泊発電所構内歩行者照明設備設置における費用削減の工夫
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カテゴリ: 第17回
泊発電所構内歩行者照明設備設置における費用削減の工夫
北海道パワーエンジニアリング株式会社
松山 祐太
Yuta Matsuyama
Member
北海道電力株式会社
松田 聖志
Satoshi Matsuda
Member
北電泊発電所構内において、歩行者用照明の設置が求められていたが、現在の構内配置は過渡的な物であ り、既設道路照明を設置するのは費用上好ましくない。この為、照度・強度・経済性を満足するようなオリ ジナルの歩行者用照明設備の設計・設置を行い、費用削減を達成した。
キーワード:歩行者用照明設備、照度設計、強度設計、費用削減
1.はじめに
現在、北電泊発電所では安全対策工事の進捗に応じて 構内配置が工事の節目ごとに変化する状況にあり、道路 照明も例外ではない。(図1)
道路照明が取り外されている状況においては、歩行者 通路が夜間暗く、安全上の問題があるため、歩行者用照 明の設置は不可欠である。
泊発電所の所在地である北海道西部の冬季における日 没は午後四時頃であり、多くの方が勤務している時間帯 に屋外が暗くなるため、発電所構内で業務に従事する各 協力会社様から照明設置の要望が寄せられていた。
しかし、現在の構内配置は過渡的なものであるため、 既設と同等の道路照明を設置することは不経済である。 その為、現状のニーズに応えたオリジナルの歩行者用
照明設備の設計・設置を行った。
図1 既設道路照明
連絡先:松山 祐太
〒045-0201
北海道古宇郡泊村大字堀株村字ヘロカルウス789番地 北海道パワーエンジニアリング株式会社
泊原子力センター 工事部 電気課
E-mail: hp.y-matsuyama@hpec.jp
2.設計条件
北海道西岸に位置する泊発電所は強風地域であり、強 風により照明設備が損傷し、飛来物となり歩行者等へ危 害を与える恐れを考慮すると、安易な仮置物の設置は好 ましくない。
また、経済性を考慮すると構内配置の変化に応じて移 動、照明の増設が可能であること、長期に使用出来るこ とが求められる。
以上の状況を鑑み、照度・強度・経済性を考慮したオ リジナルの歩行者用照明設備を設計・設置することとし た。
照度設計
歩行者通路の安全性を確保する為に必要な照度につい て検討を行った。
照度は「JIS 道路照明基準」[1]に基づき平均照度を
「20lx」に設定。照明器具は既存の投光器を使用するこ ととし、「400 ㎡」を照射範囲として設定。
これより、歩行者用照明の全高は平均照度「20lx」以上を有し、照明器具の保守性も考慮した「3.2m」にする こととした。
既存の投光器を使用した配光図と灯具高さの概略図を
(図2)に示す。
図2 平均照度算出
強度設計
強風により照明設備が損傷することの無いよう、照明設備に取り付けるポールの強度について検討を行った。
照明用ポールはJIL(日本照明器具工業会)1003「照明用ポール強度計算基準」[2]に基づき、「風速60m/s」に耐えうる強度設計とするため、①照明器具の風荷重の 算定、②地際部の曲げモーメントの算出、③地際部の断 面性能の算定、④地際部のポールの強度評価、⑤ベース プレートの強度評価を実施し、既製の道路照明と同等以 上の強度を有するものとした。
オリジナル歩行者用照明設備のポール地際部について
(図3)に示す。
図3 照明設備地際部
3.施工・設置
各種の設計条件を踏まえたオリジナルの歩行者用照明設備の部品を製作し、現地組み立て及び施工を行い、設置まで完遂した。実際に発電所では、現在の歩行者ニーズに合わせて「照明器具を2台設置」した本設備を、1基運用している。完成した照明設備、運用状況を(図 4)に示す。
図4 照明設備完成品、点灯状況
4.おわりに
従来であれば埋設電路、地面掘削を必要とする道路照 明設備であるが、本オリジナル設備はコンクリートブロ ックをベース架台とすることで、設置場所を選ばず、構 内配置の変化に応じた移設、撤去を容易に行うことが可 能である。
また、オリジナルの歩行者用照明設備の設計・設置を 完遂したことにより、既製品の道路照明設備を設置した 場合の費用約300 万円に対して、約60 万円で設置まで完遂し、費用削減を達成した。(図5)
図 5 費用の比較
参考文献
日本産業規格 JIS Z 9111-1988 道路照明基準
日本照明器具工業会 JIL1003:2009 照明用ポール強度計算基準