BWR配管内の混合ガス燃焼に関するガイドラインの整備

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カテゴリ: 第7回
1.はじめに
BWR 原子炉内の水の放射線分解によって生成さ 2001年の沸騰水型原子炉 (BWR) の配管内におけれ、主蒸気中に移行する混合ガスの蓄積及び燃焼現 る混合ガス(水素、酸素)の蓄積及び燃焼による配 象を対象とし、主蒸気を内包する配管から分岐し、 管の破断・損傷事例を契機に、(社)火力原子力発電他端が弁等で閉止されている配管(以下、「枝管」と 技術協会は、2005年10月に「BWR 配管における混 いう。)を対象とする。 合ガス(水素・酸素)蓄積防止に関するガイドライ 2.3 評価 ン」リを取り纏め、2007年3月に、第2版を、2010 評価は、以下の手順で行う。 年3月に(社)日本原子力技術協会より第3版とな<ステップ1>:混合ガスが滞留する可能性が る「BWR 配管における混合ガス(水素・酸素)の燃ある箇所を抽出する。 焼による配管損傷防止に関するガイドライン(第3 <ステップ 2>:混合ガスの濃度が燃焼する濃 版)」(以下、「ガイドライン」という。)を発行し度を超えて蓄積する箇所を抽出する。 このガイドラインにより混合ガスの蓄積及び燃焼<ステップ 3>:個別評価により蓄積の可能性 による配管損傷を未然に防ぐ方法として、混合ガスや配管の構造強度を評価する。 の蓄積の有無を評価することが可能になったので、 <ステップ1> ここで紹介する。・ 混合ガスが蓄積する可能性がある箇所として、主蒸気を内包する配管から分岐し、他端まで距離 2. ガイドラインの概要があり、放熱による混合ガスの蓄積が懸念される 2.1 目的配管を選定する。ここで、下向き枝管や水平枝管 BWR 新規プラントの設置や既設プラントの改造 (下り勾配)は水封され、混合ガスが蓄積しない 等に係わる設計の際に、主蒸気中の混合ガスの燃焼 と判定する。 による配管の損傷を防止することを目的に、混合ガ <ステップ2> スを燃焼する濃度(以下、「不燃限界濃度」という。) 混合ガスが蓄積・滞留する箇所として、水平枝 まで蓄積させない方法等を定めたものである。管(上り勾配)、上向き枝管及びドレントラップに接続する下向き枝管を評価対象として抽出する。 連絡先: 稲垣哲彦,〒461-8680名古屋市東区東新ここで、水平枝管(上り勾配)のうち、その長さ 町1番地,中部電力(株)原子力部運営グループ,が表1に示す不燃限界長さ以下の枝管は混合ガス 電話:052-951-8211,が蓄積しないと判定する。また、主蒸気流れのあ E-mail: inagaki.tetsuhiko@chuden.co.jpる母管に接続する上向き枝管及び斜め上向き枝管
このうち、図1の枝管内の換気流れがある範囲(以下、「換気限界長さ」という。)のものは、混合ガ スが蓄積しないと判定する。ドレントラップに接 続する下向き枝管は、0.8MPaを超える場合は、ド レン水に混合ガスが溶解し排出されるため、混合 ガスが不燃限界濃度以上に蓄積しないと判定する。表1 不燃限界長さの判定値 圧力 「不燃限界長さ圧力ng| 不燃限界長さ 口径口径 (MPa) . (mm) | (MPa)(mm) 20A 11.94E+0220A 7.76E+02 25A 2.50E-0225A 1.50E+03 40A 7.68E+0240A3.07E+03 0.4 , 50A 1.49E+0350A 4.46E+03 100A 4,86E+03100A 9.71E+03 350A 2.54E+04350A 3.18E+04 650A 4.15E+04| 650A 5.92E+04 | 20A | 3.88E+0220A 1.54E+03 25A 7.50E+0225A 2.25E+03 40A 1.92E+0340A| 3.84E+03 1.3 50A | 2.97E+03| 50A | 5.94E+03 100A 8.74E+03| 100A 1.17E+04 350A 2.86E+04350A 3.18E+04 650A 114.74E+04650A 15.92E+04(注): 本表は、1/50以下の勾配、配管肉厚sch80以下及び保温材表面からの平均放散熱量209W/m2以下の水平枝管に適用する。 :配管口径あるいは肉厚が異なる場合は保守的になる不燃限界長さを 採用する。12換気限界長さ---- FTTT枝管長さ/内径A-------)換氣領域2Fはい....10000100000100000010000000枝管Re数1000010000010000001.0E+枝管Re数図1 換気限界長さ<ステップ3>ステップ 2において、混合ガスが不燃限界濃度 を超えて蓄積する可能性があると評価された枝管 でも、個別に換気領域や蓄積濃度を評価すること ができる。また、混合ガスの急速燃焼時において も枝管の健全性が確保できる場合は許容できるも のとする。 2.4 対応措置 - 2.3 節の評価により混合ガスの蓄積による影響が あると評価された場合、運転操作又は設計変更等に よる対応措置を講ずる。 1) 混合ガスを燃焼させないための対応措置 ・定期的に混合ガスを抜く操作等による対応措置・不燃限界濃度を超える蓄積を防止するための設計?更 ・着火を防止する等による対応措置 2) 混合ガスの燃焼による配管損傷を防止するため の対応措置 ・配管の厚肉化による補強 ・許容応力が高い材質への変更 ・発生圧力による配管強度への影響低減を目的と した、閉止端や各構成要素の位置変更3. おわりに -2001 年に発生した BWR 配管内の混合ガスの蓄 積・燃焼による配管損傷事例を契機に、水素燃焼に 関する設計又は設計変更の際に基準とするべき具体 的な技術指針の整備が求められ、(社)火力原子力発 電技術協会および(社)日本原子力技術協会にてガイ ドラインを策定してきた。これにより、混合ガスの蓄積及び燃焼による配管 損傷を未然に防ぐ方法の一つとして、混合ガスの蓄 積の有無を評価することが可能になった。また、混 合ガス燃焼時の配管健全性を具体的に確認すること が可能になっている。今後は、日本機械学会にて規格化の検討を行って いく予定である。「謝辞本報告は、(社)火力原子力発電技術協会で検討を 進めた、「BWR配管における混合ガス(水素・酸素) の燃焼による配管損傷防止に関するガイドライン (第3版)」のうち、主に混合ガスの蓄積評価の概要 について紹介したものである。 1. 本ガイドライン策定にあたり、ご協力いただきま した学識経験者、電力各社、メーカ各社、(社)火力 原子力発電技術協会、(社)日本原子力技術協会の 一方々等、関係各位に深く感謝いたします。参考文献 [1] (社)火力原子力発電技術協会, “BWR 配管における混合ガス(水素・酸素)蓄積防止に関する ガイドライン”, JBWR-NCG-01, (平成 17 年 10月) [2] (社)火力原子力発電技術協会, “BWR 配管における混合ガス(水素・酸素)の燃焼による配管 損傷防止に関するガイドライン(第2版)““,JBWR-NCG-01-第2版, (平成19年3月) [3] (社)日本原子力技術協会, “BWR 配管における混合ガス(水素・酸素)の燃焼による配管損傷 防止に関するガイドライン(第3版)““, JANTI-NCG-01-第3版, (平成 22 年3月)40“ “BWR 配管内の混合ガス燃焼に関するガイドラインの整備“ “稲垣 哲彦,Tetsuhiko INAGAKI,西川 覚,Akira NISHIKAWA,坂下 彰浩,Akihiro SAKASHITA,堂崎 浩二,Koji DOZAKI,曽根 孝浩,Takahiro SONE,日高 章隆,Akitaka HIDAKA
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