原子炉再循環系配管への超音波探傷試験実施・評価に関するノウハウ

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カテゴリ: 第5回
1.緒言
国内 BWR プラントの低炭素ステンレス鋼で製作さ PLR配管 UT 技術改善に向けて以下を行った。 れた原子炉再循環系(PLR)配管において,2002 年以I) PLR 配管 UT における課題抽出 降超音波探傷試験(UT) を用いた点検で応力腐食割れ 2) データ収集及び分析 (SCC)が検出されるようになった。1 SCC データの収集分析 PLR 配管の UT は,供用期間中検査(ISI)における 2 UT データ収集分析 超音波探傷試験指針(JEAG 4207)に従って基本探傷3)UT 評価手順の策定 (垂直,横波 45°)に追加試験 (2 次クリーピング波4) 事例集(SCC 検出事例,失敗事例等)の作成 等)を加えた手順で実施している。また,試験員に関 等)を加えた手順で実施している。また,試験員に関 して教育・訓練を行い検査信頼性の確保に努めている。 * これまで UT を実施して欠陥と評価した多くは、そ 1.緒言
2. PLR 配管 UT 技術改善の取り組み国内 BWR プラントの低炭素ステンレス鋼で製作さ PLR配管 UT 技術改善に向けて以下を行った。 れた原子炉再循環系(PLR)配管において,2002 年以I) PLR 配管 UT における課題抽出 降超音波探傷試験(UT)を用いた点検で応力腐食割れ 2) データ収集及び分析 (SCC)が検出されるようになった。DSCC データの収集分析 PLR 配管の UT は,供用期間中検査(ISI)における 2 UT データ収集分析 超音波探傷試験指針(JEAG 4207)に従って基本探傷 3) UT 評価手順の策定 (垂直,横波 45°)に追加試験 (2 次クリーピング波4) 事例集(SCC 検出事例,失敗事例等)の作成 等)を加えた手順で実施している。また,試験員に関 して教育・訓練を行い検査信頼性の確保に努めている。3. UT 実施・評価に必要な知見 これまで UT を実施して欠陥と評価した多くは,そ の後の調査を通じて SCC であることが判明し, UT の 3.1 SCC に関する知見 SCC 検出能力が高いことを示してきた。しかし,一方 実機 PLR 配管に対する UT で欠陥と評価した 126 継 で点検初期において UT 評価の経験不足,低炭素ステ手,その後の調査で SCC であることが確認された 181 ンレス鋼における SCC の知見不足等により,僅かでは 個の SCC (内 98個は発生位置と深さ寸法を確認)に関 あるが SCC を健全部と判断した事例(見落とし)及びするデータを分析して,主に以下の特徴を確認した。 健全部をSCC と判断した事例(誤認識)が認められた。 1) SCC は厚さ 30mm 以上の配管で多く検出され,一方これら事例に鑑み, 「PLR 配管 UT 技術改善に係わるでSCC が確認された最小厚さは 20mm である。 事業者の取り組みについて」を策定し BWR 事業者協2) SCC は溶接境界及び溶接境界から約9mm の範囲の 議会(JBOG)の中で取り組んだ。母材部で溶接金属と平行な方向に発生しており,溶 本稿では, UT 実施・評価技術の向上を目的としてま 接金属から発生した事例はない。(Fig.1) とめたノウハウを紹介する。3) SCC の多くは先端部が溶接境界で停留しており,溶接金属内への進展は深いもので約4mm である。 4) 溶接部開先形状が狭開先の場合,これまで SCC は 発生していない。142連絡先:小林輝男,〒100-8560 東京都千代田区内幸町 1-1-3, 東京電力株式会社原子力品質・安全部 設備健全性診断グループ, 電話:03-4216-1111(代表), e-mail:kobayashi.teruo@tepco.co.jp レス鋼における SCC の知見不足等により,僅かでは るが SCC を健全部と判断した事例(見落とし)及び 全部をSCCと判断した事例(誤認識)が認められた。 これら事例に鑑み, 「PLR 配管 UT 技術改善に係わる 業者の取り組みについて」を策定し BWR 事業者協連絡先: 小林輝男,〒100-8560 東京都千代田区内幸町 1-1-3, 東京電力株式会社原子力品質・安全部 設備健全性診断グループ , 電話:03-4216-1111(代表), e-mail:kobayashi.teruo@tepco.co.jp 接金属から発生した事例はない。(Fig.1) SCC の多くは先端部が溶接境界で停留しており - 143 -■溶接金属溶接金属母材SCCSCC(a) SCC 01511溶接金属境界から最も遠い位置:8.7mm 鞍型管台継手:全て溶接金属境界~2mm未満SCC個数:98個[56]SCC検出継手数[27][15][0]溶接金属内境界~2mm未満2mm以上5mm未満5mm以遠板厚区分(単位mm)(6) SCC の発生頻度 Fig.1 SCC 発生位置に関する分析3.2 UT 上の知見PLR 配管 UT の評価誤り(見落とし,誤認識)防止 の観点で SCC と SCC の判別性に影響を及ぼす裏波部 エコー(又は柱状晶伝搬エコー)の各々における UT 上の知見を整理しておくことが重要である。特にエコ ー高さ及び反射源位置の情報が大切であり, 181 個の SCC の検出にあたってはエコー高さと反射源位置のい ずれか又は両方の情報に基づいて評価したものである。 1) SCC からのエコー高さ深さ 2mm 以上の SCC における UT エコー高さは、 横波 45°で DAC60%以上に達する。(Fig.2)30:エコー高さ(dB)DAC100円----------- ----_DAC20% ] 0246_8_10_12_1416SCC深さ(mm) Fig.2 SCC 深さーエコー高さ(横波 45° )る。価誤り(見落とし,誤認識)防止 10Y位置は ISI 基準線を原点として探触子走査側に C の判別性に影響を及ぼす裏波部 プロットされる。 伝搬エコー)の各々における UT 2 深さは内面を基点に±3mm 以内にプロットされ おくことが重要である。特にエコ 置の情報が大切であり, 181 個の てはエコー高さと反射源位置のい 報に基づいて評価したものである。 高さ SCC における UT エコー高さは、 5以上に達する。(Fig.2)探触子Y%3D0 ISI基準線(溶接中心)表面超音波-15929→ 内面 AZ=0 d53_6_91215表面 (1SKIP)DAC100%Fig.4 SCC エコーの位置解析結果--------------_DAC20%] 24 68_10_12_1416SCC (mm) SCC 深さーエコー高さ(横波 45° )2) 裏波部形状からのエコー高さBWR 代表2プラントの PLR 主配管及びリングヘッ ダーの供用前検査(PSI)記録からデータ収集、分析し た結果,裏波部(又は柱状晶伝搬)エコーのエコー高 さは,その多くが DAC150%以下であり, DAC150%を 超えることは稀であることが確認された。(Fig.3)InH|50%未満 50~69% 70~995100~1495 150~1998 200%以上エコー高さ区分(DAC) Fig.3 裏波部のエコー高さ(横波 45°,PSI)3) SCC の UT データに基づく反射源位置 - SCC に対する UT データに基づき反射源位置(溶接 線直交方向位置 Y, 表面からの深さ方向位置 Z)を分 析した。(Fig.4) OY位置は ISI 基準線を原点として探触子走査側にプロットされる。 2 深さは内面を基点に±3mm 以内にプロットされる。探触子Y%3D0 ISI基準線(溶接中心)表面ビーム-152-91→内面 AZ=0 20.93_6_9_1215ーーーーーーーーー!表面 (1SKIP)Fig.4 SCC エコーの位置解析結果4) 裏波部の UT データに基づく反射源位置 SCC と同様に裏波部に対する反射源位置を分析した。 1 Y位置は ISI 基準線を原点として探触子走査側の反対側にプロットされる。(Fig.5) 2深さは内面を基点に+1mm~-9mm で, 多くが内144面より深い方向にプロットされる。4) 有意な差に関する国内実証試験の知見探触子ISI基準線15r表面4.2 過去の記録との照合供用中に発生した SCC か否か判断するためには過 去の健全な記録(PSI又は以前の ISI 記録)と照合する。 1) SCC が発生する範囲を重点的に評価する。(Fig.6) 4.2 過去の記録との照合供用中に発生した SCC か否か判断するためには過 去の健全な記録(PSI 又は以前の ISI 記録)と照合する。 1) SCC が発生する範囲を重点的に評価する。(Fig.6)探触子ISI基準線15r表面Y=0探触子-15-12-9-6一内面 519_12154+-ACCI BY-12-151表面(1SKIP)Fig.5 裏波部エコーの位置解析結果LILI: UT重点評価範囲 - 1:裏波部(又は柱状晶伝搬)エコー出現範囲Fig.6 UT 評価上の重点範囲) SCC 検出角度及び探傷方向 5) SCC 検出角度及び探傷方向SCC の検出は横波 45°であり,垂直法で検出した 例はない。また,探傷方向に関しては SCC が発生し た側の母材から検出したものであり, 溶接部を介した 一方向から検出した報告はない。3.3 国内研究調査における主な知見UT実施において欠陥の有無に関わらずUTデータ上 で変動が生じる。この変動が UT 自体によるものか欠 陥の発生によって生じているものか判断が求められる。 UT 自体の変動の程度については,国内実証試験の 結果が参考になる。(Table.1)|Table.1 UT TWEDEN (1) 項目 | 標準偏差 | 備考 エコー高さ3.2dB | SCC ごとの標準偏差 Y方向位置2.5mm oの最大値を示す。 X方向位置11.3mm 指示長さ9.06mm4. UT 評価上のテクニック4.1 UT 評価にあたって *正確かつ迅速に UT 実施・評価を行う上で3章の知 見を活用する。 1) SCC の発生部位,位置,方向 2) SCC エコーと裏波部エコーの特徴と相違点 3) SCC 検出角度,方向4.2 過去の記録との照合供用中に発生した SCC か否か判断するためには過 去の健全な記録(PSI又は以前の ISI 記録)と照合する。 1) SCC が発生する範囲を重点的に評価する。(Fig.6)2) 深さ 2mm 以上の SCC を見つけるために, 横波 45°における DAC60%以上のエコーに重点を置く。 3) Fig.6 の A~Cに位置して DAC150%を超えるエコーに注意を払う。 4) 過去の記録との比較で1エコー高さ,2反射源位置 及び3指示長さに関して想定される変動程度を超えたエコーに注意を払う。 5) 局所的にエコーが高い箇所,探触子の前後走査で複 数のエコーが検出される箇所,裏波の出現性が Y方 向に不連続なエコーに注意を払う。4.3 追加確認(その 1)有意な欠陥指示の疑いのある指示(疑義指示)が確 認された場合,以下のような追加確認を選択する。 1) 正確な反射源位置の解析によるエコー源の特定垂直法(Fig.7)又は斜角法で溶接中心を求める。ま た,表面形状の影響を受ける場合は,表面形状を反映 した詳細な解析を行う。(a) 自動 UT (b)フェーズドアレイ Sig.6 画像(垂直法)から溶接中心を求める例SCC先端:有- 145 - 3)2次クリーピング波法の適用実機 PLR 配管の SCC に対する2次クリーピング波 去のエコー高さは CRT10%を超えていることが確認さ れている。したがって,疑義指示に2次クリーピング 支法を適用してCRT10%を超えた場合はSCCの可能性 を疑う。なお,健全であっても裏波部形状の影響で CRT10%を超える例が散見されるので,ただちに SCC と判断することは好ましくない。(Fig.7, Fig.8)SCC開口部(a) SCC 先端を検出した例SCC先端:無CRT80%裏波部(四)エリー高さ106)CRT10%(b) SCC 先端が検出されない例 Fig.9 SCC 先端確認事例(フェーズドアレCRT80%CRT10%1124 6_ 8_ 10_12_ 1416SCC*(mm) SCC 深さーエコー高さ (2 次クリーピング) れている。したがって,疑義指示に2次クリーピング 皮法を適用してCRT10%を超えた場合はSCCの可能性 を疑う。なお,健全であっても裏波部形状の影響で CRT10%を超える例が散見されるので,ただちに SCC と判断することは好ましくない。(Fig.7, Fig.8)SCC開口部(a) SCC 先端を検出した例SCC先端:無CRT80%裏波部(凹)・エコー高さ(dB)CRT10%(b) SCC 先端が検出されない例 Fig.9 SCC 先端確認事例(フェーズドアレイ法)10_246_8_10_12_1416SCC**(mm) Fig.7 SCC 深さーエコー高さ (2 次クリーピング)5.結言 1) 実機 PLR 配管の SCC 及び UT データの収集、分析 を通じて UT 実施・評価技術向上に大きく貢献する ノウハウを得た。また,知見に基づく UT 評価手順書を策定した。 (a) 内面観察(山) (6) 断面観察(凸) 2) 本ノウハウについて教育等を通じて広く浸透させ, Fig.8 2次クリーピング波を検出した裏波形状(2例) 国内 PLR 配管 UT技術水準の均一安定化を図る。3) 今後も新たな知見等を拡充していく。また,正確か ) その他の追加確認つ迅速なUT 実施,評価に繋げるために新しい検査 ORT フィルムの観察等,製造履歴に基づく SCC 以 手法,検査手順の確立を目指す。外の反射源の要因有無確認 2UT 試験機材の性能, 表面形状の影響, 試験要領及謝辞 び走査(自動/手動)等の相違による影響確認 3モックアップ試験, シミュレーション等による技 本稿は BWR 事業者が共同でまとめた報告書「PLR 術的檢証配管 UT 技術改善に関する調査業務」の成果の一部である。 3.4 追加確認(その 2) 4.1~4.3 項の手順で評価しても SCC からのエコーで参考文献 さいことを十分説明できない場合は,SCC 先端の検出 二優れる端部エコー法を適用してSCC先端の有無を確[1] 平成16年度 原子力発電施設検査技術実証事業に して総合評価を下す。フェーズドアレイを用いた端関する報告書(超音波探傷試験における欠陥検出性及びサイジング精度の確認に関するもの) [総括 エコー法における SCC 先端確認事例をFig.9に示す。版(1/2)],独立行政法人原子力安全基盤機構,平 おお, Fig.9(b)は Fig.8(a)の裏波部の凹み部に適用した結 成17年4月, pp.674-675, pp.854. 具を示す。 口内 PLR 配管 UT 技術水準の均一安定化を図る。 →後も新たな知見等を拡充していく。また,正確か っ迅速な UT 実施,評価に繋げるために新しい検査 三法,検査手順の確立を目指す。 成16年度 原子力発電施設検査技術実証事業に する報告書(超音波探傷試験における欠陥検出 主及びサイジング精度の確認に関するもの) [総括 気 (1/2)],独立行政法人原子力安全基盤機構,平 え17年4月, pp.674-675, pp.854. 146 -
“ “原子炉再循環系配管への超音波探傷試験実施・評価に関するノウハウ“ “小林 輝男,Teruo KOBAYASHI,山下 理道,Norimichi YAMASHITA,牧原 善次,Zenji MAKIHARA,岩田 潔,Kiyoshi IWATA
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