原子力規制を巡る内外の動向

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カテゴリ: 解説記事
国際原子力機関(IAEA)によると、50ヶ国以上が原子力発電計画を開始しようと考えIAEAに支援を求めており、2009年にもますます多くの協力事業が予定されているといいます。このような国際情勢の中、原子力安全・保安部会原子力安全基盤小委員会の国際原子力安全ワーキンググループ(主査:関村直人東京大学大学院教授)が報告書を2月にとりまとめました。ここでは、その一部をご紹介します。
また、2009年1月27日に原子力安全・保安部会原子炉安全小委員会が開催され、原子炉安全に関するいくつかの課題(保全プログラムを基礎とする検査導入を含む)が報告・審議されました。その概要の一部もご紹介します。
1. 国際原子力安全ワーキンググループ
報告書        (内容一部抜粋)
アジア諸国を中心とする電力需要の増大に加え、地球環境問題の深刻化、エネルギー安全保障の重要性の
高まりなどを背景として、近年、世界各国において原子力政策を見直し、原子力発電施設の新設を再開する動きや新たに原子力発電を導入しようとする動きが活発化しています。
原子力発電主要国及び原子力発電新興国において、原子力発電施設の新増設や計画策定が加速しており、安全確保のためのリソースの制約にかかわらず、高い安全レベルを維持・向上していくことが強く求められています。そのため、安全規制の国際的調和を図ることによって、安全規制の効能の最大化を図ることの重要性が国際社会において高まっています。具体的には、主として、国際機関を通じた協力の推進、安全基準の整備、運転経験のフィードバックと共有、新規設計炉に係る安全規制協力への取り組みが行われています。
国際原子力安全活動を担える人材の育成を図るとともに、国際基準策定への参画と迅速な取り入れ、安全研究の推進、人材受入れといった国際活動を国を挙げて実施するためには、安全規制機関だけでは十分ではなく、研究開発機関や学協会、産業界、地域など、原子力に関する広範なステークホルダーとの連携・協力が不可欠です。
(参考)IAEA安全基準:IAEAでは、IAEA憲章に基づき、IAEA安全基準文書を作成し、加盟国における国際的に調和のとれた安全基準類の導入を支援しています。安全基準文書は、3段階から構成され、安全原則
(Safety Fundamentals)は例外なしに遵守されるもの、安
全要件(Safety Requirements)は新規施設については遵守
すべきもので既設設備については合理的に達成可能な期間のうちに達成すべき目標、安全指針(Safety Guide)は最先端の安全を達成するための実際的な指針です(INSAG-21)。日本ではJNESが翻訳権をもっています(http://www.jnes.go.jp/database/iaea/iaea-ss.html)。
これらの安全基準文書は、加盟国を法的に拘束するも
のではありませんが、加盟国の裁量で国内規制基準として選択して使用することができます。IAEA自身の活動およびIAEAによって援助された活動については、安全基準の適用が義務付けられます。IAEAの国際原子力安全諮問グループ(INSAG)は、加盟国がIAEAの発行する新規の安全基準を評価し、自国の既存の要件や方策と比較することを勧告しています。
(参考)MDEP(NEAウェブサイト)
:www.nea.fr/mdep/welcome.html
2.原子炉安全小委員会
(1)保全プログラムを基礎とする検査制度
安全をより一層向上させる観点から、機器の状態を踏まえた保全内容の継続的な改善を促す等の保全プロ
グラムを基礎とする検査制度を導入するため、昨年8月29日に「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」、「研究開発段階にある発電の用に供する原子炉の設置、運転等に関する規則」及び「電気事業法施行規則」の一部を改正する省令が公布され、本年1月1日から施行されています。
関連して、原子力安全・保安院は、社団法人日本電気協会電気技術規程「原子力発電所の保守管理規程」(JEAC4209-2007)について技術評価を行い追加要件
を付した上で、12月26日に「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則第11条第1項及び研究開発段階にある発電の用に供する原子炉の設置、運転等に関する規則第30条第1項に掲げる保守管理について(内規)」及び「原子力発電工作物の保安のための点検、検査等に関する電気事業法施行規則の規定の解釈(内規)」を制定しました。
新しい検査制度では、事業者は原子力発電所の個別機器の点検や補修等の保全計画を運転サイクルごとに国に届け出て確認を受けることとなります。保全計画は、設備の重要度や過去の運転経験、機器の劣化状況等から、個別機器ごとの保全の方式・点検内容・頻度を設定して点検計画を定めるものであり、ポンプの振
動診断など、新制度において事業者が充実する運転中の機器の状態監視についても含まれます。
国は、国内外の過去のトラブル等も踏まえつつ、事業者の行う点検頻度や方法の適切性をプラントごとに厳格に確認します。そうすることで、事業者による保全内容の改善を促し、より一層の安全性の向上を目指します。
(2)安全評価ワーキンググループ(長期サイクル炉心評価)の設置
保全プログラムを基礎とする検査制度の導入に伴い、原子炉の運転期間を変更する場合、原子炉設置者は「原子炉の運転期間の設定に関する説明書」を添えて保安規定の変更認可を受けなければなりません。その認可に際しては設置許可申請書記載の基本設計ないし基本的設計方針に則して適切な期間が設定されていることを確認することとなります。そのための評価の基本的考え方をとりまとめることを目的に、原子炉安全小委員会に「安全評価ワーキンググループ(長期サイクル炉心評価)」を設置することとしました。
(3)原子炉熱出力向上ワーキンググループの
設置

海外の原子力発電所においては、既存設備の改造を行う等による原子炉施設利用・運用の高度化を通じ、原子炉熱出力を向上させ運転することが可能となり、エネルギーの有効利用を図る計画が進められています。すでに欧米において原子炉熱出力向上を行った原子力発電所が多数運転しています。我が国においては、原子力政策大綱(平成17年10月)において、このような欧米の経験も踏まえて安全確保の観点から十分に評価・検証をした上で採用することに取り組むことの期待が表明され、日本原子力発電(株)が東海第二発電所(電気出力110万kW)を対象に原子炉熱出力(電気出力)の約5%向上を目指した具体的な計画の検討を進めているところです。このような状況を踏まえ、我が国においても原子炉熱出力向上による原子炉の安全性、設備の健全性、保守・運転管理への影響などを検討評価するために、原子炉安全小委員会に「原子炉熱出力向上ワーキンググループ」を設置することとしました。
(平成21年2月2日)
原子力規制を巡る内外の動向 神田 忠雄,KANDA Tadao
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