敦賀発電所敷地内破砕帯の評価(D-1 破砕帯の活動性)
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カテゴリ: 第11回
1.はじめに
1.1 経緯 敦賀発電所の敷地には D-1 破砕帯と呼ばれる断層が存 在しており(Fig.1)、敦賀2号機の建設当時から調査、評価 がなされてきたものである(経緯の詳細は、「敦賀発電所 敷地内破砕帯の評価(地層の堆積年代)」で述べた通り)。 D-1 破砕帯については、原子力規制委員会 敦賀発電所 敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合(以下、「有識者 会合」という)において、現在議論されているところで ある。 本報告は、敦賀発電所敷地内破砕帯の評価のうち、「D-1 破砕帯の活動性」について、取りまとめたものである。 Fig.1 Location map of Urasoko fault and D-1 shatter zone 1.2調査の概要している。(Fig.2) D-1破砕帯を評価するため、主として以下の調査を実施 ・ボーリング調査(断層が通過する位置や地質的性状 を把握。断層の連続性の評価に活用できる。) ・トレンチ調査及びピット調査(断層の活動性の評価 するため地盤を掘削して断層の状態などを調べる 調査) ・地層の堆積年代の分析(テフラ分析、花粉分析等) テフラ分析:火山灰などの火山噴出物は、給源や噴 出時期ごとに固有の特徴を有してい る。これを利用して、地層の堆積年代 を決定することができる。 花 粉分析:花粉の種類を特定することで当時の気 候が判る。これを利用して、地層の堆 積時期を推定できる。 これらの調査などによって、D-1破砕帯は2号機原子炉 建屋直下から D-1 トレンチまで連続しており、D-1 破砕 帯の活動性は D-1 トレンチで評価ができた(連続性評価 の詳細は、「敦賀発電所敷地内破砕帯の評価(D-1 破砕帯 の連続性)」で述べる)。 D-1 破砕帯は2号機原子炉建屋からD-1トレンチまで 連続していることから、D-1 破砕帯の活動性については D-1 トレンチで評価することができる。 Fig.2 Location map of surveys for D-1 trench 2.D-1破砕帯の活動性 2.1 活動性評価 D-1 トレンチでは、D-1 破砕帯と一連である断層を G 断層と称している。すなわち、D-1破砕帯の活動性につい ては、G断層の活動性を調査すれば良い。 原子力の耐震設計等で考慮する断層について規制基準 では、「将来活動する可能性のある断層等」と呼び、12~ 13万年前以降に活動した断層と規定している。 このため、G 断層が最後に活動した時期が、12~13 万 年以降であるか否かが評価のポイントとなる。 G 断層が最後に活動した時期については D-1 トレンチ
Fig.4 Sketch and photo of 1-1 pit (D-1 trench) これらの2箇所の調査結果から、G断層、すなわちD-1 破砕帯は少なくとも1層堆積以降に活動していないこと が判る。 1層の堆積年代は、年代を示す情報が得られていない ことから不明であるが、3層や5層下部などよりも古い ことが確実である(3層や5層下部は、1層が堆積した 北側ピット及び D-1 トレンチ 1-1 ピットで評価をしてい る。 D-1トレンチ北側ピットでは、1層に変位・変形を与え ていないことが確認されている。これは、G 断層が1層 が堆積した以降に活動していないことを表している(G 断層が1層堆積以降に活動した場合、G 断層は1層をず らしているはずであるが、そのような状況は認められな い)。(Fig.3) Fig.3 Sketch of northern pit (D-1 trench) - 269 - D-1トレンチ1-1 ピットでは、G断層を覆う1層が分布 していないことから、1層との関係は直接は確認出来な いが、少なくとも2層には変位・変形は認められない。 (Fig.4) 後に堆積した地層であるため)。5層下部の堆積年代は、 約12.7万年前である(「敦賀発電所敷地内破砕帯の評価 (地層の堆積年代)」で述べた通り)。また、3層には更 にそれよりも古い時代に堆積した地層であることが判っ ている(中期更新世以前)。 以上のことから、D-1破砕帯(G断層含む)は、少なく とも中期更新世以前(12~13万年前よりもさらに古い時 代)よりも最近は活動していないと判断される。すなわ ち、D-1破砕帯(G断層含む)は、「将来活動する可能性 のある断層等」には該当しない。 (参 考)K 断層について D-1トレンチには、D-1破砕帯(G断層含む)のほかに、 K 断層と呼んでいる断層が分布している。K 断層は、そ の特徴が D-1 破砕帯とは大きく異なっていることから、 D-1破砕帯とは一連ではないと判断している。K断層につ いても活動性の調査を行っており、その結果について以 下に述べる。 K断層の活動性については、D-1トレンチの北西法面や 原電道路ピットで検討した。 D-1トレンチ北西法面では、K断層は3層の下部の地層 に変位・変形を与えおり、その大きさは約0.8mであるが、 3層の上部の地層(k層)には変位・変形を与えていない。 (Fig.5) Fig.5 Sketch of D-1 trench northwestern slope また、原電道路ピットについても、D-1 トレンチ北西法 面と同様、3層の下部の地層には変位・変形を与えてい るが、3層の上部の地層には変位・変形を与えていない。 なお、変位・変形の量については、約5cm と非常に小さ くなっている。(Fig.6) Fig.6 Sketch of Genden road pit 以上のことから、K 断層の最後の活動時期は、少なく とも3層の上部の地層(k層)が堆積した以降には活動し ておらず、その時期は中期更新世以前(12~13 万年前よ りもさらに古い時代)である。すなわち、K 断層は「将 来活動する可能性のある断層等」には該当しない。 有識者会合による評価書(平成 25 年 5 月 22 日原子力 規制委員会了承)において、K 断層は下記の点から「将 来活動する可能性のある断層等」であることを否定出来 ないとしている。 ・ K 断層を覆う3層の上部の地層や5層下部が後期 更新世の地層である可能性がある(12~13 万年よ りも新しい可能性がある)ことから、K 断層が 12 ~13 万年前以降に活動した可能性を否定できない。 ・ K断層は繰り返し活動している。 1点目に対しては、5層下部は約12.7万年前である(「敦 賀発電所敷地内破砕帯の評価(地層の堆積年代)」)。また、 3層の上部の地層は5層下部よりも更に古い中期更新世 以前の地層である。 2点目に対しては、「将来活動する可能性のある断層等」 の判断に断層活動の繰り返し性は直接関連するものでは ない。 以上のことから、有識者会合の指摘は当たらない。 なお本件については、第 2 回追加調査評価会合(平成 26年6月21日)において「D-1 トレンチ北西法面につい てさらなる検討が必要」との指摘がなされており、有識 者会合で現在も議論中である。 - 270 - 2.2 まとめ D-1破砕帯の活動性について、D-1 破砕帯と一連である G断層について調査を行った。その結果、D-1 破砕帯(G 断層含む)は、「将来活動する可能性のある断層等」には 該当しない。なお、D-1 破砕帯とは一連ではない K 断層 についても同様、「将来活動する可能性のある断層等」に は該当しないことを確認した。 (平成26年7月3日) - 271 -
“ “敦賀発電所敷地内破砕帯の評価(D-1 破砕帯の活動性) “ “星野 知彦,Tomohiko HOSHINO,北川 陽一,Yoichi KITAGAWA,入谷 剛,Takeshi IRIYA,牟田 隆司,Ryuji MUTA
1.1 経緯 敦賀発電所の敷地には D-1 破砕帯と呼ばれる断層が存 在しており(Fig.1)、敦賀2号機の建設当時から調査、評価 がなされてきたものである(経緯の詳細は、「敦賀発電所 敷地内破砕帯の評価(地層の堆積年代)」で述べた通り)。 D-1 破砕帯については、原子力規制委員会 敦賀発電所 敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合(以下、「有識者 会合」という)において、現在議論されているところで ある。 本報告は、敦賀発電所敷地内破砕帯の評価のうち、「D-1 破砕帯の活動性」について、取りまとめたものである。 Fig.1 Location map of Urasoko fault and D-1 shatter zone 1.2調査の概要している。(Fig.2) D-1破砕帯を評価するため、主として以下の調査を実施 ・ボーリング調査(断層が通過する位置や地質的性状 を把握。断層の連続性の評価に活用できる。) ・トレンチ調査及びピット調査(断層の活動性の評価 するため地盤を掘削して断層の状態などを調べる 調査) ・地層の堆積年代の分析(テフラ分析、花粉分析等) テフラ分析:火山灰などの火山噴出物は、給源や噴 出時期ごとに固有の特徴を有してい る。これを利用して、地層の堆積年代 を決定することができる。 花 粉分析:花粉の種類を特定することで当時の気 候が判る。これを利用して、地層の堆 積時期を推定できる。 これらの調査などによって、D-1破砕帯は2号機原子炉 建屋直下から D-1 トレンチまで連続しており、D-1 破砕 帯の活動性は D-1 トレンチで評価ができた(連続性評価 の詳細は、「敦賀発電所敷地内破砕帯の評価(D-1 破砕帯 の連続性)」で述べる)。 D-1 破砕帯は2号機原子炉建屋からD-1トレンチまで 連続していることから、D-1 破砕帯の活動性については D-1 トレンチで評価することができる。 Fig.2 Location map of surveys for D-1 trench 2.D-1破砕帯の活動性 2.1 活動性評価 D-1 トレンチでは、D-1 破砕帯と一連である断層を G 断層と称している。すなわち、D-1破砕帯の活動性につい ては、G断層の活動性を調査すれば良い。 原子力の耐震設計等で考慮する断層について規制基準 では、「将来活動する可能性のある断層等」と呼び、12~ 13万年前以降に活動した断層と規定している。 このため、G 断層が最後に活動した時期が、12~13 万 年以降であるか否かが評価のポイントとなる。 G 断層が最後に活動した時期については D-1 トレンチ
Fig.4 Sketch and photo of 1-1 pit (D-1 trench) これらの2箇所の調査結果から、G断層、すなわちD-1 破砕帯は少なくとも1層堆積以降に活動していないこと が判る。 1層の堆積年代は、年代を示す情報が得られていない ことから不明であるが、3層や5層下部などよりも古い ことが確実である(3層や5層下部は、1層が堆積した 北側ピット及び D-1 トレンチ 1-1 ピットで評価をしてい る。 D-1トレンチ北側ピットでは、1層に変位・変形を与え ていないことが確認されている。これは、G 断層が1層 が堆積した以降に活動していないことを表している(G 断層が1層堆積以降に活動した場合、G 断層は1層をず らしているはずであるが、そのような状況は認められな い)。(Fig.3) Fig.3 Sketch of northern pit (D-1 trench) - 269 - D-1トレンチ1-1 ピットでは、G断層を覆う1層が分布 していないことから、1層との関係は直接は確認出来な いが、少なくとも2層には変位・変形は認められない。 (Fig.4) 後に堆積した地層であるため)。5層下部の堆積年代は、 約12.7万年前である(「敦賀発電所敷地内破砕帯の評価 (地層の堆積年代)」で述べた通り)。また、3層には更 にそれよりも古い時代に堆積した地層であることが判っ ている(中期更新世以前)。 以上のことから、D-1破砕帯(G断層含む)は、少なく とも中期更新世以前(12~13万年前よりもさらに古い時 代)よりも最近は活動していないと判断される。すなわ ち、D-1破砕帯(G断層含む)は、「将来活動する可能性 のある断層等」には該当しない。 (参 考)K 断層について D-1トレンチには、D-1破砕帯(G断層含む)のほかに、 K 断層と呼んでいる断層が分布している。K 断層は、そ の特徴が D-1 破砕帯とは大きく異なっていることから、 D-1破砕帯とは一連ではないと判断している。K断層につ いても活動性の調査を行っており、その結果について以 下に述べる。 K断層の活動性については、D-1トレンチの北西法面や 原電道路ピットで検討した。 D-1トレンチ北西法面では、K断層は3層の下部の地層 に変位・変形を与えおり、その大きさは約0.8mであるが、 3層の上部の地層(k層)には変位・変形を与えていない。 (Fig.5) Fig.5 Sketch of D-1 trench northwestern slope また、原電道路ピットについても、D-1 トレンチ北西法 面と同様、3層の下部の地層には変位・変形を与えてい るが、3層の上部の地層には変位・変形を与えていない。 なお、変位・変形の量については、約5cm と非常に小さ くなっている。(Fig.6) Fig.6 Sketch of Genden road pit 以上のことから、K 断層の最後の活動時期は、少なく とも3層の上部の地層(k層)が堆積した以降には活動し ておらず、その時期は中期更新世以前(12~13 万年前よ りもさらに古い時代)である。すなわち、K 断層は「将 来活動する可能性のある断層等」には該当しない。 有識者会合による評価書(平成 25 年 5 月 22 日原子力 規制委員会了承)において、K 断層は下記の点から「将 来活動する可能性のある断層等」であることを否定出来 ないとしている。 ・ K 断層を覆う3層の上部の地層や5層下部が後期 更新世の地層である可能性がある(12~13 万年よ りも新しい可能性がある)ことから、K 断層が 12 ~13 万年前以降に活動した可能性を否定できない。 ・ K断層は繰り返し活動している。 1点目に対しては、5層下部は約12.7万年前である(「敦 賀発電所敷地内破砕帯の評価(地層の堆積年代)」)。また、 3層の上部の地層は5層下部よりも更に古い中期更新世 以前の地層である。 2点目に対しては、「将来活動する可能性のある断層等」 の判断に断層活動の繰り返し性は直接関連するものでは ない。 以上のことから、有識者会合の指摘は当たらない。 なお本件については、第 2 回追加調査評価会合(平成 26年6月21日)において「D-1 トレンチ北西法面につい てさらなる検討が必要」との指摘がなされており、有識 者会合で現在も議論中である。 - 270 - 2.2 まとめ D-1破砕帯の活動性について、D-1 破砕帯と一連である G断層について調査を行った。その結果、D-1 破砕帯(G 断層含む)は、「将来活動する可能性のある断層等」には 該当しない。なお、D-1 破砕帯とは一連ではない K 断層 についても同様、「将来活動する可能性のある断層等」に は該当しないことを確認した。 (平成26年7月3日) - 271 -
“ “敦賀発電所敷地内破砕帯の評価(D-1 破砕帯の活動性) “ “星野 知彦,Tomohiko HOSHINO,北川 陽一,Yoichi KITAGAWA,入谷 剛,Takeshi IRIYA,牟田 隆司,Ryuji MUTA