九州電力の火山影響評価について

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カテゴリ: 第15回
九州電力の火山影響評価について Volcanic effect assessment for nuclear power plant by Kyushu Electric Power Company 九州電力株式会社赤司 二郎JirouAKASHI Based on guidelines for volcanic effect assessment for nuclear power plant, we evaluated that the possibility of volcanic hazards affecting the safety of our nuclear power plants during the lifetime of the plant is sufficiently small by using the latest technical knowledge. Furthermore, we are monitoring volcanic activities for the purpose of continuously confirming that the possibility of the eruption which generates volcanic hazards (pyroclastic flow etc.) unable to be addressed is sufficiently small. Keywords: volcano, pyroclastic flow 1.はじめに 平成23 年3 月の福島第一原子力発電所事故の教訓や最新の技術的知見、海外の規制動向等を踏まえ、新規制基準が平成25 年7 月に施行された。 火山については、「原子力発電所の火山影響評価ガイド (火山ガイド)」で、原子力発電所に影響を及ぼし得る火山 を対象に、将来の活動可能性及び火山事象による発電所への影響を評価することが求められている。 当社は、火山ガイドに基づき、最新の技術的知見を踏 まえ、発電所の運用期間中に火山事象が当社の原子力発 電所の安全性に影響を及ぼす可能性は十分に小さいと評 価している。 更に、設計対応不可能な火山事象(火砕流など)が発電所に到達する噴火の可能性が十分小さいことを継続的に確認することを目的としてモニタリングを行っている。 図1 火山影響評価の基本フロー[1] 九州電力株式会社、赤司 二郎、〒810-8720 福岡市中央区渡辺通 2-1-82、テクニカルソリューション統括本部 土木建築本部 、E-mail: Jirou_Akashi@kyuden.co.jp 2.九州電力の火山影響評価 原子力発電所に影響を及ぼし得る火山の抽出 火山ガイドは、発電所から半径160 ㎞の範囲にある第 四紀(約258 万年前迄)火山の完新世(約1 万年前迄)における活動の有無を確認するとともに、完新世に活動を行っていない火山については、過去の火山活動履歴に基づく検討を行い、将来の火山活動可能性が否定できない場合は、個別評価対象とすることを示している。 ただし、降下火砕物(火山灰)が敷地及びその周辺に認められる火山に関しては、上記の範囲によらず、将来の火山活動可能性が否定できない場合は、個別評価対象とすることを示している。 当社は、過去の火山活動履歴などを踏まえ、個別評価 対象火山として玄海21、川内14 火山を抽出している。 原子力発電所の運用期間における火山活動に関する個別評価 設計対応不可能な火山事象の評価 火山ガイドは、将来活動する可能性がある火山について、原子力発電所の運用期間中(発電所に核燃料が存在する 期間)における活動の可能性を総合的に評価し、可能性が 十分小さいと判断できない場合は、火山活動の規模及びその火山事象の影響評価を実施することを示している。当社は、過去に破局的噴火(100km3以上の噴出物を伴う噴 火)を発生させたカルデラ火山については、過去の活動履 歴や地下構造に関する情報に基づき、噴火間隔、噴火ステージ、地下のマグマ溜まりの状況を検討し、運用期間 中の破局的噴火の可能性は十分小さいと評価している。運用期間中の噴火規模としては、カルデラ火山は現在 の噴火ステージにおける既往最大規模、それ以外の火山は既往最大規模の噴火を考慮した上で、運用期間中に設計対応不可能な火山事象(火砕流、溶岩流、岩屑なだれ、地滑り及び斜面崩壊、新しい火口の開口、地殻変動)によって発電所の安全性に影響を及ぼす可能性は十分小さいと評価 している。 設計対応不可能な火山事象以外の評価 当社は、文献調査、地質調査等の結果を踏まえ、玄海 では、九重山における約5 万年前の九重第1噴火による降下火砕物(最大層厚10cm)、川内では、桜島における約 1.3万年前の桜島薩摩噴火による降下火砕物(最大層厚 15cm)が敷地において最も影響が大きいと評価し、降下火砕物の直接的影響(荷重や腐食等)や間接的影響(外部電源喪失及び交通の途絶)によって安全機能が損なわれない設計や運転対応を行うこととしている。 降下火砕物以外の火山事象については、いずれも敷地 に影響を及ぼさないと評価している。 火山活動のモニタリング 火山ガイドは、運用期間中に火山活動の可能性が十分 小さいと評価した火山であっても、設計対応不可能な火 山事象が敷地に到達したと考えられる火山に対しては、 噴火可能性が十分小さいことを継続的に確認することを 目的として運用期間中のモニタリングを行い、噴火可能 性につながるモニタリング結果が観測された場合には、 必要な判断・対応をとることを示している。 当社は、川内では、発電所から半径5km の範囲に火砕流堆積物が認められていることから、設計対応不可能な火山事象が過去に敷地に到達したことが否定できないと評価している加久藤・小林、姶良、阿多に、阿蘇及び鬼界を加えた5つのカルデラ火山を対象に、運用期間中のモニタリングを実施。 玄海は、発電所から半径5km の範囲に火砕流堆積物は認められないが、自然現象における不確かさを考慮し、川内と同様の5つのカルデラ火山を対象に、運用期間中のモニタリングを実施。 破局的噴火の早期の段階であるマグマの供給時に変化 が現れる地殻変動及び地震活動について、既存観測網等 による観測データ、公的機関による発表情報等の収集・ 分析を行い、第三者の火山専門家の助言を得た評価を定 期的にかつ警戒時には臨時で行うことで火山活動状況に 変化がないことを定期的に確認する計画としている。 対象火山の状態に変化が生じた場合は、設計対応不可 能な火山事象を伴う破局的噴火への発展の可能性を評価 し、その可能性がある場合には、原子炉の運転の停止、 燃料体等の搬出等を実施する方針としている。 図2 モニタリング対象火山 3.おわりに 当社は、姶良カルデラ直下のマグマ溜まりの状況(規模 や深さ)等の地下構造を把握する目的で、大規模な人工地 震探査(鹿児島大学への委託研究:H29~H31)や水準測量を実施中であり、今後も、最新の技術的知見を継続的に収集・反映し、更なる安全性・信頼性の向上に努めていく。 参考文献 原子力規制委員会、原子力発電所の火山影響評価ガイ ド、平成25 年6 月制定、平成29 年11 月改訂 原子力規制委員会、川内原子力発電所の発電用原子炉 設置変更許可申請書に関する審査書、平成26 年9 月 原子力規制委員会、玄海原子力発電所の発電用原子炉 設置変更許可申請書に関する審査書、平成29 年1 月
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