしは全タスク 63 の内 7 つのタスクに約 65%が集中していることが分かる. この結果および Fig.1,2 から,他のタスク抜け内容 と比べても,タスク飛ばしはいくつかの備考欄記載 タスクに局所的に集中しており,本文記載タスクで の発生割合が少ない傾向が見られる. 3.1.2 タスク抜けの上位下位分析 タスクの身につかなさを考慮する上で,その原因 が個人属性によるものか,タスク属性によるものか を考えることは重要である.ここでは個人性に着目 して,指さし呼称の不実行数の上位グループと下位 グループに分けて分析した.Fig.3 に参加者 10 名の 個人別の指さし呼称の不実行数を示した.図に示す 通り,個人によって不実行数が大きく異なっている. Fig.3 Number of no pointing for 10 participants Fig.3 より,参加者 B と H の間で大きな差が認め られることから,参加者 F,E,B を上位グループ, - 264 - その他の参加者を下位グループとした.両グループ において,その他のタスク抜け内容であるタスク飛 ばし,椅子への不着席,タスクの後回しについてグ ループ内でクラメール連関係数を用い,同グループ 内における参加者のタスク抜け傾向の関連の有無を 分析した.また,クラメール連関係数を用いるに当 たり,同一タスクのタスク抜けが 0 である場合計算 不能となるため,タスク抜け回数をクラス分けした. ここでは 54 を 9 等分している.クラス分けしたデー タに対してクラメール連関係数を求めた結果,上位 と下位の両グループ共に関連はほぼ見られなかった. 次に,参加者をタスク抜け数上位 40%と下位 40% のグループに分け,各タスク抜け内容の平均値をレ ーダーチャート化した.参加者のタスク抜け数をま とめたものを Table1 に示す. Table 1 A list of total task omission of 10 participants 参加者 A B C D E F G H I J タスク抜 け数[回] 36 35 27 21 73 86 18 6 15 13 36 35 27 21 73 86 18 6 15 13 Table1 より,上位 40%に該当した参加者は A,B, E,F であり,下位 40%に該当したのは G,H,I,J であった.また,レーダーチャートを用いるに当た り,各タスク抜け内容間で回数の差が大きく,グラ フが歪になる可能性があったため,値のクラス分け を実施した.ここでは 27 を 9 等分している.得られ たレーダーチャートを Fig.4 に示す. Fig.4 A Radar chart of task omission by Higher and Lower group Fig.4 より,下位グループではタスク飛ばしが特に にも関わらず作業進行に影響が出なかったことで, 多く,上位グループではタスク飛ばしと指さし呼称 の不実行が多い.また両グループ共に,特に多いタ 指さし呼称の重要度を低く位置づけ不実行が増加し スク抜け内容以外のタスク抜けは少なかった. たこと,作業ミスとそれに伴う事故を未然に防ぐと いう指さし呼称を行う意義が特定の個人に根付いて 3.2 タスク抜け内容に対する考察および いなかったことなどが,原因として考えられる.た 対策案 だし上記の原因について,これらは意図的なもので 3.1 節で示したタスク抜け内容の分析を踏まえ,個 はなく,前回実施した作業方法で問題が起きなかっ 人間および全体でのタスク抜け内容の関連,各タス たため今回も同様の方法で作業を進めようとすると ク抜け内容についての考察を以下に述べる. いった,消極的な故意による行為と考えられる.こ ・個人間でのタスク抜け内容の関連 のことについて Reason は,手順書違反は,さまざま 3.1.2 節で言及した通り,指さし呼称の不実行数に な理由で行われる可能性があるが,通常,安全手順 関する上位・下位グループにおいて,個人間での他 書,ルール,規則からの,意図的ではあるが悪意の のタスク抜け内容における関連は特に見られなかっ ない逸脱と述べている[4].すなわち,多くの手順書 た.この結果から,タスク飛ばし,椅子への不着席, 違反は積極的に逸脱しようとするものではないと言 タスクの後回しは,連動して変動するようなエラー え,今回の結果と整合的と考えられる.また上記の のカテゴリになっていないことが分かる.そのため, 不実行には,失念といった故意ではない原因も含ま 各タスクに対して独立した対策が必要であると考え れていると考えられる. られる. 対策として,指さし呼称を行う必要性について, ・全体でのタスク抜け内容の関連 参加者に対しより明確に意識づけをさせることが挙 3.1.2 節で言及した通り,タスク抜け回数上位・下 げられる.技術的な介入による具体案として,マニ 位グループにおいて Fig.4 より,タスク飛ばしが多い ュアルを電子化して指さし呼称が抜けやすい項目を という点において両グループは共通している.また, 強調する機能を実装することなどが挙げられる. 指さし呼称の不実行がタスク飛ばしと同程度に多い ・タスク飛ばし か否かという点で,両者のレーダーチャートの形に どの参加者においても,タスク飛ばしの数が 0 で 差異が生じていることが分かる.この結果から,タ ある者はいなかった.また,実験回数による影響は スク抜けを多く起こすか否かは,義務作業,特に指 見られず,いくつかのタスクに局所的に集中してい さし呼称を遵守する傾向にあるか否かで,差が生じ る傾向が見られた.タスク飛ばしが集中しているタ ていると考えられる.また,義務作業を遵守できて スクは備考欄記載のものであり,Fig.1,2 から見て いる参加者であってもタスク飛ばしを多く行ってし も分かるように全体的に本文よりも備考欄で多く発 まうことから,タスク飛ばしを防ぐには他のタスク 生していることが分かる. 抜け内容への対策と比べて,より強い効果を期待で タスク飛ばしの数が本文・備考欄で異なる原因に きる対策が必要であると考える. ついて調査するにあたり,実験で用いられたマニュ ・指さし呼称の不実行 アルを作成した松原の研究[5]における備考欄記載 Fig.1,2 より,実験回数を追う毎に不実行回数が 情報の分類を以下に示す. 増加し,本文・備考欄共に同様の増加傾向を示して a.手順書の操作に必要な事前条件 いる.また Fig.3,4 より,指さし呼称の不実行はタ b.手順書の各操作結果が異なった場合の対応 スク抜けを多く起こしている特定の参加者に集中し, c.緊急時の操作 不実行を行わない参加者はその回数がほぼ 0 に近い d.手順書の各操作についての説明 ということが分かる.すなわち,指さし呼称の不実 e.手順書の各操作実施後の目安となる情報(操作前 行は特定のタスク抜けを多く起こす参加者が頻繁に 後の確認も含む) 起こし,実験回数が増える度,基本的に不実行の回 f.手順書の操作を行う上でのポイントやアドバイス 数も増加していく. 実験では,実験 6 回目において参加者に異常時対 上記の結果について,指さし呼称を行わなかった 応を体験させた場合を除き,プラントが異常状態と - 265 - もその後の作業に影響が出なかったことで繰り返さ なることはなかった.そのため備考欄に記載された 情報の内,実行するタスクとして記載されている情 れたと考えられる.対策として,指さし呼称と同様 報は,上記の分類において実質的に全て e に該当す に義務作業であることから,実行する必要性を明確 る.すなわち,飛ばされた備考欄記載タスクは全て に意識づけることが挙げられる.技術的な介入によ e に当てはまる.このことから,タスク飛ばしは操 る具体案として,待機状態にある操作盤の画面に「確 作前後の確認のような,実行せずとも作業進行に重 認・操作の際は着席をすること」といったメッセー 大な影響を及ぼすことはなく,万が一の状況を未然 ジを表示させておく機能が挙げられる. に防ぐ,あるいは察知するための役割が強いタスク ・タスク順番の後回し で多発していると言える. Fig.1,2 より,本文ではほぼ確認されず,主に備 本文記載タスクは作業進行に重大な影響を及ぼす 考欄で発生していた.また発生した数は全 24 回であ ものが多い一方で,備考欄記載タスクは操作前後の り,そのうち 4 つが本文記載タスクで起こり,残り 確認タスクが大半を占め,実行しなかったとしても は全て備考欄記載タスクで発生していた.これはタ 作業進行に対して直接的に重大な影響を及ぼすこと スクと飛ばしと同様に,記載の把握しづらさにより はない.この違いが,上記のようなタスク飛ばし数 タスクを見逃し,後から気づいてタスクを実行した, の違いに影響を及ぼしたと考える.ただし指さし呼 あるいはタスク順番をさほど意識していなかったこ 称の不実行に対する考察で述べた内容と同様に,備 とが原因として考えられる. 考欄記載タスクに対し重要性を認識したうえで積極 対策として,タスクの順番を明確に意識・把握さ 的に飛ばしたという訳ではなく,備考欄は意図的で せる必要がある.技術的な介入による具体案として, はあるが悪意なく飛ばされやすいと考える. 最初の数回の実験において,マニュアルの電子化を また文章配置の観点から,忘れていた,見逃した 用いて次に実施するタスクを強調する機能や,タス といった要因も,備考欄記載のタスクにタスク飛ば ク内容を省きタスク概要のみが作業順通りに書かれ しが多い理由として考えられる.実験で用いたマニ た表を挿入,あるいは添付するといったものが考え ュアルは本文と備考欄を行き来して見る必要があり, られる.なお,最初の数回の実験で適用するとした また備考欄は本文と比べて記載が密である.加えて のは,トレーニングマニュアル使用者には最終的に 備考欄には前述したa~fの要素を持った情報が記載 通常マニュアルでタスク抜けなく作業を遂行しても されている.そのため,瞬時にどの記載が実行すべ らうことを目的としているためである.そのため, きタスクであるかということを把握しづらく,また マニュアルに技術的介入を行う案を提示している指 異常時手順などの他の情報と混同して実行すべきタ さし呼称の不実行,タスク飛ばしについても同様の スクを見逃す可能性が大いに考えられる. ことが言える. 上記より,作業進行に重大な影響が出ないと判断 され,意識されづらいタスクや記載の関係上見逃し やすいタスク,あるいはその両方の性質を持つタス 4.トレーニングマニュアルに必要な要素 クが特に飛ばされやすいと考えられる.対策として, 本研究のトレーニングマニュアルは,備考欄記載 意識されづらい,見逃されやすいタスクを極力省略 タスクや指さし呼称などの確認作業および規則を使 させないように働きかける必要がある.技術的な介 用者に遵守させ,また上記の規則やマニュアル記載 入による具体案として,指さし呼称の不実行への対 内容の失念を防止することが必要となる.3 章の結 策で述べた内容と同様に,マニュアルの電子化によ 果と考察より,規定通りの作業遂行を新人に促すト る強調機能の実装が挙げられる. レーニングマニュアルに必要な要素を以下に示す. ・椅子への不着席 ・義務作業の意識づけ,本質理解,失念防止 Fig.1,2 より,実験回数を追う毎に微かながら増 例:電子マニュアルを活用した表示 加傾向が見られる.しかし,不着席を行っていない 指さし呼称などの義務作業について,これらは本 のは 10 名中 2 名であった.不着席発生の要因は,指 来,文章記載といった作業指摘が成されずとも実行 さし呼称の不実行と同様に,ひとたび不着席をして されることを望まれる作業である.また作業進行に - 266 - 直接的な影響を及ぼさないため軽視されやすいが, 事故やミスを防ぐという点において重要な作業であ る.義務作業において,特に指さし呼称は全てのタ スクに対して行われる.そのため,マニュアルに記 載されているタスク全てに,指さし呼称に対する文 章を用いた注意喚起を表示することは現実的ではな い.加えて,タスク抜け発生時に注意喚起のポップ アップを表示するような機能の場合,懲罰的に捉え られ,使用者の作業に対する意欲を削ぐ恐れが考え られる. また 3.2 節の考察より,指さし呼称の不実行は, 前回の作業方法で問題が起きなかったため今回も同 様の方法で作業を進めようとするといった,意図的 であるが悪意のない逸脱,あるいは意識しておらず 失念していたといったことが,特定の数名に起きた と考えられる.不実行の少ない参加者は他のカテゴ リもタスク抜けは 0 に近く,上述したように不実行 を多く発生させている参加者に悪意があるとは考え づらい.そこで不実行を防ぐには,不実行を行った 参加者に不実行を行っていた事実を認識させること が有効であると考える. 上記の懲罰性の影響と指さし呼称の不実行の悪意 のない逸脱性の観点から,指さし呼称の不実行には, 不実行を行った者に対し,懲罰的にならないよう作 業終了後に不実行が発生していた箇所を指摘するこ とが有効であり,作業後の指摘表示がトレーニング マニュアルに必要であると考える. ・タスク飛ばし,後回しを抑制する働きかけ 例:チェックボックス タスク飛ばしおよび後回しは回数の観点から,防 止するにあたって特に備考欄記載タスクでの発生に 対策を講じる必要がある.備考欄に記載されている タスクは補助的な作業であり,また記載位置の関係 から見逃されやすい.そのため,タスク遵守を念頭 に置いているトレーニングマニュアルでは,使用者 に備考欄記載タスクを認識させることが重要である と考える.すなわち,備考欄記載タスクを使用者に 確実に見せるための働きかけが,トレーニングマニ ュアルに求められる.また,確実に見せるという機 能は懲罰的に捉えられることも考えられるが,3.2 節 で言及したように,タスク飛ばしは義務作業を意識 できている者であっても起こしてしまうことから, 強く意識させる必要があると考え,多少懲罰的に捉 えられ得る点があったとしても問題はないと考える. 5.結 言 本研究では模擬ボイラー発電プラントの操作実験 におけるタスク抜け内容の分類を行い,経験の浅い 新人運転員がミスしやすい,または新人運転員に定 着しづらい作業の内容や要因をまとめ,考察を行っ た.またそこから,規定通りの作業を新人運転員に 遂行させることを目的としたトレーニングマニュア ルに必要な要素を検討した. 参考文献 [1] 経済産業省: “2007 年版ものづくり白書本文”, 2007 年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術 振興基本法第 8 条に基づく年次報告), 経済産業 省 (2007) [2] 山岡晟造, 杉原太郎, 五福明夫: “プラント運転 における手順の不遵守に結びつく要因の実験的 探究”, ヒューマンインタフェースシンポジウム 2016 論文集, pp.449-454 (2016) [3] 北岡朋展, 山岡晟造, 杉原太郎, 五福明夫: “プ ラント運転における繰り返しタスクと移動距離 が面倒さと手順の不遵守に及ぼす影響”, ヒュー マンインタフェース学会研究報告集, Vol.19, No.5, pp.47-52 (2017) [4] J. Reason: “組織事故とレジリエンス”, 株式会 社日科技連出版社, 東京, pp.60 (2015) [5] 松原貴史, 五福明夫, 杉原太郎: “手順書の備考 欄の情報の不足が及ぼす初級プラント操作者の 操作パフォーマンスへの影響の実験的評価”, ヒ ューマンファクターズ , Vol.2, No.2, pp.48 (2016) (平成 29 年 6 月 30 日) - 267 - 新人プラント運転員に規定作業の遂行を身につけさせる トレーニングマニュアルに必要な要素の検討 山岡 晟造,Seizo YAMAOKA,五福 明夫,Akio GOFUKU,杉原 太郎,Taro SUGIHARA
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