UT分析システムの適用によるUT評価手法の高度化

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カテゴリ: 第6回
1. 緒言
国内原子力プラントにおける供用期間中検査(ISI) では、配管溶接部は JSME 維持規格に基づき、体積検 査として UT を実施している。近年、UT データ評価に おいて、全てのデータを取り込み、複数の検査員、必 要に応じて第三者による分析・判定を可能とする UT 評価手法の高度化が求められている。これらニーズに 対応すべく、当社はデジタル探傷器を用いて UTデー タをデジタル化し、UT 分析システムを開発・適用する ことによって、高精度なデータ評価を可能とした。ま た、本手法は北海道電力殿泊発電所3号機における供 用前検査(PSNに適用済みであり、現地検査工事への適 用を拡大中である。 本紙では、UT 評価手法の高度化の一例として、配管自 動 UT 装置を用いた UT 分析システムの概要・利点に ついて紹介する。
2. 配管自動 UT 装置- 配管自動 UT 装置の全体図を図.1 に示す。配管自動 UT 装置は、手動で実施していた探傷作業を自動化する ことにより、UT データと位置情報を同時に取り込み、 探傷作業を効率化することを目的として開発した装置 である。 2.1 走査ツール部走査ツール部は、周方向走査のガイドとなるレール 部と、探触子の保持・押付・走査を実施するスキャナ で構成される。 2.2 制御盤制御盤に走査範囲、走査ピッチ、走査スピード等の 探傷条件を入力し、スキャナを動作させる。また、制 御盤と対象配管が離れている場合でも、配管近傍でス キャナの位置等を確認しながら微調整が実施できるよ うにペンダント型リモコンを備えている。 2.3 探触子探触子は、適用箇所であるエルボの形状、溶接部近 傍の形状変化部に対して十分な倣い性を確保するため、 局部液浸型の探触子を開発・適用している。 2.4 探傷器 ・ 全ての UT データ(以下、A スコープ波形と記す) 及び位置情報を取り込み、デジタルデータによる経年 比較調査、詳細評価を可能とするデジタル探傷器を適543用している(3.1 項参照)。3. UT データ評価配管自動 UT 装置にて採取されたデジタルデータは ネットワークを介して現地から自社の神戸造船所へ転 送される。このデータに対して自社開発した UT 分析 システムを用いて詳細分析を行い、規格要求を満足す る帳票を出力する。この作業フローについて図.2 に示 す。 3.1 探傷システムのデジタル化 1. 従来適用していた配管自動 UT 探傷システムは、取 り込まれる UT データがアナログ信号であること、大 容量のデータ保存ができない等の理由から、A スコー プ波形をデジタルデータとして取り込むことが不可能 であった。その為、最大エコー高さ及びその位置情報 を保存し、それを元に帳票を出力する方式を採用して おり、下記に示す問題点があった。 1)探傷後のデータ確認は、出力された記録にて実施す る為、現場でのデータ確認が不可能である。探傷デ ータに不備があった場合は、現場に戻り再探傷を実 施するという手戻り作業が発生する。 2) 大容量のデータ保存ができないことから、最大エ コー高さに関する情報のみを保存しており、エコー 挙動(トラベリング)による評価が困難である。 3)出力帳票は最大エコー高さのリスト、反射源位置を 示す断面図、最大エコー高さの分布図等である。こ れは手動 UT と同様、限られた情報での評価であり、 最大エコー高さ周囲のエコー分布状況を踏まえた 詳細評価は難しい。 そこで、配管自動 UT 探傷システムにデジタル探傷器 を用いることで、A スコープ波形をデジタルデータと して取り込むことが可能となり、下記の利点が得られた。1)探傷後、現場にて UT データの良否判定が可能とな った。仮にデータ不良が判明した場合でも、即座に 再探傷を行うことができる。 2)最大エコー高さを示さない位置の A スコープ波形 も全て取り込まれているため、エコー挙動による評 価が可能となった。 3) 複数の検査員でデータを同時に評価することが可 能となり、評価の信頼性・客観性が向上した。また、 現地と神戸造船所で UT データを共有可能である。更に、帳票には A スコープ波形に加え、配管の側面 図となる B スコープ及び D スコープ、上面図とな る C スコープ(以下、3-View 表示と記す)を色調 図として表現することが可能であり、過去の検査に て蓄積された 3-View 表示を比較することで、より 詳細な評価が可能となった。 探傷システムをデジタル化することによって、現場で の作業効率が向上し、大容量のデジタルデータを用い たエコーの詳細評価、デジタルデータの共有化が可能 となった。 3.2 UT 分析システム当社は、デジタルデータで得られる A スコープ波形 及び位置情報を活かし、高精度・迅速な分析が可能と なる UT 分析システムを開発した。 UT 分析システムの 分析画面を図.3 に、UT 分析システムを用いた分析フロ ーチャートを図.4に示す。また、UT 分析システムの特 徴を下記に示す。 * 1)記録レベルを超えるエコーを自動抽出し、そのエコーの位置、エコー高さ、指示長さを自動的に算出す ることが可能である。 2)配管形状、溶接開先等の実機形状が反映された 3D モデルを用いた分析機能を搭載している。3D モデ ルは、図面寸法及び垂直 UT による板厚計測結果を 反映し、作成している。この 3D モデルに自動 UT 装置が出力する位置情報及び探傷器が出力するエ コーの路程情報を反映させることによって、反射源 位置の特定が容易となり、エコー挙動による評価と あわせた高精度な評価が可能である。 3)抽出された記録レベルを超えるエコーのリスト を自動出力することが可能である。また、リストア ップされたエコーについて、3-view 表示及び反射源 位置を示す断面図を自動出力することが可能である。 UT 分析システムの適用により、3D モデルを用いた高 精度な評価が可能となった。また、本システムの適用 によってデータリスト、3-view 表示及び断面図の自動 出力が可能となり、迅速な帳票作成を可能とした。ま た、帳票の自動出力機能はヒューマンエラーによる記 入ミスの防止にも有効である。4.出力帳票UT 分析システムを用いて出力される帳票例を544 -図.5-1~4 に示す。帳票は下記によって構成される。検討し、UT 評価の高度化を図り、プラントの信頼性向 上に努めていきたい。参考文献1 インディケーションデータリスト記録レベルを超える全てのエコーに対して、ピ ークインディケーションの位置、ビーム路程、ピ ークエコー高さ、指示長さについてリスト化した帳票。 2 解析図ピークインディケーションの位置及び路程情報[1]井原、井、西田、川田、川瀬:日本保全学会第5回 学術講演会 要旨集 ,2008,pp297-300. [2] R. Thara ““7th international conference on NDE in relationto structural integrity for nuclear and pressurized components”, 2009インディケーションデータリスト - 記録レベルを超える全てのエコーに対して、ピ ークインディケーションの位置、ビーム路程、ピ ークエコー高さ、指示長さについてリスト化した帳票。解析図 ・ピークインディケーションの位置及び路程情報 と 3D モデルを組み合わせた解析、及びエコー挙 動による解析にて反射源の評価を実施後に、3D モ デルを二次元の配管断面図に変換して反射源位置 を示した帳票。 3-view 表示(C スコープ及び ABCD スコープ) ピークインディケーションを示した指示に対しを示した帳票。 3 3-view 表示(C スコープ及び ABCD スコープ)ピークインディケーションを示した指示に対し て、3-view を示した帳票。本システムの帳票は全 ての位置情報と波形情報を用いた色調図となって おり、視覚的に理解し易いものとなっている。5.結言当社は高精度かつ迅速な評価を可能とした UT 分析 システムを開発し、下記の結言を得た。今後は、UT デ ータ信号処理機能の充実等の改良を行い、更に高機能 なシステムを構築していきたい。 1)探傷システムをデジタル化し、Aスコープ波形をデ ジタルデータとして取り込むことによって、現場で の作業効率が向上し、データの詳細評価も可能とな った。 2)記録レベルを超えるエコーの自動抽出機能、実機形 状が反映された 3D モデルを用いた評価、帳票の自 動作成機能等を搭載した UT 分析システムを適用し、 UT 評価手法の高度化を実現した。6. 実機プラントへの適用状況UT 分析システムは北海道電力殿泊発電所 3 号機に おける供用前検査(PSNに適用済みである。PSI におい ては 200 箇所以上の溶接線に対して探傷を実施し、従 来では実現できなかった自動抽出機能、3Dモデル機能 等を用いた高精度な分析を行った。これにより、今後 の供用期間中検査(ISI)にて比較を行うための詳細な 基礎データの取得・保存することができた。今後は供 用期間中検査(ISI) への UT 分析システム適用拡大を参考文献[1]井原、井、西田、川田、川瀬:日本保全学会第5回学術講演会 要旨集 ,2008,pp297-300. [2] R. Thara ““7th international conference on NDE in relationto structural integrity for nuclear and pressurized components”, 2009- 545 -制御盤PCスキャナUT 探傷器レール操作用リモコンFig.1General View of Automated UT Equipment for Piping現地事務所当社(神戸)LANHea 探傷データ 4 LAN・郵送データ確認・出力用PCIT分析システム発電所内配管自動UT装置(ツール・制御盤)LA」 探傷データUT探傷器探傷用PCLANデータ確認・出力用PC探傷データ 14 LAN・郵送UT分析システム帳票 データファイル探傷データ及び帳票|帳票完成帳票(紙ベース)バックアップサーババックアップサーバFig.2Flow for Data Acquisition and Analysis546、リーカットiparamAスコープ (波形表示)Bスコープ (断面表示)Cスコープ (マップ表示)Channel 1 Default Focal Law16 161-999 | A 220 deg | c 19 mm 18.4 mm30Channel 1 Default Focal LawB 220 deg10 mm W 17.6 mmCスコープ3D モデル図02202100SampleIN X:220.00 Y:17.55 IND X:220.00 Y:5.71 D:12.24 e Size 217.0 Head 48.7Pitch9.3Bank 2222SIDE0Channel 1 Default Focal LawDO degR 220 degLChannel 1 Default Focal Law| B 220 deg | C 18 mm17.5 mm17.55Bスコープ150Aスコープ20. 0W401006080od20RAFig.3Analysis Screen547探傷探傷データ転送UT分析システムパラメータ設定1K」・探傷条件設定 ・実機形状を 3Dモデルに反映------------------指示エコー自動抽出--------詳細評価・エコー挙動調査 ・3Dモデルを考慮したエコー反射源の位置確認 ・複数の検査員による総合評価帳票出力・インディケーションデータリスト ・解析図(3Dモデルを配管断面図に変換) ・3-View表示Fig.4Flow Chart for UT Analysis System- 548 -*** 配管自動UT解析システム インディケーションデータリスト ***PAGE:1/1Sample* --- 代表例解析図参照220(9DAC) 指示範囲(度)100(DAC) 指示範囲(度) |指示指示 長さ長さ備考リスト No.始点/終点51236ピークインディケーションビーム | エコー 探触子位置路程高さH X(度) | Y(mm) | W(mm) | (DAC) 0.0119.244 68.016.450 92.014.1 301 128.020.5 32 148.017.9 208.018.7* 276.015.3321 276.021.21 52 324.021.9 348.018.0 * 56.033.9| * 172.034.270 228.034.268 296.035.7 340.0136.742164始点/終点0.0/ 36.0 44.0/ 100.0 84.0/ 92.0 112.0/132.0 144.0/ 152.0 156.0/328.0 256.0/ 288.0 156.0/328.01 156.0/328.0 340.0/356.00.0/356.0 0.0/ 356.0 0.0/ 356.0 0.0/356.0 0.0/ 356.036.0 55.98.0 20.08.0 171.632.0 171.6 171.616.0 355.1 355.1 355.1 355.1 355.1裏波部(0.5s) 柱状晶伝搬エコー 柱状晶伝搬エコー 裏波部(0.5s) 裏波部(0.5s) 裏波部(0.5s) 柱状晶伝搬エコー 裏波部(0.5s) 裏波部(0.5s) 柱状晶伝搬エコー 外表面部 外表面部 外表面部 外表面部 外表面部5913 14 1555・記録レベルを超えるピークインディケーションを自動抽出 ・各ビークインディケーションに対しバラメータ値を自動計算Fig.5-1 Inspection Record - Indication Data List*** 配管自動UT解析システム インディケーション解析図 ***Sample探触子位置エコー高さリストNo.XY(mm)ビーム路程 W(mm)18.7(deg)208(DAC)探触子位置リストNo.X(deg) TY (mm)208ビーム路程 W (mm)18.71900/01/051900/01/13・解析に用いた 3Dモデルを 二次元の断面図に変換Fig.5-2Inspection Record -- Analysis Diagram- 549 -裏波部(0.5s)配管自動「採得記録Sample100Channel 1 Default Focal Law129-758円 R0.0 deg JC-16.0 mm) W -0.0 mm000cSんが、200100ロ(1Inspection Record ? 3-view Display (C-Scope)Fig.5-3 Inspection Record ? 33配管自動で採停記録Sample|cChannel 1 Default Focal LawF129-354da 2016.0 degC140 man 18.7 me || ENDChannel 1 Default Focal LawD 2.0R 208.0 deg C 14.0 mm18.7 min|0-0 |118.0 -2.0143002002015400200SIDE0-0Channel 1 Default Focal Law| 0 00deg] 2000 degC140 mmn 18.7 man || A | 10 |Chamel 1 Default Focal Law| A 203.0degC140mm 18.7 mm1060.01のおっさんローン0E20040.0ONE KamimiramersareemakinnecorePanaReneraRealOX1Fig.5-4Inspection Record ? 3-view Display (A,B,C,D-Scope)550“ “?UT分析システムの適用によるUT評価手法の高度化“ “井原 亮一,Ryoichi IHARA,井 裕一,西田 純一朗,Jun-ichiro NISHIDA,Kayoko KAWATA
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