活性炭素繊維フィルターを用いた放射性ヨウ素除去用局所排風機の開発

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カテゴリ: 第8回
1. はじめに
沸騰水型原子力発電所では原子炉内の核分裂に伴 い、放射性ヨウ素が生成され、蒸気によりタービン や復水器に運ばれる。 - 原子炉で発生した時容器は復水器内で水に戻され た後、再び原子炉へ戻るという閉ループを形成して いるため、外部への放出はない。(Fig.1) 原子炉圧力容しかしながら、原子炉の定期点検によりタービン 車室や復水器室を開放し、点検を行う場合、タービ ン車室内や復水器内に残留している放射性ヨウ素は 開放によりタービン建屋内に拡散される。タービン建屋内の放射性ヨウ素は最終的に大気中 に放出される可能性があることから、放射性ヨウ素 に対する防護対策を考慮する必要があり、除去また は減衰させる目的で局所排風機を使用している。 (Fig.2)従来の局所排風機は活性炭粒子フィルターを使用 していたが、通風容量を大きくすると大量の活性炭 が必要と連絡先:池堂和仁 中部電力株式会社電力技術研究所 〒459-8522 名古屋市緑区大高町字北関山 20-1 E-mail:Ikedou.Kazuhito@chuden.co.jpFig.2 従来市販型局所排風機なり、それに比例して局所排風機も大型となって いた。大型の局所排風機は移動が困難で、かつ活性炭は 粒子状であり取り扱いも不便であった。(Fig.3)
Fig.3 活性炭粒子このため、活性炭粒子を使用した従来市販されて いた局所排風機と同等以上の性能を有しながら、軽 量・コンパクトでフィルター交換作業などの運用性 に優れた局所排風機を開発することとした。612.開発概要2.1 フィルターとなる素材の検討と評価 2.1.1 従来の局所排風機の問題点と解決策従来型の局所排風機が大型となる要因はフィルタ ー素材にヤシ殻活性炭粒子を使用しているため、通 風容量を大きくすると大量の活性炭が必要となり、 その結果、局所排風機も大型となることに問題があ った。また、ヤシ殻活性炭は粒子状であり取り扱いも不 便であった。このため、放射性ヨウ素吸着の観点から、ヤシ殻 活性炭、活性炭素繊維、銀ゼオイラトの3素材につ いて比較検討し(Table.1)、活性炭粒子より軽く、細 孔などの構造が似通っており、同等の性能が期待で きる活性炭素繊維を選定し、性能試験を行うこととTable.2 活性炭素繊維の選定 | 原料 | 化学式 | 特徴 セルロース | [CH100g/n「安価である。強度が弱 系い。1,600m2/g以上が (レーヨン)作れない。 アクリロニ][CNHg]n1,000m2/g までしか作 「トリル系れない。N原子を含む (PAN系)ため有機イオウ化合 物に対して触媒とし て作用し、吸着量が多い。 7 I) - [Cg3H550. ]n3,000m2/gまで作れる。布状が作れる。製造工 (カイノー程が簡単である。 ル繊維) ピッチ系 |[CarHgNO]n「安価である。不純物がした。Table.1 放射性ヨウ素吸着素材の比較 メリット・デメリット不織布活性炭素纖維 Fig.4 活性炭素繊維断面図(610mm×610mm×300mm)ヤ シ「・除去効率が高い ・大量に必要(重い、 殻 廃棄が容易取扱が煩雑) 活性・温度、湿度に弱い |炭 活 性 「・除去効率が高い |・温度、湿度に弱い ・安価・強度がない 素繊・廃棄が容易 「維 「使用量が少なく軽量銀 ゼ「・除去効率が高い 「・非常に高価 ォ |・温度、湿度に強い 「・廃棄費用が高い・大量に必要(重い、 取扱が煩雑)2.1.2 活性炭素繊維フィルターの素材の検討痛強 活性炭素繊維は原料となる素材と加工法の違いか ら、いくつかの種類が市販されているが、通風容量、Fig.5 活性炭素繊維フィルター 価格を考慮してセルロース系の活性炭素繊維を採用* 2.1.4 活性炭素繊維フィルターの評価試験 した。(Table.2)* 製作した活性炭素繊維フィルターの性能評価試験 2.1.3 活性炭素繊維フィルターの製作を実施するためには評価用試験装置が必要である。 2.1.2 の検討結果により、市販のセルロース系の活試験装置はJIS規格に則り、全長13mにおよ 性炭素繊維を採用したが、強度が十分でないため、ぶ長大な装置を製作した。(Fig.6) 不織布で挟むこととした。これは活性炭素繊維が万* 本装置に製作した活性炭素繊維フィルターを取り が一破損しても飛散しないために有効と考える。付けヨウ化メチル(放射性ヨウ素模擬材)を流し、 (Fig.4)フィルター前後のヨウ化メチル濃度を測定すること 次にこの活性炭素繊維を用いて、活性炭素繊維フにより、フィルターの吸着性能を測定する。 ィルターを製作した。(Fig.5)活性炭素繊維フィルターはHEPAフィルターと の互換性を考慮し、HEPAフィルターと同じサイ ズとした。模擬ヨウ素通風方向。試験体Fig.6 JISに準拠したヨウ素吸着実験装置その結果、活性炭素繊維フィルターの性能は99% 以上であることを確認できた。これにより、活性炭粒子フィルターと同等以上の 性能であることが確認できた。(性能は 99%以上)また、フィルター耐圧試験として、フィルター前 後の圧力損失が 1,000Paとなるように風量を調整し、 1 時間放置後にフィルター素材の変形確認ならびに 除去効率試験を行った。その結果、素材が変形することはなく、除去効率 も99%以上であった。 なお、通常のろ過面速は 15cm/sec 程度である。おみください1--8tm/res18cm/tec 24cm/3c [32cm/sec除去効率()0. 004020.30. 40. 50. 60. 70.8 0.91.0 ACF単位面積当たりのCHガス抜算注入園 (cm ACF)Fig.7 活性炭素繊維フィルター風量実験データ2.2 新型局所排風機の製作 2. 2.1 新型局所排風機の設計 - 製作した活性炭素繊維フィルターを採用した、原 子力発電所向け新型局所排風機を製作することとし た。新型局所排風機に求める項目として、以下の4点 を考慮した。 (1) 性能は従来の局所排風機と同等以上 (2) 大きな設備を使用しないで、移動が可能 (3) 狭隘部へも移動可能 (4) 活性炭フィルターの交換が容易2.2.2 新型局所排風機の製作 12.2.1 の要求項目に満足する新型局所排風機を製 作した。(Fig.8)排気口ブロア制御盤・吸気口 ブレフィルター (ごみ除去)ヒーター 活性炭索錢維 フィルター・HA(湿度除去) PAフィルター新型局所排風機(5,000mタイプ) Fig.8 新型局所排風機 (5,000m3/h タイプ)製作した新型局所排風機はプレフィルター、ヒー ター、HEPAフィルターを備えている。空気はまずプレフィルターで大きなごみ等を除去 し、ヒーターで湿分を下げた後、HEPAフィルタ ーで微細な放射性物質を除去し、最後に活性炭素繊 維フィルターで放射性ヨウ素を除去する。なお、写真の 5,000m2/h 以外にブロア部とフィル ターを分割可能な 2,000m2/h タイプを製作した。2.2.3 新型局所排風機の仕様新型局所排風機には大容量型の 5,000m3/h タイプ と標準型の 2,000m3/h タイプがある。その仕様を Table.3 に示す。Table.3 新型局所排風機仕様 - Model 2,000m/h Model 5, 000m”/hジョー・・なんて型式DSC-33H-1DSC-83H-2仕様電源 3相200V電源 3相200V 50/60Hz50/60Hz 寸法寸法 1,500L*820W*2,074H 1,760L*1,460W*2, 335H 重量 280kg重量 410kg性能粉塵除去効率 >99.97% 粉塵除去効率 >99.97% ヨウ素除去効率 >99% 「ヨウ素除去効率 >99% 処理風量 2,000m2/h処理風量 5,000m2/hフィルターHEPA フィルター×1HEPA 71119-X 2 活性炭素繊維フィルター×1 活性炭素繊維フィルター×2フィルター部とブロア部を分割特?633. 結言 (1) サイズが 1/3 にコンパクト化((5,000m3/h タ イプ)できたため、移動にクレーン等が不要とな り、手押しでも移動可能になった。従来型局所排風機との比較を Fig9 に比較図 を Fig.10 に示す。 (2) フィルター素材を活性炭粒子から活性炭素繊維に代えたことにより、素材の軽量化と取扱いが容易になり、交換作業が容易になった。 (3) 活性炭粒子を使用した従来品に比べ、フィルター素材の価格を抑えられたことにより、コストダウンを図ることができた。 | | 従来型の局所排風機 | 開発した局所排風機 | |性能 「除去効率 99%以上除去効率 99%以上。 サ イ 全長 3. 6m| 全長 1.5m重量: | 約 1000Kg410Kg ・移動はクレーン等 ・手押しにて移動可 が必要・流動物がないため、 ・活性炭がこぼれない。 注意は不要、 |性いように注意が必 要・フィルター交換は1・フィルター交換は 運用」 日程: | 30分程 性 ・活性炭重量 320kg|・フィルター重量24kg Fig9 従来型局所排風機と新型局所排風機の比較367011601512フィルタとセットFig. 10 従来型との比較4.使用実績 4.1 浜岡4号機使用実績 浜岡4号機定期点検で使用し、良好な実績を得た。 タービン車室に接続している状況を Fig.11 に、復 水器に接続している状況を Fig12 に示す。17601460第11回定検と比較した場合、放射性ヨウ素の吸着 が速いのが解る。Fig. 11 タービン車室接続状況9Fig.12 復水器接続状況4.2 浜岡4号機使用性能 * 浜岡4号機第12回(平成22年度)定検時にお いて、復水器において新型局所排風機を使用した放 射性ヨウ素状況のグラフを Fig13 に示す| 11回定第12回戦1.05.041.08.05ようw131 濃密(Bq/cm3)2010/07/01108.08.0m1.00-09108-1016主蒸気幕弁 止からの経過日数はay) アララベンチに活性炭粒子を使用した排風機のヨウ素除去データ新型局所排風機を使用した今回のヨウ素除去データ Fig. 13 浜岡4号機におけるヨウ素除去性能645.最後に実際に浜岡原子力発電所での使用した実績から見 ても従来型の局所排風機と比較して非常に良好な結 果となった。 - 活性炭素繊維フィルターは福島第一原子力発電所 の事故においても、小型の局所排風機(アララベンチ) に設置し、建屋換気に使用された。また、原子力発電所以外においても、RI研究施設 やRI医療施設への応用も可能であり、今後もこれら の施設において広く使用されることが期待できる。なお、本装置の開発にあたっては、共同研究先であ る(株)日本環境調査研究所殿のご尽力によるところ が大きく、本稿にて謝辞としたい。(平成 23 年 10月 21 日)651“ “活性炭素繊維フィルターを用いた放射性ヨウ素除去用局所排風機の開発“ “池堂 和仁,Kazuhito IKEDOU
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