ケーブルトレイの1時間耐火仕様の検討

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カテゴリ: 第16回
ケーブルトレイの 1 時間耐火仕様の検討 Examination of 1 hour fireproof specification of cable tray 中部電力(株) 川井 貴弘 Takahiro KAWAI Member 中部電力(株) 水野 道太 Michita MIZUNO Member 中部電力(株) 加藤 寿宏 Toshihiro Katou 中部電力(株) 辰巳 義和 Yoshikazu TATSUMI Abstract Among the fire protection measures in nuclear power plants, the fireproof performance of the fireproof partition installed for system separation is required to satisfy the fire endurance test based on the Building Standard Law. In this time, we report on the result of examining the specification of the fireproof material and the attachment method to the cable tray etc. For the fireproof partition (1 hour fireproof) installed in the cable tray that satisfies the above requirements. Keywords: Cable tray,Fireproof partition,Fire endurance test,Building Standards Law,ISO834,system separation, NUREG 1805,FDTs 1 序論 浜岡原子力発電所では、原子炉の高温停止または低温停止に影響を及ぼす可能性のあるケーブルが敷設された ケーブルトレイについて、火災防護対策として互いに異なる系列間に1 時間の耐火能力を有した耐火隔壁および火災感知器、自動消火設備を設置することとしている(Fig. 1 参照)。 このうち、耐火隔壁においては、建築基準法に基づく耐火試験により、1 時間耐火性能を満足する必要があることから、今回、1 時間耐火性能を有する耐火材の仕様およびケーブルトレイヘの取付け方法等について検討したた め、その結果を報告する。 Fig. 1 Outline of fire protection measures 連絡先 辰巳 義和 〒461-8680 愛知県名古屋市東区東新町1 番地中部電力株式会社 原子力部 設備設計グループE-mail: Tatsumi.Yoshikazu@chuden.co.jp 2 ケーブルトレイ1 時間耐火隔壁の検討 1 時間耐火隔壁に求められる耐火性能は、建築基準法における壁・床に対する耐火試験の判定基準を満足する必要がある。浜岡原子力発電所のケーブルトレイはラダートレイを採用しており、上記要求を満足するためにはケーブルトレイ全体を覆うように耐火材を取り付ける必要 があるため、施工性を考慮して柔軟性があり現場加工が容易な耐火材を選定した。 また、ケーブルトレイに耐火材を取り付けることによ るケーブルトレイ内部の熱籠りの影響が大きくなると、ケーブルの許容電流値が低下するため、ケーブルのサイズアップやリルートが必要になる。このため、ケーブル トレイ内部の熱籠りの影響を低減するために、ケーブル トレイ内の熱が外ヘ逃げ易いよう、耐火性能を確保しつつ耐火材の厚さを薄くすることを検討した。 以上を踏まえケーブルトレイの1 時間耐火隔壁として試験体を検討し、耐火試験にて耐火性能を確認した。 3 耐火試験 試験体 ・試験体① 使用する耐火材として、薄く柔軟性があり高い遮炎、 遮熱性能を有する発砲性耐火シートを採用した。過去の 試験結果等の知見を踏まえ、必要な耐火性能を確保する ため発砲性耐火シートを4 重巻きとした。発砲性耐火シートの長手方向の重ね代は突き合わせとし、目地からの 熱の侵入を防ぐため、各層の目地は交互に重なるようにずらして巻き、発泡性耐火シートが加熱により発砲した 際の脱落防止を目的に延焼防止シートで覆う仕様とした。 また、ケーブルトレイ上部には火災源がないことから1 時間耐火性能を求めないため、熱籠りの影響を考慮して、ケーブルトレイ上部については発泡性耐火シートで覆われることのない構造とし、4 重巻きの発泡性耐火シートはヘルパーロックで固定する仕様とした。試験体①の断面図をFig.2 に示す。 Cross section How to wind foamable fireproof sheet Fig. 2 Test piece ① ・試験体② 試験体①より現場施工性を高めることを目的に、発泡性耐火シートの重ね巻きを減らす仕様を検討した。発砲性耐火シートよりも厚くなるが、柔軟性があり施工し易 い断熱材を採用し、遮熱のためにケーブルトレイ側面お よび下面に取り付けた。遮炎・遮熱のための発泡性耐火シートは1 重とし、長手方向のシートの重ね代は50mm として、施工性を考慮してケーブルトレイ全体を覆う仕様とした。 試験体②の断面図をFig.3 に示す。 Cross section How to wind foamable fireproof sheet Fig. 3 Test piece ② 試験条件 ケーブルトレイの1 時間耐火隔壁の火災耐久試験は、 建築基準法における1 時間耐火壁の仕様規格として、国土交通大臣認定機関の一般財団法人建材試験センターが定める「防耐火性能試験・評価業務方法書Jに基づき、耐火炉を用いてISO834 の標準加熱曲線(Fig. 4 参照)に従って試験体を加熱した。 Fig. 4 Standard heating curve 試験体をFig.5 に示すように耐火炉に設置し、ケーブルトレイ下面から加熱したときの耐火材裏面およびトレイ内のケーブル表面の温度を測定した。 なお、火災が発生した際の高温ガス層により、ケーブ ルトレイ上面及び側面が温度影響を受け加熱されることを考慮し、NUREG1805 で定められた算出方法(FDTs) にて火災発生時の温度上昇を評価し、試験体の上面およ び側面を ー で覆い ータで評価温度(130 )に加熱 した。 本試験における判定基準は以下の通り。 ・非加熱側ヘ10 秒を超えて継続する火炎の噴出がないこと※1 ・非加熱面で10 秒を超えて継続する発炎がないこと※1 ・火炎が通る亀裂等の損傷及び隙間を生じないこと※1 ・試験終了時まで、試験体の裏面温度上昇が、平均で 140K 以下、最高で180K 以下であること※1 ・ケーブルの表面温度が損傷温度(205 )を超えないこと※2 ・ケーブルが健全であること(導通確認、絶縁抵抗0.4M Q以上)※3 ※1 建築基準法に基づく判定基準 ※2 NUREG のケーブル損傷温度に基づく判定基準 ※3 電気設備の技術基準に基づく判定基準 Method of fire endurance test Thermocouple mounting position A-Aarrow view Fig. 5 Outline of fire endurance test 試験結果 火災耐久試験の結果を以下に示す。 ・試験体① Fig.6 に試験体①の耐火材裏面温度およびケーブル表面温度の最も高くなった測定点の試験結果を示す。 非加熱面ヘの火炎の噴出、発炎、亀裂、損傷および隙間はなく、耐火材の裏面温度変化はFig.5(b)の測定点5 点の平均温度上昇が 106.2K、最高温度上昇(Fig.5(b)熱電対 ③)が 133.2K、ケーブル表面温度の最高温度が 82.2 であり、導通確認、絶縁抵抗測定の結果も問題なかった。以上のことから、試験体①の仕様は1 時間耐火性能を満足することを確認した。 Fig. 6 Result of test piece ① ・試験体② Fig.7 に試験体②の耐火材裏面温度およびケーブル表面温度が最も高くなった測定点の試験結果を示す。 非加熱面ヘの火炎の噴出、発炎、亀裂、損傷および隙間は確認されず、導通確認、絶縁抵抗測定の結果は問題 なかったが、耐火材の裏面温度変化はFig.5(b)の測定点5 点の平均温度上昇が 413.0K、最高温度上昇(Fig.5(b)熱電対①)が 559.8K、ケーブル表面温度の最高温度が 253.0 であり判定基準を満足することができなかった。 Fig. 7 Result of test piece ② 試験体②については、発泡性耐火シート1 枚にて耐火炉内の高温ガスがケーブルトレイ内部ヘの侵入を防ぐことを期待しており、発泡性耐火シートで断熱しきれなかった熱を断熱材にて遮熱できることを想定していた。しかし、試験結果において判定基準を満足しなかった原因 として、発泡性耐火シート1 枚による遮熱が十分でなかったことに加え、加熱初期よりケーブルトレイ内部ヘ著しい発煙が確認されたことから、炉内の圧力により想定していたよりも多くの熱が、シート間の隙間からトレイ側に流入したことが考えられる。以上を踏まえ、試験体 ②を改良した試験体③について検討し、火災耐久試験を行った。 改良した試験体の仕様および試験結果 ・試験体③ 試験体②の耐火性能をさらに向上させるために発泡性耐火シートは2 重とし、断熱材は試験体②の断熱材よりも熱伝導率の低いものとする仕様とした。さらに、シート間から熱がトレイ内部に流入することを防ぐため、試験体①と同様に発泡性耐火シートの長手方向の重ね代は 突き合わせとするが、1 層目と2 層目の目地は交互に重なるようにずらす仕様とし、3.1 項の方法で火災耐久試験を実施した。試験体③の断面図をFig.8 に示す。 Cross section How to wind foamable fireproof sheet Fig. 8 Test piece ③ Fig.9 に試験体③の耐火材裏面温度およびケーブル表面温度が最も高くなった測定点の試験結果を示す。 Fig. 9 Result of test piece ③ 非加熱面ヘの火炎の噴出、発炎、亀裂、損傷および隙間はなく、耐火材の裏面温度変化はFig.5(b)の測定点5 点の平均温度上昇が 118.9K、最高温度上昇(Fig.5(b)熱電対 )が 141.4K、ケーブル表面温度の最高温度が 74.9 であり、導通確認、絶縁抵抗測定の結果も問題なかった。以上のことから、試験体③の仕様は1 時間耐火性能を満足することを確認した。 5 結論 本稿によって明らかになったことを以下に示す。 (1)ケーブルトレイの 1 時間耐火隔壁は、耐火シー トの枚数とシート間の熱の侵入を考慮した試験体①および③の仕様にて、建築基準法の要求する 1 時間耐火性能を満足可能であることを確認した。現場施工性を考慮して試験体③の仕様を採用することとする。ただし、熱籠りの影響を考慮すると、仕様上試験体①が有利であるため、熱籠りの影響があるケーブルトレイについては試験体①の仕様の採用も考慮する。 (2)ケーブルトレイの 1 時間耐火隔壁は、試験体② の仕様では、建築基準法の要求する 1 時間耐火性能を満足できないことを確認した。発泡性耐火シート 1 重では建築基準法の要求を満足するための十分な遮熱ができないこと、目地からの高温ガス流入を十分に防ぐことができないことが原因であると明らかになったため、ケーブルトレイ以外の耐火隔壁検討においても、発砲性耐火シートの枚数と目地の処理の仕方を考慮する必要がある。
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