燃料交換と炉内レーザピーニング施工の並行化-定検短縮を実現する炉内保全への取り組み

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カテゴリ: 第6回
1. 緒言
原子力発電所の稼働率向上などの観点から, 査の作業ステップを改善あるいは合理化し,京 に要する期間を短縮することが望まれている[1]沸騰水型原子炉(BWR)における現在の定員 工程を見ると, はじめに燃料の移動や交換に要 2. 燃料交換作業と並行したレーザピーニング施工の実現に向けた課題 - 原子力発電所の稼働率向上などの観点から,定期検 査の作業ステップを改善あるいは合理化し,定期検査燃料の移動や交換作業と並行して炉内構造物に対し に要する期間を短縮することが望まれている[1]。てレーザピーニングを施工する場合,燃料が炉内に装 沸騰水型原子炉(BWR)における現在の定期検査の荷された状態でのピーニング作業となること, および, 工程を見ると, はじめに燃料の移動や交換に要する時燃料交換機が稼動している中での作業となるため狭隘 間があり,原子炉内部に関わる作業はこの作業の完了部での作業となること,から以下の項目について検討 を待って行われている。特に,原子炉内機器の大規模する必要がある。 な保全工事では、より多くの燃料を炉外に取り出す必
* 1) 狭隘部での作業を可能とするために, レーザピ| 要があり,この時間も含めて定検期間が長くなる傾向ーニングシステムを小型化する必要がある。2) 高線量環境雰囲気においてレーザピーニング にある。 したがって,この燃料移動,交換中に炉内機器に対システムの動作が正常に行えることを確認す」 する保全や点検作業が並行して実施できれば,定期検る必要がある。 査期間の大幅な短縮が期待できる。レーザパルス照射により,炉内核計装系にプラ - 東芝では,この期待に応えるべく, レーザを利用しント管理に影響を及ぼすような信号ノイズが た独自の炉内保全技術を,燃料移動,交換中に適用す生じないことを確認する必要がある。 るための検討を行った。ここでは,燃料の移動や交換作業と並行して炉内構 - 3. レーザピーニング装置の小型化 造物に対してレーザピーニングを施工する場合に,炉 内核計装系に与える影響や,高線量雰囲気におけるピレーザを短パルス化し, ピーク出力密度を高めて金 ーニング装置の健全性について確認した結果を紹介す属材料表面に照射すると,材料の表面に高圧のプラズ る。マが発生する(Fig. 1)。この圧力により材料のごく表面がわずかに塑性変形して周囲に伸展しようとするが, 連絡先:安達弘幸,〒235-8523 神奈川県横浜市磯子区 材料内部の未変形部分の拘束により実際には変形でき 新杉田町 8, 株式会社 東芝 磯子エンジニアリングセないため,材料表面に高い圧縮残留応力が形成される ンター 原子力機器設計部 容器・構造設計担当,電 話: 045-770-2165, e-mail:hiroyuki2.adachi@toshiba.co.jp[2][3][4][5]。 したがって,この燃料移動,交換中に炉内機器に対 する保全や点検作業が並行して実施できれば,定期検 査期間の大幅な短縮が期待できる。東芝では,この期待に応えるべく, レーザを利用し - 東芝では,この期待に応えるべく, レーザを利用し た独自の炉内保全技術を,燃料移動,交換中に適用す るための検討を行った。ここでは,燃料の移動や交換作業と並行して炉内構 造物に対してレーザピーニングを施工する場合に,炉 内核計装系に与える影響や,高線量雰囲気におけるピ ーニング装置の健全性について確認した結果を紹介す連絡先:安達弘幸,〒235-8523 神奈川県横浜市磯子区 新杉田町 8, 株式会社 東芝 磯子エンジニアリングセ ンター 原子力機器設計部 容器・構造設計担当,電 話: 045-770-2165, e-mail:hiroyuki2.adachi@toshiba.co.jp 燃料交換作業と並行したレーザピーニン グ施工の実現に向けた課題燃料の移動や交換作業と並行して炉内構造物に対し てレーザピーニングを施工する場合,燃料が炉内に装 荷された状態でのピーニング作業となること, および, 燃料交換機が稼動している中での作業となるため狭隘 部での作業となること,から以下の項目について検討 マが発生する(Fig. 1)。この圧力により材料のごく表 面がわずかに塑性変形して周囲に伸展しようとするが 材料内部の未変形部分の拘束により実際には変形でき ないため,材料表面に高い圧縮残留応力が形成される - 368 -典型的な条件下ではステンレス鋼,ニッケル基合金4) オペレーションフロア上に設置する設備を小型 などの材料によらず深さ1mm程度まで圧縮応力を形 化 でき省スペースと準備時間短縮が図れる。 成できることが確認されている。600 系ニッケル基合 レンズから照射点までの距離が長く取れ,またレン 金に対する応力改善の結果の例を Fig. 2 に示す[6]。 ズが照射ヘッド内で動くことにより焦点調整ができるまた,これまでに,レーザピーニング施工が材料にため,炉内構造物との干渉を回避し易いなど施工時の 対して悪影響を及ぼさないこと,炉内構造物表面に微 裕度が大きく向上する。更に, レーザビーム供給の制典型的な条件下ではステンレス鋼,ニッケル基合金 114) オペレーションフロア上に設置する設備を小型 などの材料によらず深さ1mm程度まで圧縮応力を形化 でき、省スペースと準備時間短縮が図れる。 成できることが確認されている。600 系ニッケル基合 レンズから照射点までの距離が長く取れ,またレン 金に対する応力改善の結果の例を Fig. 2 に示す[6]。 ズが照射ヘッド内で動くことにより焦点調整ができるまた,これまでに,レーザピーニング施工が材料に ため、炉内構造物との干渉を回避し易いなど施工時の 対して悪影響を及ぼさないこと,炉内構造物表面に微 裕度が大きく向上する。更に, レーザビーム供給の制 小なき裂がある部位へ施工しても,き裂を進展させる。 限がなくなったことから,従来は2系統までしかでき ような影響はないことが確認されている。なかった同時施工が,4箇所でも可能となった。BWR 炉底部をターゲットにしたポータブルレーザピーニングシステムの概念図を Fig. 3 に示す。 Pulse laserSLensPlasmaWaterMaterialReactor pressure vesselNikkeysicipartPulse laser>Lens- PlasmaWaterMaterialCompressionFig. 1 Basic process of laser peening200Fox--ay-200-400Residual stress (MPa)-600-800Proossing conditions Spot diameter0.4mm Pulse energy80mJ Pulso number density | 7000/pulse/cm)-1000110001200-1200 10200400 6001 800 Distance from surface(um) CompressionFig. 1 Basic process of laser peening200Laser unit0xPositioningunit--ayOptical guiding tube-200-400CRD housingIrradiationheadResidual stress (MPa)Stub tubeICM housing-800Procssing conditions Spot diameter0.4mm Pulse energy80mJ Pulse number density 7000/pulse/cm)-10001Fig. 3 Portable laser peening system-1200200100012004001901/08/221 800 Distance from surface (Mm)14.炉内核計装系に与えるレーザピーニング Fig. 2 Residual stress depth distribution for Inconel 600.の影響についての確認 *昨今,原子炉内に投入可能な水密構造であることを燃料交換や移動中に,炉内に燃料がある状態でレー 特徴とする小型レーザ発振器を用いたレーザピーニン ザピーニングを施工した際に,発生するノイズが炉内 グシステムが開発された。本レーザピーニングシステ 核計装系に与える影響の有無について確認する必要が ムは以下のような特長を有する。ある。すなわち,レーザピーニングを施工することに (1) 発振器から施工部までの空間伝送方式とするこより,炉内核計装系が検出するノイズの程度が原子炉 とにより焦点裕度を広く取れる。の状態を監視する上で問題にならないレベルであるこ 112) 空間モードが良いため照射距離や照射スポット とが重要である。そこで,東芝の原子炉圧力容器模擬形状の設定に自由度が高い(照射プロセスの改 タンクに実機とほぼ同等な仕様であるレーザピーニン 善が可能)。グ装置,起動領域モニタ検出器およびドライチューブ - 3) 小規模の工事から複数台同時施工による大規模 を設置し,実機と同じ型式であるケーブル, プリアン 工事まで柔軟に対応できる。プおよび起動領域モニタ監視ユニットを用いて,レー昨今,原子炉内に投入可能な水密構造であることを 特徴とする小型レーザ発振器を用いたレーザピーニングシステムが開発された。本レーザピーニングシステ ムは以下のような特長を有する。 1) 発振器から施工部までの空間伝送方式とすることにより焦点裕度を広く取れる。 * 2) 空間モードが良いため照射距離や照射スポット形状の設定に自由度が高い(照射プロセスの改善が可能)。 13) 小規模の工事から複数台同時施工による大規模工事まで柔軟に対応できる。Reactor pressure vesselLaser unitPositioningunitOptical guiding tubeIrradiationheadCRD housingStub tubeICM housingザピーニングを施工した際に,発生するノイズが炉内 核計装系に与える影響の有無について確認する必要が ある。すなわち,レーザピーニングを施工することに より,炉内核計装系が検出するノイズの程度が原子炉 ある。すなわち,レーザピーニングを施工することに より,炉内核計装系が検出するノイズの程度が原子炉 の状態を監視する上で問題にならないレベルであるこ とが重要である。そこで,東芝の原子炉圧力容器模擬 タンクに実機とほぼ同等な仕様であるレーザピーニン グ装置,起動領域モニタ検出器およびドライチューブ を設置し,実機と同じ型式であるケーブル, プリアン プおよび起動領域モニタ監視ユニットを用いて,レー - 369 -ザピーニングの施工が炉内核計装系に与える影響の評 価を行った(Fig. 4)。試験の結果,レーザピーニング を施工しても発生するノイズは極めて小さく,施工し た場合と施工しない場合において検出されるノイズ信 号のレベルに有意な差異は確認されなかった。これに より, レーザピーニングの施工による原子炉の状態監 視機能への影響はないことを確認した。CraneAccess Device control panel Electrical source for Laser Peening systemAccess Electric PeeningスズズズズズズLaser peening systemTop GuideAccess DeviceSRNM sensor +SRNM monitorpreamplifierDry Tube+Core Plate..... penetrationFig. 4 Overview of Mock up facility5. 高線量雰囲気におけるレーザピーニングシステムの健全性炉内に燃料が装荷されているような高線量雰囲気に おいて,ポータブルレーザピーニングシステムを使用 する場合,水中にレーザ発振器が設置されるため,y 線(線量率)が装置に与える影響が懸念される。そこ で,施工中の炉内の状況において,ポータブルレーザ ピーニングシステムの設置を計画している位置のy線 線量率を解析により求めるとともに,その条件下にお けるレーザ発振器の耐放射線性能を試験により評価し た。y線線量率の解析から,ポータブルレーザピーニン グシステムを設置する計画の位置における線量率は 10Gy/h 程度であった。この値に基づき,y線照射施設 において線量率 10Gy/h および 20Gy/h の条件で実機レ ーザ発振器による発振試験を行った結果,想定される 積算線量において, レーザ出力の低下等, y線照射よ るレーザ発振器の性能への影響は現れなかった。6.結言1) ポータブルレーザピーニングシステムの適用により、燃料交換作業時における狭隘部でのレーザピー -ニング施工を実現できる見通しを得た。 2) レーザピーニングの施工による炉内核計装系へのノイズの影響はないことを確認した。 3) 燃料移動や交換中にレーザピーニング装置が受け るy線照射を考慮しても,ポータブルレーザピーニ ングシステムは所定のレーザ発振性能が得られる ことを確認した。 4) 1), 2), 3)より,燃料交換や移動中,炉内に燃料があ る状態においても,炉内構造物に対するレーザピー ニング工法が成立する見通しを得た。参考文献[1] 原子力委員会,平成 21 年版 原子力白書 (平成 21年3月). [2] 山本 哲夫, 他 , 保 全 学 ,38,Vol.3(ISSN1348-7795,2004) [3] Y. Sano et al., Nucl. Instrum. Methods Phys. Res. B 121,432 (1997). [4] 佐野雄二, 他,日本原子力学会誌, 42,567 (2000). [5] 佐野雄二, 他, 溶接技術,平成 17年5月号. [6] 小畑稔 他, 日本材料学会第 53 期学術講演会論文集, 1 51,(2004)370,“ “燃料交換と炉内レーザピーニング施工の並行化 -定検短縮を実現する炉内保全への取り組み“ “安達 弘幸,Hiroyuki ADACHI,山本 智,Satoshi YAMAMOTO,山賀 悟,Satoru YAMAGA,上原 拓也,Takuya UEHARA
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