港湾監視ネットワークシステムによる沿岸重要施設における安全強化対策について

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カテゴリ: 第15回
港湾監視ネットワークシステムによる 沿岸重要施設における安全強化対策について Safety improvement of coastal important facilities using Harbor Monitoring Network System 日本電気株式会社 田中 宏樹 Hiroki TANAKA Member 日本電気株式会社 小川 誠 Makoto OGAWA Member 日本電気株式会社 小林 稔 Minoru KOBAYASHI Member 日本電気株式会社 中野 正規 Masaki NAKANO Member 日本電気株式会社 山口 功 Isao YAMAGUCHI Member Abstract Recently, the threat of terrorists is increasing in all of the world. In addition to that, the terrorists are trying to invade to an important facility by not only from land and air but also underwater. So, underwater monitoring system is highly demanded for the monitoring of the costal important facilities such as power plants. Then, NEC suggest Harbor Monitoring Network System for monitoring a terrorist approaching from land, air, and underwater. In this paper, we focus on underwater monitoring system using active sonar. We introduce our products and report our consideration for reducing an error detection in shallow sea. Keywords: Harbor monitoring system, acoustic sensor, Diver detection, multiple hypothesis tracking, sonar 1 海から忍び寄る脅威への対処 沿岸部には原子力発電所をはじめ、各種発電所やエネ ルギー備蓄基地、プラント、港湾等、社会基盤を支える重要な施設が多く存在する。従って、水際の安全強化対策を講じることは、これらの沿岸重要施設のセキュリティ強化にも応用できるため、社会基盤全体の安全保障の水準の底上げに繋がると考えられる。 従来は海の酋威として、密輸や密漁、不法移民等が列挙されてきた。しかしながら、近年の物流網の発展と技 術の高度化に伴い、武器を有するダイバーやドローン、UUV(Unmanned Underwater Vehicle:水中無人機)等、殺傷能力が高く、多様な酋威が台頭しており、中東を中心に、世界各地にテロの酋威が拡大している。この情勢を 受け、世界各国では重要インフラ施設を中心に危機管理体制が見直され始め、急速に対策の強化が行われている。一方で、日本国内においては、多くの施設において、監 視カメラやレーダー、目視確認等、従来形式の警備が中心であることから、国内における が発 する に、多様な酋威を想定した対策が急務と考えられる。 連絡先: 田中 宏樹 〒183-8501 東京都府中市日新町1-10 日本電気株式会社 電波・誘導事業部 統合USW 推進室 E-mail: h-tanaka@hz.jp.nec.com 2 港湾監視ネットワークシステム NECが提唱する港湾監視ネットワークシステムの全 体概要図をFig.1 に示す。本システムは、カメラ、レーダー、ソーナーを用い、光波、電波、音波によって、陸上、 空中、水中からの侵入者を3次元的かつ統合的に常時監視するシステムである。 Fig.1 Over view of NEC Harbor Monitoring Network System. 沿岸重要施設へと忍び寄る酋威を侵入経路別に、陸上、空中、水中に分類し、それぞれに適した監視方法を検討 する。陸上からの侵入者は、現在、監視カメラやレーダ ーによる侵入者監視や IC カード・ 体認 を用いた入退場ゲート テラヘルツ波による検知装置を用いた携行品チェック等の手法が導入されており、最も対策が進ん でいる。これらの対策のうち、監視カメラやレーダーは、空中から接近・侵入するドローン等の酋威の監視にも応用が可能である一方で、水中において光波や電波は遠く まで伝搬しないため、他の手法を導入する必要がある。水中からの侵入を企図する不審者らは 船舶により重要施設に接近したのち潜水し、水中スクーターなどを用いて水中から侵入すると想定される.そこで、港湾監視ネットワークシステムでは、光波や電波に比べ、水中でも遠くまで伝搬しやすい音波を用いて、水中からの侵入を企図する不審者を監視する。本稿では、この水中の監 視に焦点を当てて報告する。 港湾監視ネットワークシステムでは、水中から侵入する酋威を監視するためにアクティブソーナーを用いる。水中に設置したアクティブソーナーより音波を放射し、ダイバー等のターゲットにより反射された音波を、再びアクティブソーナーで受音する。その後、陸上での処理により、送波から受波までの時間差および反射信号の到来方位等をもとに、検出目標の位置や種別を判断し、監視画面に表示する。 監視室における操作・表示端末の監視画面イメージをFig.2 に示す。監視画面では、 動で 知した目標の位置や航跡のシンボル表示に加え、音響データの強弱等の表示が可能である。これらの情報に加え、 知目標の移動速度等の情報をもとに、上陸予想地点や上陸予想時間を 算出し、表示する等、対処を支援する機能を有する。ま た、目標が重要施設より一定の距離を超えて接近した場合に、警告音および警告灯によって監視者の視角、聴覚に知らせる等、初心者でも容易に操作、監視業務が行えるよう設計されている。 Fig.2 Information monitor of system. 3 アクティブソーナーについて 水中の監視に用いる、アクティブソーナーをFig.3 に示 す。アクティブソーナーは、音波の送波器、受波器から構成されている。送波器から音波を放射し、ターゲットにより反射された音波を、受波器によって受音する。受信信号はアクティブソーナー内に有する電子回路部にお いて、アナログ信号からデジタル信号に変換されたのち、 陸上の監視室に設置されている操作・表示用端末まで、水中ケーブルを通じて伝送される。 Fig.3 Active sonar of Harbor Monitoring System アクティブソーナーのスペックをTable 1 に示す。本 ソーナーでは、水平方向の視野角は360 度のため、全方位同時に送波・受波が可能となっており、抜け湘れのないリアルタイムな水中監視の実現を支援している。また、設置深度は50 m まで対応しているため、一般的なダイバーが潜水可能といわれている深度を全体的に監視可能である。設置場所についても、海底への 定設置の ならず、橋脚やオイルリグなどの水上建造物へも 定可能のため、設置方法への幅広いニーズに対応可能である。 Table 1 Specifications of active sonar Specifications Transmitting frequency75-95 kHz Horizontal coverage360 deg InterfaceLAN (1000base-T) Max. operating depth50 m Installation locationSeabed or bridge pier アクティブソーナーの設置例をFig.4 に示す。設置場所付近に岸壁がある場合は、ユニック車により、水中にセ ンサを吊架する。本ソーナーは気中重量に比べ水中重量は軽量なため、水中の水平移動であれば、ダイバー2名 程度で持ち上げて移動することが可能である。 (a) (b) Fig.4 Active sonar on quay and hanging down to sea using a crane (b). 設置場所が陸から離れている場合は、クレーンつきの台船を用い、Fig.5 に示すように設置可能である。いずれの方法も大規 な 事は必要なく、容易に設置できる。 Fig.5 Active sonar Installation using pontoon. 4 センサ情報の表示と処理 アクティブソーナーが音響信号を受信してから、監視 画面が表示されるまでの信号および情報の処理ブロック をFig.6 に示す。 Fig.6 Schematic diagram of sonar signal processing. まず、信号処理としてノイズ除去等を行うために指向 性合成やフィルタリング、相関処理を行ったのち、信号の到来方位および距離‘との信号レベルデータに変換す る。その後、信号レベルデータより目標からの反射音であるエコーを検出する。エコー検出において、Fig.7 に示すように、単純に信号レベル対雑音比 (S/N 比) の閾値判 定を行うと、目標からの反射波に加えて、残響や、波音や水中 物が発 する雑音をエコーとして、誤検出してしまう。従って、一定時間反射音が持続することなど、様々な情報を考慮したうえで、エコー検出を判定することで、誤警報を抑制する必要がある。 Fig.7 Echo signal detection using S/N-threshold. 検出されたエコーを目標として追尾するために、方位・距離の時間変化を計測し、航跡として記録、表示される。最 的に移動速度や到 予想時 等をもとに3 階の酋威度に振り分けられ、酋威度に合わせた警告が表示される。 以上の方法により、アクティブソーナーが受信した音響信号は処理され、 知結果として可視化される。 5 実測データと誤検出の防止 アクティブソーナーを用いた水中目標の 知が難し い条件のひとつとして、広範囲にわたって水深が浅い海 (以 、 浅海 と )が挙げられる。その理 は、 浅海 ではソーナーから比較的近い距離に海底と波面があるため、送信音が多重に反響するため、残響レベル が大きく、誤警報が出やすくなるためである。本稿では、Fig.8 に示すように、ダイバー2名が同時に泳ぎ、それぞれの位置を追尾しながら、誤警報低減を図る方法を検討した結果を例として報告する。 Fig.8 Outline of 2 divers detection measurement at shallow sea. アクティブソーナーは重要施設を仮定した建屋より50 m、水深約10 m の位置に設置した。2 名のダイバーは、アクティブソーナーより約400 m の位置に停泊した小型ボートから、時間差をつけてDiver1, 2 の順に水中に侵入し、図中に示すコースを泳いだ。 検出に関わるパラメータを 浅海 向けに調整するために、音響信号画面より切り出した、ダイバーからのエコーと誤警報の拡大画像より、信号の特徴を比較する。 まず、Fig.9 に示すダイバーのエコーは中心ほど信号強度が強くなる、山なりとなっているのに対し、誤警報では強度分布が全体的に低く、平坦であることが分かる。 Fig.9 Comparison of echo and false detection signal level. 本知見をもとに、誤警報の信号レベルに対する頻度の分布を分析したところ、Fig.10 のような結果が得られた。S/N 閾値を2.0 dB に設定することで、誤警報を75%に低減できることが示唆された。 Fig.10 Dependence of observation ratio on signal level. 続いて、信号長を比較すると、Fig.11 に示すように、ダイバーのエコーのほうが、誤警報に比べ、信号長が長いことが分かる。ダイバーのエコー長は9 セル以上であ るのに対し、誤警報は10 セル以 であった。 Fig.11 Comparison of echo and false detection signal length. そこで、誤警報を可能な限り落とすため、セル11 未満を誤警報と判定すると、エコーの85%を担保しながら、誤警報を 80%カットできることが期待されると判明した。 パラメータ調整 の 知画面と、本考察に基づくパラメータ調整後の 知画面の比較をFig.12 に示す。パラメータ調整 は誤警報が多かったことに対し、調整後は期待通り誤警報が低減できた。 (a) (b) Fig.12 Before (a) and after (b) of parameter tuning. 3 むすび 酋威の多様化に伴い、水中監視が重要となる。NEC は港湾監視システムの一環として水中を 知するアクティブソーナーも製品化している。誤警報が出やすい 浅海 においても動作することを実 した。 後は AI 等による処理も取り入れ、更に誤警報を削減する。 参考文献 公安調査庁、“国際テロリズム要覧”、2017. 中野ほか、“水中からの酋威に対処する水中監視システム及びその関連技術”、NEC 技報、Vol.66, No.1, 2013 年8 月. 中野ほか、“沿海 の重要施設へ接近する不審対象を監視する港湾監視システム”、NEC 技報、Vol.67, No.1, 2014 年11 月.
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