「もんじゅ」におけるナトリウム漏えい検出設備の保全活動

公開日:
カテゴリ: 第7回
1. もんじゅ概要
「もんじゅ」はナトリウム冷却高速増殖原型炉で あり、昭和 60年 10月に建設工事を開始し、平成6 年4月に初臨界、平成7年8月初伴入を達成した。 同年 12 月ナトリウム漏えい事故が発生して以来原 子炉を停止し、安全総点検、再発防止対策の実施、 設置変更許可を経て平成22年5月に臨界を再度達成 している。実施した再発防止・ナトリウム漏えい対 策は、漏えいの早期検知を目的とした検知システム の追加、漏えい量の抑制を目的としたドレン系の改 造、影響緩和を目的とした窒素ガス注入設備の追加 等である。「もんじゅ」の停止期間においては水・蒸気系は 保管あるいは停止していたが、ナトリウム系である 1,2 次系は多くの期間運転を継続していた。ナトリウム系運転時においては、ナトリウム漏え い検出器は作動状態であり、この間誤警報等のトラ ブルを経験した。ナトリウム漏えい検出器の誤警報 の発報抑制及び故障の未然防止のため検出器の改善 等のハード面及びトラブル経験に基づく点検頻度、 内容の改善等を行ってきた。破損(Leak Before Brake)に基づく設計が可能である。 このことから、貫通き裂が起きた場合でも安定的で 緩慢に進展するため漏えい発生を瞬時に検出する必 要は無い。原子炉の安全性に影響を及ぼす恐れのあ る漏えいとしてナトリウムのインベントリが有意に 減少しない規模でのナトリウム漏えいを検出する設 備は安全保護系設備とし、漏えいの拡大防止をし、 プラントの保全を図る検出設備は安全保護系以外と している。 2.1 安全保護系としての漏えい検出器 *1 次冷却材漏えい事故に対して原子炉を保護し放 射性物質拡散の抑制または防止をするため、2out of 3 のロジック構成、チャンネルの独立性、計測制御 系からの分離等の設計がなされたナトリウム液面計、 圧力検出器、温度検出器、放射線検出器等により自 動的に原子炉格納容器を隔離するとともに、原子炉 をトリップする検出信号を発することを目的とし設 置されている。 2.2 安全保護系以外の漏えい検出器ナトリウムを内蔵する機器配管における外部雰 囲気へのナトリウム漏えいを監視する検出器であり、 接触型(CLD)、ガスサンプリング型、煙感知型、熱感 知型等のナトリウム漏えい検出器及び温度計、液面 計により漏えいを検出する。安全保護系とは異なり 2 out of 3 のロジック構成、チャンネルの独立性、 計測制御系からの分離等の設計はなされていない。
2. ナトリウム漏えい検出器の位置づけ
「もんじゅ」におけるナトリウム漏えい検出器に 関する設計の考え方について、「もんじゅ」では配管 等に SUS304 等靭性の高い材料が用いられ、また内 部流体圧力が常圧のため熱膨張による2次応力が主 体となるという荷重条件の特徴から、漏えい先行型3. ナトリウム漏えい検出器のトラブル事 例及び対策安全保護系のナトリウム漏えい検出器である、圧 力検出器、放射線検出器、温度検出器等は「もんじ ゆ」特有の設備ではなく、軽水炉でも使用され、こ連絡先:武藤 啓太郎,〒914-0821 福井県敦賀市白木 2-1, 高速増殖炉研究開発センター プラント保全部, 電話:0770-39-1031, E-mail:muto.keitaro@jaea.go.jp235れまでトラブル事例はない。「もんじゅ」におけるト ラブルは「もんじゅ」特有の設備である接触型漏え い検出器(CLD)、ガスサンプリング型漏えい検出器に 多く発生している。「もんじゅ」停止中に経験したナ トリウム漏えい検出器の誤警報のトラブル事例及び 誤警報対策を以下に紹介する。 3.1 誤挿入による CLD 誤警報平成20年3月1次メンテナンス冷却系 CLD(接触 型ナトリウム漏えい検出器 Contact type sodium Leak Detector)において漏えい警報が発報した。CLD はナトリウムが導体である性質を利用し、シ ースと電極間にナトリウムが付着し回路を形成する ことで漏えいを検出する装置である。当該 CLD は弁 の漏えい監視のために設置されているが、Fig.1 に示 すように、取付け不良のためシースが弁棒に接触し、 磨耗することにより電極の先端部が弁棒に触れたた め警報が発報した。誤警報対策として誤警報が発報した同型の CLD については、シーラント型から固定に関する管理方 法が明確に定められている SwagelokR継ぎ手タイ プに全数(252 個)交換をし、ケガキ線により差込 深さの測定・記録を実施した。stemsheathelectrode(normal-position)(miss-position) Fig. 1 CLD : Contact type sodium Leak Detector3.2 イオン・マイグレーションによる CLD 誤警報平成20年9月2次系オーバフロータンクに据え付 けられた CLD が動作し、ナトリウム漏えい警報が発 報した。当該 CLD を引き抜き、目視によりナトリウ ムの付着がないことから誤警報と判断した。当該検出器はセラミック端子表面の元素分析によ り端子金属(鉄、ニッケル、コバルト)及び銀が確認 され、これらの金属による絶縁抵抗の低下から警報 の発報に至ったものと推定した。これらのメカニズ ムは以下のとおりである。 1) 当該 CLD の検出部に結露水が発生した。 2) CLD 端子-シース間には直流電圧が印加され ているため、端子の接合に用いている銀ロウの 電気分解が起きた。 3) 電気分解により、ニッケル、コバルト、銀がセラミック表面に析出した。 4) 平成 20 年9月においてオーバフロータンクのSwagelokRhttp://www.swagelok.com/http://www.swagelok.com/-236ナトリウム温度を 200°C一定から 325°Cまでの 昇温したことにより、CLD 廻りの温度も上昇し、 銀のイオン・マイグレーションが促進された。 5) 析出した金属により回路が形成され、誤警報が * 発報した。 対策として銀ロウ付けである従来品からイオン・ マイグレーションの起こりにくい金ロウ付けの対策 品に交換を順次実施し、平成 21年9月に全数の交換 を完了している。交換後同型の CLD の絶縁抵抗基準、 絶縁抵抗値測定頻度を見直し、金ロウ対策品の健全 性評価を行っており、健全性が維持されていること を確認している。また金ロウ付け CLD のイオン・マ イグレーション対策の有効性評価として実機 CLD を模擬した試験体(銀ロウ付けタイプ、金ロウ付け タイプ)を製作し、イオン・マイグレーションの発 一生過程を模擬した条件(DC50V, 325°C, 120 時間,結露, 高湿度)にて加速試験を実施した。結果 Fig.2 に 示すように、銀ロウ付けの試験体では銀イオン・マ イグレーションによる短絡が確認されたが、金ロウ 付けの試験体は絶縁抵抗値の低下が確認されず、対 策品は有効であることを確認した。Ion-migration(Silver brazing)(Gold braz Fig.2 CLD lon-migration aging test3.3 温度変化によるRID 誤警報平成20年1月2次系 A ループ蒸発器及び過熱 器周りを監視している RID(ガスサンプリング型 ナトリウム漏えい検出器 Radioactive lonization Detector)が警報発報した。現場及び遠隔監視用 ITV カメラによる確認、フィルタ分析において異常は 認められないため誤警報と判断した。RID は系統 の機器、配管について微少漏えいを検出するため, 機器,配管と保温層間のガスをサンプリングし監 視するための設備であり、RID はナトリウムエア ロゾルを Am-241 によりイオン化されたガスに付 着させ、イオン電流の変化により微少ナトリウム 漏えいを検出するもので空気雰囲気中の検出に適 しており、約 100gNa/cc 以上のナトリウムエアロ ゾルに有意な反応を示す。誤警報発報当時 RID は 現在値と 24 時間前値を比較し警報判断をしてい たが、RID 検出感度は非常に高く検出器内におけるサンプリングガスの温度、圧力、流量の変化、 ナトリウム以外の揮発性物質によっても指示値を 変動させる。当該警報発報時は Fig.3 に示すよう に外気温度が 24 時間前の同時刻に対して約 10 度 低下しており、環境温度の変化によってナトリウ ム漏えいの誤警報が発報したのが原因である。誤 警報対策として外気温度変化による影響を小さく するため、RID のシーケンサ処理を変更し、警報 発報を判断している指示値比較を 24 時間前値か ら1時間前値に変更した。5Ambient temp4.2RID indicationANN 1FTSおたくシップturermetriettern““inten...........wBaseThreshold:Base+0.42V-15.624 hours1220:30 20002003/01/12 2:30:002000/01/12 8:30:00・18」2008/01/12 14:30:00+24H)2009/01/12 20:30:00Fig.3 RID indication change3.4 その他誤警報」平成21年1月2次系Cループの RID においてナ トリウム漏えいの誤警報が発報した。誤警報は外気 取入フィルタ近傍で実施していた屋外の塗装作業の 揮発性ガスが建屋内に流入し、その結果、揮発性ガ スが RID 検出器に吸い込まれ、指示値が上昇したこ とにより警報が発報したものと特定された。対策として今後の塗装作業においては、揮発性ガ スが建屋内に流入しないよう、局所排風機等により 外気取入フィルタから離れたところに排気すること とした。ガりと4.設備改善及び運用の改善上述のトラブル事例を受けた対策の他、保全活動 として Na 漏えい検出器の設備及び運用の改善を行 っており以下に改善例を示す。 4.1 点検頻度、内容の見直し ・ナトリウム漏えい検出器に係る過去に発生 した故障、不具合データを整理し取扱の手引きと してマニュアル化するとともに、保全計画の点検 頻度、内容を見直した。 4.2 電源関係に係る信頼性向上対策安全保護系以外のナトリウム漏えい計装の信頼性 向上対策として、ナトリウム漏えい計装に係る制御 電源の無停電化対策として以下を進めている。 ・1 次主冷却系ナトリウム漏えい計装の制御電源に おいて一般計装電源と並列に無停電電源装置(UPS) を設置した。また、ブロワ電源を非常系電源からの受電とすることを計画している。 ・2 次主冷却系ナトリウム漏えい計装の制御電源を 無停電電源系統からの受電に改造を行った。5.今後の計画安全保護系以外のナトリウム漏えい検出設備のう ち、2次系ナトリウム漏えい検出設備である RID は、 誤警報の発報を抑制することや、常時監視し監視不 能時間を無くすこと等、高い信頼性が求められてき ている。しかし既存の RID は揮発性物資や環境条件 (温度、圧力、流量等)の影響を受ける特徴や冗長性 が無く代替監視ができない問題があり、既存の設備 ではその要求には応えにくくなっている。そのため、 欠期新型ナトリウム漏えい検出器を開発し、より信 頼性の高い検出器に置き換えることの検討を行って いる。メーカにおいて新型漏えい検出器として開 発・試作した LLD(Laser Leak Detector)、及び MID(Micro Ionization Detector) のフィールドテスト を平成 21 年に「もんじゅ」において実施している。 LLD はサンプリングガスにレーザー光を集光し、レ 一ザーブレークダウンにより発生したプラズマ中の ナトリウム原子が励起状態から基底状態に遷移する 際に発するナトリウム固有の蛍光を測定するため、 ナトリウム選択性があり、環境条件、揮発性物質に よる誤警報抑制や検出感度向上が期待される。MID は既存の RID と同様の検出原理ながら、イオン反応 部とイオン検出部を分離しイオン反応時間を既存の 電場ではなく流速で制御することで問題となる温度、 湿度、流量等による影響を低減させる構造となって いる。MID のフィールドテストにおける結果の一例 を以下に示す。サンプリングガス温度が 25 度~33 度の範囲における MID,RID の指示値を 10'0gNa/cc の漏えいに相当する出力により除算することで規格 化した値に対する温度の依存性を Fig.4 に示す。指 示値の温度に対する傾きは MID が 0.027/°C、RID は -0.0777°Cとなり、MID が RID に対して同一環境にお ける温度変化に伴う指示値変化が約 1/3 に抑制され ることを確認した。今後継続してこれら新型のナト リウム漏えい検出器の適用性を検討し、検出設備の 信頼性向上を図っていくことを計画している。MIDIDy = 0.0266x + 2.8988RZ-3 0.8142y = -0.0774K + 6,5573R:= 0.545MID indication (relative value)RID indication (relative value)1222426 28 30 Temperature(°C)32341 22 24 26 28 3003234Temperature(°C)Fig.4 Temperature dependence of MID,RID参考文献 [1] 高速増殖炉もんじゅ建設所,高速増殖原型炉「も んじゅ」設備概要, ページ 12.27-.30(平成10年3月)“ “「もんじゅ」におけるナトリウム漏えい検出設備の保全活動“ “武藤 啓太郎,Keitaro MUTO
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)