真空を用いた槽間液移送用三方向切替弁の開発

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カテゴリ: 第5回
1. 緒言
め、信頼性の高い装置を国内で短期間に低価格で調達できるよう開発が求められていた。 - 東海再処理工場では、使用済み核燃料をせん断・溶2. VCV の構造と作動方法 解し、ウラン、プルトニウムの抽出・分離を行ってい る。2.1 構造と原理」 - 再処理工程内で取り扱う溶液の移送には、可動部が VCV の構造を図1に示す。 接液しないように真空の吸引力を利用した機器で故センターロッドマイクロスイッチ 障時の核燃料物質による保全区域の汚染拡大の防止・・損 により上下 ・ポジション信号・ボール弁を開閉 及び従業員の被ばく低減を図っている「1.2。真空を制御操作粧室(P) ・独立した区画、ダイアフラム小 するための機器には、3 つのポジションを操作圧力値 の違いにより切替えられる三方向切替弁 換気ライン室(A)ダイアフラム大 ・プロセスライン室・操作圧の近 (VCV;Vide-Casse-Vides)を用いている。と連通
ダイアフラム中 VCV による溶液の槽間移送は、真空の吸引力のほか、 プロセスライン室 (S)
・換気ライン室又は サイホンの原理を利用しているため、移送中に VCVが。ボールト空ライン室と連通 接液することなく残渣を含んだ溶液の移送ができ、ま・A-S間の連通切替 空ライン室()ボール弁大 た、移送の液路には、弁などが不要で配管のみでよい。・プロセスライン室と・S-V間の連通切替 という利点がある。しかし、当初設置していた VCV の連通- スプリング 可動部材である樹脂製ダイアフラムは、機械的に弱く、- 配管接続口(各室1箇所) 早いものは1、2年で破損していた。ダイアフラムが図1 VCV の構造 破損すると真空が維持できず、溶液の移送工程が停止 VCV は、幅90×奥行 98×高さ 162 (mm)の縦長立方 する。移送工程を再開させるためには、VCV の交換が体のステンレス鋼製の箱型である。内部構造は、上方 必要であるが、VCV は、輸入品であり、調達に時間がから操作圧室(P)、換気ライン室(A)、プロセスライン室 かかる。さらに、系統配管からの核燃料物質の気体が。 (S)、真空ライン室(V)の4室から構成され、室毎に配管 VCV 内部を汚染させるため、放射線管理下での作業とを接続することができる。また、故障時には、内部部 なり、多くの労力と資材を必要とした。当初設置して 品の交換及び核燃料物質の除染を行い再度利用できる いた VCV は、このように信頼性、調達性及び保守性によう、室毎に4分割できる構造となっている。 課題があり、工場の安定運転及び保全経費の削減のた 溶液移送においてサイホンの原理を利用するには、連絡先:安尾清志、〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33、東海研究開発センター 核燃料サイクル工学研究所 再 処理技術開発センター 施設管理部 施設保全第 2 課、電 話: 029-282-1111、e-mail:yasuo.kiyoshi@jaea.go.jp* - 385 -落差がある槽間を結ぶ液移送路を大気圧状態から真空 状態とし、液移送路内を溶液で満たした状態を作り、 それを保持する必要がある。そのため、VCV を槽間の 液移送路の上方に設置し、内部に配したボール弁の開 閉を制御することで、溶液の移送を可能としている。2.2 作動方法VCV は、3段階の操作圧をP室へ供給することによ りS室とA室、S室とV室の連通を変え、三方の切替 えを行う。図2に VCV の作動概略図を示す。ポジショ ン1では、操作圧を OkPa とし、S室とA室が連通する 状態となる。ポジション2では、操作圧を約 60kPa と し、S室が A室、V 室と連通しない状態となる。最後 にポジション3では、操作圧を 140kPa とし、S室とV 室が連通する状態となる。ポジションの切替えは、P 室へ供給された圧力を、 P 室のダイアフラム大が受け て伸縮し、ダイアフラム大の伸縮に応じてセンターロ ッドが上下することでS室のボール弁小及びV室のボ ール弁大が上下し、これらのボール弁が開閉すること で行う。VCV のポジションは、VCV 本体上部に配置 したマイクロスイッチの接点信号により把握すること ができる。キーME. OkPa操作 COMPa操作圧 60kPa操作圧140hPa「センターロッドが、下がり、ボール 「井小が間となるfreenトマト雪アセンダーロッドが さらに下がり、 ボール大が ■関となる。ホジション1 ポジション2 ポジション3 mg;連通状態 1 :非連通の室図2 VCV の作動概略図2.3 VCV の使用例 VCV の使用例を図3に示す。 槽間落差のある2つの槽間で、槽Aから槽Bへ VCV を使用して液移送をする場合、弁1が閉の状態で VCV に操作圧約 140kPa を加え、ポジション1(大気圧状態) からポジション3(S-V ライン)の状態にし、真空槽V内 を真空とする。次に操作圧を約 60kPa にし、ポジショ ン2(真空供給停止)の状態とし、弁1を開けると槽A及び槽Bから溶液が引き上げられる。溶液で液移送路内 が満たされるとサイホン状態となり、高低差により槽 Aから槽Bへ溶液が移送される。溶液の移送は、ポジ ション1(大気圧状態)とし、サイホンを切ることで終了 する。換気ライン1-160kPa<140kPa(#1:開)操作は.ITプロセスライン切替弁真空槽V弁1ポジション3 (#1: )litilililii気液分離器サイホン ポジション2 (弁1:開)配管, (該移送路)核燃料物質を含む 硝酸溶液図3 VCV の使用例 3.国産による VCV の開発 3.1 国産化の必要性VCVは、再処理工場の主工程において、核燃料物質 を含んだ溶液を移送するため、高い信頼性が求められ ている。しかし、当初設置した VCV は、可動部である ダイアフラムが樹脂製で機械的に弱いため、早いもの は稼働1、2年で破損が発生し、移送ができなくなっ ていた。また、設置数 37 台に対して、設置後5年間で 20 台が故障し、これまでに延べ 37台(同一の VCVで 2回以上の交換実績を含む)の交換を行った。VCV が 故障すると溶液の移送工程が停止するため、工程の運 転を維持するには、速やかな交換が必要となる。交換 作業では、気液分離器で除去できなかった核燃料物質 の気体により VCV の内部が汚染されることもあり、汚 染拡大及び被ばくの防止に配慮し、慎重な作業となる386ため、交換作業に多くの労力を割くこととなる。また、 3.3 国産開発した VCV の使用実績 故障した VCV を再度使用可能な状態にするため、内部開発した VCV は、使用頻度の多い工程に適用してい 部品を交換し、組立てる際に、機械的に弱いダイアフ るが、既に交換後約20年を経過し、故障は発生して ラム破損させる恐れがあり、熟練した技術が必要であ いない。尚、開発した VCV の不具合は、これまでに1 った。さらに、VCVは輸入品であるため、予備の確保 件生じているが、ボール弁小へ異物が付着したことに には、割高な費用と約1年という長い納期が必要であ より真空を保持できず作動不良となったことが原因で り、国産計器並みの調達性が求められた。あり、内部機構の設計上の不具合やベローの材質の問題に起因するものではなかった。 3.2 国産 VCV の開発4.結言 開発した VCV を図4に示す。また、開発に際しての 留意事項を(1)~(5)にまとめた。1) 国産化した VCV に交換して以降、故障はなく、信 (1) 取付方法が従来の VCV と変更になると、既存の配 頼性が大きく向上した。管の改造が生じるため、外形寸法、配管取合位置 2) ボール弁大小の締切圧調整機構は、容易な方法でボ は同一とした。ール弁が確実に開閉する状態を調整でき、信頼性、 (2) 可動部の材質は、強度を有し、容易に取り扱え、 保守性ともに向上した。 耐薬品性を有するステンレスを選定した。3) ステンレス鋼ベローにしたことで、故障後に内部部 (3) ボール弁小が A-S 間を確実に締切ることができる品の交換を行う際の部品の取扱が容易になり、保守ように、センターロッドのストロークを可変でき 性が向上した。 ・ る調整機構を設けた。このため、可動部の形状に4) 国産化により、購入に関わる費用、納期ともに縮減は、調整機構の設置空間を確保できるベローを選 され、工場の安定運転に寄与している。 定した。5) 開発した VCV の容易な制御方法と構造は、複数の (4) ボール弁大が S-V 間を確実に締切ることができる 弁やポンプ等を使用して液移送を行っているプロように、スプリング小のばね圧を可変できる調整 セスに応用することで、制御方法の簡易化、部品点 機構を設けた。また、保守性を考慮して外部から 数、保守回数の削減等を行うことができると考える。調整可能とし、熟練した技術を不要とした。 (5) 国内生産については、同様な切替弁と制御機構を参考文献 設計・製作した実績のある会社を選定した。[1] 福有義裕、 立原富夫、“核燃料再処理プラントにおける計装システム”、 エネルギー・資源学会、 OリングVol.12,No.4、1991、 pp.365-370. ルイ ステンレス[2] 動燃事業団東海事業所再処理工場工務部保守課、処 調整機構の設置空間を確保できるベローを選 調整可能とし、熟練した技術を不要とした。 国内生産については、同様な切替弁と制御機構を 設計・製作した実績のある会社を選定した。minanmamman0002emeBreOリングステンレス鋼 ベロー大操作圧室(P)まさる換気ライン室(A)プロセスライン室(S)ボール弁小 締切庄調整機構ステンレス鋼 ベロー小配管接続口 (各室1箇所)スプリング小ボール弁大 真空ライン室(V)締切庄調整機構 図4 国産 VCV の構造 内部機構の設計上の不具合やベローの材質の問 頼性が大きく向上した。 ボール弁大小の締切圧調整機構は、容易な方法でボ ール弁が確実に開閉する状態を調整でき、信頼性、 保守性ともに向上した。 ステンレス鋼ベローにしたことで、故障後に内部部 品の交換を行う際の部品の取扱が容易になり、保守 性が向上した。 国産化により、購入に関わる費用、納期ともに縮減 され、工場の安定運転に寄与している。 開発した VCV の容易な制御方法と構造は、複数の 弁やポンプ等を使用して液移送を行っているプロ セスに応用することで、制御方法の簡易化、部品点3.3 国産開発した VCV の使用実績開発した VCVは、使用頻度の多い工程に適用してい るが、既に交換後約20年を経過し、故障は発生して いない。尚、開発した VCV の不具合は、これまでに1 件生じているが、ボール弁小へ異物が付着したことに より真空を保持できず作動不良となったことが原因で あり、内部機構の設計上の不具合やベローの材質の問 題に起因するものではなかった。4.結言 1) 国産化した VCV に交換して以降、故障はなく、信 - 頼性が大きく向上した。 2) ボール弁大小の締切圧調整機構は、容易な方法でボ トール弁が確実に開閉する状態を調整でき、信頼性、保守性ともに向上した。 3) ステンレス鋼ベローにしたことで、故障後に内部部品の交換を行う際の部品の取扱が容易になり、保守 - 性が向上した。 4) 国産化により、購入に関わる費用、納期ともに縮減され、工場の安定運転に寄与している。 5) 開発した VCV の容易な制御方法と構造は、複数の 弁やポンプ等を使用して液移送を行っているプロ セスに応用することで、制御方法の簡易化、部品点 数、保守回数の削減等を行うことができると考える。参考文献 [1] 福有義裕、 立原富夫、“核燃料再処理プラントに “おける計装システム”、 エネルギー・資源学会、Vol.12,No.4、1991、 pp.365-370. [2] 動燃事業団東海事業所再処理工場工務部保守課、処 “理部前処理課、“再処理工程の運転-保守・補修”、動燃技報、No.55、資料番号 55-13(1985)福有義裕、 立原富夫、“核燃料再処理プラントに おける計装システム”、 エネルギー・資源学会、 Vol.12,No.4、1991、 pp.365-370. 動燃事業?東海事業所再理工場工務部保守課、如 理部前処理課、“再処理工程の運転-保守・補修”、 動燃技報、No.55、資料番号 55-13(1985) - 387 -“ “真空を用いた槽間液移送用三方向切替弁の開発“ “安尾 清志,Kiyoshi YASUO,瀬戸 信彦,Nobuhiko SETO,綿引 誠一,Seiichi WATAHIKI,福有 義裕,Yoshihiro FUKUARI
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