原子力発電所に関する最近の規格基準動向
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1.日本機械学会における発電用原子力設備規格の制定・改訂動向
社団法人日本機械学会標準・規格センター発電用設備規格委員会で改訂を行った次の発電用原子力設備規格類が本年度後半に発行された。
? 発電用原子力設備規格 維持規格(2008年版)
? 発電用原子力設備規格 溶接規格2008年追補版
? 発電用原子力設備規格 材料規格(2008年版)
また、発電用原子力設備規格類の1月末での検討概況は以下の通りである。
(1)「設計・建設規格」
日本電気協会規定 JEAC 4206-2003「原子力発電所用機器に対する破壊靭性の確認試験方法」を反映して破壊靱性評価のベースとなる破壊靭性をKIR曲線からKIC曲線への変更、クラス2、3機器に対する最高許容耐圧試験圧力を超える場合の規定の追加、および本年発行された材料規格と整合をとった規定の追加・変更、ならびにJIS規格の最新版の取り込み等を反映した2008年版は、2009年2月の発行を目指し準備中である。
さらに、設計・建設規格第Ⅰ編との整合や、規格根拠としての試験データを解説に盛り込んだ設計・建設規格第Ⅱ編高速炉規格の改訂版を検討中である。
(2)「溶接規格」
溶接後熱処理(PWHT)を実施する溶接部に対する非破壊試験の実施時期に関する規定の追加、JIS規格の最新版取り込み等を反映した溶接規格2008年追補版が2008年12月に発行された。
溶接部のデルタフェライトに関する規定の追加等を反映した追補版、事例規格「コンクリート製原子炉格納容器 溶接規格」、事例規格「PWR原子炉容器等冷却材管台部に対する溶接後熱処理時の加熱範囲に関する規定」、「高速炉溶接規格」の策定に向け引き続き検討中である。
(3)「材料規格」
「材料規格」は、主として現在「設計・建設規格」で対象とする材料規格および材料図表を独立させ制定するものであり、適用材料表のほかに原子力発電用に設けられた材料規格及び原子力発電用としての追加規定、ならびに設計応力強さ、縦弾性係数などの表、さらに添付として規格に規定されていない材料を採用する際の指針となる「新規材料採用ガイドライン」が含まれている。
本規格は2008年12月に発行された。
(4)「維持規格」
原子炉停止間隔の柔軟な運用が国レベルで検討されていることを踏まえ、検査間隔等に関する規定および解説の変更、検査章のB-F、B-Jカテゴリの体積試験範囲の変更、検査の一般事項における目視試験に関する規定の変更を反映した2008年版は、2008年11月に発行された。
さらに、BF・BJカテゴリの体積試験範囲の見直し、フェライト鋼容器と管の接合部における機器区分の解説の見直し、ウェルドオーバーレイによる補修法に関する既定の追加、規格添付における応力拡大係数算出式、レーザ外面照射応力改善方法、異種金属溶接継手の考え方の追加等を引き続き検討中であり、追補版への反映を目指している。また、事例規格「ニッケル合金のPWR一次系水質環境中の疲労進展速度に関する規定」や事例規格「PWR原子炉容器等冷却材出入口管台部における溶接後熱処理時の加熱範囲に関する規定」を検討中である。
(5)「使用済燃料貯蔵施設規格」
金属キャスク構造規格に対応したバスケットに使用可能な数種類の新規材料に関する規格を、事例規格として2009年前半の発行を目標に策定中である。
(6)「再処理設備規格」
商業用再処理設備の材料・構造に関する設計規格を2009年度中の発行を目指し検討中であり、さらに検査・評価・補修に関する維持規格の策定中である。
(7)「環境疲労評価手法」
最新の環境疲労試験データを反映した改訂版を検討中である。
【(社)日本機械学会 標準・規格センター 発電用設備規格委員会 原子力専門委員会 永田徹也】
2.日本電気協会 原子力規格委員会(NUSC)における規格の策定動向
社団法人日本電気協会 原子力規格委員会では、原子力発電所の保守管理及び品質保証等に関連する規格の制定・改定を進めている。
以下に、2008年8月以降、既に発刊された規格(2009年1月末現在の状況)を示す。このうち、供用期間中検査における超音波探傷試験規程(JEAC4207)の改定概要については、保全学 Vol.7, No.3の解説記事を参照されたい。なお[ ]内は発刊日を示す。
(1) JEAC4207-2008軽水型原子力発電所用機器の供用期間中検査における超音波探傷試験規程 (指針JEAG4207-2004の規程への改定) [平成20年8月10日]
(2) JEAC4615-2008原子力発電所放射線遮へい設計規程(指針JEAG4615-2003の規程への改定)[平成20年8月31日]
また、以下の規格は原子力規格委員会で制定案が成案となり、現在発刊準備を行っている。
(1) JEAG4623-2008原子力発電所の安全系電気・計装品の耐環境性能の検証に関する指針の制定案
(2) JEAC4601-2009及びJEAG4601-2009 原子力発電所耐震設計技術規程及び指針の制定案
その他、以下の規格について制定・改定の検討を進めている。
(1) 安全設計分科会関連
・ 保安電源設備の設計指針(JEAG4603)、安全保護系の設計指針(JEAG4604)、及び安全機能を有する電気・機械装置の重要度分類指針(JEAG4612)の改定
・ 中央制御室運転員の事故時被ばくに関する規程(JEAC4622)の制定
・ 安全機能を有する計測制御装置の設計指針
(JEAG4611)の改定と、中央制御室における誤操作防止の設備設計に関する規程(JEAC4624)の制定
・ 火災防護指針(JEAG4607)の改定と、同規程(JEAC4626)の制定
(2) 構造分科会関連
・ 設備診断に関する技術指針-放射線肉厚診断技術(JEAG4224)、及び軽水型原子力発電所用機器の供用期間中における渦電流探傷試験指針(JEAG421X)の制定
(3) 原子燃料分科会関連
・ 発電用原子燃料品質管理指針(JEAG4204)の改定
(4) 品質保証分科会関連
・ 安全のための品質保証規程(JEAC4111)、及び同規程の適用指針-運転段階-(JEAG4121)の改定
(5) 放射線管理分科会関連
・ 個人線量モニタリング指針(JEAG4610)の改定
(6) 耐震設計分科会関連
・ 乾式キャスク貯蔵建屋基礎構造の設計に関する技術指針(JEAG4616)の改定
・ 鋼板コンクリート構造耐震設計技術規程(JEAC4618)、及び火山影響評価技術指針(JEAG4625)の制定
(7) 運転・保守分科会関連
・ 火災防護管理指針(JEAG4103)の制定
【社団法人日本電気協会 原子力規格委員会】
3.日本原子力学会における標準策定・改訂・廃止状況
社団法人日本原子力学会標準委員会が策定している標準の制定状況を報告する。2008年8月以降に制定、発行した標準は、1月31日現在、以下の1標準である。
・ 「BWRの核熱水力安定性評価基準:2007(AESJ-SC-P007:2007)」 [2009年1月31日発行]
また、以下の8標準が制定されており、2008年度中の発行が予定されている。
・ 「原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施基準(レベル1PSA編):2008」
・ 「原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施基準(レベル2PSA編):2008」
・ 「原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施基準(レベル3PSA編):2008」
・ 「統計的安全評価の実施基準:2008」
・ 「余裕深度処分の安全評価手法:2008」
・ 「高経年化対策の実施基準:2008」(改定版)
・ 「低レベル放射性廃棄物輸送容器の安全設計及び検査基準:2008」
・ 「使用済燃料・混合酸化物新燃料・高レベル放射性廃棄物・低レベル放射性廃棄物輸送容器定期点検基準:2008」(改定版)
2009年度上期に制定、発行を計画している標準は、以下の3件である。
・ 「原子力発電所の定期安全レビュー実施基準」 (改定版)
・ 「余裕深度処分対象廃棄体の製作に係わる基本的要
件」
・ 「原子力施設の廃止措置の計画」 (改定版)
そのほか、2009年度中に以下の8件の標準の制定、発行を計画している。
・ 「原子力発電所の安全確保活動へのリスク情報活用に関する実施基準」
・ 「原子力発電所の確率論的安全評価用のパラメータ推定に関する実施基準」
・ 「原子力発電所の停止状態を対象とした確率論的安全評価手順(改定版)」
・ 「PWR化学分析標準-ほう素」
・ 「原子炉施設の安全解析における放出源の有効高さを求めるための風洞実験実施基準(改定版)」
・ 「使用済燃料中間貯蔵用金属キャスクの安全設計及び検査基準(改定版)」
・ 「余裕深度処分対象廃棄体の品質確認方法」
・ 「余裕深度処分の埋設後管理方法」
【日本原子力学会標準委員会 岡村知巳・村上弘良】
(平成21年1月31日)
原子力発電所に関する最近の規格基準動向 岡村 知巳,村上 弘良