標準(規格基準)基盤に係る議論について-第23回原子力安全・保安部会より-

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カテゴリ: 解説記事
標準(規格基準)基盤に係る議論について-第23回原子力安全・保安部会より- 山田 知穂,Tomoho Yamada 標準(規格基準)基盤に係る議論について
~第23回原子力安全・保安部会より~
山田 知穂 Tomoho Yamada
原子力安全・保安院

界の予算の大幅な減少の中で、高経年化問題、高度燃料利用等今後の安全問題へ適切に対応するためには安全基盤研究はどうあるべきか。産・官が十分な意見疎通を図り、役割を明確にし、新たな連携のもと、研究から規格基準の策定、安全規制への反映というシステムの中で効率的・効果的な安全基盤研究の体制構築、実施を図るべきではないか。
○標準(規格基準)基盤
性能規定化と学協会規格活用の方針、学協会への期待の高まりを踏まえ、学協会活動の理解促進が図られる必要があるのではないか。また、標準の体系的整備にあたって戦略策定と学協会の体制強化が必要ではないか。
○人材基盤
原子力安全の確保、的確な安全規制の実施の観点から、産業界、規制側、大学、研究開発機関等における原子力の基礎・基盤技術分野、特定技術分野の先端・専門人材の育成確保と原子力多数基・長期運転時代を踏まえた産業界における保守管理人材の確保を図っていくことが重要ではないか。
○研究施設基盤
日本原子力研究開発機構(JAEA)等が有する研究施設をはじめ原子力安全に係る研究施設基盤について、今後の安全上の課題への対応、国際的な分担と連携、研究施設のサービス、コスト面における競争力等の視点を踏まえ、戦略的なあり方を考えるべきではないか。
○知識基盤、その他
事故故障情報の水平展開という観点から、新検査制度の導入、リスク情報の活用等に求められる情報の収集整備、さらには現場の知見、現象の発生及びそのプロセス等を共有化し高度に活用できるシステムの開発等を進めていく必要があるのではないか。
また、安全基盤研究の成果等について効果的な活用、広報普及していくことが重要ではないか。
平成19年1月23日、第23回原子力安全・保安部会が開催されました。そこでは原子力・安全保安院から、安全規制の制度整備として、新たな検査制度の実現に向けた取組み状況と廃棄物に関わる安全規制への取組状況を議題として取り上げ、あわせて最近の原子力安全・保安を巡る動向として、原子力発電所の耐震安全性に関する最近の動向、原子力安全基盤小委員会における審議の状況、最近の原子力安全・保安を巡るその他の動向を報告しました。ここでは、これら報告内容のうちのひとつである原子力安全基盤小委員会における審議の状況、その中で第2回の小委員会において審議された標準(規格基準)基盤に係る議論について紹介します。
1. 原子力安全基盤小委員会の設置の目的
原子力安全基盤小委員会は、原子力安全・保安院が行う安全研究のレビューに加え、当面、安全基盤(研究、標準(規格基準)、人材、研究施設、知識(情報)の5つの基盤)のあり方について検討することを目的として設立されました。このうち後者の安全基盤のあり方については、原子力安全保安院の発足当初に原子力安全・保安部会において取りまとめられた報告書「原子力の安全基盤の確保について」(平成13年6月)において、原子力安全規制を支えるものとして充実・強化が指摘されているものに対応しており、昨今の安全規制を巡る状況を踏まえ、これら基盤を巡る課題を改めて検討するものになっています。
 なお、ここでの各基盤を巡る課題に関する問題意識は以下に示すようなところのものであり、それぞれについて順次、小委員会で審議していくこととしています。
○安全基盤研究
原子力関係政府予算の構造変化、電力共研等産業

2. 標準(規格基準)基盤に係る議論
この課題に対する問題意識は、
・学協会及びその規格のプレゼンスが大きくなるなかでこれらについて幅広く国民の理解促進が図られる必要があるのではないか
・学協会規格の体系的整備を行うにあたっての考え方を取り纏めるとともに、学協会の規格整備の活動基盤が強化される必要があるのではないか
・ 学協会における規格策定、保安院の技術評価の手続について適正に運用しさらに改善努力する必要があるのではないか
ということにありますが、これを踏まえ小委員会では、3学協会(日本原子力学会、日本機械学会、日本電気協会)合同の報告、保安院及び電気事業者の考え方、城山東大教授からの「性能規定化と学教会規格の活用についての現状評価と今後の展望」について説明があり、その後、事務局から議論の視点例を提示し議論が行われました。
規格基準の整備と学協会の取組みに関し、事務局から提示した視点例は以下のようなものでした。
・学協会の標準策定は、新技術の合理的な開発、利用を促進し、また、広く認められる安全性、信頼性の高い技術の採用を促進すること等により、産業の発展、振興と社会全体の安全確保に資するもの。
・原子力分野においては、その利用が国による安全規制の下で進められることから、学協会の定める標準の多くが規制基準として安全規制体系の中に位置づけられ、活用されている。規制基準の性能規定化と学協会規格の活用促進の中でこの考え方がさらに進展。
  
①規格基準の体系的整備の推進等
・学協会においては、今後とも原子力分野における規格基準の体系的整備を推進していくとともに、安全規制制度等原子力安全確保の在り方、国際的な議論も踏まえた規格基準の体系化等に関する提案を行っていくことが期待されるのではないか。
②学協会の原子力安全基盤における役割の高まり
・規制基準の性能規定化と学協会規格の規制基準としての活用、燃料・サイクル分野等をはじめ規格基準の体系的整備等の活動に際し、学協会はステークホールダーたる産業界、規制機関等から独立した公平、公正な技術的検討を行う場として、原子力安全基盤のなかで重要な役割を果たすことが期待されるのではないか。
・学協会の標準策定は、産業界、規制当局等における研究開発成果を踏まえて行われており、標準策定と研究開発について密接な連携が必要ではないか。そのためには、標準策定の具体的なニーズを踏まえた研究開発が行われる必要があり、産業界の研究開発、保安院の安全研究の企画、評価への学協会の参画が必要ではないか。
③学協会の標準策定活動に対する産業界及び規制当局による支援
・規格基準の体系的整備等に継続的に迅速に対応することが可能な体制・経営基盤を構築することが不可欠であり、まずは、学協会自身によるそのための取組みの強化が必要ではないか。
・一方、標準策定活動の体制強化等による規格基準の整備は産業界、規制当局にとってもメリットがあり、学協会による標準策定活動の中立性、独立性に配慮しつつ、標準策定活動への支援を行うことが適切ではないか。支援の方法、内容等について関係機関において具体的な検討が行われる必要があるのではないか。
④学協会の標準策定活動参加に対するインセンティブ
・学協会における標準策定は、従来から学協会員のボランティアとしての参加に支えられてきている。必要な学協会標準策定活動へのより積極的な参加を促進するようなインセンティブについて学協会において検討することが重要ではないか。
⑤規格基準策定及び技術評価のプロセスの評価と今後の取組み
・学協会における規格基準策定プロセスについては、策定のために設置された委員会に係るメンバー構成、各種規定類の整備により、公正性、公平性、公開性を確保するための仕組みとなっていると評価できるのではないか。ただし、その運用に際して、この仕組みが実質的に機能していることについては、引き続き注視していくことが必要ではないか。
・学協会規格を規制基準として活用するに際しては、原子力安全・保安部会に設置された委員会等において技術評価を行うことにより、そのプロセスの適正さが確保されていると評価できるのではないか。一方、学協会における規格基準策定のための委員会と原子力安全・保安部会において技術評価を行う委員会等において、一部委員が重複していることについては、大学、研究機関等に所属する中立的な専門家の人数が限られていることからやむを得ない側面があるものの、今後、両者の独立性を高める取組みを行っていくことが重要ではないか。



図1

これに対して、学協会の活動、体制の支援のあり方、規格基準策定に係る手続等に関し様々な御意見をいただきましが、主なものとしては次のようなものがありました。
(学協会標準策定活動の支援)
・学協会活動における非常に大きな問題は、その活動を支えるための人及びお金をどこが負担するかという問題。民間規格の活用によりメリットを受けるのは、産業界だが、規制当局もそれなりの利益を受けているのは明白。学協会での規格づくりの支援について人的にも技術的にもしっかりと規制当局なり、推進当局が、応分の負担をするべき。
・産業界の方では、規格作りをしている人が十分な評価を受けていないという実態がある。その方々は非常に大変で一生懸命やればやるほどつらい立場に追い込まれる。産業界の方にはその重要性をしっかりとトップに伝わるようにしていただきたい。
・国が応分の負担を行うことに際して気をつけなければならないのは、国の利益が何かを考える必要がある。原子力の安全確保という長期的に維持すべき大きな目標が国の利益であり、かつ国民の利益であるということを常に意識すべき。学会の関与は規制に対してもあるいは民間に対しても一定の独立性を持って、民間提案の技術的妥当性や規制側の長期的な妥当性に対して一定の判断能力を持ってなされるべき。
・産業界としての取組みと規制当局の取組みが少なくとも技術開発、標準化等を含めた学会のロードマップという中で整合的に行われていく必要がある。
・国がしっかり安全規制をしていると消費者は思っており、規格・基準の性能規定化と学協会規格の活用促進というところがなかなか理解しにくい。一体国は何をするのか、ほとんどの部分は学協会ということになってしまうと、学協会って何だというのが消費者からは見えない。利益者負担で産業界の支援が必 要ということ、国の応分な負担が必要だということは、消費者としても納得でき、それは国民が負担すべきものであるが、何を基準にしてその負担の割合を決めていくのかということを消費者に対して明確に示して欲しい。
・ 経団連でも標準化活動というのは企業戦略そのものであり、主たる担い手は産業界とされている。研究開発をしてデータをとって原案的なものを策定するのは産業界の役割。保安院は技術評価をするプロセスで安全研究の予算により確認をするのが基本的な考え方。規格をつくる人と評価する人の関係があいまいになることを避けることが必要。学協会の各種規格策定活動については、しっかりユーザーフィーに相当する部分の支援をしていくべきと考える。
(規格基準策定及び技術評価のプロセスについて)
・(学会の規格策定の長と技術評価をする委員会の長を兼ねていることに関し、)ある意味での利益背反が起こるけれども、うまく自分自身整理してやっている。そして何と言っても人が足りなくて、一人が何重もの作業をしているというのが実情。
・何人もの(先生)方がいろいろな立場で線引きをしながらなされているというのは私たちにとっては全くみえない。若い技術者や専門家を育て、何とか規格を作成する方と技術評価する方とを分けて行うように希望したい。
・ 技術評価というプロセスで一体何を重視して行うか、ミッションは何か明確にしておくことが必要。学協会の規格策定に当たって規制としての要求事項なり、あるいはそれを満たす上での必要な諸条件を明示することが有用。
(人材の育成について)
・全体を見てバランスのよい規格規準を作成する感覚はコードエンジニアという専門家が初めて持つもの。このコードエンジニアを育てる視点が抜けると、結局いくら人材を確保してもそれは役に立たない人材という危惧を持つ。
・ 専門家の育成をしておかないといけない。絶えざる実験による知見とデータの供給というものが大学からも規制側からも産業界からも行われていくというステディな継続的な活動が非常に重要である。
3. 原子力安全基盤小委員会の今後の予定
第3回小委員会については1月下旬(1月30日)に開催され、「安全基盤研究のあり方」について議論が行われました。その中では、高経年化、燃料高度利用に関するロードマップの検討状況の紹介も行われました。今後、3月下旬に人材基盤について取り上げ、以降、研究施設基盤、知識(情報)基盤等のあり方と順次取り上げていくことを予定しています。
また、小委員会での議論の結果については本年夏頃を目途に報告書をとりまとめ、技術、人材等を呼び込むとの観点から幅広く原子力コミュニティ内外へメッセージを発信(内容としては、ロードマップ、人材マップ等)するとともに、政策的な提言を取りまとめることを検討中です。標準(規格基準)基盤に関してはこれと並行し、安全規制制度等安全確保の在り方、規格基準の体系化等に関する提案について学協会を中心として検討の進むことが期待されています。
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