原子力発電所に関する最近の規格基準動向

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カテゴリ: 解説記事
原子力発電所に関する最近の規格基準動向 小山 幸司,日本電気協会 原子力規格委員会,岡村 知巳,村上 弘良 _
1.日本機械学会における発電用原子力設備規格の制定・改訂動向
社団法人日本機械学会標準・規格センター発電用設備規格委員会で制定及び改訂を行った次の発電用原子力設備規格類が昨年後半に発行された。
? 「溶接規格(2007年改訂版)」
? 「設計・建設規格(2007年追補版)」
? 「維持規格(2007年追補版)」
? 「設計・建設規格2005年版「管の設計」(管継手、フランジ)のJIS規格年版の読替規定」(事例規格)
? 「設計・建設規格2005年版付録材料図表JIS規格年版の読替規定」(事例規格)
また、発電用原子力設備規格類の1月末での検討概況は以下の通りである。
(1)「設計・建設規格」
FEM解析結果から応力分類によらず、直接強度評価を行える手法を定める事例規格「弾塑性有限要素解析を用いたクラス1容器に対する強度評価の代替規定」は、公衆審査が終了し、本年前半に発行される予定である。
また、日本電気協会規定 JEAC 4206-2003「原子力発電所用機器に対する破壊靭性の確認試験方法」を反映して破壊靱性評価のベースとなる破壊靭性をKIR曲線からKIC曲線への変更、クラス2、3機器に対する最高許容耐圧試験圧力を超える場合の規定の追加、および本年発行予定の材料規格と整合をとった規定の追加・変更、ならびにJIS規格の最新版の取り込み等を反映した改訂版の策定に向け検討中である。
(2)「溶接規格」
溶接後熱処理(PWHT)を実施する溶接部に対する非破壊試験の実施時期(PWHTあるいは中間熱処理の前/後)に関する規定を明確にする変更、溶接部のデルタフェライトに関する規定の追加、ならびにJIS規格の最新版の取り込み等を反映した追補版の策定に向け検討中である。
(3)「材料規格」
「材料規格」は、主として現在「設計・建設規格」で対象とする材料規格および材料図表を独立させ制定するものであり、適用材料表のほかに原子力発電用に設けられた材料規格及び原子力発電用としての追加規定、ならびに設計応力強さ、縦弾性係数などの表、さらに添付として規格に規定されていない材料を採用する際の指針となる「新規材料採用ガイドライン」が含まれている。
本規格は発電用設備規格委員会での審議を終了し、公衆審査を経て本年中の発行準備を行っている。
(4)「維持規格」
原子炉停止間隔の柔軟な運用が国レベルで検討されていることを踏まえ、検査間隔等に関する規定および解説の変更、検査章のB-F、B-Jカテゴリの体積試験範囲の変更、検査の一般事項における目視試験に関する規定の変更、フェライト鋼容器と管との接合部における機器区分の解説の見直し、ならびに規格添付における応力拡大係数算出式の追加等を検討中であり、改訂版への反映を目指している。
(5)「使用済燃料貯蔵施設規格 金属キャスク構造規格」
アルミ合金およびボロン添加ステンレス鋼の使用に対応した規定の新設、および他規格との整合性に配慮した供用状態の考え方に基づく規定の追加などを行う改訂版は、公衆審査が終了し、本年前半に発行される予定である。
(6)「再処理設備規格」
再処理設備分科会が設置され、商業用再処理設備の材料・構造・試験等に関する設計規格の策定に着手した。
【(社)日本機械学会 標準・規格センター
発電用設備規格委員会 原子力専門委員会
小山幸司】
2.日本電気協会 原子力規格委員会における規格の策定動向
社団法人日本電気協会 原子力規格委員会では、原子力発電所の保守管理及び品質保証等に関連する規格の改定・制定を進めている。以下に2008年1月末現在の状況を示す。
以下の規格は原子力規格委員会で制・改定案が成案となり、現在発刊準備を行っている。
(1) JEAG4121-2005原子力発電所における安全のための品質保証規程(JEAC4111-2003)の適用指針-原子力発電所の運転段階-[2007年追補版2](根本原因分析に関わる内容の充実) (新規制定)
(2) JEAC4201-2007原子炉構造材の監視試験方法(2004年版の改定)
(3) JEAC4206-2007原子力発電所用機器に対する破壊靱性の確認試験方法(2004年版の改定)
(4) JEAC4209-2007原子力発電所の保守管理規程(2003年版の改定)
(5) JEAG4210-2007原子力発電所の保守管理指針(新規制定)
(6) JEAG4221-2007原子力発電所の設備診断に関する技術指針-回転機器振動診断技術(新規制定)
(7) JEAG4601-2007原子力発電所耐震設計技術指針 基準地震動策定・地質調査編(新規制定)
(8) JEAG4608-2007原子力発電所の耐雷指針(1998年版の改定)
(9) JEAG4621-2007安全保護系計器のドリフト評価指針(新規制定)
また、以下の規格案については公衆審査を実施中である。
(1) JEAC4203-2004原子力格納容器の漏えい率試験規程 改定案
(2) JEAC4804原子力発電所運転責任者の判定に係る規程 制定案
(3) JEAG4222原子力発電所の設備診断に関する技術指針-潤滑油診断技術 制定案
(4) JEAG4223原子力発電所の設備診断に関する技術指針-赤外線サーモグラフィー診断技術 制定案
なお、以下の規格案については公衆審査における意見への対応を検討中である。
(1) JEAG4207-2004軽水型原子力発電所用機器の供用期間中検査における超音波探傷試験指針の規定(JEAC4207)への改定案
(2) JEAG4609-1999ディジタル安全保護系の検証及び妥当性確認に関する指針 改定案
(3) JEAC4620安全保護系へのディジタル計算機の適用に関する規程 制定案
その他、検討を進めている以下の規格については、平成20年度に成案となる予定である。
(1) JEAG4204-2003発電用原子燃料品質管理指針の改定
(2) JEAC4111-2003原子力発電所における安全のための品質保証規程の改定
(3) JEAG4121-2005原子力発電所における安全のための品質保証規程(JEAC4111-2003)の適用指針-原子力発電所の運転段階-の改定
(4) JEAG4610-2003原子力発電所個人線量モニタリング指針の改定
(5) JEAG4615-2003原子力発電所放射線遮へい設計指針の規定(JEAC4615)への改定
(6) JEAG4601原子力発電所耐震設計技術指針の改定
本指針(JEAG4601)の改定は、国の原子力安全委員会での耐震設計審査指針の改訂に伴い、省令第62号第5条(耐震性)で参照する「発電用原子力設備に関する耐震設計審査指針」の要求事項を受けて具体的な設計内容を規定するものである。現在発刊準備中の指針の部分改定版「基準地震動策定・地質調査編」の内容に加え、それ以外の主として同指針の定める耐震設計基準の適用範囲や、既設プラントの耐震安全性評価(耐震バックチェック)への適用性等の内容も含めた改定版とする方向で検討中である。
【社団法人日本電気協会 原子力規格委員会】
3.日本原子力学会における標準策定・改訂・廃止状況
社団法人日本原子力学会標準委員会が制定している標準の制定状況を報告する。2007年度中に制定、発行した標準は、1月31日現在、以下の2標準である。
? 「使用済燃料中間貯蔵施設用コンクリートキャスク及びキャニスタ詰替装置の安全設計及び検査基準:2007(AESJ-SC-F009:2007)」
? 「原子力発電所の地震を起因とした確率論的安全評価実施基準:2007(AESJ-SC-P006:2007)」
また、以下の2標準が制定されており、2007年度中の発行が予定されている。
? 「放射性廃棄物の放射能濃度決定方法-原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物の放射能濃度決定方法に関する基本手順:2007-浅地中ピット処分廃棄物について-(AESJ-SC-F010:2007)」
? 「返還廃棄物の確認に関する基本的考え方:2007(AESJ-SC-F011:2007)」
2008年度上期中の制定、発行を計画している標準は、以下の5件である。
? 「原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的安全評価実施基準(レベル1PSA)」
? 「原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的安全評価実施基準(レベル2PSA)」
? 「原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的安全評価実施基準(レベル3PSA)」
? 「BWRの安定性評価基準」
? 「使用済燃料中間貯蔵施設用金属キャスクの安全設計及び検査基準(改訂版)」
そのほか、原子炉の安全解析に関係する標準として「統計的安全評価の実施基準」、リスク情報に関係する標準として「原子力発電所の安全確保活動へのリスク情報活用に関する実施基準」及び「原子力発電所の確率論的安全評価用のパラメータ推定に関する実施基準」、低レベル廃棄物の余裕深度処分に関係する標準として、「余裕深度処分対象廃棄体製作方法」、「余裕深度処分の安全評価手法」、「低レベル放射性廃棄物輸送容器の安全設計及び検査基準」、「使用済燃料・混合酸化物新燃料・高レベル放射性廃棄物・低レベル放射性廃棄物輸送容器定期点検基準(改訂版)」の7件は、2008年度中の発行を計画している。
「原子力発電所の停止状態を対象とした確率論的安全評価手順」、「原子力発電所の高経年化対策実施基準」及び「原子力発電所の定期安全レビュー実施基準」、「原子炉施設の安全解析における放出源の有効高さを求めるための風洞実験実施基準」については、改訂作業に着手した。
【日本原子力学会標準委員会 岡村知巳・村上弘良】
              (平成20年2月4日)
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