LDIによる局部減肉を考慮した配管系の耐震安全性評価(その2)―LDIによる局部減肉形状の検討―

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カテゴリ: 第7回
1.背景
発電プラントの運用・管理において重要な課 頁となっている配管減肉現象の内の液滴衝撃エ ュージョン(LDI, Fig.1)は,高速蒸気流中に混ざ った液滴が配管表面に衝突する事で生じる衝撃 コで損傷する現象であり,流動因子が大きな支 己因子となっている.また,LDI は大規模な配 管破断が生じる可能性は低いが,FAC に比べて 局所的な分布を持っ減肉形状となりやすい.また,減肉配管における耐震評価について, 見状では全周減肉を模擬した体系での評価を行 っているが,LDI の発生が考えられる蒸気配管などにおいて全周減肉を模擬する事で,実際 とは異なる評価結果を与える可能性があると考 こられる.そこで,本研究では,LDI が発生しやすいエ ンボ部について,局所減肉を模擬した体系での 耐震評価試験を実施し,その強度評価を行う事 とした. 本発表では,エルボ部における液滴の 多動評価を基にした, LDI を仮定したエルボ部 つ減肉面形状の決定手法について述べるFig. 1 Schematics of LDI
2. 減肉面形状の評価手法 ここでは減肉面形状の評価手法について述べる.2.1 減肉面形状の評価の流れ前述の通り, LDI は液滴の衝突によって生じる 現象のため,本研究では Fig.2 のようなフローで LDI による減肉面形状を評価する事とした.まず, エルボ部における液滴の挙動を評価する. エルボ部に流入する各液滴について,蒸気から力 を受けて液滴の挙動が決定されると考え,逐次時 間進行計算を実施し,その液滴が壁面のどの位置 に衝突するか(あるいは衝突せずに通過するか)を 計算する.連絡先: 森田良, 〒201-8511 東京都狛江市 岩戸北 2-11-1, (財)電力中央研究所,電話 : 03-3480-2111, E-mail: ryo@criepi.denken.or.jpその2)Evaluation of Droplet Behaviorin Various ConditionsO/Collision Points and Frequency Collision VelocityEvaluation of Relative Thinning Rate on Each Collision Point5 Relative Thinning ShapeConsideration of Safety MarginThinning Shape by LDIFig.2 Flowchart of LDI Thinning ShapeDetermination 次に,液滴が衝突した各位置における減肉量を 計算し,減肉面の形状を評価する. LDI による減については, これまでに様々な研究(1)-(7がされて おり,流速と減肉量との関係や, 衝突条件と減肉 量との間のモデル式などが提案されている(2).本研 こではこれらを用いて評価する事とした.これらの減肉面形状評価を様々な流動・配管径 条件において実施し,それらの減肉面形状を包絡 する面を考慮する事で,発電所の任意の系のエル 下部での減肉面形状と仮定する事が可能となる. 更に,必要に応じて安全率を考え,LDI による減 内面形状とする事とした.Fig.3 Concept of Droplet Behavior Evaluation配管径 を包絡 このエル なる. よる減4 液滴の流入流速は蒸気流速と同じと仮定 その後は蒸気からの抗力による挙動変化 計算し, エルボ部に衝突する位置を評価る. 5 液滴がエルボ部に衝突する場合,その位:.2 液滴の挙動評価 エルボ部における液滴の挙動評価には,液滴の 衝突位置を評価する必要があるため, 3 次元計算に よって流れ場を求めて液滴の挙動を評価する必要 がある.しかし, 3 次元計算は計算時間を必要とし, 配管系全体を評価するためには数日,エルボ部の みであっても数時間程度の計算時間が必要となる. しかし,本研究では,様々な条件において減肉面 形状を評価する必要があるため,Fig.3 および以下 こ示すような近似的な評価手法によって液滴の挙 動を評価する事とした. 1 流入条件として,エルボ部の形状・流入部における流速 U・圧力 pを与える. 2 蒸気は一様流入とし, エルボ部に沿って変 化すると仮定して, 流れ方向速度:Ug=U 半径方向速度:U, =0 とする。 3 液滴は流入配管断面を微小区間に分け,それぞれの位置から液滴を飛ばしてその挙動を評価する. D 流入条件として,エルボ部の形状・流入部における流速U・圧力 pを与える. 2 蒸気は一様流入とし, エルボ部に沿って変 化すると仮定して, 流れ方向速度:U=U 半径方向速度:U, =0 とする. 液滴は流入配管断面を微小区間に分け,そ れぞれの位置から液滴を飛ばしてその挙動 を評価する.価する Sanche 各衝突 を得る 流量の 衝突流 他の研流動・- 361 -A-A断面面積:Sdr dop液滴:U蒸気1U[m/s]ΘΑo配管径:D蒸気密度:pg 蒸気流速:U液滴速度:u密度:p, 直径:d抗力係数:Cd 4 液滴の流入流速は蒸気流速と同じと仮定しその後は蒸気からの抗力による挙動変化を 計算し,エルボ部に衝突する位置を評価する. 5 液滴がエルボ部に衝突する場合,その位置と衝突流速(壁面に垂直な成分 V““)を求める. 上記の近似手法は2以外は 3 次元計算による詳 細評価と変わらないが,計算速度は桁違いに早く なる.2.3 減肉面形状の算出 * 前節の近似的な液滴挙動評価により,エルボ部 における液滴衝突位置と衝突流速が得られる.こ れらから減肉面形状(エルボ部における減肉率の 分布)を求めるためには,衝突条件から減肉率を評 価するモデルが必要となる.そこで,本研究では, Sanchez らが提案した減肉率のモデル式)を基に, 各衝突位置における減肉率を評価し,減肉面形状 を得る事とした. Sanchez 式は、式中に流速の4乗・ 流量の1乗の項が含まれたモデルであり,液滴の 衝突流速が大きな支配因子となっている. これは 他の研究においても同様の傾向となっている.このようにして得られる減肉面形状を,様々な 流動・配管径条件において計算し,それらを合成A方向図視0.0°流れ方向角度0_エルボ背側周方向角度の0:0° X背側のみ) JA:90° ...g0:-90° 0:90°エルボ腹側C:減肉評価範囲■ 0.0 -0.2 10.2 -0.4 0.4 -0.6 ■0.6 -0.8 10.8 -1.0Flow Direction Angle, e[° ]-90 -72 -54 -36 -18 0 18 36 54 72 90Circumferential Direction Angle, [°]Fig.4 Evaluated Thinning Shape at Elbow(Relative)する事で,発電所における種々の配管系に適用出 来る可能性を持っ減肉面形状を作成する事としたまず,減肉面形状評価のパラメータとなる流動 条件及び配管径について,その理由共に以下に示 す.流入速度:100, 200,400m/s 理由:エロージョンが発生する下限の流速(エ ロージョン限界流速)に関する知見つから, 100m/s 以上とし,液滴は早くても音速(約 450m/s)以下であることを考えて,400m/s 以下 とした. 流入圧力:0.005, 0.01, 0.1, 1.0, 7.0MPa (7.0MPa のみ全圧条件として考慮) 理由:復水器条件から BWR 主蒸気条件の間と した. 液滴径: 1.0, 2.0, 5.0, 10, 20,50um 理由:電力中央研究所における液滴径計測実 | 験)では, 1~20um の範囲に平均液滴径があり, 平均径の2倍以内に 99%の液滴が含まれてい たため 配管径:50, 100, 150, 300, 400A 理由:実機発電所における湿り蒸気が配管系 である抽気系・ベント系の配管径を模擬する ため10.0 -0.1 ■ 0.5 -0.6.0.1 -0.2 0 .6 -0.7.0.2 -0.31 0.3 -0.4 0.7 -0.8 0.8 -0.950 .4 -0.5 {0.9 -1.070.265.5]Flow Direction Angle, o[25.420.1-48 -34 -20 -11 -5 0 14 28 42 56 69Circumferential Direction Angle, ol° ]Fig.5 Thinning Shape at Elbow on Actual Plant(Relative, Vent Line)これらのパラメータの全ての組み合わせで減肉 面形状を計算し,その包絡面として得られたもの が Fig.4 となる.図は,エルボ部の背側を流れ方向 (日)・周方向()に 30 分割し,それぞれの分割位 置に衝突した液滴の個数・衝突流速から算出され ている.また,各位置における減肉率は最大減肉 量となる値で相対化している.図から,減肉面は流れ方向 60°・周方向 0°付| 近にピークを持った形状となっている事が分かる. 次節では,この減肉面形状の妥当性について評価 を行う事とする。2.4 減肉面形状の比較 - 前節で得られた減肉面形状(Fig.4)は,発電所の 配管系において考えられる条件をなるべく網羅す るようにして得られているが,その妥当性につい て評価する必要がある.そこで,ここでは実際の LDI による減肉配管の計測値と比較を行い,その 妥当性を検証する事とした.Fig.5に発電所のエルボ部の肉厚実測値を基に算 出した減肉率(相対値)の分布を示す. 系統はベント 系であり,部位はオリフィスの下流第 1 エルボ部 である.この部位に対して,3次元計算を用いた詳細な液 滴挙動評価を適用した結果を Fig.6 に示す. 流動計 算結果(Fig.6 (a))から, エルボ部の流速分布は複雑 で有る事が分かる.また,この流速分布を用いて 評価した減肉面形状は,定量的に良く一致してい る事が分かる(Fig.6 (b)-(c)). 前述の通り,本研究で 用いた近似手法による減肉面形状評価は、3次元計 算による詳細評価とは流速分布の与え方(2.2 節の3622)以外は同一であるため,液滴の挙動計算方法や 減肉率の評価方法については妥当性が確認出来た と言える次に, 2.3 節で得られた近似手法による減肉面形 状との比較を行った. Fig.7 に配管流れ方向断面の 減肉率分布の比較結果を示す.図には、得られた 減肉面形状に安全率 2 を考慮した形状(Fig.8)も併 せて示す.図から,近似手法によって得られた減肉面形状 は,実測値よりも概ね保守側の評価となっている 事が分かる.しかし,流れ方向 45°近傍において 若干非保守側となっている箇所がある事が分かる. そこで,安全率 2 を考慮した形状と比較すると, 全て保守側の評価となっている事が分かる.この安全率 2 を考慮した減肉面形状は,対象と した計測値に対して,相対的な減肉率が 0.1 以上の 領域において保守側の評価となったため,得られ た減肉面形状に対して安全率2を考慮した形状を, 局所減肉した配管の耐震評価に用いる事とした.3. まとめ局所減肉した配管の耐震安全性の評価のため, LDI を模擬した減肉面形状を提案した.近似手法 を用いて発電所における様々な流動・配管条件で の減肉面形状を評価し,その包絡面を取る事で減 肉面形状とし,更に,実測値との比較から,安全 率 2 を考慮する事で実測値を保守側に評価出来る 事が分かったため,得られた減肉面形状に対して 安全率 2 を考慮した形状を,局所減肉した配管の 耐震評価に用いる事とした..参考文献 (1) M.C.Rochester, J.H.Brunton, “Influence ofPhysical Properties of the Liquid on the Erosionof Solids““, ASTM STP 567(1974), 128-151 (2) L.E.Sanchez-Caldera, “Mechanism ofCorrosion-Erosion in Steam Extraction Lines of Power Stations”, Ph.D. Thesis, Dep. Mech. Eng., Massachusetts Institute of Technology, (1984) F.J.Heymann, “Conclusions from the ASTM Interlaboratory Test Program with Liquid Impact Erosion Facilities”, Proc. 5th Int. Conf. Erosion byLiquid and Solid Impact, (1979), 20-1 to 20-10 (4) S.S.Cook, “Erosion by Water-hammer““, Proc.Roy. Soc., A, 119(1928), 481-488 0.G.Engel, Proc. 2nd int. conf. Rain Erosion Assoc. Phenom.,741(1967) W.D.Pouchot, ASTM STP 474(1970), 383 T.Shimogaya, M.Takemoto, “Erosion of Metals in High Speed Mist Flow Evaluation of Threshold Velocity by Acoustic Emission System”, 10th Int. Congress on Metalic Corrosion, vol.4,Sessions14-19(1987), 4047-4054 (8) 森田良, 「液滴衝撃エロージョンに関わる流動特性の解明(その 2)-流動評価技術の高度化一」,電力中央研究所報告,L07016, (2008) 森田 特性(6) (7)ー」,- 363 -Velocity Mag.[m/s]1000750 500 250x%3D0.0635mFig. 7 Comparison of Thinning Rate Profile(Relative, Present Method)(a) Velocity Distribution with 3D Flow Calculation| 15 0.0 -0.21 0.2 -0.4 12 0.4 -0.6 0 0.6 -0.8 % 0.8 -1.番 0.0 -0.1 10 .5-0.610.1 -0.2 0.2 -0.3 0.3 -0.4 10.4 -0.5 | 幅0.6 -0. 78 0.7 -0.8 0勝0.8 -0.9 0 .9 -1.0Flow Direction Angle, e[° ]72-60 -48 -36 -24 -12 0 12 24 36 48 60Circumferential Direction Angle, olo]-90 -72 -54 -36 -18 0 18 36 54 72 90Circumferential Direction Angle, olo ](b) Thinning Shape at ElbowFig.8 Evaluated Thinning Shape at Elbow(Relative, Safety Margin: 2)--Actual Data 1ate[-]-Evaluation (3D calc.)|-- Actual Data1- Evaluation (3D calc.)Relative Thinning Rate[-]0.0 feeeeee.2000000000 11 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90Flow Direction Angle[° (c) Comparison of Thinning Rate ProfileFig.6 Evaluated Thinning Shape at Elbowobtained from 3D Calculation Method-Actual Data 1 3-Evaluation --Evaluation(margin:2)Relative Thinning Rate[-]15 0.010201900/03/10809030.0 40.0 50.0 60.0 Flow Direction Angle [ ]■ 0.0 -0.2 -0.2 -0.4 20.4 -0.6 10.6 -0.8 % 0.8 -1.0Flow Direction Angle, e[° ]TITUTTTINITTTTTTTTTTS- 364 -“ “?DIによる局部減肉を考慮した配管系の耐震安全性評価(その2LDIによる局部減肉形状の検討一“ “森田 良,Ryo MORITA,酒井 理哉,Michiya SAKAI,尾西 重信,Shigenobu ONISHI,釘本 三男,Mitsuo KUGIMOTO,稲田 文夫,Fumio INADA,松浦 真一,Shin-ichi MATSUURA
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