磁性配管減肉モニタリングのための 低周波漏洩磁束探傷法の開発
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カテゴリ: 第13回
1.緒言
配管の減肉管理はプラントの健全性維持に重要な役割を担っているが、特に配管外表面に防護材が存在する場合などは、従来の超音波肉厚計を用いた定期点検による減肉管理は経済的に好ましいことではない。そこで、より効率的な技術として、配管外表面にセンサを取り付けることでの減肉のモニタリング技術が期待されている。 先行研究[1][2]において、被検査配管外壁面に励磁コイルと検出センサからなるプローブを常設することによる配管減肉モニタリング技術の基礎的検討として磁性鋼平板を用いた各種検討が行われ、数十Hz以下の交流磁場を用い、かつ励磁コイルから離れた場所での磁場を測定することで、プローブ設置面の逆側に生じた模擬減肉の検出可能性が確認された。しかしながら、これまでの検討は平板を対象としたものにとどまっており、実際の検査対象となる配管を対象とした検討は行われていなかった。 以上の背景より、本研究では低周波の磁場を用いた検査手法の配管減肉モニタリングへの実機適用性評価のために、磁性配管の内壁面に生じた減肉の検出および評価 手法について数値解析により検討した。
2.減肉信号の数値解析
2.1 解析体系
磁性配管の外壁面に設置された励磁コイルが誘導する 電磁場が、配管内壁面の減肉により変動する様相を解析するための数値解析を実施した。Fig. 1に解析体系を示す。 被検査対象は長さ1000 mm, 外形 100 mm, 肉厚10 mm, 比透磁率 100, 導電率 5.2 MS/m の炭素鋼配管とし、減肉 は長さw ( mm ), 深さd ( mm )の矩形断面を有する全周減 肉とした。励磁コイルは配管外周に沿って設置された、1 辺10 mmの正方形断面を有するリング形状であり、励磁 コイルと減肉の距離をZflaw (mm) とした。励磁周波数はf = 1 ~ 220 Hz の範囲で設定し、起磁力は86 AT とした。解 析領域の全体は1辺2000 mmの空気領域とした。解析に は商用の有限要素法ソフトウェアである COMSOL Multiphysics 5.2 およびその AC/DC モジュールを使用し た。 連絡先:田島直樹、〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒 巻字青葉6-6-01-2、東北大学大学院工学研究科量子エ 以下の議論では、Fig. 1におけるr = 101 mm, 0 ≦ z ≦ 500 mmの領域における、磁束密度の管軸方向成分Brの強 ネルギー工学専攻 度に基づき、励磁コイルと減肉間の距離 Zflawが減肉の検 E-mail:ntaji@karma.qse.tohoku.ac.jp - 131 - 出性に及ぼす影響および減肉深さのサイジング手法に関 して検討を行った。 2.2 解析結果 励磁コイルと減肉間の距離Zflawが減肉の検出性に及 ぼす影響を評価した結果をFig. 2 に示す。減肉形状は、 w = 10 mm, d = 9 mm とし、励磁周波数は 1 Hzとした。 Fig. 2 より、減肉が励磁コイルの直下に存在する場合 を除いては、明瞭な減肉信号が確認された。したがっ て、対象が配管であっても適切なプローブ配置によっ て減肉の検出が可能であることが明らかとなった。 減肉深さの評価手法開発のために、励磁周波数と減 肉信号の強度の関係について評価した結果をFig. 3 に 示す。縦軸は、減肉がある場合の磁場分布を、減肉が ない場合に同じ位置で得られる磁場分布で規格化した 際の最大値を示している。減肉は、w = 10 mm, d = 5 ~ 9 mm とし、Zflaw = 100 mm に配置した。減肉信号の周波 数特性が減肉深さ応じて異なっていることから、複数 の励磁周波数を用いることによる減肉深さの評価が可 能であることを示唆する結果が得られた。詳細は講演 にて述べる予定である。 Fig. 1 The geometry of the numerical simulation model (not to scale, unit: mm) Fig. 3 The frequency characteristic of signals due to wall thinning 参考文献 [1] N. Tajima, K. Sasaki, N. Yusa, H. Hashizume, T. Uchimoto, T. Takagi, and K. Tanji, “Low frequency magnetic field measurement to monitor pipe wall thinning using MI sensor arrays”, The 20th International Workshop on Electromagnetic Nondestructive Evaluation, (2015) [2] J. Wang, N. Yusa, H. Pan, T. Takagi and H. Hashizume: Evaluation of Sensitivity of Remote Field Eddy Current Testing and Low Frequency Eddy Current Testing for Inspecting Grooves of Metal Plate, Materials Transactions, 54, pp. 90-95 (2013). Fig. 2 The magnetic field distribution with wall thinning situated on different positons - 132 -“ “磁性配管減肉モニタリングのための 低周波漏洩磁束探傷法の開発 “ “田島 直樹,Naoki TAJIMA,遊佐 訓孝,Noritaka YUSA,橋爪 秀利,Hidetoshi HASHIZUME
配管の減肉管理はプラントの健全性維持に重要な役割を担っているが、特に配管外表面に防護材が存在する場合などは、従来の超音波肉厚計を用いた定期点検による減肉管理は経済的に好ましいことではない。そこで、より効率的な技術として、配管外表面にセンサを取り付けることでの減肉のモニタリング技術が期待されている。 先行研究[1][2]において、被検査配管外壁面に励磁コイルと検出センサからなるプローブを常設することによる配管減肉モニタリング技術の基礎的検討として磁性鋼平板を用いた各種検討が行われ、数十Hz以下の交流磁場を用い、かつ励磁コイルから離れた場所での磁場を測定することで、プローブ設置面の逆側に生じた模擬減肉の検出可能性が確認された。しかしながら、これまでの検討は平板を対象としたものにとどまっており、実際の検査対象となる配管を対象とした検討は行われていなかった。 以上の背景より、本研究では低周波の磁場を用いた検査手法の配管減肉モニタリングへの実機適用性評価のために、磁性配管の内壁面に生じた減肉の検出および評価 手法について数値解析により検討した。
2.減肉信号の数値解析
2.1 解析体系
磁性配管の外壁面に設置された励磁コイルが誘導する 電磁場が、配管内壁面の減肉により変動する様相を解析するための数値解析を実施した。Fig. 1に解析体系を示す。 被検査対象は長さ1000 mm, 外形 100 mm, 肉厚10 mm, 比透磁率 100, 導電率 5.2 MS/m の炭素鋼配管とし、減肉 は長さw ( mm ), 深さd ( mm )の矩形断面を有する全周減 肉とした。励磁コイルは配管外周に沿って設置された、1 辺10 mmの正方形断面を有するリング形状であり、励磁 コイルと減肉の距離をZflaw (mm) とした。励磁周波数はf = 1 ~ 220 Hz の範囲で設定し、起磁力は86 AT とした。解 析領域の全体は1辺2000 mmの空気領域とした。解析に は商用の有限要素法ソフトウェアである COMSOL Multiphysics 5.2 およびその AC/DC モジュールを使用し た。 連絡先:田島直樹、〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒 巻字青葉6-6-01-2、東北大学大学院工学研究科量子エ 以下の議論では、Fig. 1におけるr = 101 mm, 0 ≦ z ≦ 500 mmの領域における、磁束密度の管軸方向成分Brの強 ネルギー工学専攻 度に基づき、励磁コイルと減肉間の距離 Zflawが減肉の検 E-mail:ntaji@karma.qse.tohoku.ac.jp - 131 - 出性に及ぼす影響および減肉深さのサイジング手法に関 して検討を行った。 2.2 解析結果 励磁コイルと減肉間の距離Zflawが減肉の検出性に及 ぼす影響を評価した結果をFig. 2 に示す。減肉形状は、 w = 10 mm, d = 9 mm とし、励磁周波数は 1 Hzとした。 Fig. 2 より、減肉が励磁コイルの直下に存在する場合 を除いては、明瞭な減肉信号が確認された。したがっ て、対象が配管であっても適切なプローブ配置によっ て減肉の検出が可能であることが明らかとなった。 減肉深さの評価手法開発のために、励磁周波数と減 肉信号の強度の関係について評価した結果をFig. 3 に 示す。縦軸は、減肉がある場合の磁場分布を、減肉が ない場合に同じ位置で得られる磁場分布で規格化した 際の最大値を示している。減肉は、w = 10 mm, d = 5 ~ 9 mm とし、Zflaw = 100 mm に配置した。減肉信号の周波 数特性が減肉深さ応じて異なっていることから、複数 の励磁周波数を用いることによる減肉深さの評価が可 能であることを示唆する結果が得られた。詳細は講演 にて述べる予定である。 Fig. 1 The geometry of the numerical simulation model (not to scale, unit: mm) Fig. 3 The frequency characteristic of signals due to wall thinning 参考文献 [1] N. Tajima, K. Sasaki, N. Yusa, H. Hashizume, T. Uchimoto, T. Takagi, and K. Tanji, “Low frequency magnetic field measurement to monitor pipe wall thinning using MI sensor arrays”, The 20th International Workshop on Electromagnetic Nondestructive Evaluation, (2015) [2] J. Wang, N. Yusa, H. Pan, T. Takagi and H. Hashizume: Evaluation of Sensitivity of Remote Field Eddy Current Testing and Low Frequency Eddy Current Testing for Inspecting Grooves of Metal Plate, Materials Transactions, 54, pp. 90-95 (2013). Fig. 2 The magnetic field distribution with wall thinning situated on different positons - 132 -“ “磁性配管減肉モニタリングのための 低周波漏洩磁束探傷法の開発 “ “田島 直樹,Naoki TAJIMA,遊佐 訓孝,Noritaka YUSA,橋爪 秀利,Hidetoshi HASHIZUME