原子力規制を巡る最近の動向について
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カテゴリ: 解説記事
1. 原子力安全規制の課題の検討について(基本政策小委員会での検討について)
(1) 安全規制のあり方等について
原子力安全・保安院では、平成13年の原子力安全・保安部会報告「原子力の安全基盤の確保について」の提言や種々の事故・トラブルへの経験を踏まえ、様々な施策に取り組んできました。国際的には、地球環境問題等を背景に、原子力発電の一層の高度利用への取組みや、より高度・先進的な規制制度の追求など、原子力安全を取り巻く大きな環境変化が起きています。このため、原子力安全・保安部会の下の基本政策小委員会において、安全規制のあり方を中心に検討を行い、今後の取組課題を抽出するとともに、個々の課題のプライオリティ、役割分担、スケジュール等の対応方針を取りまとめることにしました。
(2) 当面の検討項目
基本政策小委員会では、以下の項目についての検討を行うこととしています(表1参照)。
1) これまでの安全規制施策を踏まえた今後の取組について
2) より高度・先進的な安全規制及び安全技術の導入について
3) 安全確保に係る国際動向への対応について
4) 原子力安全に係るステークホルダー間のコミュニケーションについて
5) その他安全規制に関する対応のあり方について
(3) 当面のスケジュール
基本政策小委員会では、平成21年4月に第1回会合を開催し、7月までに既に4回の会合を開催しています。今後、本年秋頃までに中間取りまとめを行う予定としています。
2. 中越沖地震への対応状況
平成19年7月16日に発生した中越沖地震から2年余りが経ちました。この地震において、柏崎刈羽原子力発電所における「止める」、「冷やす」、「閉じこめる」の安全機能は確保されましたが、設計時における想定を上回る大きな揺れが観測されたことから、保安院としては、同発電所全号機に関し、
① 建屋、設備・機器等が、今回の地震による影響を受けたか
② 平成18年策定の原子力安全委員会の「新耐震設計審査指針」に基づき、耐震安全性を確認するにあたって想定すべき基準地震動の下でも設備の安全性が維持されるか
との視点から、専門家のご意見を伺いつつ、安全確認を続けてきており、6月29日に「新潟県中越沖地震を受けた柏崎刈羽原子力発電所に係る原子力安全・保安院の対応(第2回中間報告)」をとりまとめました。
(http://www.nisa.meti.go.jp/00000004/houkokusyo/210728.pdf)
保安院では、東京電力に対して地震による施設への影響の有無について点検・評価をするとともに、中越沖地震の知見や新たに実施した地質調査などにより施設の耐震性を評価する基準とすべき基準地震動を見直し、この基準地震動の下でもプラント全体の安全性が確保されるかどうか確認するよう指示しました。東京電力による分析結果等の妥当性について、保安院として確認を進めました。
この結果、保安院は平成21年2月、同発電所7号機に関しては、その起動につき、安全上の問題はないものと判断し、その後、原子炉を起動してプラント全体の機能試験が行われ、保安院として、各部に異常はなく安定的に運転が行われていることを確認したので、継続的・安定的な運転が可能であり、安全上問題となる所見はないと判断しました。
また、同発電所6号機についても、設備の点検や耐
検討の背景 背景に関する項目
①
経験と知見を活用した規制の実効性の
向上 ①重大な事故・事案の経験と再発防止 ○ 検査制度における品質保証の考え方
○ 設計段階における品質保証
②大規模地震による被災 ○ 中越沖地震から得られた技術的知見
○ 緊急時の情報提供に関する教訓
③事故・トラブル情報の安全規制活動への反映 ○ 事故・トラブル情報の安全規制活動への反映
④安全研究等による新たな技術・知見の活用 ○ 安全研究等の成果を活用した規格基準整備
○ トピカルレポート制度
○ リスク情報の活用
○ シビアアクシデント対応の規制上の取扱
⑤既存規制制度に関する改善の指摘 ○ 安全審査関係文書に関するIRRS報告書の指摘
○ 運転開始前の総合的レビューに関するIRRS報告書の指摘
○ 放射線業務従事者の被ばく(集団線量)に関する原子力安全条約検討会合での指摘
②
規制対象の拡大・
多様化への対応 ①中間貯蔵事業の進展 ○ 中間貯蔵事業の進展
②プラント廃止措置の本格化 ○ プラント廃止措置の本格化
③放射性廃棄物処分等に係る状況の進展 ○ 放射性廃棄物処分等に係る状況の進展
④次世代軽水炉の開発 ○ 次世代軽水炉の開発
③
社会・国際環境の
変化への対応 ①既存設備の有効利用への取組 ○ 出力向上
○ 長期サイクル運転
○ リスク情報の活用(運転中保全;オンラインメンテナンス)
○ 新検査制度に対応した保守管理体制の充実
②原子力利用のグローバル化の進展 ○ 多国間設計評価プログラム(MDEP)
○ メーカーの製造段階における検査(ベンダーインスペクション)
③国際的な安全規制の共通化 ○ 放射線防護に係るICRP勧告の我が国規制への反映
○ シビアアクシデント対応の規制上の取扱(再掲)
○ メーカーの製造段階における検査(ベンダーインスペクション)(再掲)
④
ステークホルダー・コミュニケーション ①立地地域を中心とした国民とのコミュニケーション ○ 規制課題の設定に関するコミュニケーション
○ 安全審査等の規制プロセスにおけるコミュニケーション
②産業界とのコミュニケーション ○ 産業界とのコミュニケーションの状況
⑤
業務の拡大と規制資源の制約への対応 ① 規制業務の高度化と複雑化
② 人員の制約・高齢化
③ 業務の品質保証 ○ 規制業務の高度化と複雑化
○ 人員の制約・高齢化
○ 業務の品質保証
震安全評価を厳格に行った結果、建屋や設備等の健全性は維持されること、新たに設定された基準地震動に対して建屋や設備の安全機能は維持されていることを確認し、保安院としては、これらを踏まえ、同発電所6号機の起動につき、安全上の問題はないと判断するに至っています。についても、引き続き、安全確認作業を進めているところです。
2月13日にとりまとめた第1回中間報告以降に行った新たな検討としては、火災防止対策があります。柏崎刈羽原子力発電所では、地震発生以来9件の火災が発生
し、火災の頻発が問題となったことから、火災防止対策について検討を行い、報告がとりまとめられました。
原子力発電所における火災は、原子力の安全に直接関わらない事象であっても社会的な影響が大きく、周辺住民の方々等に大きな不安を与える特徴を有していること等に鑑み、原子力発電所における火災防止対策の徹底を図るため、原子力防災小委員会の火災防護ワーキンググループにおいて、我が国の原子力発電所における抜本的な火災防止対策の検討を行っています。
この火災防護ワーキンググループにおける主な指摘事項は、別表1のとおりです。
① 原子力発電所における火災ハザードの把握と対策の徹底
・溶剤を用いる作業、溶接作業、溶断作業(いわゆる3Y作業)などは火災の発生可能性が高いものと評価された。このため、これらの作業時における発火源の排除、可燃物の除去又は局限化、発火源と可燃物の隔離等の延焼防止措置を実施し、火災リスクを低減することについて、作業の責任者が十分な認識を持つことが重要
② 火災発生防止のための現場管理・組織の強化
・原子力発電所毎に、防火対策に知見を有する事業者の職員からなる巡視体制を構築し、必要に応じ、作業の中止や是正を促す等の対応を実施
・事業者の管理者層の積極的な関与を図る
・作業現場(協力企業)と事業者との双方向のコミュニケーションの円滑化を確保していく
③ 火災の発生防止に関する教育・訓練の充実
・火災に関する一定の知識を有する火災対策の専門家の育成と職員への防火教育の継続的実施を行う
・防火に関連する基礎的な知識について、作業員に対し、体験型の教育・訓練等を通じた取得を推進する
・火災の発生防止に係る教育・訓練について、外部有識者、専門機関等を積極的に活用する
④ 火災事例、良好事例等の水平展開の推進
・日本原子力技術協会の保有するNUCIA(原子力施設情報公開ライブラリー)のデータベースの内容の充実と積極的な活用の推進を図る
・他産業の事例を含む火災事例、良好事例、ヒヤリハット事例等の集約・共有化を推進し、それぞれの事業所の実状にあった対策に反映させる
⑤ 火災対策に特化した事業者相互による確認の推進
・第三者の火災対策の専門家の支援を受けて、事業者相互による火災対策に関するレビューを実施し、防火対策の水準を相互に向上させる
⑥ 原子力安全・保安院による火災防止対策の指導の徹底
・保安検査等により、品質保証の体系の中で、事業者の火災防止対策について確認を実施
・火災の防止、規模の局限化・影響緩和の観点から、可燃物管理等の徹底方策の検討を行う
・消防機関等の関係機関との連携の一層の推進を図る
3. 技術評価の状況について
原子力安全・保安院では、平成14年7月に原子炉安全小委員会報告書「原子力発電施設の技術基準の性能規定化と民間規格の活用に向けて」に基づき、国の定める技術基準を性能規定化するとともに、性能規定化された規制基準に対して、容認可能な仕様等については、学協会規格を技術評価した上で、是認(エンドース)してきています。
平成21年8月12日現在、のべ43件の学協会規格を「発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令の解釈について」において明示し、エンドースしています。
最新の是認は、次のとおりで、「発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令の解釈についての一部改正」を8月12日に行いました。
(http://www.nisa.meti.go.jp/oshirase/oshirase2009/210812-3.htm)
① 「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC4201-2007)」
② 「原子力発電所用機器に対する破壊靱性の確認方法(JEAC4206-2007)」
原子炉圧力容器は、中性子による照射脆化が起こるため、技術基準省令に基づいて原子炉圧力容器と同じ素材の金属片(監視試験片)を圧力容器内に配置し、定期的に監視試験(強度の確認)を行っています。
また、原子炉の60年供用に備え、監視試験片の再生を行う場合には、その再生方法を規定した学協会規格である「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC4201-2007)」付属書Cに定める方法で行うことを要求しています。
事業者は、監視試験の実測値を基にして照射脆化の進展を予測し、その予測に対応する管理温度を算出しています(照射脆化が進展すると、原子炉圧力容器が低温に弱くなるので、管理温度以下にしないための運転管理が必要となります)。このため、監視試験片の取り出し、監視試験、照射脆化の進展予測とそれに対応した管理温度の算出等について、当該規格に定める方法に条件を附して行うことを要求しています。
また、パブリック・コメントを募集しているものは次の1件となっています。今後、パブリック・コメントの結果を踏まえ、規制要求事項を満足する旨をNISA文書として発出する予定となっています。
① 「原子力発電所における安全のための品質保証規程(JEAC4111-2009)」
品質保証規程は、品質マネジメントシステムの確立、実施、評価及び改善によって原子力発電所の安全を達成・維持・向上することを目的とし、組織が実施する保安活動などについて規定しています。保安院等で当該規格に関する技術的妥当性の検討を行い、技術評価書案を作成し、安全管理技術評価WGにおいて、意見聴取を行い、技術評価書としてとりまとめました。
原子力規制を巡る最近の動向について 大島 俊之,Toshiyuki OSHIMA
(1) 安全規制のあり方等について
原子力安全・保安院では、平成13年の原子力安全・保安部会報告「原子力の安全基盤の確保について」の提言や種々の事故・トラブルへの経験を踏まえ、様々な施策に取り組んできました。国際的には、地球環境問題等を背景に、原子力発電の一層の高度利用への取組みや、より高度・先進的な規制制度の追求など、原子力安全を取り巻く大きな環境変化が起きています。このため、原子力安全・保安部会の下の基本政策小委員会において、安全規制のあり方を中心に検討を行い、今後の取組課題を抽出するとともに、個々の課題のプライオリティ、役割分担、スケジュール等の対応方針を取りまとめることにしました。
(2) 当面の検討項目
基本政策小委員会では、以下の項目についての検討を行うこととしています(表1参照)。
1) これまでの安全規制施策を踏まえた今後の取組について
2) より高度・先進的な安全規制及び安全技術の導入について
3) 安全確保に係る国際動向への対応について
4) 原子力安全に係るステークホルダー間のコミュニケーションについて
5) その他安全規制に関する対応のあり方について
(3) 当面のスケジュール
基本政策小委員会では、平成21年4月に第1回会合を開催し、7月までに既に4回の会合を開催しています。今後、本年秋頃までに中間取りまとめを行う予定としています。
2. 中越沖地震への対応状況
平成19年7月16日に発生した中越沖地震から2年余りが経ちました。この地震において、柏崎刈羽原子力発電所における「止める」、「冷やす」、「閉じこめる」の安全機能は確保されましたが、設計時における想定を上回る大きな揺れが観測されたことから、保安院としては、同発電所全号機に関し、
① 建屋、設備・機器等が、今回の地震による影響を受けたか
② 平成18年策定の原子力安全委員会の「新耐震設計審査指針」に基づき、耐震安全性を確認するにあたって想定すべき基準地震動の下でも設備の安全性が維持されるか
との視点から、専門家のご意見を伺いつつ、安全確認を続けてきており、6月29日に「新潟県中越沖地震を受けた柏崎刈羽原子力発電所に係る原子力安全・保安院の対応(第2回中間報告)」をとりまとめました。
(http://www.nisa.meti.go.jp/00000004/houkokusyo/210728.pdf)
保安院では、東京電力に対して地震による施設への影響の有無について点検・評価をするとともに、中越沖地震の知見や新たに実施した地質調査などにより施設の耐震性を評価する基準とすべき基準地震動を見直し、この基準地震動の下でもプラント全体の安全性が確保されるかどうか確認するよう指示しました。東京電力による分析結果等の妥当性について、保安院として確認を進めました。
この結果、保安院は平成21年2月、同発電所7号機に関しては、その起動につき、安全上の問題はないものと判断し、その後、原子炉を起動してプラント全体の機能試験が行われ、保安院として、各部に異常はなく安定的に運転が行われていることを確認したので、継続的・安定的な運転が可能であり、安全上問題となる所見はないと判断しました。
また、同発電所6号機についても、設備の点検や耐
検討の背景 背景に関する項目
①
経験と知見を活用した規制の実効性の
向上 ①重大な事故・事案の経験と再発防止 ○ 検査制度における品質保証の考え方
○ 設計段階における品質保証
②大規模地震による被災 ○ 中越沖地震から得られた技術的知見
○ 緊急時の情報提供に関する教訓
③事故・トラブル情報の安全規制活動への反映 ○ 事故・トラブル情報の安全規制活動への反映
④安全研究等による新たな技術・知見の活用 ○ 安全研究等の成果を活用した規格基準整備
○ トピカルレポート制度
○ リスク情報の活用
○ シビアアクシデント対応の規制上の取扱
⑤既存規制制度に関する改善の指摘 ○ 安全審査関係文書に関するIRRS報告書の指摘
○ 運転開始前の総合的レビューに関するIRRS報告書の指摘
○ 放射線業務従事者の被ばく(集団線量)に関する原子力安全条約検討会合での指摘
②
規制対象の拡大・
多様化への対応 ①中間貯蔵事業の進展 ○ 中間貯蔵事業の進展
②プラント廃止措置の本格化 ○ プラント廃止措置の本格化
③放射性廃棄物処分等に係る状況の進展 ○ 放射性廃棄物処分等に係る状況の進展
④次世代軽水炉の開発 ○ 次世代軽水炉の開発
③
社会・国際環境の
変化への対応 ①既存設備の有効利用への取組 ○ 出力向上
○ 長期サイクル運転
○ リスク情報の活用(運転中保全;オンラインメンテナンス)
○ 新検査制度に対応した保守管理体制の充実
②原子力利用のグローバル化の進展 ○ 多国間設計評価プログラム(MDEP)
○ メーカーの製造段階における検査(ベンダーインスペクション)
③国際的な安全規制の共通化 ○ 放射線防護に係るICRP勧告の我が国規制への反映
○ シビアアクシデント対応の規制上の取扱(再掲)
○ メーカーの製造段階における検査(ベンダーインスペクション)(再掲)
④
ステークホルダー・コミュニケーション ①立地地域を中心とした国民とのコミュニケーション ○ 規制課題の設定に関するコミュニケーション
○ 安全審査等の規制プロセスにおけるコミュニケーション
②産業界とのコミュニケーション ○ 産業界とのコミュニケーションの状況
⑤
業務の拡大と規制資源の制約への対応 ① 規制業務の高度化と複雑化
② 人員の制約・高齢化
③ 業務の品質保証 ○ 規制業務の高度化と複雑化
○ 人員の制約・高齢化
○ 業務の品質保証
震安全評価を厳格に行った結果、建屋や設備等の健全性は維持されること、新たに設定された基準地震動に対して建屋や設備の安全機能は維持されていることを確認し、保安院としては、これらを踏まえ、同発電所6号機の起動につき、安全上の問題はないと判断するに至っています。についても、引き続き、安全確認作業を進めているところです。
2月13日にとりまとめた第1回中間報告以降に行った新たな検討としては、火災防止対策があります。柏崎刈羽原子力発電所では、地震発生以来9件の火災が発生
し、火災の頻発が問題となったことから、火災防止対策について検討を行い、報告がとりまとめられました。
原子力発電所における火災は、原子力の安全に直接関わらない事象であっても社会的な影響が大きく、周辺住民の方々等に大きな不安を与える特徴を有していること等に鑑み、原子力発電所における火災防止対策の徹底を図るため、原子力防災小委員会の火災防護ワーキンググループにおいて、我が国の原子力発電所における抜本的な火災防止対策の検討を行っています。
この火災防護ワーキンググループにおける主な指摘事項は、別表1のとおりです。
① 原子力発電所における火災ハザードの把握と対策の徹底
・溶剤を用いる作業、溶接作業、溶断作業(いわゆる3Y作業)などは火災の発生可能性が高いものと評価された。このため、これらの作業時における発火源の排除、可燃物の除去又は局限化、発火源と可燃物の隔離等の延焼防止措置を実施し、火災リスクを低減することについて、作業の責任者が十分な認識を持つことが重要
② 火災発生防止のための現場管理・組織の強化
・原子力発電所毎に、防火対策に知見を有する事業者の職員からなる巡視体制を構築し、必要に応じ、作業の中止や是正を促す等の対応を実施
・事業者の管理者層の積極的な関与を図る
・作業現場(協力企業)と事業者との双方向のコミュニケーションの円滑化を確保していく
③ 火災の発生防止に関する教育・訓練の充実
・火災に関する一定の知識を有する火災対策の専門家の育成と職員への防火教育の継続的実施を行う
・防火に関連する基礎的な知識について、作業員に対し、体験型の教育・訓練等を通じた取得を推進する
・火災の発生防止に係る教育・訓練について、外部有識者、専門機関等を積極的に活用する
④ 火災事例、良好事例等の水平展開の推進
・日本原子力技術協会の保有するNUCIA(原子力施設情報公開ライブラリー)のデータベースの内容の充実と積極的な活用の推進を図る
・他産業の事例を含む火災事例、良好事例、ヒヤリハット事例等の集約・共有化を推進し、それぞれの事業所の実状にあった対策に反映させる
⑤ 火災対策に特化した事業者相互による確認の推進
・第三者の火災対策の専門家の支援を受けて、事業者相互による火災対策に関するレビューを実施し、防火対策の水準を相互に向上させる
⑥ 原子力安全・保安院による火災防止対策の指導の徹底
・保安検査等により、品質保証の体系の中で、事業者の火災防止対策について確認を実施
・火災の防止、規模の局限化・影響緩和の観点から、可燃物管理等の徹底方策の検討を行う
・消防機関等の関係機関との連携の一層の推進を図る
3. 技術評価の状況について
原子力安全・保安院では、平成14年7月に原子炉安全小委員会報告書「原子力発電施設の技術基準の性能規定化と民間規格の活用に向けて」に基づき、国の定める技術基準を性能規定化するとともに、性能規定化された規制基準に対して、容認可能な仕様等については、学協会規格を技術評価した上で、是認(エンドース)してきています。
平成21年8月12日現在、のべ43件の学協会規格を「発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令の解釈について」において明示し、エンドースしています。
最新の是認は、次のとおりで、「発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令の解釈についての一部改正」を8月12日に行いました。
(http://www.nisa.meti.go.jp/oshirase/oshirase2009/210812-3.htm)
① 「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC4201-2007)」
② 「原子力発電所用機器に対する破壊靱性の確認方法(JEAC4206-2007)」
原子炉圧力容器は、中性子による照射脆化が起こるため、技術基準省令に基づいて原子炉圧力容器と同じ素材の金属片(監視試験片)を圧力容器内に配置し、定期的に監視試験(強度の確認)を行っています。
また、原子炉の60年供用に備え、監視試験片の再生を行う場合には、その再生方法を規定した学協会規格である「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC4201-2007)」付属書Cに定める方法で行うことを要求しています。
事業者は、監視試験の実測値を基にして照射脆化の進展を予測し、その予測に対応する管理温度を算出しています(照射脆化が進展すると、原子炉圧力容器が低温に弱くなるので、管理温度以下にしないための運転管理が必要となります)。このため、監視試験片の取り出し、監視試験、照射脆化の進展予測とそれに対応した管理温度の算出等について、当該規格に定める方法に条件を附して行うことを要求しています。
また、パブリック・コメントを募集しているものは次の1件となっています。今後、パブリック・コメントの結果を踏まえ、規制要求事項を満足する旨をNISA文書として発出する予定となっています。
① 「原子力発電所における安全のための品質保証規程(JEAC4111-2009)」
品質保証規程は、品質マネジメントシステムの確立、実施、評価及び改善によって原子力発電所の安全を達成・維持・向上することを目的とし、組織が実施する保安活動などについて規定しています。保安院等で当該規格に関する技術的妥当性の検討を行い、技術評価書案を作成し、安全管理技術評価WGにおいて、意見聴取を行い、技術評価書としてとりまとめました。
原子力規制を巡る最近の動向について 大島 俊之,Toshiyuki OSHIMA