HLW地層処分地選定に関する日本型合意形成モデルの構築②一般公衆への社会的受容に関するゲームの開発

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カテゴリ: 第7回
1.緒言
学的な知識が必要であることから、ITC では廃棄物 1.はじめにの地層処分に関するさまざまな側面からの長期にわ この「HLW地層処分地選定に関する日本型合意たる教育や訓練を行い、地層処分やそれに関連する 形成モデルの構築」では、「制度設計のためのモデル」 環境問題についての意思決定や対話等の種々の側面 と「教育プログラム」の組み合わせによって日本型 からの教育や研究を行い専門的な教育・訓練が行え の高レベル放射性廃棄物処分地選定の事業開始準備 る学校の設立を目的に組織されたものである。 から埋没処分完了まで長期に及ぶ処分事業への「合 OBRA lt European Observatory for Long-term 意形成」のための総合的なグランドデザインを提案 Governance on Radioactive Waste の略であり、フィー することを目的としている。この中の「教育プログ ジビリティー検討を目的としたプロジェクトである。 ラム」として大きく「学校教育」と「一般公衆への EURATOM の第6次フレームワークプログラムに提 教育」という二つの課題を設定した。案を行い、2006年 11 月から 2008 年 10月までの2 「一般公衆への教育」としては本課題であるHL 年間実施されたプログラムである。7カ国 10 機関が W地層処分地選定において一般公衆が興味を持って、 参加し、放射性廃棄物処分地選定のためのサイト選 まず課題を認識してもらうことが大切と考えられる。 定プロセスにおける問題を理解し、その解決に役立 そこで、放射性廃棄物処理処分の施策が進んでいるつ教育プログラムを構築することを目的としている。 欧州について調査したところ、スイス ITC School of 本プロジェクトにおいて ITC が主体的となり、放射 Underground Waste Storage and Disposal において、本 性廃棄物処分地選定のためのロールプレイングゲー 課題を主題としたロールプレイングゲームを開発しム[1]が提案され、実際に実施された。この「HLW地層処分地選定に関する日本型合意 形成モデルの構築」では、「制度設計のためのモデル」 と「教育プログラム」の組み合わせによって日本型 の高レベル放射性廃棄物処分地選定の事業開始準備 から埋没処分完了まで長期に及ぶ処分事業への「合 意形成」のための総合的なグランドデザインを提案 することを目的としている。この中の「教育プログ ラム」として大きく「学校教育」と「一般公衆への 教育」という二つの課題を設定した。「一般公衆への教育」としては本課題であるHL W地層処分地選定において一般公衆が興味を持って、 まず課題を認識してもらうことが大切と考えられる。 そこで、放射性廃棄物処理処分の施策が進んでいる 欧州について調査したところ、スイス ITC School of Underground Waste Storage and Disposal において、本 課題を主題としたロールプレイングゲームを開発し ていることが明らかとなった。そこで、本研究では スイス ITCで開発した放射性廃棄物処分地選定に関 するゲームを日本向けにカスタマイズするとともに、 電子デバイスを用いて実施できるゲームとすること を目的とした。 2. ITC の概要スイス ITC は地層処分における安心安全な取扱い や運用には正しい知識や科学的、技術的そして社会
環境問題についての意思決定や対話守り種々の脚田 からの教育や研究を行い専門的な教育・訓練が行え る学校の設立を目的に組織されたものである。OBRA European Observatory for Long-term Governance on Radioactive Waste の略であり、フィー ジビリティー検討を目的としたプロジェクトである。 EURATOM の第6次フレームワークプログラムに提 案を行い、2006年 11 月から 2008 年 10月までの2 年間実施されたプログラムである。7カ国 10 機関が 参加し、放射性廃棄物処分地選定のためのサイト選 定プロセスにおける問題を理解し、その解決に役立 つ教育プログラムを構築することを目的としている。 本プロジェクトにおいて ITC が主体的となり、放射 性廃棄物処分地選定のためのロールプレイングゲー ム[1]が提案され、実際に実施された。
3.ゲーム開発の検討 * これまで ITC が開発したロールプレイングゲーム は、紙媒体を用い、各評価項目について、テキスト を見ながら評価していく手法を用いていた。日本国 内において、ワークショップ等において本ロールプ レイングゲームを実施するためには、同様の手法を 用いても受講者が興味をもって放射性廃棄物処分に 関する問題を考えてもらうことが難しいと考えられ る。一つの問題は紙媒体による受動的なイメージを 払拭できないため、集中力や思考力を奨励すること が難しいことが挙げられる。 これまで ITC が開発したロールプレイングゲーム は、紙媒体を用い、各評価項目について、テキスト を見ながら評価していく手法を用いていた。日本国 内において、ワークショップ等において本ロールプ レイングゲームを実施するためには、同様の手法を 用いても受講者が興味をもって放射性廃棄物処分に 関する問題を考えてもらうことが難しいと考えられ る。一つの問題は紙媒体による受動的なイメージを 払拭できないため、集中力や思考力を奨励すること が難しいことが挙げられる。そこで本事業では電子媒体を利用し、受講者が能 動的に操作することにより放射性廃棄物処分に関す- 409 - る問題についても能動的にどうすべきかを考える機 会を設けることが重要であると考えた。電子媒体としては当初、ノートパソコンの利用を 検討したが、一般受講者が難しい操作を理解せずに、 興味本位で操作できるようにすることや、開発費に 高いコストをかけないこと等を検討した結果、iPod touch を電子デバイスとして利用することにした。 iPod touch は Apple 社が開発した手持ちサイズでデ バイスであり、教育関係者には開発ソフトが無料で 配布されているため、開発費用を一切必要としない という利点がある。また、OSに iPhone OSを利用し、 開発言語には objective-C 言語が利用されており、情 報が広く公開されているため、だれでも開発できる という利点も挙げられる。また、iPhone OS は無線 LAN によるネットワーク接続をサポートしている ため、将来的にはサーバによるスコア収集が可能で ある。 という利点も挙げられる。また、iPhone OS は無線 LAN によるネットワーク接続をサポートしている。 ため、将来的にはサーバによるスコア収集が可能で ある。・結果の検討を統計的にできるように年齢と性別に ついて収集できるようにする。 ・地図や表等の情報と評価項目入力画面を容易に切 り替えられるようにする。 ・取扱説明に時間を割かなくても操作できるように インターフェースにする。 ・地図は画面上でユーザーが拡大縮小して見られる」4. ゲームの特色と利用* 本ゲームは iPod touch をもちいることにより、手 のタッチ感覚で画面を操作し、それぞれのスコアを 入力できるものとした。また、本ゲームは、一般公 衆が個人的に自宅等で行うというよりは、ワークシ ョップ等で利用することを想定している。スイス ITC での本ロールプレイングゲームの利用 は、1 日の利用を想定しているため、評価項目は工 学的な可能性から社会的および政治的な実現性まで 広範囲に渡っているが、本ゲームの目的は、一般公 衆との対話等のワークショップで、放射性廃棄処分等のワークショップで、放射性廃棄処分その後、画面下のタブバーを「仮想島」に切り替えて、仮想島の情報を入手する。「はじめに」にはこA:レドB:ブルエサイト 20年までの予 土地利用について考えてみようC1グレーンによるコストがまたオランジ FAワイトゴルドド ブルエ C1グレーン ・エロ EラングFワイトゴルド(1)ユーザー情報登録 ユーザー情報登録(2)仮想島の説明(3)評価スコア入力(4)感想入力安全性HURONへのなにがある。図1 iPod touch による一般公衆向けゲームの概要る機地用をョ 地選定について、考えてもらうきっかけを提供する ことにある。そこで、これらの中から、本ワークシ ョップで利用する項目を絞ることとした。 1 評価項目の検討では「安全性」と「環境評価」の 二点に絞り、本ゲームを実施することとして、本ゲ ームにおける評価項目にはこの二点に関連した項目 のみを取り上げることとした。これらの項目に基づ いて iPod touch 内で放射性廃棄物処分地選定を仮想 的にシミュレーションできるようにゲームを構築し た。ゲームの構築においては、将来的なワークショ ップでの利用を想定し、以下の項目について注意した。・結果の検討を統計的にできるように年齢と性別に ついて収集できるようにする。 ・地図や表等の情報と評価項目入力画面を容易に切 り替えられるようにする。 ・取扱説明に時間を割かなくても操作できるように インターフェースにする。 ・地図は画面上でユーザーが拡大縮小して見られる ようにする。これらの項目を検討した結果、画面下にタブバー を配置し、画面切り替えができるとともに、各項目 はテーブル形式によって階層化して整理する構造と なるようにプログラミングした。図1に開発したゲ ームの画面およびゲームの進め方の流れを示した。 ゲームの始めに当たってまず、ユーザー名、年齢、 性別を登録してもらう。その後、画面下のタブバーを「仮想島」に切り替 えて、仮想島の情報を入手する。「はじめに」にはこについて考えてみよう。(5)本事業の紹介 - 410 -人工地 原子力発電所主要道(本)一本道・エロウ43IHYUN図2 コロル島の概要と地名の島でのエネルギーの現状が記載されており、これ を読んだ後に「島の概要 (全景)」を見てからゲーム を進める。表示は大きく分けて地図と表形式の表示 とした。放射性廃棄物処分の候補地は「サイト検討 場所」に7カ所が記されている。サイト候補地の詳 細な情報については表形式にしてまとめた。これら の情報はユーザーが自由に画面を切り替えて確認す ることができる。土地利用地図は画面を手でつまむ ように操作することによりピンチイン・ピンチアウ トの操作をすることができる。これら7カ所の候補 地に対してタブバーの「スコア表」において数値を 入力していく。各検討項目にごとにスライダーを手 で操作することによってスコアを入力することがで きる。すべての項目においてデフォルトで中間の 5 一点を表示させてあり、0~10 点の間でスコアを入力 することができる。本ゲームでは、ある地名がある特定の場所を連想 されないことおよび日本人が認識しやすいことを考 慮し、カタカナ名をつかうこととした。図2 および 図3に本ゲームで設定したコロル島の概要およびと 土地利用について示す。用5. ゲームの試行 * 実際に、本研究において構築したゲームを用い て大学生を対象にゲームを試行し、アンケートを 行うとともに、本ゲームにおいて今後検討すべき 問題点や課題を抽出した。通常の紙媒体ではなく て電子デバイスを用いて行ったため、興味が高か ったように思われる。本ゲームを使うことによる 良かった点としては以下の点が挙げられた。・様々なデータを基に考える練習になると思う。北岬国立公園&海岸保全地感ゴルド9000kgrowsPoeteなし牧羊)勢ゴルブル0_50100?業kmムフルエ原子力発電所 (りフルエ西原子力発電所エコロルセントラル産業オランジ原子力発電所トソーレ 沿岸漁業南岸砂漠オランジ南オランジ 旅行とギャンブルグレーンフィッシュグレーン 図3 コロル島の土地利用 ・携帯でできるのが手軽で良いと思う。 ・放射性物質の処分のしにくさを考えさせられた。 ・一つ一つの土地の、処分地としての向き不向き さを考えていくのは楽しかった。 ・色々な視点に立ってサイトの評価を行うことが できた。 ・一長一短ある中で、より重要なファクターの見 極めを行うことができた。 ・鉱物資源への配慮も必要など、今まで以上に候 補地選定への視野が広がった。 ・様々な条件が用意されているので、考えていて 飽きない。 ・同じ条件から候補地を選んでも人によって結果 が違い興味ぶかかった。 ・経済の復興のために廃棄物処分場を建てたいと いう考えも知れた。 ・ゲーム感覚で重要な問題について考えることが できた。 ・土地を選ぶ大変さが分かり、良かった。 ・このゲームをするうちに、実際のサイト選定の 知識が身についていく。 ・各データにリアリティがあり、ほんとうに選定 しているようだった。 ・処分地選定の困難さを理解できた。 ・場所選定を判断するには様々な要素があること が分かる点。 ・放射性廃棄物処分場を建設するときに何を考え る必要があるのか知ることができた。 ・自然への影響はよく考えるが、観光業にも目を 向けて考えたのは新鮮だった。 ・タッチパネルで操作しやすく、紙の資料のよう にかさばらなかった。 ・ゲームとサイト選定を結び付けている事が、斬 新で引き込まれた。411加えるべき課題として以下の点が指摘されまた、加えるべき課題として以下の点が指摘され た。・冬と夏など、季節による環境変化。 ・産業の程度(GNP の差)。 ・各地域に特産品や名所の追加。 ・各町の、処分地建設への賛成派と反対派の人数 比。 ・各地質の、放射性廃棄物の閉じ込めに適してい るかどうかの情報がほしい。 ・高レベル、低レベル廃棄物が直接的に関わって いない気がするので、区分の違いによるサイト選 定の目安などが必要と思う。 ・各土地の、候補地として最も適しているパラメ ーターがあると判断しやすい。 ・各候補地の地質の詳細。 ・海からの輸送のための港の位置の追加。 ・各マップにサイト検討場所の追加。 ・各マップを見やすく統一してあるページ。 ・各候補地の状況(地質・交通・人口など)を一 見できるページを各候補地ごとに設置した方が 良い。 ・廃棄物がどのような影響を及ぼす可能性がある かもデータとしてほしい。 ・工事費や輸送費のような経済的事情にかかわっ てくるデータ。 ・各地域住人の理解度の数値化。・候補地から各原発への移動時間。 ・実在した過去の例を閲覧できるようにする。このように処分地選定には被験者によって必要とな るデータも多岐に渡ることは今後検討する課題であ ると考えられる。しかし、逆に被験者が興味を持っ ていることを示唆しており、今後ワークショップ等 で本ゲームを試行して、有益な教育プログラムとし て活用していきたい。6.まとめ「HLW地層処分地選定に関する日本型合意形成 モデルの構築」における「一般公衆への教育プログ ラムの構築」として、スイス ITC が開発したロール プレイングゲームを基礎として iPod touch にて試行 できるゲームを開発した。これを用いて大学生を対 象にゲームを試行し、良かった点と問題点について 抽出した。今後、問題点についてさらに検証し有益 な教育プログラムとして提案していきたい。本研究は、文部科学省原子力基礎基盤戦略研究イ ニシアティブにより実施された「HLW地層処分地 選定に関する日本型合意形成モデルの構築」の成果 である。参考文献 [1] ITC, The Erehwon Repository Project, BackgroundInformation (2008).412“ “?HLW地層処分地選定に関する日本型合意形成モデルの構築 2 一般公衆への社会的受容に関するゲームの開発“ “奥野 健二,Kenji OKUNO,大矢 恭久,Yasuhisa OYA
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