MRIにおける陰性造影部位のポジティブコントラスト法による強調画像化

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カテゴリ: 第7回
1. はじめに
ここで、p(r) は位置r におけるプロトン密度、Y はプロトン歳差運動の磁気回転比(=42.6MHz/T) である。t(k)はエコー MRI(核磁気共鳴画像法)は、プロトンの核磁気共鳴を利時間TEを原点とする時間、kは波数ベクトル、Ging はMRI して、生体内の断面を画像化する手法である。撮像する部の撮像用磁場勾配であり、* MRI(核磁気共鳴画像法)は、プロトンの核磁気共鳴を利 用して、生体内の断面を画像化する手法である。撮像する部 分を一様な強磁場内に置き、傾斜磁場や共鳴磁場などの一連 の磁場をかけて、プロトンのスピンが作る磁場を計測し(こ の信号をk-空間という)フーリエ逆変換によって画像化す る。MRIでは腫瘍など病変のコントラストを増強するため、 造影剤が用いられる。その1つであるSPIO(超常磁性酸化鉄) は、大きな磁化率によりMRIの一様な磁場を歪め、ラベルさ れた部分を暗くする陰性造影剤である。陰性造影剤であるゆ えに、ラベルされた部分を識別するのが難しい場合があり、 SPIO投与後の1回の撮像で得られた信号からラベルされた 部分を目立たせるPositive Contrast (PC)法が研究されている。 [1,2] 本研究では、MRI画像を小領域に分割してその2次元フ ーリエ(FT)変換で得られるk-空間の分布から磁場の歪みを 判定することで、SPIOが近傍にある小領域のみを明るく強調 して目立たせる手法を開発した。ここでは、提案したポジテ ィブコントラスト手法の妥当性と有用性を,実験を通して示 すことを目的とする。
2.手法
2.1 SPIOによるk-空間の変化 * MRIの撮像法は多数あるが、ここで採用したのは磁性体に よる磁場の乱れの効果が強く表れるグラディエント・エコー (GE: Gradient Echo)法である。GE法ではSPIOによるMRI信号 S(R)は(1)式のように与えられる。S() = [p(r)exp(-12m)(k).rber (1)Gret(k(m, n)) = Gramarger + AG,ant,e, (2) (3) である。ここで、m, n は1つのMRI信号のサンプリング番号 と位相エンコーディングの番号であり、k-空間における k. に方向の画素番号でもある。AT , T. はエコーサンプリン グ時間刻み幅と位相エンコーディング時間、Ging, AGing は Ging の x 成分および y 成分の刻み幅、e, e, はx, y 方向 の単位ベクトルである。GE法では S(K)の虚数成分がゼロに なるときにエコーが発生するため、k-空間におけるピーク 位置(エコー位置)は* m=0, n=0] というk-空間の中心に現れる。一方、MRIの撮像対象内にSPIOが存在する場合、SPIOによ る磁場歪みはプロトン歳差運動の位相を変化させる。この効 果によりMRI信号 S(K)は、 _(k) = [p(r)exp(-i2z7G““t(h) ? r)expl-i2z7GS (r)((k)+ TE). rhdr のようになる。ここで GS (r)はSPIOによる位置r における 磁場勾配である。(4)式より、SPIOが存在しない場合と同様に k-空間におけるピーク位置はGSUS TE GS + G AT,(5) Gius Gimg TE AG;““ Gl + GrarIm's-.In%3D- 278 -のように m = 0, n=0 からシフトする。通常の生体の場 合、\Gotos | ≪ |Gne | であるから、w GUTE GSUS G ATS. (6)G?US TE . GSUSAG, となり、k-空間においてピーク位置が現れる画素番号 m' ? n'g?US (r) x, y he toto 3 G?US (r), G?US (r) 12EE 例する。すなわち、SPIOによる磁場の歪みが大きい部位か らの信号ほど、k-空間における中心からのピーク位置のシ フトが大きく現れることが分かる。2.2 ポジティブコントラスト法このことを用い、本研究ではk-空間における中心からの ピーク位置のシフトの量により、その位置がSPIOの近傍か否 かを判定する手法を提案した。具体手的には次の通りである。MRI画像のうち3×3画素程度のsub-areaごとにフーリ エ変換を行い、各々のk-空間を求める。(Fig. 1) このk一空間のピーク位置を見つけ、中心からのシフ ト量を求める。閾値 = R とし、このシフト量 > R の 場合にはこのsub-areaにSPIOが含まれると判定し、シ フト量 ≦ R の場合にはSPIOを含まないと判定する。 (Fig. 2) SPIOを含むと判定されたsub-areaのみについて逆フ ーリエ変換を行う。SPIOAcqsub-areamx0100ns0sub-areaSPIOAcq11 >>1Fig.1 MRI画像のsub-area (3×3程度)のフーリエ変換。SPIOを含む領域は、k-空間でピークが中心からシフトする。この1~3の手順をMRI画像のすべての画素について行う ことにより、SPIOを含む領域のみが明るく強調されたポジ ティブコントラスト画像を得ることができる。K-spaceK-spaceInside the circle Not SPIOOutside the circle SPIOFig.2 閾値R を設定し、k-空間でのピーク位置からのシフト量とRとの大小を比較する。3.結果3.1 マウスのリンパ節のPC画像 - Fig. 3 に、尾の静脈より SPIO を注射して後肢付け根のリ ンパ節に SPIO を凝集させたマウスの下腹部の MRI画像を示 す。図中の印 A の周囲がリンパ節であり、SDIO の陰性造影 効果により画像が暗くなっていることが分かる。一方、リン パ節でない点Bの画像は明るいままである。Fig. 4 に、Fig. 3 に示した MRI 画像内の sub-area A, B につい」 てフーリエ変換を行い得られた k-空間の分布を示す。SPIO を含む点 A (左)の k-空間はピークが中心から大きくシフ トしているのに対し、SPIO を含まない点B(左)ではピーク が中心近傍にとどまっていることが分かる。Fig.3: 尾の静脈よりSPIOを注射したマウスの下腹部のMRI画像279腫瘍、CenterMaxima(a) Sub-area A(a) Sub-area ACenterMaximum(b) Sub-area B SPIOを含ませて培養した腫瘍細胞と含ませずに培養CenterMaximum(b) Sub-area BFig.4: K-空間における、Fig.3に示した sub-area AとBについてのフーリエ変換の分布。(b)R = 103.2 マウスの腫瘍のPC画像次に、SPIOを含ませて培養した腫瘍細胞と含ませずに培養 した腫瘍細胞とをマウスの後背部の左右にそれぞれ皮下注 射し、腫瘍を8mmゅほどに成長させた (Fig. 5)。Fig. 6 は、 2.2で述べた閾値 R をR = 0, 10, 20, 40, 50 とした場合の、こ のマウスのPC画像である。R=0 のオリジナルのMRI画像で は、腫瘍を明確に特定することは困難である。一方、閾値R = 50の場合では、SPIOを含む右後背部の腫瘍が最も選択的に強 調された画像が得られている。SPIO り腫瘍、SPIO 5. り腫瘍SPIOな し場SPIOを含む腫瘍細胞と含まない腫瘍細胞とを皮下注射され、 Fig. 5: SPIOを含む腫瘍細胞と含まない腫瘍細胞各々の腫瘍が成長したマウス (a) R=0 (C) R = 20 - 280 -以上のようにPC法にて得られたSPIOを含む腫瘍部のみが 強調された画像と、さらにPC法による処理を行う前のMRI 画像とを組み合わせることで、Fig. 7 のような画像が得られ る。このような組み合わせの画像は、従来のMRI画像に比べ て腫瘍の位置・形状などを把握するのに非常に有効であり、 かつ、サイズの小さな腫瘍に対しても強調効果が期待される ため、腫瘍の早期発見・早期診断への貢献が期待できる。4.結論(d) R = 40本研究では、SPIO投与後の1回の撮像で得られたMRI信号 からラベルされた部分を目立たせるPositive Contrast (PC)法 の1つとして、MRI画像を小領域に分割してその2次元フーリエ(FT)変換で得られるK-空間 (波数空間)の分布から磁 場の歪みを判定し、SPIOが近傍にある小領域のみを明るく強 調して目立たせる手法を開発した。マウスを用いた実験では、 提案したポジティブコントラスト手法の妥当性と有用性を 示すことができた。PC法で得られた画像と元のMRI画像とを 組み合わせた画像は、腫瘍の位置・形状などが容易に把握で きるのみならず、サイズの小さな腫瘍に対しても強調効果が 期待されるため、腫瘍の早期発見・早期診断への貢献が期待 できる(e) R = 50参考文献 [1] Stuber M, Gilson WD, Schr M, Kedziorek DA, Hofmann LV,Shah S, Vonken EJ, Bulte JW, Kraitchman DL. Positive contrast visualization of iron oxide-labeled stem cells usingFig. 6: Fig.5のマウスの胴体部のPC画像。閾値R = 50のときに、SPIO(e) R = 50Fig. 6: Fig. 5のマウスの胴体部のPC画像。閾値R = 50のときに、SPIO を含む右後背部の腫瘍が最も強調されている。参考文献 [1] Stuber M, Gilson WD, Schr M, Kedziorek DA, Hofmann LV,Shah S, Vonken EJ, Bulte JW, Kraitchman DL. Positive contrast visualization of iron oxide-labeled stem cells using inversion-recovery with on-resonant water suppression(IRON). Magn Reson Med, 58:1072, 2007. [2] Balchandani P, Yamada M, Pauly J, Yang P and SpielmanDaniel. Self-Refocused Spatial-Spectral Pulse for Positive Contrast Imaging of Cells Labeled with SPIO Nanoparticles. Magn Reson Med, 62: 183, 2009.Fig. 6: Fig.5のマウスの胴体部のPC画像。閾値R = 50のときに、SPIOを含む右後背部の腫瘍が最も強調されている。Fig. Sのマウスの胴体部のPC画像。閾値R = 50のときに、 Fig. 6: Fig.5のマウスの胴体部のPC画像。閾値R = 50のときに、SPIO を含む右後背部の腫瘍が最も強調されている。 - 281“ “MR I における陰性造影部位のポジティブコントラスト法による強調画像化“ “朱 海涛,Haitao ZHU,出町 和之,Kazuyuki DEMACHI,関野 正樹,Masaki SEKINO
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