経年火力で使用する遮断器保守の自社技術確立について

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カテゴリ: 第7回
1. はじめに
当社の火力発電所では、所内の補機電動機などに 電力供給するため、電源回路の開閉装置として、高 圧用にVCB(真空遮断器)やMBB(磁気遮断器) を、低圧用にACB (気中遮断器) を使用している。 FiglにMBB、ACBの不具合の発生件数をまとめ るが、使用開始から10年を超えたあたりから開閉 不具合が発生する傾向にあり、その原因の8割はグ リス劣化によるものである。 - 当社では、上記の不具合の未然防止のために、一 定の使用年数や開閉回数に達したMBB、ACBを、 機能部品単位まで分解し、消耗品類の取替や部品の 手入れを行い、健全性を確認している。これを「特 別点検」と称しており、信頼性維持のための重要な 保守として実施している。本稿では、中部電力グル ープで確立した「部品の選定・製作から施工までを 一貫した体制で実施する特別点検の技術」について 述べる。
2. 技術確立の経緯 - 当社では、運転開始から30年以上経過した高経 年火力発電所で約1100台のMBB、ACBを使 用しているが、平成17年に取替部品が製造中止と なり、遮断器メーカでの点検が困難となった。 -MBB、ACBを新品に取替ることも可能であっ たが、高経年火力発電所は最新火力発電所に比べて 稼働率が低いので、費用対効果が乏しい。また、使 用開始から40年を経過したMBB、ACBの劣化 調査を実施した結果、遮断器の機能は十分維持され ており、適切な保守を行えば数十年の使用が可能で あると判断して自社内での「特別点検」の方策につ いて平成11年から検討を始めた。147Fig2 MBBFig3 ACB3.自社技術確立の内容 -MBB、ACBの維持運用のためには、遮断器の 分解・組立・調整する点検施工技術の習得と部品の 確保が必要である。3.1 特別点検の施工技術の習得 - 平成11年8月~平成12年7月にかけて、(株) 中部プラントサービス技術員(4名)が遮断器メー カからの技術指導のもと技能習得した。1第1ステップ場所:遮断器メーカ工場 1 期間:平成11年 8~ 9月 内容:遮断器の原理構造の教育、分解組立に必要となる基礎技能の訓練分解組立に必要2第2ステップ 場所:遮断器メーカ工場 期間:平成11年 9~10月 内容:分解・組立・試験調整の技能訓練(1回目)施工要領書の整備3第3ステップ 場所:(株)中部プラントサービス工場 期間:平成12年 3~ 6月 内容:分解・組立・試験調整の技能訓練(2回目)分解・組立・試験調整用の特殊工具の手配 第2ステップまでの課題のフォロー、施工 要領書の見直し、品質管理体制の検討4第4ステップ 場所:(株)中部プラントサービス工場 期間:平成12年 8~11月 内容:分解・組立・試験調整の技能訓練(3回目)技術員を4名から6名へ増員 第3ステップまでの課題のフォロー、施工 要領書の最終見直し、品質管理体制の確立以上の第1~4ステップの実施によって、施工技 術を習得できたが、遮断器メーカ技術員と比較して 1.5~2倍の点検時間が必要であった。このため、 施工技術を維持向上させるために、継続して遮断器 の特別点検(年間十台以上) を実施する計画とした。3.2 特別点検部品の製作 遮断器特別点検の部品を製作するため、遮断器メ ーカから「メーカノウハウ非公開、保証はその製作 者である当社が負う」などの条件を基に承諾を得て (株)中部プラントサービスと部品製作の方法を検 討し、内製化することとした。 * 内製化にあたっては、1部品選定、2製作、3検 証を行い、全ての選定部品の製作完了までできるよ うにした。13.2.1 製作部品の対象選定(第 1 ステップ)[期間:平成17年9月~11月] 遮断器メーカが推奨する遮断器の特別点検部品 は、多種多様であり、遮断器メーカの設計製作図も 入手できない状況であった。当社が保有するMBB、 ACBは30型式(MBBは10型式、ACBは2 0型式)程度に分類されるが、構成部品については 全型式共通の部品と、型式ごとに形状が異なる部品 があり、30型式全てを合わせると460点の部品 が存在する。これら部品は、一点づつ寸法・形状が異なり、そ の製作方法もプレス抜型品や鋳造品など様々であ る。部品製作にあたって、部品の金型を製作すると、 その製作費や維持費が必要となるが、この金型から 製作する部品の数量は非常に少ないので、結果とし て製作費用が高額になる。ゆえに、部品の製作は、 金属材料や絶縁材料を切削加工して一点づつ製作 することを基本的とした。製作部品は多数あることから、遮断器メーカの取 替推奨部品を、必要最低限の部品に再分類すること にした。再分類は、設計寿命、構成材料、重要度、 当社の過去の特別点検実績等を基に実施し、Fig4 の とおりA、B、Cの3種類とした。・A部品特別点検に必要となる消耗部品B部品 一定の使用年数や開閉回数に依存する部品C部品」 B部品よりも長寿命な部品この分類結果を基に、製作部品の対象はA、B部 品とし、C部品は点検手入れをして再使用する部品 とした。これによって、自社が製作する部品は、3 O型式全てで460点から320点となった。148金属材料や絶縁材料を切削加工して一点づつ製 作するので、製作納期は最短3ヶ月程度である。当 社では、特別点検を行う1年前に発注して必要部品 の製作納期を確保している。コロニーコおばさみCross sectionClassification of prats of MBB and ACB MBBParts A Parts:Around | Expendable parts 50 units per needed for special modelinspection MBB:around 30units ACB: around 40units Parts BReplacement Depending on theyears of use or ACBnumber of switching Parts:Aroundoperations 70 units per modelMBB:around 10units ACB: around 10units Parts C Longer lifetime parts than parts BReuse MBB:around 10unitsACB: around 20units Fig4 Listing of parts(1st step)ビットドにする。3.2.2 部品の製作(第 2 ステップ) [期間:平成17年12月~平成19年 8月]個々の部品は、寸法と幾何学形状を持っており、 寸法の偏差と幾何学形状の偏差が限界を超えると、 部品として機能を損なうことになる。まず、選定したA、B部品を製作するために、旧 品の寸法、材質を詳細調査し、仮製作図を作成する とともに、旧品と同等成分の金属材料や絶縁材料を 選定した。しかし、遮断器メーカの設計製作図面が ないので、寸法調査した部品が、設計製作図面に対 してどの程度の公差で製作されたのか不明である。このため、仮製作図を基にした試作部品はJIS 普通公差(B-0405など)によって製作した。 できあがった部品は、遮断器へ実装するなどして、 動作状況を確認し、動作に問題があれば製作公差を 見直して再製作した。Fig5 に示すとおり、この一連 のサイクルを何度も繰り返して、必要な寸法、製作 公差を見極めた。結果として、製作した部品によってはJIS普通 公差よりも更に厳しい公差が必要な場合や、±(プ ラスマイナス)異なる公差を与える必要もあった。NO.12/ 補助スイッチ検EリンクOld PartRevie of toleranceDimension/material investigationdrawingMJIS general dimension tolerancePart manufacturingsAssemblyAction reconfirmationNo goodGoodAdoptionFig5 Manufactuaring of parts(2nd step)149 -3.2.3 部品の性能評価(第 3 ステップ) [期間:平成18年11月~平成19年8月] - 遮断器に求められる動作責務は、遮断器の準拠規 格であるJEC「電気学会電気規格調査会標準規 格」にて、下記のごとく定めている。 1常規および短絡状態の電路を開閉できること。 ・外観構造検査 ・開閉試験(連続2000回) 2良好な導体であり、短絡電流に耐えること。・短絡試験 3良好な絶縁体であること。・商用周波耐電圧試験 当社では、製作部品の強度、絶縁性能、品質など に問題がないことを最終確認する目的から、当社で の製作部品を用いて特別点検を実施したMBB1 台、ACB1台に対して、上記123の動作責務を 確認するための評価試験を実施した。評価試験は、 JECに定める形式試験を参考に、当社が製作した 部品に要求される性能が確認できる試験項目を選 定した。 * 性能評価試験結果は良好であり、当社が製作した 部品によって遮断器の動作責務を満足できる結果 となった。[MBB性能評価] 試験項目 JEC145 「交流しゃ断器」JEC2300「交流遮断器」 1構造検査・連続2000回開閉試験 2商用周波耐電圧試験 ・主回路22,000V ・制御回路2,000V 3短絡試験(BTF4号100%)・28.1kA 1回 [ACB性能評価] 試験項目 JEC160「気中しゃ断器」1構造検査・連続2000回開閉試験 2商用周波耐電?試驗 ・主回路2,500V ・御回路1,500V 3短絡試験(100%) ・41kA 1回Fig6 MBB Shortcircuit testFig7 ACB Shortcircuit test13.3 品質管理今回(株)中部プラントサービスとの技術協力に より確立した自社技術は、将来にわたって持続可能 なものとする必要がある。このため、(株) 中部プラントサービスにおいて、 同社工場で実施する全ての特別点検に対して、製作 部品の品質維持と、特別点検の技術維持のために、 全ての手順をマニュアル化して、ISO9001相 当の品質管理体制で施工することとした。4.まとめ遮断器保守について自社技術として確立した内 容をFig8にまとめる。 * A、B部品は内製化によって確保し、C部品は旧 品を手入れして再使用する。万が一、C部品に不具 合があった場合は、予備部品を流用するなどして対 応することとした。また、部品の製作から特別点検 の実施までをISO9001相当の品質管理体制 で実施する。ManufacturParts A (replacement patrts)imgSpecial isnpectioncan be implementedParts B (quasi- replacementpatrts)Parts C (Long lifetimepatrts)DivertingFig8 Summary5.最後に * 内製した部品を用いた特別点検は、平成21年度 末現在、累計61台実施しており良好である。今後、 当社火力発電所のMBB、ACBの約1100台中 500台について、特別点検を継続する計画である。中部電力グループで確立した「部品の選定・製作 から施工までを一貫した体制で実施する技術」は、 遮断器のみならず、他の製造中止部品の製作まで拡 大していくことによって、経年化した火力発電所設 備の修理部品調達を可能にでき、今後の設備維持へ 貢献できるものと考えている。6. 参考文献 1. 本稿は、平成21年度火力原子力発電大会論文集 に投稿したものを加筆訂正した。Special isnpectioncan be implemented150“ “経年火力で使用する遮断器保守の自社技術確立について“ “村上 清敬,Murakami KIYOTAKA,森田 博之,Morita HIROYUKI
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