(4)オンラインメンテナンス時の許容待機除外について

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カテゴリ: 第6回
1. 本報告では我が国における、特に非常用炉心冷却系、安全保護系および電気系など安全上重要な系統のオンラ インメンテナンス(Online Maintenance: 以降、運転中保 全)の取り扱いの現状と今後の課題について述べる。1. 運転中保全と単一故障の仮定- 運転中保全は原子炉運転中に保守を実施するもので、 安全上重要な系統の場合、例えば2系統のうち1系統を 待機除外して保守を実施するものであり、安全設計で考 慮されている単一故障の仮定と関連するので、先ずこの 関係を整理する。原子力の安全設計は、深層防護、多重障壁、単一故障 の仮定の考え方を適用し、炉心に内包する放射能の放出 防止に対して信頼性の高いものとなっている。単一故障の仮定について、我が国の安全設計審査指針 ではいくつかに別れて示されているが、まとめると、非 常用炉心冷却系、安全保護系及び電気系など安全上重要 な系統の設計に当っては機器の単一故障の仮定を加えて もそれらの系の安全機能が損なわれないように設計する こととされている。このことから、安全上重要な系統は多重化・多様化さ れているが、運転中保全中は1系統待機除外されるので、 単一故障の仮定が成立しなくなる。この点に関して、原子力安全委員会が高浜発電所の保 安規定の変更認可に関する規制調査を実施した際の報告 書(平成13年11月 19 日付)に、「当委員会は、運転制 限逸脱時の措置及び措置完了時間を設定したことについては、運転制限を逸脱した状態において、「運転時の異常 な過渡変化」または「事故」が同時に起こることが考え られないような期間を設定すれば、監視を強化し運転を 継続しつつ運転制限を逸脱した場合の回復措置を許容す ることは理解できるものである。」とされている。 - 即ち、非常用炉心冷却系等安全上重要な系統において、 保安規定で示されている AOT の範囲内の待機除外は、単 一故障を仮定する必要はなく、安全に運転が継続できる ことが認められている。
2. 我が国の運転中保全
我が国の運転中保全に関連する規則等を確認する。 安全設計審査指針に関しては前述の通りである。保安 規定に関しては、BWR・PWR とも「予防保全を目的と した保全作業を実施する場合」の条文が定められており、 原則として AOT の範囲内で実施すること、AOT を超え て実施する場合には必要な安全措置を定めた上で主任技 術者の確認を得て実施することなどが決められている。保安規定は事業者が定め、国が「原子炉による災害の 防止上十分でないと認められない」ことを審査した上で 認可するものであるが、国の保安規定審査の内規(実用 発電用原子炉施設保安規定の審査について(内規))に、 「予防保全を目的とした保全作業について、やむを得ず 保全作業を行う場合には、法令に基づく点検及び補修、 事故又は故障の再発防止対策の水平展開として実施する 点検及び補修等に限ることが定められていること。」とさ れており、制限がかけられている。以上より、現状我が国では、運転中保全は限られた範 囲(法令に基づく点検及び補修、事故又は故障の再発防41止対策の水平展開として実施する点検及び補修等) いて許容されている状況である。運転中保全に関しては、今後状態監視保全の増加、そ れに伴う故障の予測精度の向上に伴い、運転中に故障す ることが予測される可能性が高くなることが考えられる。 この場合には、次回のプラント停止を持つよりも早く保 守をした方が安全と考えられる。また、新検査制度導入に伴う保全プログラム/保全計 画に関する情報の蓄積により、機器等の劣化メカニズム を正確に把握できるようになり、点検頻度等の最適化が 図られてくる。この結果、保守を次回計画停止まで待っ ことなく、より適切な時期に保守を行う方が系統・プラ ントの信頼性をより高められることも考えられる。また、長サイクル運転をした場合に計画停止期間によ り多くの保守が集中し、停止時作業の安全性を損なうこ とも考えられ、この解決方法との一環として運転中保全 の実施が考えられる。上記のように、運転中保全の重要性は我が国において も高まってくるものと考えられる。我が国の運転中保全の実施を検討するにあたり、次の 点が課題と考えられる。 ・運転中保全実施時の安全に関する評価をしっかり行う。 ー単一故障の仮定が成立しなくなる:AOT の範囲内であれば、安全上支障がない期間内に通常の状態に復 帰できるものであり、AOT の範囲内での運転中保全 は安全上問題が無いと考えられる。また、現在設定 されている AOTについても、その妥当性について確 率論的安全解析 (PSA:Probabilistic Safety Assessment) 等科学的・合理的手法を活用して評価することも必 要である。 一運転中保全の実施にあたっては、各種の系統につい て実施していくことが考えられる。この場合、運転 サイクル中に AOT 内の待機除外を1回経験するの みでは無く、複数回の待機除外を経験することにな る。複数回の AOT 内の待機除外が安全に与える影響 をしっかり評価する必要がある。評価方法としては PSA を活用して評価することが望ましい。 一運転中保全の安全に関する影響評価は、作業により 受ける放射線被ばく量、安全解析との関連、炉心損 傷頻度の増加の程度等あらゆる方面から行うことが 望ましい。 止対策の水平展開として実施する点検及び補修等)につ ・運転中保全を実施した場合、計画停止時の作業集中・ いて許容されている状況である。作業の幅藤の回避、作業平準化による習熟作業者確保 3. 今後の課題の容易化、地元作業員雇用割合の増加等が考えられる。これら効果についても評価が必要である。 運転中保全に関しては、今後状態監視保全の増加、そ4. まとめ れに伴う故障の予測精度の向上に伴い、運転中に故障す ることが予測される可能性が高くなることが考えられる。 我が国において、現状では運転中保全は限られた範囲 この場合には、次回のプラント停止を持つよりも早く保 で認められているのみであるが、今後運転中保全に関す 守をした方が安全と考えられる。る必要性・重要性は高まってくると予想され、その対象 また、新検査制度導入に伴う保全プログラム/保全計 範囲を広げる検討が必要である。 画に関する情報の蓄積により、機器等の劣化メカニズム その検討にあたっては特に、運転中保全実施による安 を正確に把握できるようになり、点検頻度等の最適化が全面への影響をしっかり評価することが必要である。 図られてくる。この結果、保守を次回計画停止まで待つ 従来の検討からは AOT 内で実施する運転中保全は安全 ことなく、より適切な時期に保守を行う方が系統・プラに影響ないと考えられるが、繰り返しの安全に対する影 ントの信頼性をより高められることも考えられる。響、運転中保全による年間作業量の平坦化の影響等、必 また、長サイクル運転をした場合に計画停止期間によ 要に応じて PSA 等の科学的・合理的手法も活用して評価 . り多くの保守が集中し、停止時作業の安全性を損なうこ して行くことが必要である。 とも考えられ、この解決方法との一環として運転中保全参考文献 の実施が考えられる。上記のように、運転中保全の重要性は我が国において [1] 発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針 も高まってくるものと考えられる。(一部改訂平成 13年3月 29 日原子力安全委員会)[2] 実用発電用原子炉施設保安規定の審査について(内 我が国の運転中保全の実施を検討するにあたり、次の規)(平成20年6月 20 日原子力安全・保安院) 点が課題と考えられる。 ・運転中保全実施時の安全に関する評価をしっかり行う。 ー単一故障の仮定が成立しなくなる:AOT の範囲内であれば、安全上支障がない期間内に通常の状態に復 帰できるものであり、AOT の範囲内での運転中保全 は安全上問題が無いと考えられる。また、現在設定 されている AOT についても、その妥当性について確 率論的安全解析 (PSA:Probabilistic Safety Assessment) 等科学的・合理的手法を活用して評価することも必 要である。 一運転中保全の実施にあたっては、各種の系統につい て実施していくことが考えられる。この場合、運転 サイクル中に AOT 内の待機除外を1回経験するの みでは無く、複数回の待機除外を経験することにな る。複数回の AOT 内の待機除外が安全に与える影響 をしっかり評価する必要がある。評価方法としては PSA を活用して評価することが望ましい。 一運転中保全の安全に関する影響評価は、作業により 受ける放射線被ばく量、安全解析との関連、炉心損 傷頻度の増加の程度等あらゆる方面から行うことが 望ましい。1 - 42 -運転中保全を実施した場合、計画停止時の作業集中・ 作業の輻輳の回避、作業平準化による習熟作業者確保 の容易化、地元作業員雇用割合の増加等が考えられる。 これら効果についても評価が必要である。我が国において、現状では運転中保全は限られた範囲 で認められているのみであるが、今後運転中保全に関す る必要性・重要性は高まってくると予想され、その対象 る必要性・重要性は高まってくると予想され、その対象 範囲を広げる検討が必要である。その検討にあたっては特に、運転中保全実施による安 全面への影響をしっかり評価することが必要である。 1. 従来の検討からは AOT 内で実施する運転中保全は安全 に影響ないと考えられるが、繰り返しの安全に対する影 響、運転中保全による年間作業量の平坦化の影響等、必 要に応じて PSA 等の科学的・合理的手法も活用して評価 して行くことが必要である。 発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針 (一部改訂平成 13年3月 29 日原子力安全委員会) 実用発電用原子炉施設保安規定の審査について(内 規)(平成20年6月20 日原子力安全・保安院)
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