強め板下の肉厚測定手法の検討

公開日:
カテゴリ: 第9回
1. はじめに
配管の減肉管理には、一般に超音波厚さ計が用いられ、 測定部の表面から垂直に超音波を入射させて配管の厚さ を測定している。しかしながら、配管の分岐合流部に強 め板が取り付けられている場合や配管支持構造物などの 障害物が測定部位にある場合には、現在の方法では厚さ を測定することができない。測定部位に強め板等の障害 物がある場合でも厚さを測定できる方法として、送信探 触子で超音波を斜めに入射させ、受信探触子で受信した 多数回の反射信号から減肉を測定する方法を検討した。 検討した方法は、今後更にデータを拡充して精度や制約 条件等の継続検討を実施していく等の課題はあるものの、 強め板下部の肉厚管理手法として実機に使用できる可能 性があることが判明した。Fig. 1 Schematic diagram of the reinforcement platearound the nozzle
3. 強め板下の肉厚測定方法
配管の支持構造物などの接近不可部分の厚さを測定2.背景* 発電プラント等において、配管分岐合流部の構造では T管に強め板が設置される場合があるが、この構造では、 強め板下の母管の厚さを直接測定できないことから、本 箇所に対する測定方法の確立が望ましい。本研究の対象 としたT管に強め板が設置された場合の形状をFig.1 に示す。連絡先: 城下 悟、〒550-0014 大阪市西区北堀江 1-18-14、非破壊検査(株)技術本部、電話: 06-6539-5823 E-mail: shiroshita_anken@hihakaikensa.co.jpNozzleReinforcement PlatePipeFig. 1 Schematic diagram of the reinforcement platearound the nozzle3. 強め板下の肉厚測定方法配管の支持構造物などの接近不可部分の厚さを測定す る方法としては、接近不可部を挟んだ両側に探触子を配 置して透過した超音波を測定する方法(例えば CHIME など[1], [2]) や、接近不可部の片側に探触子を配置して反 射した超音波を測定する方法(例えばLORUS [3]) など、 多くの方法が発表されている[4]。 * 測定の原理としては、減肉部での超音波の振幅の低下 を利用して減肉深さ測定する方法と、超音波の伝搬時間 から測定する方法がある。振幅を利用する方法は適用が 容易であるが振幅に影響を与える因子が多く、定量化が 難しい。超音波の伝搬時間を利用する方法は定量化には 適しているが、減肉部での信号が得られにくいことが難 点である。 強め板下の肉厚管理には測定精度の良い方法が望まれ241る。測定精度に優れた方法としては超音波の伝搬時間を FIT + 3 TOFD Y? Time-of-flight diffraction technique) Di 良く知られているが、利用できる探触子間距離が短く、 実用的な探触子間距離はおおよそ板厚の4倍以下である。 配管の強め板は、長いものでは 1m くらいの長さがあり、 探触子間隔を長く取れる測定方法が必要である。本研究では超音波を斜めに入射させ、受信探触子で受 信した多数回の反射信号から減肉を測定する方法(以下、 本手法と記す)を検討した。検討した方法は TOFD 法を 拡張した方法で、Fig.2 に示すように超音波の伝搬時間が 減肉部で変化することを利用しており、軸方向測定と周 方向測定及び斜め方向測定が可能であり、探触子間距離 を長く取ることができる。Reinforcement Plate1RAn area of wall loss(a) Beam propagation in the axial (b) Beam propagation in the direction.circumferential direction Fig.2 Concept of the technique, showing some ray paths between the transmitter (T) and the receiver (R)4.使用装置及び試験体1 本手法の検討に使用した装置及び製作した試験体を次 に示す。 (1) 試験装置:超音波検査装置(非破壊検査機製) (2) 探触子周波数:7.5MHz,5MHz, 3.5MHz (3) 振動子寸法:0.5““, 0.375““ (4) 探触子用くさび : 45° , 60° , 70° (5) 試験体 A (550ASch40×1m):測定精度確認用(Fig.3) (0) 試験体B(550ASch40×1m) :検出限界確認用(Fig.4) (7) 試験体 C (550ASch40×1m) :検出不可範囲確認用(Fig.5) (8) 実機廃材3体:300A(材質 CS STPT42)550A, 800A (HCS SB42) 試験体 A~Cには Fig.3 ~Fig.5に示すように放電加工及 びグラインダで軸方向、周方向及び斜め方向に模擬減肉 を挿入した。 Fig.3 ~Fig.5 の d は挿入した減肉深さ(mm)を示す。1620 40 60 4,0202-2440(Inner surface of the test specimen A)Fig. 3 Appearance of the test specimen A (bottom), containing wall loss by electrical discharge machining in the circumference direction (top left) and axis direction (top right)08 16 0.8*.10.8 16 080-1120901234-56-17:30(Inner surface of the test specimen B)27スターFig. 4 Appearance of the test specimen B (bottom), containing wall loss by electrical discharge machining in the circumference direction (top left) and axis direction (top right)242Flat bottom hole by EDM(Location of the flat bottom hole)れていない。120, d2.0出するいます。wommine150(Appearance of the flat bottom hole)んにちはプルースこ35Fig.5 Appearance of the test specimen C (bottom), containing circular wall loss by electrical discharge machining (middle) and the location of circular wall loss (top)5. 試験方法・測定は探触子走査用ジグを使用した。探触子走査用ジ グは軸方向走査用(周方向測定)と周方向走査用(軸方 向測定)の二つを製作し、軸方向走査用ジグは斜め方向 測定も可能な構造とした。測定方向は試験体に挿入した減肉の位置により軸方向 測定、周方向測定及び斜め方向測定を選択して実施した。6. 試験結果6.1 軸方向に挿入した減肉の検出 - 試験体 A の内面に挿入した軸方向の階段状減肉(計画 深さ 2.0mm、4. 0mm 及び 6. 0mm)及び試験体Bの内面に挿 入した軸方向の階段状減肉(計画深さ 0. 8mm 及び 1. 6man) を本手法で検出した結果をそれぞれ Fig.6 及び Fig.7 に示 す。軸方向に挿入した減肉は全て本手法で検出できた。図中の検出結果の画像は各探触子位置で得られた信号 強度をグレイスケールで置き換えたもので、以降の検出 画像も同じである。d6.0mm 04.1mmd4.0mmd2.0mmd2,0mm.....(Actual depth of wall loss) Nozzle ( 0 355.6mm) Pipe ( 558.8xt15.3mm)間201610月1 dla mim mmk139mm211.9mm40mm中Fig.6 B-scan from stair-step wall loss in the axial direction of the test specimen A, and figures show actual depth of wall loss (top) and measured depth ofwall loss from the B-scan datad1.7mmd0.8mmd0.8mm(Actual depth of wall loss) Nozle (p355.6mm) Pipe(p558.8×115.3mm)dammsこのおっFig. 7 B-scan from stair-step wall loss in the axial direction of the test specimen B, and figures show actual depth of wall loss (top) and measured depth ofwall loss from the B-scan data2436.2 周方向に挿入した減肉の検出 1. 試験体 A の内面に挿入した周方向の階段状減肉(計画 深さ 2.0mm、4.0mm 及び 6.0mm) 及び試験体Bの内面に 挿入した周方向の階段状減肉(計画深さ 0.8mm 及び 1.6mm)を本手法で検出した結果をそれぞれ Fig.8 及び Fig.9に示す。 周方向に挿入した減肉は全て本手法で検出できた。d6.0mm d4.1mm d2.1mm d4.1mm.d2.1mm 1(Actual depth of walt loss) Pipe(p558.8xt15.3mm) Nozzle ( 0 355.6mm)Ede200mm 02:5rom ook01 8mmFig.8 B-scan from stair-step wall loss in the circumferential direction of the test specimen A, andfigures show actual depth of wall loss (top) and measured depth of wall loss from the B-scan datad1.6mm.d0.8mm...d0.8mm““dog.........* / (Actual depth of wall loss) Pipe(小 558.8xt15.3mm) Nozzle ( 0 355.6mm)d08iMFig. 9 B-scan from stair-step wall loss in the circumferential direction of the test specimen A, andfigures show actual depth of wall loss (top) and measured depth of wall loss from the B-scan data6.3 斜め方向に挿入した滅肉の検出 1 試験体 C の内面に挿入した斜め方向位置(軸方向と周 方向の中間位置)の直径 20mm、深さ 2.0mm の円形溝を 本手法で検出した結果を Fig.10 に示す。試験体内表面か らの信号に近接した位置に円形溝の信号が検出されている。ReceiverUltrasonic beamTransmitterCircular wall loss学会Circular wall lossFig.10 B-scan from circular wall loss6.4 試験結果の評価試験体A、B及びCの各方向に位置する減肉は、全て 本手法で検出できた。測定方向を組み合わせて実施する ことで枝管周りのどの位置に減肉があっても本手法での ・測定が可能である。試験体で得られた本手法による測定精度を Fig.11 に示 す。本手法による測定誤差は±1.0mm 以内であった。今 後、適切な探触子を用いることで±0.5mm 程度の誤差 で厚さ測定ができる可能性がある。Measured wall loss (mm)0 1 2 3 4 5 6Actual depth of wall loss (mm)7Fig. 11 Measured wall loss, the solid line shows a 1:1 relationship2447. 実機への適用検討1 本手法を実機に適用するには強め板が取り付けられて いる影響、大口径及び厚肉により超音波の伝搬距離が長 くなるための影響を調査する必要がある。 7.1 強め板の影響強め板が取り付けられている実機廃材(300ASch40、母 管厚さ 10.3mm) を使用して強め板が本手法に与える影響 を調査することとした。 * 強め板付き実機廃材の各部の寸法を Fig.12 に示す。本 試験体は内面に減肉が認められない健全品であるため Fig.12 に示す位置の内面に模擬減肉を挿入し、強め板が本 手法による肉厚測定に与える影響を調査することとした。減肉挿入前の測定画像を Fig.13 に、減肉挿入後の測定 画像を Fig.14 に示す。減肉挿入後は強め板下の信号間隔 が母管部の信号間隔に比べて短くなっており、母管部と の比較から減肉部の検出が可能である。このように強め板 下の減肉を本手法で検出できることが確認された。1119Wall loss on inside surface by grinding2281114,4191216Reinforcement plate Nozzle(p114.3mm)Welding welongNozzle (0216.3mm)Fig.12 Pipe specimen with reinforcement platearound the nozzleReinforcement planakthicknessFig.13 B-scan from pipe specimen with reinforcementplate around the nozzle (before grinding)PlinerWelding.Pire under Reinforcementthickness2Anck1100KITEさほどき込ンバー・・・Fig.14 B-scan from pipe specimen with reinforcementplate around the nozzle (after grinding)7.2 厚肉、大口径の影響 * 実機廃材(減肉) 2体 (800A、550A)を使用して本手 法による減肉の検出を確認した。実機廃材の減肉を検出 した結果の画像を Fig.15 に示す。減肉の認められた側の 信号は健全部側に比べて信号間隔が短くなっており、健 全部との比較から減肉部の検出が可能である。この結果、 800A(外径 812.8mm、厚さ 56mm)のように厚肉、大口径 管の場合も本手法で減肉を検出することができた。Wall loss regionThicknesThicknesSAN(a) Pipe specimen: 812.8mm in outside diameterWall loss regionNoNozzle(b) Pipe specimen: 558.8mm in outside diameterFig.15 B-scans from pipe specimens withreinforcement plates2458. おわりに調査の結果明らかになったことは次のとおりである。 ・軸方向、周方向及び斜め方向の測定を組み合わせることにより、枝管周りの位置の減肉が全て検出できた。 ・大口径(800A)に適用した結果、最大探触子間距離は 約1mでも適用可能であり、厚肉(56mm)にも適用可 能であった。 ・測定誤差は±1.0mm 以内であった。今後、適切な探触 子を用いることで±0.5mm程度の誤差で厚さ測定がで きる可能性がある。 今後更に検証試験体を充実の上、精度や制約条件等の 検証を実施し、データを拡充していく等の課題はあるも のの、本手法により強め板下の肉厚測定を行える可能性 を見出した。「謝辞本報告は、電力会社11社(関西電力(株)、北海道電力 (株)、東北電力 (株)、東京電力 (株)、中部電力 (株)、 北陸電力(株)、中国電力(株)、四国電力(株)、九 州電力(株)、日本原子力発電(株)、電源開発(株)) からの平成21年度委託調査として実施しました。ここに 記して感謝を申し上げます。参考文献 [1] Fiona Ravenscroft: CHIME- A New Ultrasonic Method for Rapid Screening of Pipe, Plate and Inaccessible Geometries, 7th European Conference on Non-Destructive Testing, 26-29 May 1998 [2] SF Burch: M-skip: a quantitative technique for the measurement of wall loss in inaccessible components, Insight Vol 49 No4 April 2007, pp190-194 [3] M.B. Hoppenbrouwers: LORUS to Detect Hidden Corrosion, 7th European Conference on Non-Destructive Testing, 26-29 May 1998 [4] 永井辰之:「非破壊検査技術の保守検査への適用例 VI、配管・機器設備の腐食検査技術」、非破壊検査第56 巻5号(2007)、pp231-235246“ “強め板下の肉厚測定手法の検討“ “城下 悟,Satoru SHIROSHITA,永井 辰之,Tatsuyuki NAGAI,天野 洋一,Yoichi AMANO,平岡 順之祐,Junnosuke HIRAOKA
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)