放射線透過式配管厚さ測定装置

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カテゴリ: 第7回
1. はじめに
富士電機システムズは、放射線を計測する装置の 他に、その技術を応用して、放射線を用いて厚さ・ 密度・レベル等を計測する放射線応用計測器を製 造・販売している。放射線応用計測器は、非接触・ 非破壊での計測が可能で、検査・試験効率向上のた め、鉄鋼、化学プラント等の生産現場で広く使用さ れているが、放射線関連法令の規制等、一般計測機 器には必要としない放射線管理費、資格等が必要と なることから、産業界への普及が比較的限定されて いた。しかし平成17年度に「国際基本安全基準」 を取り入れた法令改正の際、機器のリスク、利用実 態に応じた合理的な規制が構築された設計認証制度 が新たに施行された。この新しい設計認証制度にも とづいて、製造された表示付認証機器については、 安全性が確認された機器であり、その旨の表示をつ けることにより、機器の使用・保管・被ばく管理等 の規制が課されないことから、広く産業界へ普及す ることが期待されている。 1 富士電機システムズではこの設計認証制度の適用 を受けた、配管減肉検出装置を東北電力株式会社殿 との共同研究で開発し、表示付認証機器として、測 定サービス、販売を始めたが、放射線を配管の中心 に照射していることから、測定結果は配管の両肉厚 の合計値となり、官庁への報告データには採用され ていない。本稿で紹介する配管厚さ測定装置は、配管減肉検 出装置の保温材の外から測定ができ、且つプラント 稼働中においても測定が可能である特長を活かして、 さらに富士電機システムズの従来からの配管測定技 術を活かした3 ビーム演算方式の採用により、連絡先:東泰彦、〒191-8502 東京都日野市富士町1 富士電機システムズ(株放射線装置 TEL:042-583-4772 e-mail : higashi-yasuhiko@fujielectric.co.jp- 配管の片側厚さを測定できる装置を開発したので、 その原理、システム構成。装置仕様等について、紹 介する。また、近年ニーズが高まっている、小径配管内流 体の密度、レベル等を検出する配管診断装置につい ても表示付認証機器として、実用化を図ったので、 その概要を紹介する。
2. 配管厚さ測定装置
2.1 概要近年、発電プラント等の安定稼動の観点から、配! 管の肉厚管理が一層重視されるようになっている。 そのため、管理や調査の対象が増え、肉厚管理にか かるマンパワー、コストは増大しており、より効率 的な測定が要望されている。特に、保温材付き配管 の肉厚測定では、多くの時間とコストが保温材の撤 去・復旧工事に費やされている。また、保温材を外すことができるのはプラント停 止中のみであるため、定期検査の期間中に肉厚測定 を実施している。一定期間内での作業となるため、 新たな知見を得るための調査等にかけられる時間は 限られており、配管の交換が必要と判定されると、 長期にわたってプラントを停止させなければならな い恐れもある。 - 富士電機システムズは、上記課題を解決するため 配管減肉検出装置を東北電力株式会社殿との共同研 究で開発し、さらに放射線の3ビーム演算方式を採 用して、配管の片側厚さ測定装置を開発、実用化した。配管厚さ測定装置は、以下の特長を持つ。 1) 放射線透過型であるため、保温材の上からの配管減肉測定が可能 2) 定期検査前のプラント運転中でも減肉を検出し、配管の早期手配などが可能216,自動回転アタッチメントにより、配管円周方向 の厚さプロファイル測定が可能 小型・軽量なので狭隘部・高所へも取付可能 表示付認証機器であるため、安全で放射線の被 ばく管理は不要 3) 自動回転アタッチメントにより、配管円周方向。 この厚さプロファイル測定が可能。 4) 小型・軽量なので狭隘部・高所へも取付可能 5) 表示付認証機器であるため、安全で放射線の被ばく管理は不要Fig. 3装置の外観を Fig1 に示す。operation displayradiation sourcedetectodriveAuto-rotation attachmentRotational control unitFig.1. Pipe thickness measurement system2.2 システム構成本装置は、放射線源部、検出部、駆動制御部、自 動回転アタッチメント、操作表示部で構成する。放射線源部は、線源ホルダで遮蔽されており、線 源ホルダは測定時の散乱線の影響を低減する構造と している。Fig.2 に線源ホルダの外観を示す。本装置は、放射線源部、検出部、駆動制御部、自 動回転アタッチメント、操作表示部で構成する。 -- 放射線源部は、線源ホルダで遮蔽されており、線 源ホルダは測定時の散乱線の影響を低減する構造と している。Fig.2 に線源ホルダの外観を示す。Fig.2. Radiation source holder * 検出器には CsI(ヨウ化セシウム)を用いたシン チレーションプローブで、環境変化による検出感度 の変化については、自動補正回路を付加して、野外 環境での測定を可能としている。また操作表示部へ の測定データの通信および各種測定条件データの通 信には、配管への取り付け、回転が迅速かつ容易に 行える様、Bluetooth を採用して、ワイヤレス化を 図った。Fig. 5 pipe clamp- 217 - に検出部の外観を示す。Fig.3 detector源部と検出部は、C 型フレームに固定され、 云アタッチメントで測定配管に取付けられる。 ペアタッチメントを使用すると、設定された 致に従い、各点測定終了後に順次自動で回転 管円周上の厚さプロファイルを測定できる。 寸き配管の外径寸法は配管と保温材の組合せ 多種にわたるため、Fig.5 に示す配管への取 具で、多種のサイズに対応出来る様、5種類 ノール部と各サイズに対応した回転レール部 具で構成されている。 - に自動回転アタッチメントの外観を示す。 「放射線源部と検出部は、C 型フレームに固定され、 自動回転アタッチメントで測定配管に取付けられる。 自動回転アタッチメントを使用すると、設定された 測定点数に従い、各点測定終了後に順次自動で回転 して、配管円周上の厚さプロファイルを測定できる。 保温材付き配管の外径寸法は配管と保温材の組合せ により多種にわたるため、Fig.5 に示す配管への取 付け金具で、多種のサイズに対応出来る様、5種類 の回転レール部と各サイズに対応した回転レール部 取付金具で構成されている。Fig.4 に自動回転アタッチメントの外観を示す。 動回転アタッチメントの外観を示す。Fig.4 auto-rotation attachmentRotate the rail mounting bracketRotate the railRotate the rail mounting bracketRotate the rail自動回転アタッチメントの回転制御は、駆動制御 部からの信号で、パルスモータを駆動させて、任意 の位置に回転させている。駆動制御部は操作表示部からの指令に基づき、自 動回転アタッチメントのパルスモータを制御して、 指定された回転角度に制御している。 Fig.6 に駆動制御部の外観を示すposeeprinciple expressionfluidgamma-raypipeheat insulation, cover boardN=No.K?eArtradiation sourcedetectorFig.6 drive control unitradiation rate、検出した放射線量と、配管に関す タから配管の厚さを算出して保存す ータは測定値表示シート(EXCEL)に ビーム厚さデータの演算を行い、 タを絶対値で表示する。 する各種設定データは、操作表示部 uetooth を介して転送される。 に関する設定データの入力、保存、N : rate of radiationpenetrated the pipe N, : rate of radiationpenetrated the air K: attenuation factorof heat insulation, cover board, fluid,etc Hi attenuation coefficientof pipe 1: pipe wall thickness (sum of both walls)using to calculate.correcting → fromsetting valueFig.8 Basic principle操作表示部は、検出した放射線量と、配管に関す る各種定数データから配管の厚さを算出して保存す る。また測定データは測定値表示シート(EXCEL)に 転送されて、3ビーム厚さデータの演算を行い、 各点の厚さデータを絶対値で表示する。 - 測定配管に関する各種設定データは、操作表示部 から検出部に Bluetooth を介して転送される。その他、配管に関する設定データの入力、保存、 編集、さらに測定厚さデータを取り出し、配管円周 方向のプロファイル表示を行うとともに、部位毎の 厚さ推移表示、減肉速度や余寿命の計算などを行う ことが出来る。 Fig.7 に操作表示部の外観を示すFig. 7 operation display- 218 -2.3 測定原理- Fig.8 の基本原理に示すように、放射線は、外装 板、保温材、配管、内部流体(水、あるいは空)のそ れぞれを透過するごとに減衰する。この特性を利用して、保温材付き配管全体におけ」 る放射線の減衰率を検出した後、外装板、保温材、 内部流体による減衰率を一定値として差し引いて、 配管における減衰率のみを抽出し、これを用いて肉 厚値を算出している。従って、算出する肉厚値は配! 管両側の肉厚の合計値である。この基本原理の放射 線照射ビームを配管センターから配管内に正三角形 を形成するように照射して、基本原理式に基づいて 厚さ演算を行い、その3箇所の測定結果から連立方 程式を解いて、正三角形のそれぞれ頂点の厚さを算 出する。 Fig. 9 に 3ビーム演算方式の原理を示すprinciple expressionN=No.Kee Artcover board heat insulationRadiationsourcefluid(detectoA=t1+t2 B=t2+t3_ C=t3+t1_t1 = (A+C-B)/2 t2=(A+B-C)/2 t3 = (B+C-A)/2Fig.9 3-beam calculation method2.4 装置仕様Table.1 に、本装置の主な仕様を示す。 対象配管の外径と肉厚の仕様は、火力発電所にお ける配管の大部分が包含されることから、空配管で 外径 500A 以下、肉厚 30mm 以下とした(満水時は外径 300A 以下、肉厚 20mm以下)。精度(再現性)は、減肉が十分検出できるように、 一般的な公称肉厚と必要厚さの差や測定時間から、 公称肉厚の2.0%以内とした。Table.1 Specifications itemSpecification Pipe | material | corbon steel, low-alloy steel, stainlesstype | Straight, reducer outside empty diameter:80~500A, diameter, | pipe thickness : 30mm and wallunder thickness filleddiameter : 80~300A, with thickness : 20mm andwater under heat material calcium silicate insulation| 710mm and under diameter cover board steel, aluminumrepeatability +2.0% of nominal wall thickness comparison accuracy ±0.5% of wall thickness of standardpipe for calibration, or , +0.1mm.(whichever is greater) radiation source 137Cs、 Co measurement time of diameter 200A and under, thickness a point10mm and under:300s and under (empty pipe) diameter 500A and under, thickness30mm and under:600s and under working temperature, | 0~40°C、80%RH and underhumidity massabout 6kgIy2.5 実証試験* 実証試験では、富士電機システムズ保有の校正用サンプ ルにビルドアップ用短冊を配管内面に貼り付けて、分解能 24 点でプロファイル測定を行い、幅を変えたビルドアッ プ用短冊の厚さ変化が測定出来ている事を確認した。 結果 Fig.9に示す。く測定条件> 測定配管 200A(SUS 材) 肉厚平均:5.0mm ビルドアップ: 厚さ0.8mm×幅30mm、厚さ0.8mm×幅60mm 測定面積:約20omm 測定時間:200 秒/点測定配管200A厚さ5mm 保温材30mm巾60mm×0.8mm巾30mm×0.8mmメルト51K10570-6230 55250-5710 04710-52504230-439 (02750-4130090に260mm×0.8mm(SUS板) 270に巾30mm×0.8mm(SUS板)02120-3250 B2239-2108方向Fig. 9. measurement example2.6 今後の課題 小型・軽量かつ被ばく管理が不要で、保温材の上か ら配管厚さの検出が可能な装置を開発したが、今後 さらに効果的な装置へと発展するための課題として、 以下が挙げられる。 (1) 測定配管内のスケール・残留冷却水の影響などは、検出値から判断して対応することが必要 であるが、測定ノウハウを蓄積して、容易に判断出来るようにする。 2) 自動回転アタッチメントの配管取付金具については、常時設置タイプに改善を図る。33.13. 配管診断装置3.1 概要- 配管診断装置は、配管を透過する放射線の減衰を 利用して、小径配管から大口径配管の配管減肉検出、 配管内流体の密度、レベル、付着物、錆び等の検出 が、屋内、屋外、およびプラント運転中に非接触・ 非破壊で測定出来る。3.2 システム構成- 本装置の構成は、配管厚さ測定装置の放射線源部、 検出部、操作表示部から構成されて、常時固定式の 配管取付金具および移動式の取付金具を測定用途に 応じて選択している。 小径配管用診断装置の外観を Fig. 10 に示す。219Fig. 10. piping diagnostic system殿に多大なご指導、ご協力を頂いたことに、深く謝 辞を表する。3.3 装置仕様Table.2 に、本装置の主な仕様を示す参考文献 [1] 高木 昭:「放射線透過式配管減肉検出装置の開発」,FAPIG No.174(2007)Table.2SpecificationsTable.2 Specifications itemSpecification Pipe | material | corbon steel, low-alloy steel, stainlesstype straight, elbow, reducer outsidediameter : 25~300A, diameter,thickness : 30mm and under wallthickness heatmaterial calcium silicate insulation outside 1 500mm and underdiameter cover board steel , aluminum repeatability+2.0% of nominal wall thickness comparison accuracy +0.5% of wall thickness of standardpipe for calibration, or , +0.1mm.(whichever is greater) radiation source 137Cs, 60C0 working temperature, | 0~40°C、80%RH and underhumidity massabout 2kg3.4 適用例(1) 配管内流体の密度、レベル測定・ 冷却水の密度測定 ・ 汚泥水の密度測定 ・ スラリーの密度測定 黒液の密度測定 二相流のボイド率測定 流体のレベル位置測定(2) 配管両側肉厚測定・ 減肉傾向スクリーニング ・ 配管内錆びの検出 ・ 配管内付着物の検出 ・ 配管内異物の検出- 220 - 4.おわりに - 本稿は、配管厚さ測定装置を中心に紹介した。 - 富士電機システムズは、配管厚さ測定装置による 配管の保全・管理への貢献はもとより、その開発に よって培われた技術を生かし、非接触、非破壊とい う特長を持った放射線応用計測器を、さらに小型 化・軽量化すると共に、安全で被ばく管理等が不要 で導入の容易な表示付認証機器とすることで、より」 広い分野での適用を提案していく所存である。 * 最後に、本装置の開発に当り、東北電力株式会社 殿に多大なご指導、ご協力を頂いたことに、深く謝 辞を表する。“ “?放射線透過式配管厚さ測定装置“ “東 泰彦,Yasuhiko HIGASHI
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