高経年化対策の研究開発における産学官の連携

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カテゴリ: 第7回
1. はじめに
自律分散して重複無く高経年化対応するために産学 官の役割分担の理念を明らかにし、課題とその対応 軽水炉用材料の経年劣化に関する研究は古くから について産学官の総合調整を行うため、高経年化対 産官学各々で実施されてきた。国が主導する研究活応技術戦略マップ[3]を策定し、定期的にローリング 動も 1980 年代から照射脆化に関する研究を実施し (見直し)を実施して進めている。 * 軽水炉用材料の経年劣化に関する研究は古くから 産官学各々で実施されてきた。国が主導する研究活 動も 1980 年代から照射脆化に関する研究を実施し てきた他、経年劣化に起因する各種トラブルへの対 応のための研究を実施してきた。1990 年代になると、 長期運転を想定した材料劣化の系統的な研究[1]を 行い、トラブルは発生していないものも含め材質劣 化の検査、評価、対策について研究を実施してきた。 これらの国の研究は、特に産学官の有機的連携を意 図したものではないが、産業界の技術力と学術会の 知見を活用して実施されてきた。研究等で得た技術蓄積の上に立って高経年化対策 が行われてきたが、2004 年に美浜3号で生じた経年 的に減肉した管の破断事故を契機に、原子力安全・ 保安院(以下、保安院という。)は、委員会の諮問を 受けて[2]、高経年化対策に係る産学官の技術情報を 十分に交換し、内容に共通性のある部分の連携や組 織ごとに有するものの相互融通等を図る形で進める ことが重要であるとして、産学官の共通のロードマ ップ、技術戦略マップを整備して、それに基づき研 究開発を、成果の活用を進めることとした。そのため原子力力安全基盤機構(以下、JNES と言 う。)に産学官の総合調整機能を有する技術情報調整 委員会を設置し、円滑な運用を図ってきた。 技術情報調整委員会(委員長:宮保全学会長)で は、産学官が自律・分散・協調して実施する高経年 化対応に関する情報交換を年2回程度行なってきた。 2. 技術情報調整委員会の役割と成果Fig.1 Roles of stakeholders in aging 技術情報調整委員会(委員長:宮保全学会長)でmanagement[3] は、産学官が自律・分散・協調して実施する高経年 化対応に関する情報交換を年2回程度行なってきた。 4. 高経年化対応技術戦略マップ
・技術戦略マップに沿った活動の中で、規格基準化を図り、規格基準の高度化に貢献
産学官の高経年化対応に対する役割分担の理念を Fig.1 に示す。産業界は安全の確保、学術界は安全基 盤研究への貢献、国・官界は安全規制の確立と整備 及び安全性と公益性の確保・向上を前提とした原子 力政策の推進の役割を分担すること、また学協会に は技術戦略マップの策定・ローリングや規格基準の 高度化を分担することが合意された。(学術界) ・安全基盤研究への貢献に関する責任 - 知の蓄積と展開(安全基盤研究の検証) 研究を支える人材の育成(国・官界) ・安全規制の確立と整備に関する責任 ・適正な規制行政判断に必要な安全研究 ・必要な基盤(知識・人材・施設・特度的)の整備 ・安全性と公益性の確保・向上を前提にし た原子力政策の推進に対する責任 産業界・学術界の安全に関わる研究と基盤整備に対する支援・安全の確保に関する責任 -安全性・信頼性・経済性の確保・向上を目的とした開発研究および基終整備(学協会など・産官学の関係者が集合し、技術戦略マップの策定、定期的なローリング・優先的に取り組む課題の明確化 ・合理的・効率的実施を考慮した役割分担の検討- 検討作業、情報発信を通じたコンセンサスの形成 ・技術戦略マップに沿った活動の中で、規格基準化を図り、規格基準の高度化に貢献Fig. 1 Roles of stakeholders in agingmanagement[3]化対応するだけでなく、有機的に連携して実施する ために、高経年化対応技術戦略マップを策定した。 高経年化対応技術戦略マップは、導入シナリオ、技 術マップ、ロードマップからなっている。導入シナ リオとは研究開発などの活動成果が世の中へ出て行 く筋道と関連施策を示している。技術マップは技術 課題を俯瞰し重要技術を絞り込んで産学官の何れが 分担すべきかを示している。ロードマップは技術マ ップへの対応を時間軸上に示している。 - 高経年化対応技術戦略マップは、2006年に(社) 日本原子力学会が策定した高経年化対応ロードマッ プを基にしており、そこで打ち出されたて高経年化 対応におけるソフト面の充実を重視していることが 特徴である。従来から実施してきた技術開発(技術 データ、技術評価手法の整備)に加えて、その成果 を高い透明性と客観性を以って活用するために、技 術情報基盤の整備や規格・基準の整備等を重点的に 実施することが重要としている。高経年化対応技術戦略マップは、2007年に初版が 策定され、それ以降現在まで毎年ローリングされて いる。ローリングの結果は公開の国の委員会へ報告し てきた。5. 産官の連携について産官の連携については、安全基盤研究のロードマ ップと JNES が策定する安全研究計画との関係と、産 業界と保安院、JNES の国が共同研究を実施する際の 要件をまとめた。 - 産業界と保安院、JNES の国で実施する安全研究の テーマや内容についての効果的な分担や連携を図る ためには、産学官の関係者が参画するロードマップ 策定の場(高経年化対応において技術情報調整委員 会及び関連活動)において考え方や方針、計画など について意見交換と調整を行うことが必要である。産官が、資金・人材・施設等の応分の負担を行っ て実施する共同研究においては、国、規制側が必要 とする研究成果が十分に得られらくなるのではない か、安全規制の判断の中立性に影響するのではない か等の懸念を国民に生じさせないようにすることの 必要性が指摘される。そのために専門的かつ客観的 に妥当性の確認が行えることを要件としている。ま た十分な情報公開と外部からの自由なアクセスの確 保が重要としている。但し、試験データの公開につ いては、財産保護との関係の扱いを考慮する必要が あり、原則公開することを基本としつつ、個別に適 宜対応する。6. 良好事例と今後の取組み我が国では軽水炉の経年劣化に関するハードの研 究は、当初より産業界の技術力と学術界の知見を活 な対応を検討する余地がある。用して実施されてきた。その結果多くの成果を得て 今日の高経年化対策に寄与していることは産学官の 連携の良好事例といえる。 - 技術情報調整委員会を設置して、産学官の有機的 連携に本格的に取組を始まって以降は、特に技術情 報の共有化や規格・基準の整備等の分野で大きな進 歩があった。それらは、保安院での高経年化技術評価に関する ガイドラインや標準実施要領の整備改訂、JNES での 高経年化技術評価の審査マニュアル等高経年化対策 技術資料集を整備、産学官での調整を経て高経年化 対応技術戦略マップの技術課題マップに技術課題と して登録するなど、成果として活用してきた。学協会では経年劣化に対応する規格・基準の体系 的な整備を進め、特に(社)日本原子力学会が制定 した高経年化対策実施基準 2008 は産学官の有機的 連携で得られた成果の好例である。この標準には、 軽水炉の機器構造物の各部に発生する劣化事象を網 羅的に整理した劣化メカニズムまとめ表が制定され ている。この表は、この産学官の情報共有により生 まれたものである。今日、規制基準として、高経年 化技術評価対象となる標準的な機器構造物に生じる 経年劣化事象の抽出において、産業界と国の規制側 の両者が活用している。7. 今後の課題連携が進められて4年が経過し、この間に技術情 報の共有は着実に整備されてきた。しかしながら、 高経年化対応技術戦略マップには、多くの技術課題 は依然存在している。その中で特に、高経年化は実 幾実績の乏しい領域であることから、試験室での加 速劣化データを基に構築された技術成果を実機デー タで確認又は補強してゆくことが重要と考えられる。技術情報はますます複雑になっていくものと考え られる。この情報の共有および研究の効率化には産 学官の連携が重要となる。参考文献11 プラント長寿命化技術開発に関する調査報告書 (平成元年度~5年度)(財) 発電設備技術検査協会 2] 実用発電用原子炉施設における高経年化対策の 充実について(平成17年8月原子力安全・保安院). 3] 高経年化対応技術戦略マップ 2009 (平成 21 年7 月) (独)原子力安全基盤機構技術情報調整委員会 41 原子力安全保安部会 原子力安全基盤小委員会 安全基盤研究ワーキンググループ報告?原子力の安 全基盤研究の効果的な実施について~(案)(平成 2年)26“ “高経年化対策の研究開発における産学官の連携“ “石垣 宏樹,Hiroki ISHIGAKI,大崎 徹,Toru OSAKA,菅野 眞紀,Masanori KANNO,宮野 廣,Hiroshi MIYANO
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