銀ゼオライトを用いた高除染性フィルターベントシステムの開発
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カテゴリ: 第12回
1.緒 言
2011 年(平成23 年)3 月11 日に発生した東北地方太平洋沖地震による津波により,福島第一原子力発電所が炉心溶融を伴う過酷事故を起こし,大量の放射性物質が飛散し周辺環境に甚大な影響を及ぼす事態となった.これを踏まえ,新規制基準では,国内全ての原子力発電所に格納容器フィルタードベントシステム (FCVS) を設置することになった.しかし、原子力安全・保安院や各種事故調の報告書に加え、規制委員会の福島第一原子力発電所の事故の分析や、東電の進捗報告書などの最近の知見によると、飯舘村などの汚染したタイミングでは、福島第一原子力発電所2号機(以下1F-2)からの漏洩であった可能性が非常に高いことが分かる。2号機では隔離時注水系RCIC の停止後,主蒸気逃がし安全弁(S/R 弁)で原子炉を減圧したが、数時間ほど炉心注水が実施できず,炉心が空焚き状態が続き、格納容器内はRCIC 蒸気タービンの排気蒸気などによって約0.4MPa まで加圧されており、その後の海水注入で、圧力が0.75MPa に上昇して、3月15日午前中に圧力が急減している。この時点で,原子炉建屋側面のブローアウトパネルから湯気が上がっているのが確認されており、格納容器が損傷したと考えられる(9).2 号機ではラプチャーディスクが割れておらず (5).,格納容器の損傷を招き,地元を放射性物質で汚染したことになる。これを防止するには,空焚き状態の炉心へ注水する前にフィルターベントを用いて速やかにベントできるようにしなければならない。つまり, FCVS の運用上からもPCV の過圧破損を防止する運用が求められる。本報では、フィルターベントの運用について述べる。2.福島第一原子力発電所2号機の事故分析 図 1 に示す通り,2号機では隔離時注水系RCIC の停止後, 主蒸気逃がし安全弁(S/R 弁)で原子炉を減圧した.しかし, 数時間ほど炉心注水が実施できず,炉心が空焚き状態が続いた. この段階で格納容器内はRCIC 蒸気タービンの排気蒸気などによって約0.4MPa まで加圧されている.その後, 海水注入が行われ,圧力抑制プール(S/P)の温度成層化に起因すると考えられる若干の圧力低下の後,格納容器内の圧力が0.75MPa まで上昇し,さらに,3 月15 日午前中に圧力が急減している.この時点で,原子炉建屋側面のブローアウトパネル開口部から,蒸気との放射性物質の飛散が始まった。これは,炉心が空焚きで温度が上がっていたところに注水が行われ,蒸気の多量発生に伴う格納容器の圧力上昇と, 水・ジルコニウム反応による水素の発生などが生じて圧力が上昇して格納容器が損傷したと考えられる(10). (a) Pressure and water level in RPV
, (b) Pressure in RPV and PCV Fig.1 Comparison between Measured data and analysis results(5) Fig.2 Comparison between measured data and analysis results(9) PCV Pressure (MPa) 3/12 3/13 3/14 3/15 3/16 3/17 3/18 0:00:004:48:009:36:0014:24:0019:12:001899/12/31PCV Press. (D/W) Analysis PCV Press. (S/C) Analysis PCV Press. (D/W) Data PCV Press. (S/C) Data PCV Failure RPV Bottom Failure CAMS High Level SRV Open - 145 -3/11 3/12 3/13 3/14 3/15 3/16 3/17 3/18 1F NPPs Monitoring Trend 1938/04/301932/11/071927/05/18Rad iation Level (.Sv/h) #1 Vent started #1 Detonation#3 1st Vent #3 Detonation #3 2nd Vent #4 Detonation #1 Vent #3 1st Vent #3 2nd Vent #2 2nd Vent #1 Seawater Injection #1 Loss of cooling #3 Loss of cooling #3 Seawater Injection #2 Seawater Injection #2 Loss of cooling #2 Vent Failure #2 2nd Vent #2 Core uncover #2 White smoke #3 White smoke #3 White smoke again #4 Fire #4 Fire #3 Spent fuel Seawater Injection #2 Explosion sound near S/P #3 Gray smoke #2 Emergency declaration Tsunami attack at 15:41 Tohoku-Pacific Ocean Earthquake at 14:46 400,000 .Sv/h (Near #3) 100,000 .Sv/h (Near #4) 30,000 .Sv/h (Between #2 and #3) 400,000 .Sv/h (Near #3) 100,000 .Sv/h (Near #4) 150,000 .Sv/h (Near #2),30,000 .Sv/h (Between #2 and #3) Time ①電源喪失時も給水車の接続と格納容器ベントで安定的冷却を確立②最終的には、電源および補機冷却系を確立し、冷温停止格納容器原子炉圧力容器圧力抑制室注水RHR 排気筒電源車消火系給水車Hx フィルタベント容器(SA+特重) フィルタベント復水補給水系DW冷却器給電ペデスタル注水原子炉建屋大容量電源車空冷電源S/P 可搬式バッテリ,窒素ボンベ等SRV D/WベントW/Wベント給電代替PCVスプレイ③圧力抑制プールをFCVS化FCVS Air Cool DG Mobile GT Stack Reactor Building Mobile GT Fire Engine Mobile Cooler PCV D/W W/W Pedestal Water Injection MUWC Pump FP Pump Battery N2 RPV CRD Act as 1st Filter vent 表1は福島第1原子力発電所の1号機から4号機の事故の連鎖を時系列的に表したものである。炉心溶融事故は非常用復水器(IC)の作動が停止した1号機から始まり、水-ジルコニウム反応で発生した水素により原子炉建屋の最上階のコンクリート壁と屋上が吹っ飛ぶ水素爆発が発生した。次いで、3号機で、蒸気タービン駆動のRCIC が停止し、原子炉水位低下に伴い蒸気タービン駆動のHPCI が作動したが、多量の蒸気が必要なため、原子炉の圧力が低下してHPCI の吐出流量もなくなり、作動停止した。これに伴い炉心溶融が発生してベント後、激しい水素爆発が発生し、原子炉建屋上部が大きく破損した。ただし、このような激しい水素爆発があっても格納容器の損傷は免れ、耐圧ベント系をもちいて圧力抑制プール(S/P)水をベント蒸気が通過する際のスクラビング効果(除染係数DF は約100)により、高い空間線量率にならずに済んでいる。一方、2 号機ではラプチャーディスクが割れずにベント弁を開けてもベントが出来なかったことが確認された(5). ラプチャーディスクの設定圧が高過ぎることによって,格納容器の損傷を招き,図2 に示すように、同日午後には圧力容器底部が損傷し、格納容器圧力の再上昇と格納容器内の放射線量(CAMS で実測)の急増が発生している。これにより地元を放射性物質で汚染したことになる(図3).これを防止するには,空焚き状態であった炉心へ注水する前にフィルターベントを用いて速やかにベントできるようにしなければならない.つまり, FCVS の運用上からもPCV の過圧破損を防止する運用が求められる. Fig.3 Monitored radiation levels for Fukushima Daiichi NPS (Nikkei Science, 2011). Table 1 Chain of accidents at the Fukushima Daiichi NPS 1900/01/093/11 3/12 3/13 3/14 3/15 3/16 3/17 3/18 FPの飛散※注水量要検討※注水量要検討3/16 8:30~ 3/22白煙・灰煙海水注入PCV内0.6MPa 1:30 RPV 底部破損3/15金属Zrなし※注水量~1m3/h 3/19受電PCV損傷3/18受電9:30RPV 底部破損13:00RPV底部破損3/15朝~白煙CAMS高線量3.フィルターベントシステムのロバスト化 図4 のように,原子炉格納容器(PCV)には圧力抑制(S/P) プールがあり,このプール水に事故時に水酸化ナトリウムやチオ硫酸ナトリウムなどのアルカリ薬剤を注入することにより,ヨウ素やセシウムの保持機能が数十倍に向上することが知られている(4).これを「pH 調整」と言い,我が国のBWR でもこのシステムを採用する発電所が出てきた.これにより、原子炉格納容器がフィルターベントとして機能するようになる。S/P からのベント管の下流にFCVS が取り付けられるため、2つの異なるFCVS が直列に繋がることにより,最大でDF=100 万程度の高除染性能が得られる.このためには,ヒートシンクの確保によるPCV の冷却が必要であり,PCVスプレイによるFP の除去機能強化に加え,格納容器スプレイのための多様な注水源と外部注水機材が準備されている. また、深層防護の観点からS/P の補助冷却機能の強化により、過酷事故時のS/P の冷却とPCV の過圧防止を徹底することが重要であり、全国のBWR で順次対策中である。Fig.4 Robust type FCVS by using suppression pool. 4.結論 1F-2 号機の事故の分析の結果、炉心注水前にフィルターベントを用いた格納容器の減圧が必要であることが分かった。BWR では格納容器のS/P 水をアルカリ調整して,FP のスクラビングと保持特性を向上させ,併せて,最終ヒートシンク確保策を充実させる.格納容器本体のFCVS と外部設置のFCVSが直列に接続されることにより,除染性能の大幅向上と頑健化を同時に達成できる.本研究のフィルターベントの高性能化研究は科研費(基盤研究(B) 24360388)の一環として実施しており,日本保全学会規制関連検討会の審議を経ている.多くの方々のご支援とご助言に深謝する. 参考文献 (1)奈良林直,杉山憲一郎,「東日本大震災に伴う原子力発電所の事故と災害 福島第一原子力発電所の事故の要因分析と教訓」原子力学会誌,vol.53, No.6 , (2011), PP.387-400. (2)奈良林ら, 2011 秋の大会L15, (3)同,2012 春の年会G40, (4)奈良林ら, 2013 年秋の大会H49, (5)原子力安全・保安院「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見について」(別紙2), (2012.3). (6)T. Narabayashi, “Lessons learned from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident”, Turbulence, Heat and Mass Transfer 7, Begell House, Inc.pp.51-62,(2012). (7)奈良林ら, 第19回動力エネルギーシンポ, B231, (2014) (8)奈良林直、佐藤修彰、「銀ゼオライトを用いた高除染性フィルタベントシステムの開発と可視化実験」、エネルギーレビュー(2014,11). (9)東京電力,「福島第一原子力発電所1~3 号機の炉心・格納容器の状態の推定と未解明問題に関する検討」(第2回進捗報告)(2014.8.6). (10)石川迪夫、「考証・福島原子力事故」(2014.3). - 146 -
“ “銀ゼオライトを用いた高除染性フィルターベントシステムの開発 “ “奈良林 直,Tadashi NARABAYASHI,川村 慎一,Shinichi KAWAMURA
2011 年(平成23 年)3 月11 日に発生した東北地方太平洋沖地震による津波により,福島第一原子力発電所が炉心溶融を伴う過酷事故を起こし,大量の放射性物質が飛散し周辺環境に甚大な影響を及ぼす事態となった.これを踏まえ,新規制基準では,国内全ての原子力発電所に格納容器フィルタードベントシステム (FCVS) を設置することになった.しかし、原子力安全・保安院や各種事故調の報告書に加え、規制委員会の福島第一原子力発電所の事故の分析や、東電の進捗報告書などの最近の知見によると、飯舘村などの汚染したタイミングでは、福島第一原子力発電所2号機(以下1F-2)からの漏洩であった可能性が非常に高いことが分かる。2号機では隔離時注水系RCIC の停止後,主蒸気逃がし安全弁(S/R 弁)で原子炉を減圧したが、数時間ほど炉心注水が実施できず,炉心が空焚き状態が続き、格納容器内はRCIC 蒸気タービンの排気蒸気などによって約0.4MPa まで加圧されており、その後の海水注入で、圧力が0.75MPa に上昇して、3月15日午前中に圧力が急減している。この時点で,原子炉建屋側面のブローアウトパネルから湯気が上がっているのが確認されており、格納容器が損傷したと考えられる(9).2 号機ではラプチャーディスクが割れておらず (5).,格納容器の損傷を招き,地元を放射性物質で汚染したことになる。これを防止するには,空焚き状態の炉心へ注水する前にフィルターベントを用いて速やかにベントできるようにしなければならない。つまり, FCVS の運用上からもPCV の過圧破損を防止する運用が求められる。本報では、フィルターベントの運用について述べる。2.福島第一原子力発電所2号機の事故分析 図 1 に示す通り,2号機では隔離時注水系RCIC の停止後, 主蒸気逃がし安全弁(S/R 弁)で原子炉を減圧した.しかし, 数時間ほど炉心注水が実施できず,炉心が空焚き状態が続いた. この段階で格納容器内はRCIC 蒸気タービンの排気蒸気などによって約0.4MPa まで加圧されている.その後, 海水注入が行われ,圧力抑制プール(S/P)の温度成層化に起因すると考えられる若干の圧力低下の後,格納容器内の圧力が0.75MPa まで上昇し,さらに,3 月15 日午前中に圧力が急減している.この時点で,原子炉建屋側面のブローアウトパネル開口部から,蒸気との放射性物質の飛散が始まった。これは,炉心が空焚きで温度が上がっていたところに注水が行われ,蒸気の多量発生に伴う格納容器の圧力上昇と, 水・ジルコニウム反応による水素の発生などが生じて圧力が上昇して格納容器が損傷したと考えられる(10). (a) Pressure and water level in RPV
, (b) Pressure in RPV and PCV Fig.1 Comparison between Measured data and analysis results(5) Fig.2 Comparison between measured data and analysis results(9) PCV Pressure (MPa) 3/12 3/13 3/14 3/15 3/16 3/17 3/18 0:00:004:48:009:36:0014:24:0019:12:001899/12/31PCV Press. (D/W) Analysis PCV Press. (S/C) Analysis PCV Press. (D/W) Data PCV Press. (S/C) Data PCV Failure RPV Bottom Failure CAMS High Level SRV Open - 145 -3/11 3/12 3/13 3/14 3/15 3/16 3/17 3/18 1F NPPs Monitoring Trend 1938/04/301932/11/071927/05/18Rad iation Level (.Sv/h) #1 Vent started #1 Detonation#3 1st Vent #3 Detonation #3 2nd Vent #4 Detonation #1 Vent #3 1st Vent #3 2nd Vent #2 2nd Vent #1 Seawater Injection #1 Loss of cooling #3 Loss of cooling #3 Seawater Injection #2 Seawater Injection #2 Loss of cooling #2 Vent Failure #2 2nd Vent #2 Core uncover #2 White smoke #3 White smoke #3 White smoke again #4 Fire #4 Fire #3 Spent fuel Seawater Injection #2 Explosion sound near S/P #3 Gray smoke #2 Emergency declaration Tsunami attack at 15:41 Tohoku-Pacific Ocean Earthquake at 14:46 400,000 .Sv/h (Near #3) 100,000 .Sv/h (Near #4) 30,000 .Sv/h (Between #2 and #3) 400,000 .Sv/h (Near #3) 100,000 .Sv/h (Near #4) 150,000 .Sv/h (Near #2),30,000 .Sv/h (Between #2 and #3) Time ①電源喪失時も給水車の接続と格納容器ベントで安定的冷却を確立②最終的には、電源および補機冷却系を確立し、冷温停止格納容器原子炉圧力容器圧力抑制室注水RHR 排気筒電源車消火系給水車Hx フィルタベント容器(SA+特重) フィルタベント復水補給水系DW冷却器給電ペデスタル注水原子炉建屋大容量電源車空冷電源S/P 可搬式バッテリ,窒素ボンベ等SRV D/WベントW/Wベント給電代替PCVスプレイ③圧力抑制プールをFCVS化FCVS Air Cool DG Mobile GT Stack Reactor Building Mobile GT Fire Engine Mobile Cooler PCV D/W W/W Pedestal Water Injection MUWC Pump FP Pump Battery N2 RPV CRD Act as 1st Filter vent 表1は福島第1原子力発電所の1号機から4号機の事故の連鎖を時系列的に表したものである。炉心溶融事故は非常用復水器(IC)の作動が停止した1号機から始まり、水-ジルコニウム反応で発生した水素により原子炉建屋の最上階のコンクリート壁と屋上が吹っ飛ぶ水素爆発が発生した。次いで、3号機で、蒸気タービン駆動のRCIC が停止し、原子炉水位低下に伴い蒸気タービン駆動のHPCI が作動したが、多量の蒸気が必要なため、原子炉の圧力が低下してHPCI の吐出流量もなくなり、作動停止した。これに伴い炉心溶融が発生してベント後、激しい水素爆発が発生し、原子炉建屋上部が大きく破損した。ただし、このような激しい水素爆発があっても格納容器の損傷は免れ、耐圧ベント系をもちいて圧力抑制プール(S/P)水をベント蒸気が通過する際のスクラビング効果(除染係数DF は約100)により、高い空間線量率にならずに済んでいる。一方、2 号機ではラプチャーディスクが割れずにベント弁を開けてもベントが出来なかったことが確認された(5). ラプチャーディスクの設定圧が高過ぎることによって,格納容器の損傷を招き,図2 に示すように、同日午後には圧力容器底部が損傷し、格納容器圧力の再上昇と格納容器内の放射線量(CAMS で実測)の急増が発生している。これにより地元を放射性物質で汚染したことになる(図3).これを防止するには,空焚き状態であった炉心へ注水する前にフィルターベントを用いて速やかにベントできるようにしなければならない.つまり, FCVS の運用上からもPCV の過圧破損を防止する運用が求められる. Fig.3 Monitored radiation levels for Fukushima Daiichi NPS (Nikkei Science, 2011). Table 1 Chain of accidents at the Fukushima Daiichi NPS 1900/01/093/11 3/12 3/13 3/14 3/15 3/16 3/17 3/18 FPの飛散※注水量要検討※注水量要検討3/16 8:30~ 3/22白煙・灰煙海水注入PCV内0.6MPa 1:30 RPV 底部破損3/15金属Zrなし※注水量~1m3/h 3/19受電PCV損傷3/18受電9:30RPV 底部破損13:00RPV底部破損3/15朝~白煙CAMS高線量3.フィルターベントシステムのロバスト化 図4 のように,原子炉格納容器(PCV)には圧力抑制(S/P) プールがあり,このプール水に事故時に水酸化ナトリウムやチオ硫酸ナトリウムなどのアルカリ薬剤を注入することにより,ヨウ素やセシウムの保持機能が数十倍に向上することが知られている(4).これを「pH 調整」と言い,我が国のBWR でもこのシステムを採用する発電所が出てきた.これにより、原子炉格納容器がフィルターベントとして機能するようになる。S/P からのベント管の下流にFCVS が取り付けられるため、2つの異なるFCVS が直列に繋がることにより,最大でDF=100 万程度の高除染性能が得られる.このためには,ヒートシンクの確保によるPCV の冷却が必要であり,PCVスプレイによるFP の除去機能強化に加え,格納容器スプレイのための多様な注水源と外部注水機材が準備されている. また、深層防護の観点からS/P の補助冷却機能の強化により、過酷事故時のS/P の冷却とPCV の過圧防止を徹底することが重要であり、全国のBWR で順次対策中である。Fig.4 Robust type FCVS by using suppression pool. 4.結論 1F-2 号機の事故の分析の結果、炉心注水前にフィルターベントを用いた格納容器の減圧が必要であることが分かった。BWR では格納容器のS/P 水をアルカリ調整して,FP のスクラビングと保持特性を向上させ,併せて,最終ヒートシンク確保策を充実させる.格納容器本体のFCVS と外部設置のFCVSが直列に接続されることにより,除染性能の大幅向上と頑健化を同時に達成できる.本研究のフィルターベントの高性能化研究は科研費(基盤研究(B) 24360388)の一環として実施しており,日本保全学会規制関連検討会の審議を経ている.多くの方々のご支援とご助言に深謝する. 参考文献 (1)奈良林直,杉山憲一郎,「東日本大震災に伴う原子力発電所の事故と災害 福島第一原子力発電所の事故の要因分析と教訓」原子力学会誌,vol.53, No.6 , (2011), PP.387-400. (2)奈良林ら, 2011 秋の大会L15, (3)同,2012 春の年会G40, (4)奈良林ら, 2013 年秋の大会H49, (5)原子力安全・保安院「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見について」(別紙2), (2012.3). (6)T. Narabayashi, “Lessons learned from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident”, Turbulence, Heat and Mass Transfer 7, Begell House, Inc.pp.51-62,(2012). (7)奈良林ら, 第19回動力エネルギーシンポ, B231, (2014) (8)奈良林直、佐藤修彰、「銀ゼオライトを用いた高除染性フィルタベントシステムの開発と可視化実験」、エネルギーレビュー(2014,11). (9)東京電力,「福島第一原子力発電所1~3 号機の炉心・格納容器の状態の推定と未解明問題に関する検討」(第2回進捗報告)(2014.8.6). (10)石川迪夫、「考証・福島原子力事故」(2014.3). - 146 -
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