柏崎刈羽原子力発電所の安全性向上と新規制基準への対応

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カテゴリ: 解説記事
1. はじめに 福島第一原子力発電所の事故 (以下、 福島事故) では、 地震で外部電源を喪失し、 次いで津波により非常用電源設 備も損傷して、 原子炉の冷却機能を失った。 独立に機能す る多重の安全設備を持つべきところ、 地震とその従属事象で ある津波によって広範な安全機能を喪失しており、 安全設計 に脆弱性があった。 また、冷却機能を喪失した後、炉心損傷、 格納容器破損、 水素爆発といった事故の進展を止められず、 重大事故への備えが不十分だったことが明らかになった。 当社はこの事故を真摯に反省し、 ハード、 ソフト、 マネジ メントの観点から、 深層防護の強化、 想定を超える事象に対 する柔軟な対応力確保、 事故時のマネジメントと組織力の強 化の 3 つを基本方針として、 原子力発電所の安全性向上に 取り組んでいる。 この取り組みを進めるなか、 平成 25 年 9 月には柏崎刈羽原子力発電所 6、 7 号機について、 新規制 基準適合性審査を申請した。 安全対策を検討する際は、 規制基準に適合させるだけで なく、 事故の教訓を分析して何を変えなければいけないのか を自らの責任のもとに考え、 安全を追求することが重要であ る。 本稿では、 まず当社が事故の教訓から設定した3つの基 本方針について述べた後に、 具体的な安全対策と新規制基 準への対応を説明する。 2. 東京電力における安全対策の基本方針 2.1 深層防護の強化 第一の基本方針は、 深層防護の強化である。 深層防護 は新しい概念ではないが、 ひとつの外的事象を共通原因とし て複数の層が機能を失った今回の事故を踏まえると、 その実 現方法には改善が必要である。 そこで当社では、 多重故障が発生しても各層の重要な機 能を一定程度維持することを目的として、 設計ベースを超え る状態を対策の検討条件に加えた。 これは設計拡張状態 (DEC: Design Extension Condition) を各層で考えるというこ とであり、 これによって、 多重性よりも多様性や位置的分散 を重視した対策を進めている。 なお、 従来から深層防護の 第 4 層に対応して IAEA[1] が DEC を定義しているが、 深層 防護の各層に多様性を促し、 共通要因での機能喪失を防ぐ ため DEC を設定するのは、 当社独自の取り組みである。 表 1 深層防護の強化 (津波の例) 表 1 に津波起因の事象に対する防護の例を示す。 設計 基準津波への防護で異常の発生を防止するが、 DEC として 想定津波高さを超える事態を考え、 建屋内に浸水しても耐 圧性のあるバリアで重要区画内の設備を防護する、 あるいは 排水するなど、 多様性重視の対策を追加している。 深層防護の第 4 層は新規制基準にも取り入れられたが、 当社としても福島事故の1年後に事故分析を取り纏めて以 降、 いち早く格納容器シールの熱的耐性強化やフィルタベ ントの自社開発などに取り組んできた。 また、 こうした取り組みにおいて、 確率論的リスク評価 (PRA) で弱点を見つけ、 有効性の高い対策を優先させるな ど、 PRA の活用も進めている。 2.2 想定を超える事象に対する柔軟な対応力確保 第二の基本方針は、 想定を超える事象に対する柔軟な対 保全学 Vol.14-1 (2015) 解説記事「柏崎刈羽原子力発電所の安全性向上と新規制基準への対応」 応力の確保である。 福島事故では事故初期に現場へのアク セスが制約された。 また、 週末や夜間の事故では、 初動の リソースが限られることも想定される。 恒設設備での対応は、 時間余裕が無くリソースも限定される事故初期に、 確実な実 行可能性が求められる。 一方、 事故進展の過程で状況が輻 輳し、 特定の条件で設計した恒設設備では対応できなくなる 恐れがあることから、 対応の多様性や代替可能性を継続的 に高めて、 より柔軟な対応ができるようにする必要がある。 図 1 フェーズドアプローチによる事故対応 この観点から当社では、 図 1 に示すフェーズドアプローチ による戦略構築を行っている。 すなわち、 初期フェーズでは 恒設設備を中心に、 時間余裕がなくても限られた要員で確 実に実行できる手段を確保し、 第二フェーズでは、 可搬設 備も含めた多様な手段の投入で柔軟性を増し、 さらに第三 フェーズでは発電所外からの支援で、 より多様な対応手段を 採れるようにする。 ここで重要なのは、 要員数や時間余裕等の条件を考慮し て、 事故対応のヒューマンパフォーマンスを最大限に活かせ るようにハードウェアを組み合わせる戦略であり、 ハードありき でソフトを考えるのではなく、 むしろソフトを主にハードを考え る発想が求められる。 2.3 事故時のマネジメントと組織力の強化 第三の基本方針は、 事故時のマネジメントと組織力の強化 である。 福島事故では指揮命令系統が不明確、 情報共有が 不十分などの問題があった。 これに対し、 当社は米国の緊 急時対応組織が用いる Incident Command System (ICS) の 基本的な考え方を導入し、 改善を進めている。 導入当初は 訓練で思ったほどの成果が出ず、 混乱も経験したが、 訓練 を繰り返すなかで改善を進め、 今ではシナリオを伏せた訓練 で複数プラント同時事故のケースでも的確に対応できるように なってきている。 また、 事故対応に備えて、 平時の能力向上にも取り組ん でいる。 直営作業チームの発足、 重要系統のパフォーマン ス改善や PRA の活用を進めるシステムエンジニアの育成、 運転員の設備診断スキル向上、緊急時対策要員のシミュレー タ訓練などが、 その例である。 3. 地震 ・ 津波の評価と対策 3.1 断層の活動性評価 断層の活動性は、 文献調査や地球物理学的調査を踏ま ていないが、 規制委員会から更なるデータ拡充を求める指 3.2 津波の評価と対策 設計津波は、 波源海域から敷地までの海底地形、 地質構 造、 地震活動性などから検討した。 また、 東日本太平洋沖 地震の教訓を踏まえ、断層連動を保守的に考慮するとともに、 海底地すべりの影響も考慮した。 設定した基準津波では、 取水口で 6 m の津波高さ、 敷地 周辺で標高 8.5 m までの溯上が想定されるが、 6、 7 号機の 敷地はこれを上回る標高 12 m である。 また、 引き波時の冷 却水確保、 津波に伴う砂移動も評価した。 一方、 敷地レベルが低い 1 ~ 4 号機側では、 図2に示す 対策を実施した。 防潮堤は標高 15 m までの高さがある。 加 内への浸水に備え、 重要機器室は止水措置で防護するとと もに、 排水用のポンプも設置した。 4. 設計基準対象施設の防護と信頼性確保 設計基準対象施設については、 その安全機能に関して、 主として外的事象からの防護と信頼性確保の観点から評価と 対策を進めている。 その例を以下に示す。 4.1 竜巻からの防護 竜巻の評価では、 竜巻発生の気象条件等が類似する地 え、 断層の活動履歴の観点から評価した。 また、 中越沖地 震後に断層間の距離や地下構造を評価して、 断層連動を考 慮した基準地震動を追加したが、 より幅の広い専門家の意 見も踏まえて断層連動の想定範囲を広げることにした。 これ により、 海側で約 156 km、 陸側で約 132 km の長大な断層 を考慮して耐震安全性を確認した。 一方、 敷地内には建設時から 23 本の小断層が確認され ているが、 いずれも地下深部に繋がるものでなく、 かつ少な くとも約 12 ~ 13 万年前以降は動いていないと評価した。 新 規制基準の適合性審査でこれを明らかに否定する意見は出 示があり、 追加地質調査を進めている。 えて建屋外壁に防潮壁、 防潮板を設置した。 それでも建屋 保全学 Vol.14-1 (2015) 域を竜巻検討地域として設定する。 柏崎刈羽の評価では、 気象の総観場の分析、 竜巻集中地域の地域特性の検討、 突風関連指数を用いた気象学的解析から、 太平洋側と日本 海側で竜巻発生に関わる気象特性が異なることを明らかにし て、 日本海沿岸を検討地域にした。 また、 竜巻検討地域での竜巻記録から統計分析を行い、 最大風速のハザード曲線から年超過確率が 10-5 となる風速 が 58.3 m/sで、藤田スケール2 相当であると評価した。さらに、 偶発的不確定性や、 認識論的不確定性を定量的に検討し、 想定風速のばらつきが藤田スケール 2 の範囲に含まれるとい う結論も得ている。 次に、 風圧力、 気圧差、 飛来物衝突の影響を評価した。 規制委員会の審査ガイドは飛来物の評価にランキン渦モデ ルを採用しているが、 上昇流が全領域に存在し、 風速場が 高さに依存しないため、 地表付近では非現実的な風速場に なる問題がある。 一方、 フジタモデルは過去の竜巻被害事 例との整合も確認されており、 これを用いて評価を行った。 柏崎刈羽では、 これらの評価を踏まえた竜巻飛来物対策 として、 地上軽油タンクの肉厚鋼板化、 ワイヤーネット等によ る設備防護などを進めている。 4.2 内部溢水対策 内部溢水対策は、 機器 ・ 配管の破損や火災時の散水等 から安全設備を防護するが、 隔壁によって安全系統間を分 離することが対策の基本である。 図 3 に示すとおり、 例えば区分Iの外で溢水が発生しても、 隔壁の止水措置によって中の施設が守られる。 主な止水措 置は、 水密扉、 止水材の施工、 空調ダクトの保護、 床ドレ ンの逆流防止などである。 4.3 火災防護対策 新規制基準では、 火災防護対象設備を定め、 それらに対 図 2 敷地レベルが低い 1 ~ 4 号機側の津波防護 図 3 内部溢水対策の例 解説記事「柏崎刈羽原子力発電所の安全性向上と新規制基準への対応」 して火災の発生防止、 感知と消火、 影響軽減が、 それぞれ 独立な多層の防護として求められる。 火災の発生防止の観点では、 柏崎刈羽では建設当初か ら難燃ケーブルを使用する等の対策が為されている。 火災感知については、 熱感知器と煙感知器の両方を必ず 設置して、 迅速かつ確実に感知できるようにする。 消火については、 煙の充満等で消火が難しい場所に、 遠 隔ガス消火設備を追加する。 一方、 通路等の大空間ではガ ス消火が必ずしも有効ではなく、 排煙設備によって消火活動 を可能にする。 その有効性について、 米国テキサス州に建 設した試験設備で確認を進めている。 図 4 耐火障壁による火災区域の分離例 さらに、 影響軽減対策で、 速やかに消火できない事態で も原子炉の停止 ・ 冷却を確実にする。 図 4 に示す隔壁によ る安全設備の分離が有効で、 その耐火性能を向上させた。 いくつかの分離方法があるものの、 当社としては、 他の手段 で速やかに消火できない事態への備えは受動安全的なもの が良いと判断し、 隔壁に 3 時間耐火性能を持たせることにし た。 このため、 新たに天井スラブ構造、 防火扉、 壁貫通部 等の耐火試験を行い、 用いる材料と施工条件を決めて対策 を実施した。 5. 重大事故等対処施設と事故時の技術能力 5.1PRA を用いた事故シーケンス選定 重大事故に関しては、 様々な安全機能喪失や、 想定を 超える地震、 津波で起こりえる事故シーケンスを内部事象 PRA、 地震 PRA、 津波 PRA 等を踏まえて抽出した。 次に、 抽出された事故シーケンスを事象進展の特徴に応じて分類 し、 その分類を代表する厳しいものを代表事故シーケンスと して選定したうえで、 事故収束や影響緩和に有効な対策を 検討した。 (図 5) 図 5 PRA におけるフォールトツリー分析の例 5.2 事故対処の検討例 (崩壊熱除去機能喪失) ざるを得なかったものの、 それが機能した間は事象進展を遅 る目的で追加したもので、 新規制基準で求められていない自 主設備である。 次に、 ガスタービン発電機で交流電源を確保するとともに、 復水移送ポンプによる低圧代替注水と、 代替原子炉補機冷 却設備の準備に着手する。 さらに、 可搬型代替注水ポンプ と、 その水源である防火水槽への水補給の準備にも着手す る。 なお、 可搬設備の準備は、 対応の多様性と代替可能性 を高める戦略として随時着手するが、 有効性評価上は 12 時 間後まで使用を期待しないこととし、 恒設設備のみで確実に 代表事故シーケンスのひとつである崩壊熱除去機能喪失 における事故対処の概要を、 図 6 に示す。 事故は全交流電源喪失 (SBO) +全給水喪失から始まる。 続いて原子炉スクラムとタービントリップが発生し、 逃がし安 全弁による原子炉圧力制御が行われる。 その後、 原子炉隔離時冷却系 (RCIC) で原子炉注水を 開始するが、 仮に RCIC が動作しない場合は高圧代替注水 系 (HPAC) を起動する。 HPAC は福島第一および第二で、 長時間にわたって原子炉注水を蒸気駆動ポンプだけに頼ら らせることができた実績から、 蒸気駆動の注水設備を増強す 初動対応できるようにしている。 図 6 崩壊熱除去機能喪失における事故対処 保全学 Vol.14-1 (2015) これらの対応は、 発電所本部長の指示のもと、 運転員と 復旧要員が同時並行で行う。 タイムチャートを用いたシミュ レーションで必要な要員数を明らかにするとともに、 指揮命 令系統の確保、 情報共有など、 緊急時対応を確実に実施 できることを確認した。 代替交流電源と低圧代替注水系の準備後は、 逃がし安全 弁で原子炉を減圧し、 RCIC から低圧代替注水系に切り替え る。 その後は原子炉水位を回復 ・ 維持しつつ、 低圧代替注 水と代替格納容器スプレイを運転するとともに、 代替原子炉 補機冷却系の準備後に残留熱除去系を起動して、 サプレッ ションプールを冷却する。 この事故対処に用いる主要な設備を、 図 7 に示す。 図 8 大 LOCA + SBO +全注水機能喪失における事故対処 代替の高圧注水手段には、 RCIC の現場手動操作と HPAC がある。 減圧手段の信頼性向上対策として逃がし安 全弁動作用の蓄電池と窒素ボンベの予備を配備したが、 さ らに電磁弁故障にも備え、 追加の窒素供給ラインと自圧式切 換弁により、 電磁弁排気ポートから窒素ガスを供給して逃が し安全弁を開ける機構を設ける。 低圧の代替注水手段には、 復水移送ポンプと消防車があ り、 水源として約 1.8 万 m3 の貯水池も設置した。 さらに、 代 替の除熱手段として、 車載式の熱交換器ユニットと代替海水 ポンプを配備した。 また、 代替の電源供給設備として、 ガスタービン発電機、 電源車、 原子炉建屋最上階に設置した蓄電池と充電用発電 機で、 必要電力を確保する。 5.3事故対処の検討例(大LOCA+SBO+全注水機能喪失) 大 LOCA +全交流電源喪失+全注水機能喪失における 事故対処の概要を、 図 8 に示す。 まず、 運転員が原子炉スクラム、 タービントリップ、 全交流 電源喪失等の状況を確認する。 そこで電源の早期復旧が困 難と判断すると、 ガスタービン発電機を起動する。 あわせて、 復水移送ポンプ、 消防車、 水源等、 低圧代替注水の準備 にも着手する。 こうした操作の間に事故発生から 0.4 時間で 炉心損傷が始まる。 70 分後にはガスタービン発電機が起動して低圧代替注水 を開始し、 炉心を再冠水させる。 一方、 格納容器の漏えい 防止を確実にするため、 可搬型代替注水ポンプによって格 納容器頂部への注水を行う。 炉心再冠水後には、 低圧代替注水と代替格納容器スプレ イを運転するが、 格納容器ベントラインが水没する前にスプ レイを停止し、格納容器圧力が 620 kPa に到達した時点でフィ ルタベントを実施する。 その後は、原子炉注水とベントによるフィード・アンド・ブリー ドの状態を維持し、 設備復旧を待って循環冷却に移行する。 この事故対処に用いる主要な設備を、 図 9 に示す。 図 7 主な重大事故等対処設備 (注水 ・ 除熱) 解説記事「柏崎刈羽原子力発電所の安全性向上と新規制基準への対応」 図 9 主な重大事故等対処設備 (炉心損傷後の影響緩和) 格納容器の漏えい防止手段には、 トップヘッド冷却、 格納 容器代替スプレイ、 格納容器下部への注水、 フィルタベント 等がある。 福島事故ではトップヘッドフランジのシリコンシー ル材が劣化し、 放射性物質が漏えいしたと考えられる。 そこ で、 放射線と熱による圧縮永久ひずみの変化とシール性を 検証する試験を経て、改良 EPDM 材の新シールを採用した。 静的触媒式再結合装置は、 格納容器からの水素漏えい による爆発を防ぐために設置した。 フィルタベントは、 格納容器の過圧破損防止のため、 原 子炉定格熱出力の 1% に相当する蒸気量の 2 倍を定格流量 にして減圧性能を確保した。 フィルタ装置は自社開発したも ので、 水スクラバと金属フィルタを組み合わせて、 粒子状放 射性物質の除染係数(DF)を 1000 以上確保する設計であり、 実機のスクラバノズルと金属フィルタを用いた試験で性能を確 認した。 これに加えて、 ガス状放射性物質の対策も進めている。 希ガスは、 ベントまでの時間を延伸して減衰させる。 この目 的で、 車載式の熱交換器ユニットによる格納容器の代替循 環冷却システムを検討している。 有機ヨウ素対策としては、 サプレッションプール水の pH を 7 以上にしてヨウ素を安定的に取り込み、 遊離したヨウ素が ケーブル被覆等の有機物と反応して有機ヨウ素が生成される のを抑制するのが有効と考える。 この目的で、 水酸化ナトリ ウム溶液を格納容器内のサプレッションプール等にスプレイ する pH 制御装置を開発している。 さらに、 フィルタベント系統には銀ゼオライトを吸着材とす るヨウ素フィルタを設ける。 DF50 以上を目標に自社開発を進 めており、 吸着材単体ではそれを十分に上回る性能が確認 されている。 実機適用に向け、 フィルタ装置の流動特性、 ガ スの線流速、 蒸気の過熱度、 妨害物質の影響等を考慮した 試験を行っている。 格納容器防護の観点では、 溶融デブリが格納容器下部 に落下する場合の対策も進めている。 事前水張りと注水によ る冷却でコンクリートの浸食を抑制する対策に加え、 コリウム 大きく超える事態に備えた対応手順の整備、 発電所と本店 福島事故当時の緊急時組織は、 発電所本部長以下に多 数の班があったが、 複数プラントの事故が同時進行するなか で、 本部長が統制しにくい構造になっていた。 ICS では緊急 時対応に必要な機能を 5 つに集約し、 機能毎にグルーピン グする。 (図 10) これらの機能を中心に据え、 リーダーの管 理スパンを適切な規模に維持しながら、 状況に応じて柔軟に 組織を拡大縮小できる仕組みを備えている。 また、 指揮命 令系統が機能毎に明確になるという利点もある。 図 10 ICS による緊急時の組織能力の改善 こうした新しい仕組みと手順を導入しつつ、 実践的な能力 を高めるために訓練を継続している。 緊急時組織全体で行う 総合防災訓練は、 条件を様々に変えながら福島事故以降、 36 回実施した (平成 27 年 2 月末時点)。 こうした訓練を通 じて、 ICS についても基本的な考え方は維持しつつ、 運用 方法や情報共有ツール等の改善を積み重ねている。 原子力 緊急事態の特徴として、 特に内包エネルギーが大きい事故 初期段階における状況把握と即応性が重要であり、 この点を 中心に導入当初の ICS から改善を加え、 実践性を高めてい る。 今では、 シナリオを事前に知らせないブラインド訓練で、 複数プラント同時事故にも対応できるようになってきており、 事故時のマネジメント力と組織力が格段に向上したと手応え を感じている。 また、 総合防災訓練以外にも、 夜間や降雪 時など、 様々な状況を想定して緊急時の活動能力を高める シールドを設置する。 これは格納容器下部のサンプ等、 比 較的弱い部分をジルコニア耐熱材で防護するもので、 格納 容器バウンダリの破損防止に関する信頼性の向上が期待で きる。 5.4 事故時の技術的能力の向上 重大事故への対処には、 的確な判断と操作を行う技術能 力が欠かせない。 緊急事態下で柔軟に組織的な対応ができ るように ICS の基本的な考え方を導入するとともに、 想定を の緊急時対策要員の増員などを実施した。 保全学 Vol.14-1 (2015) 個別訓練を、 福島事故以降で延べ約 5,300 回実施している (平成 27 年 1 月末時点)。 (図 11) 図 11 訓練による実効性の向上 6. 結言 本稿では、 福島事故の教訓に基づく当社の安全対策と、 新規制基準への対応状況について述べた。 当社の安全追求の原点は福島事故の教訓であり、 単に規 制基準に適合させるだけでなく、 自らの責任でそれ以上の安 全性向上を追求する方針である。 柏崎刈羽 6、 7 号機の申 請時点の安全対策だけでなく、 審査中の今も常に新しい知 見を求め、 日々に安全レベルの向上に取り組んで行く所存 である。 著 者 紹 介 著者 : 川村 慎一 所属 ・ 役職 : 東京電力株式会社原子力設備管理部長 参考文献 [1] IAEA SSR-2/1, Safety of nuclear power plants: Design, (2012). (平成 27 年 3 月 18 日) 保全学会からのお知らせ 柏崎刈羽原子力発電所の安全性向上と新規制基準への対応 川村 慎一,Shinichi KAWAMURA 柏崎刈羽原子力発電所の安全性向上と新規制基準への対応 川村 慎一,Shinichi KAWAMURA
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