改良型PWR初号機設計への保全の知見・経験の反映

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カテゴリ: 第7回
1. 敦賀発電所3,4号機増設計画
敦賀発電所 3,4 号機は,産官学共同で行った第3 次軽水炉改良標準化計画の下で安全性,信頼性,稼 働率等の向上を目指して開発された成果を取り入れ, さらにそれ以降の国内外の運転・保守経験や最新技 術知見を反映した改良型加圧水型軽水炉(改良型P WR)の初号機である。電気出力はそれぞれ 153.8 万kW で国内最大級の発電所である。 -現在 (2010年7月), 国の安全審査を受けており, 今後,プラントの詳細設計の段階に入っていくとこ ろである。敦賀発電所 3,4号機の主要仕様を Table1-1 に示す。 開発の経緯や設計の特徴等については,既に他で紹 介されているためここでは参考文献(1] [2] [3] [4]を紹介 することのみとし,本稿では,敦賀発電所 3,4 号機 設計段階における将来の保全のための取組み状況を 紹介する。
2. プラント設計段階における将来の保全 への配慮 2.1 トラブル経験の反映 - 国内外の原子力発電所で発生したトラブルの経験 については,機器・設備の詳細設計前の基本設計段 階から必要に応じ適切に反映していくことが,トラ ブルの発生防止の観点から重要である。 - 敦賀発電所 3,4 号機の基本設計段階(~2004 年設 置変更許可申請)において,国内プラントで発生し たトラブルとしては当時の資源エネルギー庁「トラ
-139Table 1.1.1 Main Specifications of Tsuruga Unit 3&4Tsuruga-3&41,538MW4,466MW 17×17 / 257121t 17.6kW/m3.7m 3.9m 69Ohi-3&4 1,180MW3,423MW 17×17 / 19389t 17.9kW/m3.7m3.4m53Electric Power Output Reactor Thermal Power Output Core Fuel Type NumberUranium Loading Linear Power Density Active Core Length Effective Core DiameterNumber of RCC Number of Loop RCS Operation Pressure Coolant Temp. Tcold/ThotID/IH Design FlowMotor Power SGHeat Transfer Area MS Pressure/Temp.Steam Generation Steam Turbine OutputLP Final Blade Length Generator CapacityRVRCP15.4MPasgage] 289°C/325°C5.2m/13m 25,800m/h/loop 6,000kW/RCP6,500m2/sG 6.03MPa[gage]/277°C 2,200t/h/SG1,538MW 1,375mm(54) Approx.1,700,000kVA15.4MPa[gage] 289°C/325°C4.4m/13m 20,100m2/h/loop 4,500kW/RCP4,870m2/SG 6.03MPa gage]/277°C 1,700t/h/SG1,180MW 1,118mm(44““) 1,310,000kVAブル等情報データベース」等を用いて約 1,900 件, また,海外プラントで発生したトラブルについては 米国 NRC 指示文書(Generic Letter)の他、各種デー タベースを用いて約 3,400 件を調査し,そのうち設 計段階で反映すべき事例約 330 件(類似のトラブル を含む)を抽出し,設計の各段階で反映してきてい る。さらにその後の詳細設計に向けての社内設計レビ ニュー会においては,日本原子力技術協会の原子力施設情報公開ライブラリー(NUCIA : NUClear Information Archives)等のより充実したデータベー スを用いて,基本設計段階で確認したトラブルも含 め,改めて対応に抜けがないことを確認することと している。 - 過去のトラブル対策を反映した主なものは以下の 通りである。 a. 蒸気発生器伝熱管の損傷蒸気発生器(SG : Steam Generator)伝熱管につ いてはこれまで応力腐食割れ(SCC : StressCorrosion Cracking)や最上段管支持板部での流力 弾性振動による高サイクル疲労割れ等の事例が 認められている。敦賀発電所 3,4 号機の SG にお いては,これまでの予防保全の知見は基本的に全 て反映している。SCC 対策としては、伝熱管材料に耐食性に優れ たインコネル TT690 合金製を採用し,管板への取 付けには管板部のクレビスを極力小さくし,残留 応力をより低減できる管板全厚液圧拡管+1ス テップローラ拡管を採用することとした。また, 小曲げU字管については曲げ加工に伴う残留応力 を低減させるため,曲げ加工後の応力除去焼鈍を 実施する計画である。流力弾性振動に対しては,最外周伝熱管の支持 点数を6点から9点に増加させ,SG 中央部の最 小曲げ半径の伝熱管を含む全ての伝熱管を支持 できるようにした伝熱管振止め金具(AVB: Anti-Vibration Bar)を開発し, 伝熱管の流動振動 を確実に抑制できるようにした。AVB の先行プラ ントとの比較を Fig.2.1.1 に示す。Current 4 LoopAPWR* V““ type x3 (6 points support)5 sets of 4V+ shaped AVB (9 points support)Certer AVBRetaining barsRetaining bars・・AVBBridge AVBかないL! Tute2. TubeTop tube support plateTop lube support plateFig.2.1.1 Improvement of SG anti-vibration barsb. 炉内構造物バッフルフォーマ・ボルト損傷1980年代末海外プラントにおいて, バッフルフ ォーマ・ボルトに照射誘起型応力腐食割れ (IASCC:Irradiation Assisted SCC)が認められた。敦賀発電所 3,4 号機では,従来炉のバッフル構 造に代えて、中性子反射体を採用する計画である。 バッフルは約 2,000 本のボルトで接合された構造 であるが,中性子反射体はステンレス製リングブ ロックを8段積み重ねた簡素な構造であり,構成 するボルト類の総数は約 50 本で,かつ,これら のボルト類は炉心領域に存在しない。その結果, 当該損傷の発生の可能性は排除された設計とな っている。炉内構造物について先行プラントとの 比較を Fig.2.1.2 に示す。 c. 原子炉容器上蓋管台部の損傷国内外の原子炉容器(RV : Reactor Vessel)上蓋 管台部の 600 系インコネル溶接部において,1次(PWSCC : PrimaryAPWR Neutron Reflector冷却水中の環境における SCC(PWSCC : PrimaryCurrent 4 Loop PWRCore BafileAPWR Neutron ReflectorReactor VesselBoltsFig.2.1.2 Improvement of Core StructureWater SCC) 事例が多数報告されている。一般的 に SCC は材料, 応力, 環境の3つの条件の重畳に より発生するとされているが,敦賀発電所 3,4 号 機では,以下のように,材料,応力,環境の全て の面で予防措置を図る計画である。材料には PWSCC 感受性の低いインコネル 690 系を使用し,また,表面残留応力の低減を図るた め製造時に溶接部にピーニング等を実施する。環 境面からの対策としては,PWSCC の発生・進展 が温度依存性を有していることから, RV 上蓋管 台部の温度が RV 入口側1次冷却材温度(T-Cold) と同程度になるように,1次冷却材入口から RV 蓋部へ向かう1次冷却材の流量を設定し,可能な 限り上蓋管台部の温度を下げる計画である。敦賀発電所 3,4 号機の RV 上蓋管台の PWSCC に対する対策の概要を Fig.2.1.3 に示す。Material : Inconel6902Residual Stress:Improvement by peening3 Temperature inside vessel head:Designed equal to inlet coolant temperature. (T-cold)Fig.2.1.3 Countermeasures for PWSCC at Penetration of Reactor Vessel Headd. 燃料集合体のバッフルジェットによる損傷国内プラントにおいて,バッフル板間隙をバッ フル外側から炉心内側に向かう横流れ(噴流)が 当たる位置の燃料集合体に損傷が認められた。原 因は,噴流により燃料棒に異常な振動が発生し摩 耗したものと推定される。敦賀発電所 3,4 号機では,バッフル構造に代わ り中性子反射体を採用するが,中性子反射体リン140,グブロックを積み重ねた構造であるため間隙が 存在する。中性子反射体には、運転中の中性子照射による ガンマ発熱を除去する目的で,中性子反射体下部 から上部に向けて1次冷却材を流す流路が設け られている。流路入口に設けたオリフィスにより 流路内部の圧力が低減されるため,同一高さでは 常に流路内部の圧力が炉心内の圧力より低くな る。これにより,リングブロック間隙に生じる流 れは炉心内側から外側に向かうこととなり,燃料 集合体に噴流が当たることが避けられる設計と している。敦賀発電所 3,4 号機のバッフルジェットに対す る対策の概要を Fig.2.1.4 に示す。Upper Core PlateNeutron Reflector Cooling Flow PathNeutron ReflectorNo.7gapNo.6gapCoolant pressure in the neutron reflector cooling path is designed lower than that of core region at the same elevation.(P2>P1)Fuel AssemblyNo.5gapNo 4gapNo.3gapNo.2gapBypass flow between ring blocks is always from core to neutron reflector.No igap*OrificeNo Baffle Jet ProblemCore Flow Reflector Cooling FloveLower Core PlateFig.2.1.4 Improvement against Baffle Jet Problemf. 配管の高サイクル疲労による損傷配管の高サイクル疲労対応については,これま でのトラブル経験を踏まえ,日本機械学会で評価 指針類が策定されている。温度計ウェルやサンプリングノズル等の配管 内円柱状構造物の疲労損傷については「配管内円 柱状構造物の流力振動評価指針」,高温水と低温 水が合流する部位やキャビティフロー型熱疲労 が懸念される部位については「配管の高サイクル 疲労に関する評価指針」に基づき,今後の詳細設 計段階にて検討を行う予定である。また,これまで小口径配管の疲労損傷について もしばしば経験している。これは主に小口径配管 のソケット溶接部(すみ肉溶接部)に発生してお り,不完全な溶接による応力集中部の形成と配管 の振動が重畳したことが原因である。敦賀発電所 3,4 号機の1次系主要系統の小口径管は,突合せ 溶接構造として疲労強度を向上させた設計とす ると同時に,ポンプ等の振動成分の伝播に対して 十分に配慮したサポート設計を実施する計画で ある。なお,2次系の小口径管では,一部ソケッ ト溶接を適用する可能性もあるため,信頼性の高い溶接施工を可能とする技術開発も並行して実 施している。 g. 流れによる配管等の減肉事象流れによる配管等の内面の減肉事象は,国内外 のプラントで発生している。敦賀発電所 3,4 号機 では,実機プラントの減肉データを収集,分析し た結果を踏まえ策定された日本機械学会「加圧水 型原子力発電所配管減肉管理に関する技術規格」 に基づき,適切な減肉管理を行う計画であるが, 設計段階においても,これまでの知見や運転経験 を踏まえ,機器や配管の配置,配管内流速等を考 慮し,適切な材料を選定する等の取り組みをして いる。特に,温度条件等,減肉のポテンシャルの 高い環境となっている主給水管については,低合 金鋼を全面的に採用する計画である。2.2 既設発電所の運転・保守経験の反映 - 当社は,1966 年に国内初の商業用原子力発電所(東海発電所:GCR)の営業運転を開始した後,国 内初の軽水炉(敦賀発電所 1 号機:BWR),国内初 の 110 万kW 級原子力発電所(東海第二発電所: BWR), そして初の国産改良標準型原子力発電所 (敦 賀発電所2号機:PWR)の建設・運転・保守を行っ てきた。これらの建設・運転・保守等で蓄えられた経験に ついては,これまでも適宜新規発電所の設計に反映 してきたが, 敦賀発電所3,4号機の設計においては, 当社の経験に加え,さらに他社の原子力部門や火力 部門,運転保守管理の助勢を実施している協力会社 等にも協力を仰ぎ,その結果,運転関係約 320 件, 保守関係約 1,400 件の情報を収集し、データベース 化(情報共有化)を行った。データベースの一例を Fig.2.2.1 に示す。作成日中分類タイトルUDOSフランスにおいて作りに最も われている多程下の作賞受不出度)作索を使いすい街は流電流れていにとって作落しですい職場に改番すたw 本であり、室内は外気ままCでs 0°Cとする設計としており、夏場になる。といい。ブラントにおいて作員に最もほM(CV)する、プラントな作業の手の一つと hanin/1311を使った言いかけいにスタービンの右後方をすして、次済ではSG:ブローダウンのCVUCVはかなり暑くなる。C! IVの換気ユニットはある。200910われている商品多品の性・ 1音下作業等を併力なくし、保守作業12089872Fig.2.2.1 Database Sample of JAPC requirement forTsuruga Unit 3&4基本設計段階においては,これらの情報から検討 すべき事項として約 390 件を抽出し,設備の配置設 計や機器設計そのものへ反映してきている。これらの情報は,いわばプラントユーザーとして の要求事項を集約したものであり,今後の詳細設計 に向け,再度このデータベースを社内関係者でレビ141ニューし,必要な要求事項をプラント購入仕様書等に 反映することとしている。運転・保守経験のプラン ト設計への反映手順の概要を Fig.2.2.2 に示す。情報の収集東海 | 敦賀15 | 東海第二員23 (GCR) 1 (BWR) 1 (BWR) (PWR)的か 京子カフラント?力会運転・保守的電力 火カフラントデータベース構築人・関係者関覧可能(情報共有化) | ・適宜追加入力・更新可能データベースの活用攻員3.4号機への反映要否険記鳥入仕様書への取り込み員3,4号設計への反映戦3,4号室用への反Fig.2.2.2 Reflection Procedure of Operation and Maintenance Experience to Tsuruga Unit 3&4敦賀発電所 3,4 号機の設計においては,このよう な“ユーザーズ・エンジニアリング”を推進し,将 来にわたり,使いやすいプラントの実現を目指して いる。いくつかの例について紹介する a. 資機材等物品の運搬を考慮した配置発電所では,足場材等の資機材,配管等の部品 等,多くの物品を運搬する必要がある。多くの場 合,台車を用いて水平移動,クレーン・ホイスト を用いて上下移動を行っている。しかし,通路が狭い,床に配管や電線管が敷設 されている等の理由でその都度台車から物品を 降ろし,手で運搬せざるを得なかったり,エレベ ータが無い,クレーン・ホイストの数が少ない等 の理由で階段を使って人が運搬せざるを得なか ったりするケースが多く見られる。いずれも,作 業員に負担を掛けるだけでなく,安全上も好まし いものではない。また,物品を計器等に接触させ る等品質管理上の問題も発生している。敦賀発電所 3, 4 号機では,建屋間の床レベルは できる限り合わせ,物品類は基本的に台車による 運搬が可能なように計画している。現在詳細配置 図の検討を実施しているところであるが,十分な 通路幅を確保し,床面には配管等干渉物を設置し ないようにしている。今後3次元 CAD により運 搬性の確認を行う予定である。 定検中運搬頻度が多いものの一つに足場材が あるが,長尺のため既設プラントではエレベータ に載せることができないことが多い。このため敦 賀発電所 3,4 号機では 4m の長尺足場も運搬でき る大型エレベータを配置する計画としている。ま た,原子炉格納容器内にもエレベータを設置し, 資機材の運搬性の向上等を図る計画である。 b. 検査要求の少ない機器設計1次冷却設備等クラス1機器の供用期間中検 査(ISI: In-Service Inspection)は,通常,高線量下での作業となるため,社内保守関係者,協力会 社の両者から主に被ばく低減のニーズが出てい る。そのため,敦賀発電所 3,4 号機では,溶接線数 をできるだけ低減できるような設計を志向し,検 査要求を低減する取り組みを行っている。これら の取り組みは,被ばく低減だけでなく,機器の信 頼性向上にも寄与するものである。例えば,加圧器には,下鏡部にサージ管台(1 箇所),上鏡部に安全弁管台(4箇所),逃がし弁 管台(1箇所),スプレイ管台(1箇所), マンホ ール(1箇所)が設置され,これらは溶接で鏡に 取りつけられていた。敦賀発電所 3,4 号機では, これらの管台等は、全て鏡部と一体で鍛造化する ことにより溶接線自体を削除する計画である。敦 賀発電所 3,4 号機と既設炉の加圧器の比較を Fig.2.2.3 に示す。Conventional PWRTsuruga Unit 3&4Safe-andNozzieSafe-endUpper HeadUpper HeadweldDetail of AManhole nozzleUpper HeadDetall of Upper HeadShellDetall ofweld10.ShellShellLower Headower HeadSkirtABuild-up weldDetall ofFig.2.2.3 Configuration of Pressurizerまた,1次冷却材管にも多くの管台が設置され るが,このうち ISI として超音波探傷試験が要求 される呼び径4B以上の管台についても,加圧器 鏡部と同様に1次冷却材管と一体で鍛造化する計画である。 c. 電源盤の保守性・安全性向上敦賀発電所 3,4 号機では,電源盤の点検時に, 点検中も運転が要求される負荷が停電しないよ う電源の二重化を図ることとしている。電源二重 化対応としては、電源盤遮断器二次側を接続する 方式が最も経済的であるが、電源盤の点検停止時 に充電部が残り,感電事故を起こすおそれがある。敦賀発電所 3,4 号機では電源盤近傍に電源切り 替えを目的とした逆圧対策盤(点検する電源盤と 負荷との間に直列に断路器を設け,電源盤に負荷 側からの逆圧が加わらないようにする装置)を設 置して、経済的な影響を最小限にしつつ、保守性 を向上させる設計としている。 d. ジャンパー・リフト作業の信頼性向上発電所の各種試験条件の確立や保守作業の際 の盤内配線のジャンパーやリフト作業において、 クリップ留めのジャンパー線が外れたり、配線リ1900/05/21- フト時に端子が落下したりすることがある。このため、敦賀発電所 3,4 号機では、端子が抜 け落ちない端子台(ジャンパー・リフト端子台) を積極的に採用して、盤内配線のジャンパーやリ フト作業の信頼性向上や制御盤の保守性向上を 図ることとしている。2.3 高経年化技術評価等の知見の反映 - 高経年化技術評価等で得られた知見については, 基本的に敦賀発電所 3,4 号機の設計に取り込まれて いる。PWR プラントの高経年化対策上着目すべき経 年劣化事象及び通常保全で管理すべき経年劣化事象 の中から一次系設備に考慮すべき主な経年劣化事象 に対する設計上の配慮について,特筆すべき点は以 下のとおりである。 a. 原子炉容器胴部の照射脆化敦賀発電所 3,4 号機では,中性子反射体の採用 により, RV 内表面から肉厚の 1/4 の位置における 中性子量は従来炉の 1/3 程度に低減されるため, 照射脆化に対して大きな余裕を有している。また RV の設計では,胴部の炉心領域に溶接線を作ら ない構造とするとともに,材料化学成分(主に Cu,Ni,P) を従来プラントと同程度以上に厳しく要 求することとしている。 b. 高ニッケル基合金の応力腐食割れ高ニッケル基合金は,低合金鋼製である1次系 主要機器(RV,SG,加圧器)管台とステンレス 製セーフェンドの異材溶接部等に使用されてい る。敦賀発電所 3,4 号機では,インコネル 690 系 の材料を使用し,また,残留応力低減のため製作 時にピーニング等の対策を実施する計画である。(2.1 c. 参照) c. ステンレス鋼の応力腐食割れ一般的に PWR の 1 次系水質条件下においてス テンレス鋼は SCC の感受性を示さないが,特殊な 条件下では SCC 発生事例が報告されており,以下 の通り対応する計画である。通常運転中に使用されず閉塞滞留部となり溶 存酸素濃度が高くなる可能があり,かつ,1次冷 却材の流れの影響等で高温となる部位について は,SCC が懸念される。そのため,既設炉での対 策と同様に SUS304 系ではなく, SUS316系の材料 を使用する計画である。 ・ また,建設時等に使用したビニールテープに含 まれていた塩素に起因した SCC については, 塩素 の含まれていないビニールテープ等を使用する ことはもちろんのこと,建設時の塩分管理を十分 に実施する。 d. 炉内構造物の照射誘起型応力腐食割れ敦賀発電所 3,4 号機では、中性子反射体を採用 することで, IASCC のポテンシャルは十分低減されている。(2.1 b. 参照) e. 低サイクル疲労各機器の疲労については,設計寿命 60 年を前 提に今後,詳細評価を実施する計画である。なお, 先行プラントと同様に原子炉容器のスタッドボ ルト等は 60 年を想定すると厳しいものと思われ るが,これらは容易に取替え可能である。また,環境疲労については、プラント運転開始 後,実過渡を管理し,既設プラントと同様に適切 な対応を図っていく計画である。- なお,これまでの高経年技術評価では、建設時点 でのデータが不足していたため,長期間運転を行っ た時点での技術的な評価において,過度に保守的な 仮定を想定して評価せざるを得ない場合があった。 そのため,敦賀発電所 3,4 号機では,敦賀発電所 1 号機や東海第二発電所の高経年技術評価での経験を 踏まえて,極力初期データを採取できるよう,これ から各メーカ等に発注する仕様書に必要な項目を記 載していく計画である。2.4 今後の保全プログラム導入へ抜けた準備 - 平成21年1月から施行された改正電気事業法施行 規則により,保安規程に保全計画書を定めることが 必要となった。既設の発電所では,各設備各部位の 構造,材料等を整理し,それぞれについて想定され る劣化メカニズムを抽出し,保全タスクを決定して いくことになっている。さらに,それらの保全タス クに基づき実施した保全の結果(検査結果等)をき ちんと記録することとしている。 - 敦賀発電所 3,4 号機では,将来の保全に備え,建 設段階より設計データの整理,保全プログラムシス テムへの入力等を推進すべく,具体的,効率的な方 法を,メーカ等の協力会社と検討している。 - 配管等の初期肉厚や摺動部の間隙など各種寸法記 録や,据付時点の状況写真(表面の荒れ,光沢,腐 食状況等)等を,単なる「建設記録」としてとらえ るのではなく、将来の保全データの「初期データ」 として活用できるよう,既設発電所管理部門と協調 して準備を進めている。2.5 将来の運転保守要員への設計・建設経験の 伝承敦賀発電所 3,4 号機の次のプロジェクトについて は,現時点では全くの白紙の状態であるが,将来に わたり,社員の幅広い世代で建設を経験し,次の世 代に伝承していくことが重要であると考えている。また、建設プロジェクトの経験は、将来の運転・ 保守要員にとって貴重なものであることは疑いの余 地はなく,敦賀発電所 3,4 号機プロジェクトの機会 をできるだけ多くの者に与えていくことを志向して いる。当社の機械・電気技術者のうち, 建設部門(設計, 工事)及び保守部門に携わっている社員は,2009年 度末で本店,東海,敦賀の3事業所合計で約 200 名143,であるが,今後プロジェクトの進捗に伴い,新規・ 中途採用等により徐々に社員数を増やしていき,営 業運転開始後は約 240~250 名規模になると見込ん でいる。 - これら新規・中途採用者は建設部門のみに補充し ていくのではなく,保守部門の各世代からも適切に 異動させていくことで,若手社員から管理職まで幅 広く多くの社員に建設プロジェクトを経験させ,営 業運転開始時に円滑に建設体制から保守体制に移行 できるように配慮していく必要がある。そのため,建設中は,発電所の保守業務に支障を 与えず,また,社員の人材育成を考慮し,さらに, 営業運転開始後の保守体制も想定したリソースの有 効活用を,社内人事部門はもちろんのこと本店保守 管理部門とも協力して進めている。一方,運転部門については,運転員が所定の期間 訓練を受ける必要があるため,一層早い時期からの 綿密な要員計画が求められている。敦賀発電所 3,4 号機の運転員も基本的には新規採用者と運転部門か らの異動により確保することとしている。しかし、当社の場合,敦賀発電所 3,4 号機と同じ 炉型(PWR)のプラントは敦賀発電所2号機の1基 のみであり,敦賀発電所1号機及び東海第二発電所 は炉型の異なる BWR である。一般的に BWR の運 転員を PWR の運転員に転向させる場合は, PWR の 運転員から転向させるよりも育成に時間を要する。 また,現在,既設の発電所の運転員を一度に敦賀発 電所3,4号機の運転員として教育, 訓練することは、 既設発電所の運転に支障を与えてしまうことから難 しい。そのため, BWR 運転員を敦賀発電所 3,4号機の運 転員に転向させる場合は,必ず敦賀発電所2号機の 運転直又は本店の敦賀発電所 3,4 号機設計部門で所 一定の期間の経験を踏まえてから配属させるなどの配慮をする必要がある。現在,このような基本方針の 下,人事部門,本店発電管理部門と協力し,運転開 始(燃料装荷開始)までの詳細な要員計画,教育・ 訓練計画を策定し,実行している。3.まとめ改良型 PWR プラント初号機である敦賀発電所 3,4 号機は,これまでのトラブル経験,運転保守経験を 設計段階から積極的に反映するとともに,既設発電 所の高経年技術評価等で得られた知見等も予め取り 入れる取り組みを行っている。また,保全プログラム等への建設段階からのデー タ整備や人材育成を含めた綿密な要員計画の策定な ど,建設終了後の運転,保守部門への業務移管を想 定した準備を着々と進めている。参考文献 [1] H. Yamaguchi, T. Ichikawa, C. Kurimura andM. Nakajima, “Design Verification of Reactor Internal Structures for APWR”, Proceedings of the 8th International Conference on NuclearEngineering, (2000). [2] 鈴木英昭, “敦賀発電所 3,4号機の増設計画について““, 原子力工業, Vo149, No.4. [3] Taiki Ichimura, Susumu Ueda, Shiro Saito,Takafumi Ogino, “Design Verification of the Advanced Accumulator for the APWR in Japan”, 8th International Conference on NuclearEngineering, (2000). [4] Hirokatsu Yamaguchi, Yoichi Aeba, E. H. Weiss,“Design Features of APWR in Japan”, International Symposium on Evolutionary Water Cooled Reactors, IAEA-SM-353-24, 1998.11.Seoul.144“ “改良型 PWR初号機設計への保全の知見・経験の反映“ “星野 知彦,Tomohiko HOSHINO,竹内 公人,Kimihito TAKEUCHI
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