原子力発電所に関する最近の規格基準動向

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カテゴリ: 解説記事

1.日本機械学会における発電用原子力設備規格の制定・改訂動向
 社団法人日本機械学会標準?規格センター発電用設備規格委員会で改訂を行った次の発電用原子力設備規格類が本年度発行された(一部発行予定)。
・ 発電用原子力設備規格 設計・建設規格(2009年追補版) 第Ⅰ編 軽水炉規格
・ 発電用原子力設備規格 設計・建設規格(2009年版) 第Ⅱ編 高速炉規格
・ 発電用原子力設備規格 維持規格(2009年追補版)
・ 発電用原子力設備規格 溶接規格(2009年追補版)
・ 発電用原子力設備規格 環境疲労評価手法(2009年版)
・ 発電用原子力設備規格 維持規格 事例規格「ニッケル合金のPWR一次系水質環境中の疲労き裂進展速度」
・ 発電用原子力設備規格 溶接規格 事例規格 「PWR原子炉容器等冷却材管台部に対する溶接後熱処理時の加熱範囲に関する規定」
・ 発電用原子力設備規格 材料規格 事例規格 「材料規格2008年版Part2及びPart3 JIS規格年版の読替規定」
・ 使用済燃料貯蔵施設規格 金属キャスク構造規格 事例規格 「バスケット用ボロン添加アルミニウム合金1%B-A6061-T6,1%B-A6061-T651に関する規定」
・ 使用済燃料貯蔵施設規格 金属キャスク構造規格 事例規格 「バスケット用アルミニウム合金A6061-T6,A6061-T651に関する規定」
・ 使用済燃料貯蔵施設規格 金属キャスク構造規格 事例規格 「バスケット用アルミニウム合金A5083FH-Oに関する規定」
・ 使用済燃料貯蔵施設規格 金属キャスク構造規格 事例規格 「バスケット用ボロン添加ステンレス鋼板B-SUS304P-1に関する規定」
・ 使用済燃料貯蔵施設規格 金属キャスク構造規格 事例規格 「バスケット用ボロン添加アルミニウム合金BC-A6N01SS-T1に関する規定」
また、発電用原子力設備規格類の1月末での検討概況は以下の通りである。
(1)「設計・建設規格」
JIS等の最新年版の反映、これまで寄せられた質問に対応した規格内容の見直し、解説を含む規定内容の明確化および炉心支持構造物の溶接部設計規定の追加等を反映した設計・建設規格第Ⅰ編軽水炉規格2009年追補版が2010年2月に発行された。2010年追補版の策定、事例規格 発電用原子力設備における「応力腐食割れ発生の抑制に対する考慮」の改訂を検討中である。
また、材料関係の規定が材料規格(2008年版)として分離されたのに伴う記載の変更、材料強度基準の解説充実等の修正を行った設計?建設規格第Ⅱ編高速炉規格の改訂版が2009年8月に発行された。
(2)「溶接規格」
溶接金属のデルタフェライト規定追加、チタンクラッド溶接士資格試験規定の削除等を反映した溶接規格2009年追補版が2010年1月に発行された。事例規格「PWR原子炉容器等冷却材管台部に対する溶接後熱処理時の加熱範囲に関する規定」が2009年6月に発行された。
溶接規格2010年追補版、事例規格「コンクリート製原子炉格納容器 溶接規格」、事例規格「高速炉溶接規格」の策定に向け引き続き検討中である。
(3)「材料規格」
 材料規格2008年版では材料図表において使用材料のJIS規格年版を指定しているが、指定年版よりも新しい年版についても材料の機械的性質および化学成分が同等である範囲の使用を認めることを目的に、事例規格 「材料規格2008年版Part2及びPart3 JIS規格年版の読替規定」が2009年6月に発行された。引き続き、さらに新しいJIS規格年版の読替のための事例規格案を策定中である。
(4)「維持規格」
維持規格2008年版に対してBF・BJカテゴリの体積試験範囲の見直し、目視試験規定の修正、フェライト鋼容器と管の接合部における機器区分の解説見直し、評価不要欠陥寸法基準見直し、未検査範囲の貫通欠陥想定規定の検査編からの削除、支持構造物の試験免除、異種金属溶接継手の考え方の追加、第1回目の検査間隔の起算日見直し等の改訂を施した維持規格2009年追補版が2010年4月頃発行される予定である。
さらに、ウェルドオーバーレイによる補修法、レーザ外面照射応力改善方法、PD制度等の追補版への反映を目指している。また、事例規格「ニッケル合金のPWR一次系水質環境中のSCCき裂進展速度」や事例規格「ニッケル合金の欠陥評価法」を検討中である。
(5)「コンクリート製原子炉格納容器規格」
 溶接設計規定の追加等の変更を行った規格改訂案を検討中である。
(6)「使用済燃料貯蔵施設規格」
金属キャスク構造規格に対応したバスケットに使用可能な7種類の新規材料に関する5件の事例規格が2009年4月に発行された。
さらに、事例規格「密封容器及び中間胴用材料に関する規定」を検討中である。
(7)「再処理設備規格」
商業用再処理設備の材料・構造に関する設計規格を2010年度前半の発行を目指し検討中であり、さらに試験・評価に関する維持規格および溶接規格を策定中である。
(8)「環境疲労評価手法」
 最新の環境疲労試験データを反映した環境疲労評価手法2009年版が2010年3月頃発行される予定である。
【(社)日本機械学会 標準?規格センター 発電用設備規格委員会 原子力専門委員会 永田徹也】
2.日本電気協会 原子力規格委員会(NUSC)における規格の策定動向
社団法人日本電気協会 原子力規格委員会では、原子力発電所の保守管理及び品質保証等に関連する規格の制定・改定を進めている。
以下に、平成21年2月以降、既に発刊された13規格(平成22年1月末現在の状況)を示す。このうち、原子力発電所の設備診断に関する技術指針-放射線肉厚診断技術(JEAG4224)の制定内容については、保全学 Vol.8, No.3の解説記事を参照されたい。なお[ ]内は発刊日を示す。
(1) JEAG4623-2009 原子力発電所の安全系電気・計装品の耐環境性能の検証に関する指針(新規制定)[平成21年3月31日]
(2) JEAG4103-2009 原子力発電所の火災防護管理指針(新規制定)[平成21年5月20日]
(3) JEAC4111-2009 原子力発電所における安全のための品質保証規程(改定)[平成21年5月30日]
(4) JEAG4224-2009原子力発電所の設備診断に関する技術指針-放射線肉厚診断技術(新規制定)[平成21年6月10日]
(5) JEAG4121-2009 原子力発電所における安全のための品質保証規程(JEAC4111-2009)の適用指針-原子力発電所の運転段階-(改定)[平成21年6月15日]
(6) JEAG4601-2009 原子力発電所耐震設計技術指針(新規制定)[平成21年7月21日]
(7) JEAG4610-2009 原子力発電所個人線量モニタリング指針(改定)[平成21年7月30日]
(8) JEAG4204-2009 発電用原子燃料品質管理指針(改定)[平成21年8月30日]
(9) JEAG4611-2009 安全機能を有する計測制御装置の設計指針(改定)[平成21年9月30日]
(10) JEAC4622-2009 原子力発電所中央制御室運転員の事故時被ばくに関する規程(新規制定)[平成21年10月9日]
(11) JEAG4625-2009 原子力発電所火山影響評価技術指針(新規制定)[平成21年10月30日]
(12) JEAC4601-2009 原子力発電所耐震設計技術規程(新規制定)[平成21年12月25日]
(13) JEAC4624-2009 原子力発電所の中央制御室における誤操作防止の設備設計に関する規程(新規制定) [平成22年1月20日]
 また、以下の5規格は原子力規格委員会で制定案が成案となり、現在発刊準備を行っている。
(1) JEAC4604 原子力発電所安全保護系の設計規程の制定案(指針JEAG4604-1993の規程への改定案)
(2) JEAC4618 鋼板コンクリート構造耐震設計技術規程の制定案(指針JEAG4618-2205の規程への改定案)
(3) JEAC4616 乾式キャスク貯蔵建屋基礎構造の設計に関する技術規程の制定案(指針JEAG4616-2003の規程への改定案)
(4) JEAG4217 原子力発電所用機器における渦電流探傷試験指針の制定案
(5) JEAC4603 原子力発電所保安電源設備の設計規程の制定案(指針JEAG4603-1992の規程への改定案)
 
 なお以下の規格案については公衆審査における意見への対応を検討中である。
(1) JEAC4626 原子力発電所の火災防護規程の制定案
(2) JEAG4607-1999 原子力発電所の火災防護指針の改定案
その他、以下の規格について制定?改定の検討を進めている。
(1) 安全設計分科会関連
・安全機能を有する電気?機械装置の重要度分類指針(JEAG4612-1998)の改定
・原子力発電所緊急時対策所の設計指針(JEAG4627)の制定(火力原子力発電協会の緊急時対策所の設計指針(TNG-G2705-1986)を引き継ぐ指針)
(2) 構造分科会関連
・原子炉構造材の監視試験方法(JEAC4201-2007)の追補版(原子力安全保安院の技術評価を踏まえた一部改定)
・フェライト鋼の破壊靭性参照温度To決定のための試験方法(マスターカーブ法の新しい破壊靱性評価方法の反映)
・軽水型原子力発電所用機器の供用期間中検査における超音波探傷試験規程(JEAC4207-2008)の追補版(JSME維持規格との整合をはかると共に、JNES報告(国プロ)結果等の反映)
・原子炉格納容器内の塗装に関する指針(JEAG4628)の制定
(3) 原子燃料分科会関連
・取替炉心毎の安全性確認及び炉心?燃料に係る検査に係る規定の制定
(4) 耐震設計分科会関連
・原子力発電所免震構造設計技術指針(JEAG4614-2000)の改定
(5) 運転?保守分科会関連
・原子力発電所の緊急時対策指針(JEAG4102-1996)の改定
・原子力発電所運転責任者の判定に係る規程(JEAC4804-2008)の改定
【社団法人日本電気協会 原子力規格委員会】
3. 日本原子力学会における標準策定・改定・廃止状況
社団法人日本原子力学会標準委員会が策定している標準の制定状況を報告する。2009年2月以降に発行した標準は、1月31日現在、以下の11標準である。
・「原子力発電所の高経年化対策実施基準:2008」
・「原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施基準(レベル1PSA編):2008」
・「原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施基準(レベル2PSA編):2008」
・「原子力発電所の確率論的安全評価に関する実施基準(レベル3PSA編):2008」
・「余裕深度処分の安全評価手法:2008」
・「統計的安全評価の実施基準:2008」
・「低レベル放射性廃棄物輸送容器の安全設計及び検査基準:2008」
・「使用済燃料・混合酸化物新燃料・高レベル放射性廃棄物・低レベル放射性廃棄物輸送容器定期点検基準:2008」
・「原子力発電所の定期安全レビュー実施基準:2009」
・「余裕深度処分対象廃棄体の製作に係わる基本的要件:2009」
・「原子力施設の廃止措置の計画:2009」
このうち、「原子力施設の廃止措置の計画:2009」は、「原子力施設の廃止措置の計画と実施:2006」の計画部分に関する改定版であり、今後実施部分に関する改定版の作成が予定されている。
また、以下の1標準が制定されており、2009年度中の発行が予定されている。
・「原子炉施設の安全解析における放出源の有効高さを求めるための風洞実験実施基準:2009」
2010年度上期に制定、発行を計画している標準は、以下の8件である。
・「原子力発電所の停止状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施基準(レベル1PSA編)(改定版)」
・「使用済燃料中間貯蔵施設用金属キャスクの安全設計及び検査基準(改定版)」
・「加圧水型原子炉一次冷却材の化学分析方法-ほう素」
・「原子力発電所の安全確保活動へのリスク情報活用に関する実施基準」
・「原子力発電所の高経年化対策実施基準(追補版)」
・「放射線遮へい計算のための線量換算係数」
・「余裕深度処分対象廃棄物の放射能濃度決定方法の基本手順」
・「低レベル放射性廃棄物の埋設地に係る埋戻し方法及び施設の管理方法」
 そのほか、2010年度中に以下の7件の標準の制定、発行を計画している。
・「余裕深度処分施設の施設検査方法」
・「トレンチ処分施設の施設検査方法」
・「ピット処分施設の施設検査方法」
・「トレンチ処分対象廃棄物の埋設に向けた取扱い及び検査方法」
・「ウラン・TRU取扱施設におけるクリアランス判断方法」
・「加圧水型原子炉一次冷却材の化学分析方法-溶存水素」
・「加圧水型原子炉一次冷却材の化学分析方法 - よう素」
【日本原子力学会 標準委員会】
原子力発電所に関する最近の規格基準動向 永田 徹也,日本電気協会 原子力規格委員会,日本原子力学会 標準委員会
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