エネルギーのベストミックスについて

公開日:
カテゴリ: 解説記事

1.はじめに
2011年3月の福島第一原子力発電所の事故を受けて、エネルギー基本計画の見直しや、エネルギー供給事業に関する規制・制度改革など、エネルギー政策に関する議論が、エネルギー・環境会議などの様々な場で喧しく行われている。原子力発電への依存度を下げていくことなどが、中長期的な政府方針として報道されているものの、まだ具体的な姿は見えていない。
エネルギー政策を立案する際には、様々な観点から包括的に考える必要があるが、特に重要となる評価指標は、「経済性」、「環境性」、「エネルギー供給の安定性」である。特に最後のエネルギー供給の安定性に関しては、海外資源調達の安定性に加え、国内のエネルギー供給インフラの自然災害等に対する安定性を向上させることも、今回の震災を受けて、重要な課題として認識されるようになっている。また、長期的には、その資源を何年利用できるかという「持続可能性」という指標も考慮にいれる必要がある。上記の評価指標のいずれに対しても優れる万能なエネルギー資源やその供給方式は存在しないため、様々なエネルギーを合理的に組み合わせて使用することが望まれる。その組み合わせが、いわゆるエネルギーのベストミックスである。
本稿では、今後の日本のエネルギーのベストミックスに関する私見を記すが、今後明らかとなるだろう政府等によるエネルギー政策とは乖離する可能性があることはご容赦戴きたい。
2.エネルギー資源・供給方式の評価
評価指標の間の相対的な重要度は、経済情勢や国際情勢などによって、時代とともに変化するため、具体的なエネルギー政策もそれに応じて見直しが必要となる。以下では、現状の認識のもとに、評価指標ごとに各種エネルギーの特徴について整理してみる。
2.1経済性について
経済性は、エネルギーのベストミックスを検討する際には、最も重要な評価指標となるが、燃料価格やプラントの稼働率などに大きく依存するため、将来の不確実性も大きい。図1には2000~2009年のカロリー当たりの輸入価格を示す[1]。石炭(一般炭)は最も安価であり、その次は液化天然ガスとなる。天然ガス価格は、わが国の場合、原油価格と連動して変化する契約がなされる場合が多い。

図 1 化石燃料の輸入価格の推移[1]
表1には、RITE(地球環境産業技術研究機構)の秋元氏によるエネルギー源別の発電単価の計算例[2]を示す。各種の火力発電と原子力発電の発電単価の間には大差はなく、燃料価格の変動などに応じて、互いの大小関係は入れ替わる可能性がある。風力や太陽光の発電単価は現状では顕著に高いが、太陽光発電に関しては将来的に、太陽電池価格の低廉化に伴い、その発電単価も安価になることが期待されている。
原油をはじめとして、将来の化石燃料価格には大きな不確実性があるため、厳密な比較を行ってもあまり意味がない。原子力発電は石炭火力発電と並んで相対的に安価な発電方式と考えられているが、今回の事故に伴う安全対策費用と損害賠償費用を追加的に考慮する必要がある。日本には約50GWの原子力発電所があるが、これらの発電所が年間5,000時間(設備利用率約57%)で40年間運用するという仮定をすると、発電電力量の合計は丁度10兆kWhとなる。今回の損害の全てが金銭に換算できるとは考えるべきではないが、それが仮にX兆円であれば、それを日本全体の原子力発電で単純に均等化すると、その発電単価はX/10(円/kWh)だけ上昇するものと概算できる。例えば、仮にX=10(兆円)とすると、1円/kWhの上昇となる。なお厳密には割引率を用いた時点間の価値換算が必要であるが、ここでは詳細には触れない。
表 1 発電単価推計[2]
発電方式 発電単価
石炭火力発電 8~12円/kWh程度
天然ガス複合発電 10~14円/kWh程度
原子力発電 8~13円/kWh程度
風力発電 16~18円/kWh
太陽光発電 55~63円/kWh
*原子力はバックエンド・廃炉時解体費用を含む
*いずれも送電費用として2~4円/kWhを含めたコスト
*炭素価格は含まれていない
石炭火力発電や天然ガス複合発電については、CO2排出が伴うため、場合によっては発電単価に炭素価格を含めるべきである。炭素価格が10~200ドル/tCO2の範囲であれば、発電単価の上昇分はそれぞれ0.8~15.5円/kWhと0.3~6.8円/kWhとなる。なお、欧州での排出権価格の現状の相場は15ドル/tCO2程度であるが、将来的には100ドル/tCO2を超える可能性はある。
ところで、原子力発電から撤退して、コストの高い再生可能エネルギーの割合を増やすと、電気料金が大幅に上昇するのではないかと懸念されている。また、火力発電の増加によって、化石燃料購入のための貿易支出が増え、わが国の貿易黒字が数兆円のオーダーで減少するのではないかと心配されている。それはそうであるが、ここで注意すべきことは、この電気料金の上昇や貿易支出の増加が、国民経済(GDPの成長率など)にどれだけの悪影響を及ぼすかを見通すことは、定性的にもまだまだ難しく、そのような評価は、多部門応用一般均衡モデルを用いても決して容易には行えないことである。高額な電気料金は国内投資を活性化するかもしれず、貿易支出の増加は円高を抑制するかもしれないのである。将来の輸出産業の国際競争力に関する想定などによって評価結果が変わってくる可能性があり、拙速な判断は控えるべきであろう。
2.2 環境性について
エネルギー利用に伴う環境問題には、様々なものがあるが、最も懸念されている問題は化石燃料の燃焼により排出される膨大なCO2に起因する地球温暖化と気候変動の問題であろう。人為的な地球温暖化の程度やその悪影響については、不確実性が大きく、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の場でも未だに科学者の間で議論が続けられている。その一方で、京都議定書の温室効果ガス排出目標などのように、国際社会からの要求は現実に突き付けられており、わが国は具体的な対策を迫られている。図2には、電源種別のCO2排出原単位の推計例[3]を示す。CO2排出量の削減を考えると、火力発電の中ではLNG複合発電が最も優れており、石炭火力の約半分の排出量で済む。CO2排出原単位の観点では、原子力発電は確かに魅力的な発電方式であるといえる。

図 2 電源種別のCO2排出原単位[3]
この原子力発電というオプションを抜きにして、CO2排出量の大幅な削減(例えば80%削減)を実現しようとすると、エネルギー消費量自体の大幅削減、再生可能エネルギーの大規模導入という対策に加えて、火力発電所から排出されるCO2の回収貯留(CO2 Capture and Storage: CCS)という技術の利用も考えざるを得ないであろう。CCSは、化石燃料やバイオマスなどの炭素を含む燃料を燃焼させた際に発生する排ガスからCO2を分離回収し、それを地中や海洋に貯留することによって、大気中へのCO2排出量を削減する技術である。火力発電所のCO2排出量を約90%も削減できる。CCSはCO2の「回収」、「輸送」、「貯留」という要素技術から構成され、これらの要素技術は、何らかの形で既に実用化されているものが多い。しかし、エネルギーシステムから排出されるCO2を削減することを目的に、実際にCCSが利用された実績は、経済的な負担も大きいため世界でもまだ数例にとどまっている。わが国の国内での貯留可能容量や経済的な実施可能性については未知な部分も多い。わが国で実施した場合、CO2排出削減方策として太陽光発電よりも経済性に優れている可能性は十分あるが、国際的な排出権取引よりも高くつく恐れはある。好条件が揃う国や地域では、CO2排出制約下においても化石燃料の継続的な利用を可能とする「つなぎの技術」となる可能性はある。
2.3 供給安定性について
2.3.1 海外からの供給安定性 
2008年の世界主要国のエネルギー自給率[1][4]を図3に示す。わが国は化石燃料のほぼ全量を海外から輸入しており、原子力を準国産エネルギーとみなしても、自給率は18%と低いのが特徴である。
図 3 エネルギー自給率の国際比較[1][4]
経済性と環境性を考慮すると、原子力発電を代替する発電方式として最も優れているのは天然ガス火力と判断されるが、供給安定性を考えた場合、天然ガス火力には全く難がない訳ではない。まず天然ガスも、石油と同様に将来的には中東依存度が高まっていくことが予想されることである。そして、天然ガスの備蓄が、気体であることから、石油や石炭などと比較してそれほど簡単ではないことである。国内のLNGタンクでの貯蔵量は、現状では1か月分の消費量程度と推計され、流通上のバッファ程度の貯蔵しかなされていない。(原油の場合は、民間備蓄と国家備蓄を合計すると約180日分の備蓄がある。)もし仮に、天然ガス火力の割合が全電源中で最大となり、天然ガス火力を他の発電設備で代替することが物理的に不可能となる状況となれば、軍事紛争等による1か月程度の供給途絶で、わが国の電力とガスの供給は危機的状況に陥る可能性がある。対策としては、LNGの数か月分の備蓄を行うか、緊急時には天然ガス火力発電所で石油も燃料として利用できるようにすることなどが考えられる。LNGを数か月分も貯蔵することは、原油の貯蔵と比べて難易度が高く、経済的にも大きな負担となる可能性がある。
現時点では、わが国の電力系統やガスパイプラインは海外とは連系されていない。諸外国での実例を見れば、対馬海峡や宗谷海峡を縦断する海底ケーブルや海底パイプラインの設置は技術的には可能と考えられるものの、韓国がわが国に比べてエネルギー資源調達の観点で特段有利な立場にあるとは考えられないこと、サハリンからのLNG供給も開始されたことなどから、連系のメリットは明らかではない。ただし、北朝鮮の動向次第では、状況が大きく変化する可能性はある。
2.3.2 国内の供給安定性 
国内のエネルギー供給インフラの安定性については、原子力発電所などの大規模発電所の地震や津波などに対する安全対策の実施に加え、大規模集中電源から中小規模分散電源への移行も提案されている。具体的な分散電源としては、太陽光、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーを利用した発電設備、そして都市ガスや液化石油ガスを燃料とした熱電併給システムなどが考えられる。風力発電を除いては、電力の長距離輸送を避けて、エネルギーの地産地消を目指す傾向が見られる。風力資源は、風況の良い北海道、東北、九州に偏在していることから、風力発電の大規模な導入を進めるとなると、国内の各地域の電力系統を連系する連絡線の送電容量を増やす必要がでてくる。その結果として、遠隔地電源への依存度を今以上に高める可能性はある。
都市ガスを利用した分散電源の場合、前述したように、天然ガスの供給途絶への対応策を検討しておく必要がある。小型の燃料電池の場合、方式によっては緊急時の燃料種類の変更は簡単ではないかもしれない。日本国内を縦横断するようなガスパイプライン網の整備も提案されているが、LNGタンカーで供給されている天然ガスを需要地間のパイプラインで融通することのメリットは平時にはほとんどないと考えられ、経済的な観点から実現は難しいと思われる。LNG基地を整備する方が得策ではないかと個人的には思う。
電力は時々刻々の需給バランスをとらなくてならないため、太陽光発電や風力発電などの出力が不規則に変動する可能性がある電源の大量導入は、電力系統の供給信頼度を損ねる恐れがある点には注意が必要である。蓄電池による出力の平滑化はコストが一般に高く、発電事業としての実施はとても難しいと判断され、むしろ出力制御が俊敏に行える火力発電所の導入を進めることが実用的な対応策となると予想される。電気自動車の蓄電池の活用も提案されているが、充放電による蓄電池の劣化を考慮すると、蓄電された電力の配電線への逆潮流は経済的には割に合わないと判断される。また、後述するスマートグリッドの機能を利用した太陽光発電の余剰電力の出力抑制も考えられる。ただ、まさにこの部分(蓄電池による平滑化、俊敏な火力による追従、スマートグリッドによる出力抑制)の対策が実際にどのようになるのかが全く予想できないため、再生可能エネルギーを考慮した本格的なベストミックスの評価はとても困難なものとなっている。
出力調整能力が制限される原子力発電所の割合が減少し、このような火力発電所が増えると、再生可能エネルギーの導入可能量の上限を引き挙げることにつながるが、原子力の減少分を再生可能エネルギーと火力の合わせ技で補うため、CO2排出削減効果は割り引いて考える必要がある。
電力系統の運用者と、需要家や分散電源運用者との間で双方向情報通信を行うことによって、系統全体の電力需給の最適化を行う「スマートグリッド」が世界的に注目を集めている。しかし、双方向情報通信を行う目的が曖昧で、スマートグリッド構築の明確なメリットは見いだせていない。例えば、前述の太陽光発電の余剰電力の出力抑制には双方通信は必ずしも必要ではない。スマートメーターの導入は、電気料金徴収の効率化や、電力消費量の見える化による省エネルギーの推進には資するかもしれないが、電力供給インフラに質的に大きな変化をもたらすものとは考え難い。より革新的なアイデアが望まれている。
2.4 持続可能性について
2.4.1 枯渇性資源 
化石燃料資源の枯渇は、未確認資源の利用可能性も考慮すると、中国やインド等での消費量の増大を勘定に入れても、100年以上先のことになると予想される。温室効果ガス濃度の増加による気候変動が懸念される状況下では、資源量の制約よりも、その燃焼によるCO2の大気中への排出量に関する国際政治的な制約が最も厳しいものとなる。
図4には枯渇性資源の確認埋蔵量と推定埋蔵量[5]を示すが、(地下資源としての)ウランのエネルギー資源としての量的価値は、軽水炉等でプルトニウムの合成を意図して行わないと、在来型石油資源と同程度と推計され、石炭資源には遠く及ばない。一方、増殖炉等でプルトニウム合成を積極的に行う場合や海水ウランを利用できる場合は状況が全く異なり、ウラン資源の量的価値は石炭資源をも遥かに凌駕する。人類社会が必要とするエネルギーを数千年から数十万年も供給できると考えられ、原子力は化石燃料代替エネルギーの本命候補となる。
温暖化対策の本質は、膨大な石炭資源を代替できるエネルギー資源を見出せるか否かに係わっているといっても良い。軽水炉によるワンス・スルー利用のみの場合では、上述したように石炭資源を量的に代替できないため、温暖化対策という「錦の御旗」は下ろさざるをえず、大袈裟に言えば文明史におけるワンス・スルー利用の正統性は自明ではなくなる。例えば、ドイツ等でのウランのワンス・スルー利用は即時に中止してもらい、再処理を実施し得る他国の人々のために、できるだけ多くのウラン資源を温存すべきという判断・要請もありえる。この場合、ワンス・スルー利用を中止した国や地域の当面のCO2排出量は増えるかもしれないが、温存されたウランを他国で増殖炉利用することによって、全地球的にはより多くのCO2排出削減を期待できる可能性がある。わが国の使用済み燃料の再処理事業は、営利目的の事業であるが、現在の軽水炉利用に対して、文明史的観点から大義名分と正統性を付与する政治的な役割も担っているように思われる。

図 4 枯渇性資源の確認埋蔵量と推定埋蔵量[5]
2.4.2 再生可能資源
次にわが国の再生可能エネルギーの供給可能量について述べる。
わが国の国土の2/3は森林であり、国全体のエネルギー消費量の2年分に相当するバイオマスエネルギーが木材として蓄積されている。木々の成長年数として40年を仮定すると、木材の利用可能量は国全体のエネルギー消費量の約5%となる。ただ実際には全ての森林を利用することはできない。また、わが国で発生する可燃性の廃棄物(廃木材、古紙など)の全発熱量は、国全体のエネルギー消費量の3%程度に相当する。バイオマスエネルギーへの期待は大きいが、人口密度の低い北欧諸国などと比較すると、わが国における供給可能量は相対的に小さい。
地熱発電や海洋発電については、その詳細は省略するが、これらの資源を広範に活用したとしても、そのそれぞれの貢献度は現在の水力発電(わが国のエネルギー供給量の約5%)程度に留まるものと考えられる。数百年に一度の富士山の大噴火のエネルギーでも、わが国のエネルギー消費量の約10日分にしかならず、過度な期待はしない方が良い。
風力は、水力に次いで利用が進んでいるが、わが国の風力発電ポテンシャルは、陸域・海域にそれぞれおおよそ19~39GWと6~13GW程度と推計[6]されている。風力資源の場合、サイトごとの特性や開発に対する障害・制約条件のバラつきが大きいため、一般化した議論はとても難しい。前述したように風力資源が地理的に偏在していることから、送電設備の新設が必要な場合も考えられる。
太陽光発電の供給可能量は、他の再生可能エネルギーとは別格で極めて大きい。例えば、わが国の国土の2%の面積に太陽電池を設置すれば、時々刻々の電力需給バランスはともかく、年間の積分量ではわが国の電力需要の全てを賄える。物理的な供給可能量から評価する限り、少なくともわが国では、太陽エネルギー以外の再生可能エネルギーの資源量はあまり大きくはなく、基幹エネルギー資源としての利用は難しいと予想される。一方、太陽光発電は供給可能量という点では問題はないが、現時点では、最も高価な再生可能エネルギーの一つであり、その初期設備費の低減が実現されなければ経済的な意義が見いだせない状況にある。
 
3.時間軸別のベストミックス
以上の状況を背景に、エネルギーのベストミックスを短期、中期、長期の時間軸に分けて考えてみる。
3.1 短期
短期的には、電源構成の急激な変化は難しいため、既存設備の活用が中心とならざるを得ない。安全性確保を前提に、原子力発電所の再稼働を進めていくか、計画停電も選択肢として含むような厳しい節電を実施するかの2つの選択肢しかない。後者を選択した場合は、日本経済への悪影響は避けられない。
3.2 中期
中期的には、新設設備の利用も視野に入れることができ、原子力発電の利用は必須ではなくなる。原子力発電を利用していない先進国が世界にはいくつも存在することから、中期的には「脱原発」は可能と考えられる。その場合の代替電源は、再生可能エネルギーの可能性もないわけではないが、技術的経済的理由からやはり天然ガス火力、石炭火力が中心になるものと考えられる。ただし、CO2排出量の増加など前述した様々な課題には対応する必要がある。
原子力発電の利用は、国際的な政治経済情勢、事業環境、社会受容の状況に応じて、政治的判断や経営的判断で選択されるものと思われる。特にCO2排出量の制約がある場合は、原子力発電は火力発電よりも経済性の観点で有利になる可能性は高いと考えられるが、原子力発電が選択される必然性はない。
3.2 長期
長期的には、化石燃料の資源枯渇が深刻となる。原子力エネルギーは枯渇性資源であるが、前述したように技術進歩があれば、数千~数十万年という期間で、それへの依存度を高めることができると考えられる。一方、再生可能エネルギーを用いた発電方式の多くは出力が時間的に変動するという欠点があり、補完的な動作が行える発電手段を別途準備する必要がある。社会が必要とする全ての電力を経済合理的に再生可能エネルギーだけで賄えるかは、現在の知見では全く判断できない。例えば、太陽光発電と蓄電装置の組み合わせで、電力需要の全てを現状の電力単価で賄うためには、これらの機器コストが現状の約10分の1にならなくてはならないと推計[7]される。このようなことの実現は非常に困難に違いない。
4.結言
本稿では、エネルギーのベストミックスを考える上で、重要となる「経済性」、「環境性」、「エネルギー供給の安定性」、「持続可能性」という4つの評価指標を軸として、各種のエネルギー資源や供給方式の特徴を整理し、ベストミックスに関する私見を述べた。読んでいただくとわかる通り、未知な部分、よくわかっていないことが多く、定量的な評価がとても難しい状況にある。
化石燃料資源はいずれ枯渇することから、CO2問題の有無にかかわらず、長期的には非化石エネルギー資源に人類は依存せざるを得ない。現時点では、再生可能エネルギーに100%依存した社会を構築できる保証はないことから、少なくとも「長期的には原子力エネルギーの利用が必要となる可能性がある。」とは言える。
特効薬的なエネルギー供給方式は未だ見出されていない。長期的かつ世界的な視野でもって、新たな情報に基づきつつ、文字通りエネルギーのベストミックスを求め続けることが望まれる。
参考文献
[1] 2011年エネルギー・経済統計要覧、省エネルギーセンター
[2] 地球環境産業技術研究機構Webサイト:最新の分析―発電コストの推計
http://www.rite.or.jp/Japanese/labo/sysken/systemken.html

[3] 今村 栄一、長野 浩司, “日本の発電技術のライフサイクルCO2排出量評価-2009年に得られたデータを用いた再推計-”, 電力中央研究所 報告書番号Y09027
[4] IEA/OECD Energy Balances of OECD Countries, Energy Balances of Non-OECD Countries (2010)
[5] Global Energy Perspectives, N. Nakicenovic, A. Grubler, A. McDonald (Eds,), International Institute for Applied Systems Analysis (IIASA), Laxenburg, Austria, in cooperation with World Energy Council (WEC), London, Cambridge University Press, Cambridge (1998)
[6] 経済産業省, 平成22 年度新エネルギー等導入促進基礎調査事業(風力エネルギーの導入可能量に関する調査)調査報告書平成23年2月28日, 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2011fy/E001771.pdf
[7] 小宮山、藤井、” 震災後の関東圏の電源ベストミックスと太陽光発電大規模導入の可能”, 日本エネルギー経済研究所、研究レポート2011年5月
http://eneken.ieej.or.jp/data/3820_summary.pdf
(平成23年8月16日)

エネルギーのベストミックスについて 藤井 康正,Yasumasa FUJII エネルギーのベストミックスについて 藤井 康正,Yasumasa FUJII
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)