マイクロ波誘電吸収法による高分子材料の経年劣化評価

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カテゴリ: 第5回
1.緒言
軽量であり錆びない等有益な機能を持つ高分子材料 は、多くの工業製品に使用されている。特に我々が住 む福井県は、関西圏へ電力を供給する主要都市であり、 その主たる原子力産業においても高分子ケーブル等多 量の高分子材料が使用されている。これらの産業にお いて使用される高分子材料は、高温、放射線照射下に おいて長期間の使用が求められており、過酷な条件下 においていかに安全性を高め信頼性を維持していくか が問題となっている。近年、高分子材料の劣化を高精 度で尚且つ容易に測定する手法の開発が国及び産業界 から求められている。 1. 本研究は高分子材料が熱、放射線により、酸化、架 橋もしくは解離反応を引起こし、それに伴い分子構造 が大きく変化し、機械的特性を変化させるような劣化 過程に対し、本研究室で開発したマイクロ波誘電吸収 法',を適用することにより、分子構造の変化に相当す る誘電率変化の測定結果から、高分子材料の劣化箇所 を速やかに見つけ出すことを可能とする経年劣化測定 技術の評価手法開発を行うことを目的とする。
2.経年劣化評価
2.1 測定原理3 物質の電磁波に対する誘電特性は式(1)で表わさ
れるように、複素数で表わされる。 c = c'-ic'““ |(1) ここで、E'は誘電率の実数部、c” は誘電率の虚数 部、=-1 である。対象とする高分子材料の分子構造に変化が起こると ’やE”が変化すため、本測定法では式(2)に示すよう に、C'の変化量に比例するマイクロ波空洞共振器の 共振周波数変化量 AB を測定することにより高分子 材料内の分子構造変化の情報を得ることを可能とし ている。
ここで、 f は基準物質を挿入した時のマイクロ波共振 周波数、f'は高分子材料を挿入した時のマイクロ波共 振周波数、ABは共振周波数の変化量である。2.2 劣化試料作製 - 試料に関しては原子燃料工業株式会社(NFI 照射サ ービス)における電子線照射サービスを利用しポリエ チレンロッドを 10 MeV 電子線照射を行ったものをサ ンプルとして用いた。吸収線量は 30kGy~300kGy の領 域で30kGy 間隔おこなった。尚、温度及び雰囲気は室 温、空気中で行った。2782.3 測定方法 * 図2に本測定で使用したXバンドマイクロ波回路図 を示す。Gunn 発振器より生じた 9GHz マイクロ波を Circulator によりマイクロ波空洞共振器(Cavity)へ導き 反射波を増幅し、周波数カウンター及びダイオードで 検波した。ここで、マイクロ波空洞共振器は TE102. Q-8000, 共振周波数 f=9.3GHz を使用した。Frequency ConnterinteDirectionalCouplerFET Amp.CavityAitcaatorIsolatorCirculatorGonn Osc.図2 Xバンドマイクロ波回路図2.4 結果図3に、ポリエチレンロッドを対象とした吸収線量 に対する共振周波数の結果を示す。吸収線量の増大と 共に共振周波数は増大し、約 200kGy 付近に極大を示 す。ここで、分子構造の変化において分子の双極子モ ーメントが増大した場合、共振周波数は減少傾向を示 す。このことから、吸収線量が 30 k Gy~200kGy の領 域において分子内の架橋が進み、双極子モーメントが 減少し、200kGy以上の吸収線量においては、空気中の 酸素による酸化の影響による双極子モーメントが増大 したと予想される。3.結言マイクロ波誘電吸収法は、マイクロ波空洞共振器を 使用することにより高感度に分子の経年劣化過程を測 定することが可能である。本測定結果より、ポリエチ エンにおいて、放射線照射による、架橋や酸化による 分子構造の変化に相当する結果が得られたと考える。 本測定手法は、原子力発電所における実際のケーブル の絶縁材料の高経年劣化測定に対しても適用可能であると考える。8.9998.9988.997共振周波数(GHz)8.9968.9958.9948.993300100200 吸収線量(kay) 図3 ポリエチレン共振周波数図3謝辞本研究成果は経済産業省原子力安全保安院 「高経 年化対策強化基盤整備事業」における原子力安全シス テム研究所よりの再委託に基づくものである。本研究 に関して多くの助言をいただけた日本原子力研究開発 機構 先端基礎研究センター長 篠野嘉彦氏、大阪大 学産業科学研究所 田川精一氏、佐伯昭紀氏、大阪大 学工学部 関 修一氏、原子力安全システム研究所 黒 黒住保夫氏、松波潮氏、原子力安全基盤機構 山本 歳雄氏、マイクロ電子株式会社 大友志郎氏に感謝い たします。参考文献[1] 「光照射による分子挙動の観測方法、および同法 に用いるクロスパイプ型マイクロ波空洞共振器」特 許出願 2003-201538、特許公開 2005-43142 発明者: 砂川武義 [2] H.Shimamori, PROGRESS IN PHOTOCHEMISTRY AND PHOTOPHYSICS, Vol.VI, CRC Press, Boca Raton, FL, Chapter 2, 43-77 (1992) [3] 「誘電体論」 現代工学社著者岡 小天 (1954年)279
“ “マイクロ波誘電吸収法による高分子材料の経年劣化評価 “ “田中 健司,Takeshi TANAKA,小林 茂樹,Shigeki KOBAYASHI,林 賢太,Kennta HAYASHI,廣本 和也,Kazuya HIROMOTO,砂川 武義,Takeyoshi SUNAGAWA
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