東海再処理施設における非常用電源設備(無停電電源装置)の保全管理

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カテゴリ: 第6回
緒言
燃料サイクル工学研究所で使用する電力は、 二電力機の原子力線 154 k V系2回線で送電さ 当研究所の特別高圧変電所にてこの内1系統 択し受電している。特別高圧変電所では、変 号により 6.6k Vに降圧して、再処理施設に給 している。図1に東海再処理施設の電源系統概玄燃料サイクル工学研究所で使用する電力は、 京電力(株)の原子力線 154 k V系2回線で送電さ当研究所の特別高圧変電所にてこの内1系統 選択し受電している。特別高圧変電所では、変 号により 6.6k Vに降圧して、再処理施設に給 している。図1に東海再処理施設の電源系統概 示す。再処理施設では、開閉所等で受電し変電所にて 400V に降圧し、35 建家の動力分電盤にて2系統で 給電し、1系統に故障が発生した場合は、健全な 系統を自動選択し給電するシステムとなっている。 さらに商用電源が停電した場合に備え、非常用発 電機を設置している。負荷の中には、使用済み核 燃料物質を処理する施設の特質として、放射線管 理上重要な臨界モニタ等、給電の中断が許されな いものがあり、これらの機器は無停電電源装置を 介して給電を行っている。本報告では、重要設備 である無停電電源装置の機能を維持するために実 施している定期的な点検、部品交換、装置更新等 の状況について述べる。
2. 無停電電源装置の概要力分電盤(プロセス用)動力分電盤(換気用)直換クレーンポンプ直流電源装置気 ブロワ等無停電電源装置T換気ブロワ 等2.1 構造と原理図2に無停電電源装置の概要を示す。無停電 電源装置は、主に蓄電池、充電器、インバータ から構成されている。平常時は交流入力電源を 充電器にて整流し、直流でインバータへ給電す るとともに蓄電池の充電を行っている。インバ ータではさらに直流を交流に変換し負荷へ給電 している。交流入力電源停電時は、図に示すよ うに蓄電池からインバータを経由し無瞬断で負G;非常用発電機臨界モニタ 放射線理機器等図1. 東海再処理施設の電源系統概略を示す。東京電力 (商用電源)154kV特別高圧変電所再処理施設6.6kV開閉所・変電所1号系2号系400V400V動力分電盤(プロセス用)動力分電盤(換気用)換クレーン気 ブ直流電源装置換 気 ブロワ等無停電電源装置ロワ等G;非常用発電機臨界モニタ 放射線理機器等連絡先:西田 恭輔、〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村 公 4-33、東海研究開発センター 核燃料サイクル工学研究所 再処理技術開発センター 施設管理部 施設保全第2課 電話: 029-282-1111、e-mail:kyosuke.nishida@jaea.go.jp-294統を自動選択し給電するシステムとなっている。 らに商用電源が停電した場合に備え、非常用発 機を設置している。負荷の中には、使用済み核 料物質を処理する施設の特質として、放射線管 上重要な臨界モニタ等、給電の中断が許されな ものがあり、これらの機器は無停電電源装置を して給電を行っている。本報告では、重要設備 ある無停電電源装置の機能を維持するために実 している定期的な点検、部品交換、装置更新等 1 構造と原理 図2に無停電電源装置の概要を示す。無停電 源装置は、主に蓄電池、充電器、インバータ ら構成されている。平常時は交流入力電源を 電器にて整流し、直流でインバータへ給電す とともに蓄電池の充電を行っている。インバ タではさらに直流を交流に変換し負荷へ給電 ている。交流入力電源停電時は、図に示すよ に蓄電池からインバータを経由し無瞬断で負 へ給電する。また、無停電電源装置自体が故障した場合は、 サイリスタスイッチによって無瞬断で直送ライ ーーンに切替わるシステムとなっている。これらの システムに加え、保守用バイパスラインを設け ており、装置を停止しての点検の際などに使用 する。さらに再処理施設では、蓄電池の交換、 容量試験を容易にするため仮設蓄電池用ライン を設けている。交流入力トランス電源 (直送用)保守用バイパスライン つ直送ライン停電時--負荷負荷] の負荷」トインバータ交流入力」 電源充電器 (交流→直流)仮く直流→交流)!La負荷]蓄電池仮設蓄電池用ラインサイリスタスィッチ」停電時の給電状況 ブレーカ図2. 無停電電源装置の概要 2.2 電源状況に応じた負荷商用電源が停電した場合、非常用発電機が起 動し、20 秒以内に電圧、周波数を確立して給電 可能状態になる。しかし、非常用発電機の容量 では、全ての負荷に給電することはできないた め、非常用発電機での給電時は、使用できる負 荷に制限を設けている。表1に電源状況に応じ た負荷一覧を示す。負荷の中には給電の中断が許されない安全管 理上重要な臨界モニタ等があり、これらの機器 に無停電電源装置から給電を行っている。表 1. 電源状況に応じた負荷一覧負荷、 負荷区分の考え方給電種別 臨界モニタ、商用電源 給電の中断が許されない安全管 放射線管理機 |非常用発電機電源 理上重要な機器無停電電源 換気設備、冷施設・人の安全管理上重要な機商用電源 却ポンプ等器非常用発電機電源 シャッター、、停止することにより施設、人の ホイストクレ商用電源 安全に支障をきたさない機器3. 無停電電源装置の維持管理13.1 点検・検査再処理施設に設置している無停電電源装置 12 基について再処理事業規則等に基づく検査とし て、毎年1回、国の検査員による切換え作動試 験を受検している。また、自主検査として、年 次検査、月例検査等を実施している。さらに装 置製作メーカの技術者による点検を実施している。これらの検査・点検の内容を表2にまとめた。/月法律に基づく検査・点検1回 /半|事業者による自主的な点検表2. 検査・点検一覧 検査・点検項目 点検・検査の内容頻度 ・切換え作動の機能(商用電源停電及び復電時における 施設定期検査1回 負荷への給電状態と電圧、周波数の確 (再処理事業規則)/年 ・蓄電池の液面、変形、亀裂確認 施設定期自主檢? ・充電器の電圧確認1回 性能検査・インバータの出力電圧、周波数確認 (月例検査)・蓄電池の液面、変形、亀裂確認 ・切換え作動の機能(停電及び復電時に負荷への給電状 施設定期自主檢? 態と電圧、周波数の確認)1回 総合検査・充電機能 (年次検査)(充電電圧の測定) ・計器校正(電圧計、周波数計の校正)・蓄電池の電解液比重及び液温測定 定期自主検査(抜き取り) 6ヶ月検査・単電池電圧測定・外観確認 日常巡視点檢 ・異音確認毎日 (保安規定)・表示灯確認 ・絶縁抵抗測定 ・電解コンデンサ特性測定 ・各種入力電源電圧測定1回 メーカ点検 ・制御電源電圧測定/年 ・保護継電器動作試験・各種波形観測 検査の一例として平成20年度に実施した無停 電電源装置の施設定期自主検査(月例検査)デー タの解析結果を表3に示す。管理値に対し良好 に維持されていることが分かる。 表3.施設定期自主検査データの解析結果平均 | 標準偏差管理値 インバータ出力100.8 | 0.577 ) 100.0±5.0 電圧(V)周波数(Hz)49.9|0.06750.0±1.03.2 部品交換無停電電源装置は、通常連続で運転されてお り、その機能維持のために、定期的な部品交換 が必要である。そのため装置の性能に影響を及 ぼす主要な部品については、耐用年数を考慮し、 交換目安を定め、交換を実施してきた。表4に 日本電機工業会(JEMA)・メーカの交換目安を参 考に作成した主要部品の交換目安を示す。また、 使用している部品のメーカの保有期間について、 2社に問合せたところ、15 年であるとの回答で あった。この期間を過ぎれば基板などは、代替- 295 -品がなくなる場合があることから予備品として 確保しておく必要がある。表4. 主要部品の交換目安一覧交換 部品名主な用途目安 制御基板 インバータ制御用15年 電磁接触器 整流器の運転用15年 補助継電器 整流器の運転制御用15年 タイマ切替等の時間カウント用 15年 警報ヒューズ 警報回路の過電流保護用 「10年 電解コンデンサ | 整流器の運転用10年 蓄電池| 停電時のバックアップ用 | 15年1 「触媒栓発生するガスの還元用 | 5年3.3 部品交換・点検時の処置部品交換・点検のために、無停電電源装置を 停止させる必要がある場合は、保守用バイパス 給電(商用電源)に切替えて実施している。ま た臨界モニタに給電している無停電電源装置 (2 基)については、保守用バイパス給電中に 万一商用電源が停電した場合に備えて、事前に 核物質の移動の禁止処置を行い、臨界が起こら ない状態にした後、作業を実施している。さら に事前に起こりうる事象を想定し、万一異常事 象が発生した場合の手順書を作成し、体制を整 え迅速に対応できるよう処置を講じて作業を 実施している。部品交換・点検時における想定 事象の概要を表5に示す。表5.部品交換・点検時における想定事象負荷管理者の 想定事象 処置 連絡先__ 処置 |・作業手順書 インバータ給 インバータ給「放射線管理 電から自動直 電用遮断器設備故障に伴 送給電への切 をOFFとし、 ・上位者う対応」に従い 替えができず 保守用バイ ・負荷管理者実施する。 装置が停止す パス給電用) ・当直長・全館放送に 遮断器をて各課に周 (負荷停止) ON する。知。保守用バイパ ス給電中に停 電が発生し、 負荷が停止す非常用発電 機が起動 し、正常に 給電された ことを確認 する。・上位者 ・負荷管理者 ・当直長・作業手順書 「放射線管理 設備故障に伴 う対応」に従い 実施する。る。直送ライン負荷負荷4. 保全管理の改善事例 - 4.1 装置の停止・負荷停電事象からの改善今まで述べてきたように装置の維持管理に 努めてきたが、平成20年9月に無停電電源装 置が停止し、負荷が停止する事象が発生した。 以下にその概要を示す。電気設備の点検のため、計画停電を行った 際、インバータの入力電圧を監視している直 流過電圧検出基板が誤動作し、無停電電源装 置が停止する事象が発生した。その際、自動 で直送ラインに切替わったが、停電試験中で あったため直送ラインも停電しており、負荷 が一時的に停電した。停電試験終了後(数秒 後)商用電源が復電し、直送ラインから負荷 に給電した。事象の概要を図4に示す。4直送ラインへ自動切替 1停電作業保守用バイパスライン 交流入力トランス 電源 (直送用) 交流入力 充電器インバータ 電源 (交流→直流) (直流→交流)負荷 2直流過電圧検出La負荷] 蓄電池基板が誤動作 3装置停止5直送ライン停電のため負荷停止 図4. 事象の概要 その後、故障した直流過電圧検出基板を予 備品と交換し、正常に復帰した。故障の原因は、経年変化により、インバー タの直流過電圧検出基板の検出特性が不安定 になり、検出すべき電圧より低い電圧を過電 圧と誤認識し、装置の停止に至ったものであ る。当該基板は 1990 年製であり、設置後約 18年が経過しておりメーカの交換推奨である 15 年以上を経過していた。先に述べたように 主要な基板については、交換を実施してきた が、当該部品は検出基板であったため、装置 の性能に直接影響を及ぼすものではないとい う認識から主要な部品とは位置づけておらず、 交換していなかった。対策として部品に故障が生じた場合に無 停電電源装置が停止に至る部品でかつ入手 に時間を要する基板を重要部品と位置づけ、 各無停電電源装置の重要部品のリスト、その 交換実績、計画を記載した管理台帳を作成し、 確実に交換を実施するようにした。2964.2.2 部品交換・装置更新を考慮した改善4.2.1 交換部品のユニット化部品交換は、装置を停止し、保守用バイパ ス給電状態で実施するため、交換中に商用電 源が停電し、負荷が停止するというリスクが 生じる。そのリスクの軽減のため、冷却ファ ン、制御基板等の定期的な交換が必要な部品 について、部品単体ではなくユニット化しュ ニット単位で交換することとした。このこと により、プラグインの端子接続のみでの交換 が可能となり、短時間での交換作業が可能と なり、さらに誤配線によるトラブル防止とな った。 4.2.2 装置更新を考慮した設計装置更新においては、更新期間中も施設へ の安全への影響を極力損なうことなく更新す る必要がある。そのため既設装置と同等の機 能を有する仮設無停電電源装置を準備し仮設 に切替えた状態で更新を実施する。従来の更 新では、図5に示すように主負荷ブレーカ、 負荷ブレーカが無停電電源装置と同一盤内に あるため、仮設無停電電源装置への切替えの 際に、負荷ケーブルを離線する必要があり、 負荷への給電を一時的に停止せざる得なかっ た。しかし、図6に示すように主負荷ブレー カ、負荷ブレーカを充電器・インバータ盤か ら分離することにより、負荷を停止すること なく装置更新が可能となり、更新時の安全性 を向上させることができた。以下にその作業 手順を示す。 1保守用バイパスラインでの給電状態 とする。 2充電器・インバータ盤を停止する。 3主負荷ブレーカを開放する。 4仮設無停電電源装置を主負荷ブレーカ に接続、投入し、負荷へ仮設無停電電源 装置から給電する。 5充電器・インバータ盤を更新する。交流入力電源 【直送用) 交流入力 電源主負荷ブレーカーの負荷ケーブル離線 保守用バイパスライン。 | 負荷ブレーカ」直送ライン」トランス充電器 (交流→直流)インバータ (直流→交流)負荷蓄電池既設無停電電源装置2負荷ケーブル接続 保守用バイパスラインへ の直送ライン」トランス充電器 (交流→直流)インバータ 直流→交流)蓄電池位設無停電電源装置,図5.従来の装置更新交流入力 「電源」 (直送用)交流入力1保守用バイパスラインによる給電3主負荷ブレーカ開放交流入力 | トランス電源 (直送用)直送ライン交流入力」充流電」インバータ (直流→交流)~器直負荷 LIF負荷]負荷 La負荷]電源蓄電池入出力盤2充電器・インバータ盤停止5充電器・インバータ盤更新假設無停電電源装置接続 負荷ブレーカ投入交流入力」 電源充電器 (交流→直流)インバータ (直流→交流)蓄電池假設無停電電源装置図6.改善後の装置更新5.結言無停電電源装置は、給電の中断が許されない 負荷に給電するための重要な装置であり、当該 装置が故障した場合は、施設への影響及び対外 的な影響も多大なものとなる。そのため、異常 を早期に発見するための点検・検査による日常 管理、設計当初から経年劣化による部品交換、 装置更新を視野に入れた機器構成、配置設計を 行うことが重要である。参考文献1)「低圧機器の更新推奨時期に関する調査報告書 社団法人 日本電機工業会2971“ “?再再処理施設における非常用電源設備(無停電電源装置)の保全管理“ “西田 恭輔,Kyosuke NISHIDA,檜山 久夫,Hisao HIYAMA,柴田 里見,Satomi SHIBATA,岩崎 省悟,Shogo IWASAKI,伊波 慎一,Shinichi INAMI
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