敦賀発電所敷地内破砕帯評価について(続報)

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カテゴリ: 解説記事
1. はじめに 敦賀発電所敷地内 破砕帯評価について(続報) 日本原子力発電株式会社 堂﨑 浩二 Koji DOZAKI 日本原子力発電株式会社 入谷 剛 Takeshi IRIYA 日本原子力発電株式会社 牟田 隆司 Ryuji MUTA 前報 [1] では、日本原子力発電(以下、原電)敦賀発 電所敷地内破砕帯について、原子力規制委員会「敦賀発 電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合」(以下、 有識者会合)が 2013 年 5 月 15 日における第 5 回評価会 合において、「耐震設計上考慮する活断層であると考え る」との評価を取りまとめたこと、原電は有識者会合の 評価が客観的な事実やデータに基づいた科学的な判断と なっていないことから、原子力規制委員会に対しその検 証と改善を要請したこと、及び原電が 2013 年 5 月末ま でに得た科学的な事実に基づき敷地内破砕帯を「活断層 でない」とした論拠について報告した。 本稿では、その後に新たに得られた科学的な事実も加 えて敷地内破砕帯を「活断層でない」としている論拠を 改めて説明するとともに、有識者会合及び原子力規制委 員会のその後の動向と原電の対応について述べる。 2. 前報の概要 2.1 初期破砕帯調査の経緯 2013 年 7 月施行の新規制基準(地震 ・ 津波)には、『重 要な安全機能を有する施設は、将来活動する可能性のあ る断層等の露頭がないことを確認した地盤に設置する こと』、『「将来活動する可能性のある断層等」としては、 後期更新世以降(約 12 万~ 13 万年前以降)の活動が否 定できないものとすること。』と明記されている。 敦賀発電所の敷地には、後期更新世以降も繰り返し活 動し、最終活動時期が約 4,000 年前以降であることが分 かっている浦底断層と呼ばれる北西-南東の走向を持つ 活断層がある一方、花崗岩からなる基盤岩中には複数の 破砕帯が確認されており、このうち D-1 と呼ばれる破 砕帯は 2 号炉原子炉建屋の直下を通っている(図 1)。 図 1 敦賀発電所敷地内の破砕帯 2011 年 3 月の東北地方太平洋沖地震後に再開された 耐震バックチェックの審議を受け、旧原子力安全・保安 院「地震・津波に関する意見聴取会」で了承された追加 調査計画に基づき、原電は破砕帯の活動性等に係る調査 を開始した。 2012 年 9 月に原子力規制委員会が発足し、有識者会 合が設置されて以降は、現地調査と評価会合で敦賀発電 所敷地内破砕帯の評価が進められた。 前報では、2013 年 4 月 24 日の第 4 回評価会合におい て原子力規制委員会に提出した「敦賀発電所敷地内破砕 帯に関する有識者会合 評価書案に関する論点について」 解説記事「敦賀発電所敷地内破砕帯評価について(続報)」 25[2] 及び原電による中間報告書以降の調査結果を追加し 保全学 Vol.14-4 (2016) た報告資料「敦賀発電所 敷地の地質・地質構造 D-1 破砕帯について」[3] に基づき、D-1 破砕帯の調査状況 及び原電と有識者会合との見解の相違点について述べ た。その概要を以下に示す。 2.2 D-1 破砕帯調査の概要 D-1 破砕帯が耐震設計上考慮する活断層か否かを判断 するため、原電は、(1) ボーリング調査、(2) D-1 既往露 頭調査、(3) D-1 トレンチ調査、等の調査を行い、それ ぞれ概ね以下のような結果を得た。 (1) ボーリング調査 ボーリング調査により、D-1 破砕帯の走向は南北方向、 傾斜は高角度西傾斜であること、断層ガウジ(破砕帯の うち粘土などの細粒なものからなる部分)から採取した サンプルの薄片観察から、最新活動面が正断層右横ずれ の変位センスを有していることが分かった。 (2) D-1 既往露頭調査 D-1 既往露頭の調査では、D-1 破砕帯がそれを覆って いる堆積層に変位や変形を与えていないことが分かっ た。また、D-1 既往露頭の断層ガウジから採取したサン プルの薄片観察によれば、(1) のボーリング調査と同じ く、最新活動面は正断層右横ずれの変位センスを有して いることが分かった。 (3) D-1 トレンチ調査 D-1 トレンチでは、図 2 に示す G 断層と呼ぶ基盤岩中 の破砕部と、K 断層と呼ぶ基盤岩から堆積層中まで延び るせん断面が確認された。 図 2 D-1 トレンチ ( 前報時形状 ) で確認された G 断層と K 断層 図 3 D-1 トレンチ内の地層状態 (イメージ) K 断層は D-1 トレンチの西端で南北方向から北北西 - 南南東方向に走向を変え、トレンチの壁面における地層 のずれの状況から傾斜は西傾斜で逆断層として認められ D-1 トレンチの地層は、基盤岩とそれを覆う第四紀層か らなり、第四紀層は下位から順に1層~9層に区分され る。なお、5層は堆積構造の違いから上部と下部に区分 され、5層下部からは約 12.7 万年前に降灰した美浜テ G 断層は走向が南北方向、傾斜が高角度西傾斜であり、 採取したサンプルの薄片観察の結果、最新活動面が正断 層右横ずれの変位センスを有していることを確認した。 また、G 断層は、図 3 に示すように、5層下部より下位 にあって G 断層を覆っている1層に変位や変形を与え いていないことがいえる。 る。採取サンプルの薄片観察の結果からも、最新活動面 は逆断層の変位成分が主体であることが確認された。ま た、K 断層は、図 3 に示すように、3層上部に変位や変 形を与えていないため、K 断層は約 12 万~ 13 万年前以 降は動いていないことがいえる。 さらに、図 4 に示すボーリング調査(B14-2 孔)で確 認された破砕部から採取したサンプルの薄片観察の結 果、これらの最新活動面は正断層の変位センスを有し ており K 断層と異なることから、K 断層は少なくとも B14-2 孔より南方(2 号炉原子炉建屋側)には延長して いないことも確認された。 26フラ(テフラはここでは火山灰)が検出された。 ていないため、少なくとも約 12 万~ 13 万年前以降は動 図 4 D-1 破砕帯の連続性 2.3 D-1 破砕帯の連続性と活動性の評価 D-1 破砕帯は、南北方向の走向及び高角度西傾斜の特 徴を持つ連続性が良い破砕帯である。 (1) D-1 破砕帯と G 断層が正断層の変位センスであるこ と、(2) K 断層の走向が D-1 トレンチの中の短区間で 南北方向から北北西 - 南南東方向と急激に変化するこ と、(3) K 断層は逆断層の変位センスであり少なくとも B14-2 孔より南側に延長しないことから、D-1 破砕帯は K 断層ではなく G 断層に連続すると判断される(図4)。 D-1 トレンチでは、G 断層は5層下部より下位にある1 層に変位や変形を与えておらず、K 断層も少なくとも5 層下部に変位や変形を与えていない。 以上より、D-1 破砕帯(G 断層を含む)及び K 断層は、 少なくとも後期更新世以降活動しておらず、したがって、 いずれも耐震設計上考慮する活断層ではないと判断され る。 2.4 浦底断層と D-1 破砕帯の同時活動性の評価 後期更新世(約 12 万~ 13 万年前)以降の東西方向か らの広域の圧縮応力場において浦底断層は十数回~四十 回程度活動していたと考えられる一方、D-1 破砕帯には 活動した形跡がない。すなわち両者は同時に活動してお らず、広域応力場が今後短期間では大きく変化しないこ とも併せて考えると、浦底断層と D-1 破砕帯は今後同 時に活動することはないものと判断される。 まず、活動時期については、原電が「両断層とも後期 下部に含まれるテフラの降灰年代が約 12 万年前である とのデータについて、有識者会合が、降灰層準の認定及 びテフラの同定が不十分であるとしたことが相違点であ ついては、原電は信頼性向上のため追加調査を実施中で あった。 次に、D-1 破砕帯との連続性については、有識者会合 が原電の最新活動面の変位センスの認定が適切でないと したことが相違点である。これに対し、原電は、薄片試 料観察結果から、D-1 破砕帯と G 断層の「走向、傾斜が 類似していること」、「最新活動面が正断層の変位センス であること」、一方「K 断層の最新活動面が逆断層の変 位センスであること」等から「G 断層は D-1 破砕帯で ある。」と認定した。なお、薄片試料観察の妥当性確認 のため、CT 画像解析も含めた検討及び実体顕微鏡によ る条線観察等を行った結果、これまでに行ってきた認定 について全く問題はないことを確認した。それに対して た。 2.6 外部専門家によるレビュー 原電は、自社の報告書について、SCANDPOWER 社(ノ ルウェー)によって組織された地質・地震の専門家を中 心とした外部レビュー委員会及び地層処分分野で世界的 に著名な Neil A. Chapman 教授(英国)を中心とした専 門家グループにより第三者レビューを受けた。 解説記事「敦賀発電所敷地内破砕帯評価について(続報)」 272.5 原電と有識者会合との見解の相違点 原電の評価に対して、有識者会合は 2013 年 5 月 15 日 の評価書 [4] において、「K 断層は後期更新世以降の活 動が否定できず、耐震指針における『耐震設計上考慮す る活断層』であり、また、D-1 破砕帯と一連の構造であ る可能性が高いと考える。これらを総合的に判断すると、 2 号炉原子炉建屋直下を通る D-1 破砕帯は、後期更新世 以降の活動が否定できないものであり、したがって、耐 震指針における『耐震設計上考慮する活断層』であると 考える。また、至近距離にある浦底断層と同時に活動し、 直上の重要な施設に影響を与えるおそれがあると考え る。」と、原電とは正反対の内容で評価を取りまとめた。 両者の正反対の判断は、以下に示す二つの論点において 両者が異なる見方をしていることに由来する。一つ目の 論点は G 断層と K 断層の活動時期であり、もう一つは 両断層の D-1 破砕帯との連続性である。 更新世以降の活動がない」との判断の根拠とした、5層 る。なお、テフラの降灰層準及びテフラの降灰年代に は特に有識者会合からの再度の指摘等は受けていなかっ 保全学 Vol.14-4 (2016) 専門家グループからは、2013 年 5 月 21 日、原電のそ の時点での見解を支持するとともに、補強のための一層 の検討が必要とする指摘と、原電と規制委員会の間のよ りよいコミュニケーションの推奨を含む中間的な報告 [5] が示された。 3. 前報の後に得られた知見 3.1 前報の後の経緯 前報直後の 2013 年 5 月 22 日、原子力規制委員会は、 2013 年 5 月 15 日の第 5 回評価会合において取りまとめ られた有識者会合の評価書を了承した。 2013 年 7 月 11 日、原電は計画に基づく調査を終了し、 調査報告書を原子力規制委員会に提出した [6]。この調 査報告書は、原電と有識者会合との見解の相違の元と なった二つの論点である K 断層と G 断層の活動時期及 び両断層と D-1 破砕帯との連続性について、上載地層 の詳細な観察やピット調査及びボーリング調査等により 敷地内の地層の詳細な確認を行い、後述する根拠から、 K 断層と G 断層及び D-1 破砕帯が、新たな知見として 約 12.7 万年前のテフラと特定できた美浜テフラを含む 堆積層(5層下部)に変位・変形を与えていないことか ら、後期更新世以降は活動しておらず、したがって、新 規制基準にある「将来活動する可能性のある断層等」(約 12 万~ 13 万年前以降活動に活動した断層や地すべり) には該当しないことを、より一層明確に立証した内容と なっていた。 この原電の調査報告書は、2013 年 8 月にかけて、2.6 節に述べた外部専門家グループによる第三者レビューを 受けた。同年 8 月 28 日、専門家グループより以下の内 容の報告 [7] が示された。 ・敦賀発電所敷地内の K 断層及び G 断層並びに D‐1 破砕帯が活断層ではないことを示す明白な証拠があり、 これらは少なくとも約 12 万~ 13 万年前以降活動してい ない。 ・原電と原子力規制委員会が、敦賀発電所の耐震安全 性に関する評価と運営管理を継続的に『改善』する対話 を開始していくための、適切な科学的共通理解が存在し ている。 原電の調査報告書を受けて、原子力規制委員会は、 2013 年 12 月にようやく有識者会合による審議を再開す ることとした。その後の有識者会合等の開催状況は次の とおりである。 ・事前会合 1 回(2013 年 12 月) ・現地調査 1 回(2014 年 1 月) ・評価会合 5 回(原電は、うち第 1,2,4 回のみ参加を 認められる) ・ピア・レビュー会合 1 回(2014 年 12 月、原電は 参加を認められていない) 上記の評価会合においては、議論を一方的に打ち切る、 最新の調査データについての説明を受け入れないなど不 公正な議事運営などのため、原電には十分な説明、議論 の機会が与えられなかった。 また、2014 年 12 月 10 日のピア・レビュー会合では、 有識者会合の評価書(案)の根幹に係る数多くのコメン トがピア・レビュアーから出された [8] が、「当該破砕 帯の再評価をするのではない」、「評価の内容に踏み込む 場ではない」との原子力規制委員会の方針のためか、そ れらのコメントは評価書には反映されておらず、ピア・ レビュー会合以降、評価書確定までのプロセスでどのよ うに参酌されたのかは必ずしも明らかではない。 2015年3月25日、有識者会合がとりまとめた評価書[9] が原子力規制委員会に報告され、受理されたが、その結 論は「2 号炉直下の破砕帯のいずれかは将来活動する可 能性のある断層等である」というものであり、2013 年 5 月 22 日に原子力規制委員会が了承した有識者会合の評 価書の結論が見直されることはなかった。 かねてより原電は、有識者会合の評価書を分析してそ の問題点を原子力規制委員会に申し入れていたが、2015 年 3 月 25 日の有識者会合の評価書にも技術的な「66 の 問題点」があるとして、2015 年 4 月 16 日に公表 [10] した。 以下の節では、2013 年 7 月 11 日に原子力規制委員会 に提出した原電の調査報告書における美浜テフラの降灰 年代特定に関する知見と合わせて、2015 年 9 月までの 調査によって新たに拡充された観察事実・データについ て説明する。なお、美浜テフラの降灰年代特定について は、2013 年 5 月 15 日の有識者会合の評価書において、 原電が根拠としたデータや既往の研究論文の信頼性が低 いと指摘されたことに対応したものである。 3.2 美浜テフラの降灰年代について 5層下部で検出されたテフラを同定するため、5層 す 10 種類の対比候補テフラから文献にて普通角閃石を 含むテフラを絞り込み、大山蒜山原(DHP)、大山松江 (DMP)、美浜テフラ、大山淀江(DYP)、NEXCO80(Lower) について、普通角閃石の成分分析等を行った。 下部テフラに含まれる普通角閃石に着目し、図 5 に示 28図 5 地質年代 ・ 後期更新世の指標テフラ その結果、5層下部テフラに含まれる普通角閃石の成 分・屈折率は、美浜町 / 若狭町気山で採取された美浜テ フラ及び三方湖東岸で採取された NEXCO80(Lower) の 成分・屈折率と一致し、それ以外のテフラの普通角閃石 の成分の特徴とは明らかに異なっていたことから、5層 下部テフラは美浜テフラであると判明した。 なお、有識者会合において、テフラの検出頻度が低い ことにより信頼性が相当低いと指摘されたことに対して は、以下の理由から、信頼度の高いテフラ分析ができて いると判断している。 ● D-1 トレンチ内で水平方向にサンプル数を増やし て降灰状況を確認したところ、ほぼ同じ層準に産 出下限があり、他のテフラも含め地層の堆積年代 に逆転がないこと ●● テフラの分析に関しては、濃集分析(試料の分析 量を増やし、降灰の状況をより明確にするための 分析)により、降灰を示すピークが認められるこ と ● D-1 トレンチ外の過去に採取した海上ボーリング コアについて分析したところ、5層下部に含まれ る普通角閃石が検出され、D-1 トレンチ内の層準 と整合していること また、美浜テフラの年代特定に関して、有識者会合にお いて、既往の研究論文の信頼性が低い旨を指摘されたこ とに対しては、既存の調査・研究成果を収集・確認する とともに、必要に応じそれらの調査・研究の実施者から 試料を入手して、5層下部の普通角閃石と比較し、美浜 テフラの年代に係るデータの拡充を行った。その結果、 以下の観察事実から、美浜テフラの降灰時期は約 12.7 万年前であると判断したものである。 れた有識者会合の評価書において指摘された K 断層の れらへの対応として行われた観察事実・データの拡充に ついて述べる。主として、D-1 トレ ンチ北西法面、原 電道路ピット、ふげん道路ピットにおいてデータ拡充を 図っており、それらの位置関係は図 6 に示すとおりであ る。 図 6 D-1 トレンチ見取図と調査位置 3.3.1 K 断層の活動時期に関する点 (1)D-1 トレンチ北西法面における活動層準の明確化 有識者会合は、原電が、D-1 トレンチ北西法面におけ る K 断層の最新活動による変形は3層上部には及んで 確ではなく、最新活動時期を特定するための地層として 適切でないとした。 これに対し、原電は北西法面をさらに掘り込み、CT 観察も実施しデータを拡充した結果、図 7 に示すように、 K 断層の影響を受けているj層を幅広く覆う形で K 断 層の影響を受けていないk層が堆積している構造を明ら かにすることができた。 解説記事「敦賀発電所敷地内破砕帯評価について(続報)」 29●● 上述のとおり5層下部の普通角閃石及び美浜テフ ラと成分・屈折率が一致していた NEXCO80(Lower) 中の火山ガラスが、既往研究で年代が特定されてい る琵琶湖で採取された約 12.7 万年前の BT37 中の火 山ガラスと成分・屈折率が一致していたこと 3.3 観察事実 ・ データの拡充について 2015 年 3 月 25 日に原子力規制委員会に報告・受理さ 活動時期と D-1 破砕帯との連続性の評価に係る点と、そ いないとしていることについて、3層内の堆積構造が明 図 7 北西法面掘り込み後のスケッチ (2)原電道路ピット等における活動層準の明確化 有識者会合は、原電道路ピットの3層上部、下部が D-1 トレンチ北西法面の3層上部、下部と具体的にどの ような対応関係にあるかは明確でなく、各々の堆積時期 も明らかにされていないとした。 これに対し、原電は、原電道路ピットの近傍で5層中 の美浜テフラを検出し、その下部に3層を確認するとと もに、この3層中の堆積構造を詳細に区分し、原電道路 ピットまで連続的に追跡した。その結果、図 8 に示すよ うに、原電道路ピットにおいても、K 断層に影響を受け ている地層が、13 万年前以前の地層に覆われているこ とを確認することができた。 図 8 原電道路ピット東向き法面及び頂部 また、有識者会合は、原電道路ピットでは、2層より も下位や3層より上位における K 断層の状況が十分確 認されていないため、撓み等の変形の全貌が不明である とした。 これに対し、原電は、原電道路ピット内での稠密ボー リングにより、2層中及び基盤岩中の K 断層を確認し、 K 断層によるずれ量が約 50cm であることを確認した。 さらに、K 断層の分布範囲を確認するため、ふげん道路 図 10 ふげん道路ピット東法面で確認した K 断層 図 9 ふげん道路ピット東法面 (上段) 3.3.2 K 断層の D-1 破砕帯との連続性に関する点 (1)K 断層の分布範囲とずれ量の明確化 有識者会合は、K 断層が D-1 トレンチ内で認められる K 断層の 1m 超の変位が原電道路ピットまでの数 10m で 急に消滅することは不自然であり、K 断層に生じている 断層運動は近くの断層を乗り継いで連続していく可能性 も十分にあるとした。 これに対して、原電はふげん道路ピット内のピット掘 削により、図 10 に示すとおり、K 断層の分布範囲がふ 保全学 Vol.14-4 (2016) 30げん道路ピットの途中までであることを確認した。また、 同じふげん道路ピット内のピット掘削により、図 11 に 示すとおり、K 断層が乗り移っていない D-1 破砕帯を確 認した。これらにより、K 断層は D-1 トレンチ北西法面 からふげん道路ピットに至る区間において連続して認め られる断層であり、D-1 破砕帯には乗り移っていないこ とを確認できた。 ピットを深度方向に拡張し(原電道路ピット西向き法面 と一体化)、図 9 に示すように、ふげん道路ピット東法 面において3層中の堆積構造を詳細に区分した上で、K 断層により影響を受けている地層が、13 万年前以前の 地層に傾斜不整合で覆われていることを確認するととも に、ここでも K 断層によるずれ量が約 50cm であること を確認した。 図 11 ふげん道路ピット内で確認した D-1 破砕帯 (2)K 断層の南方への不連続性の明確化 有識者会合は、「K 断層は D-1 破砕帯等、原子炉建屋 直下を通過する破砕帯のいずれかと一連の構造である可 能性が否定できない」とした。 これに対し、原電は図 12 に示すとおり、ふげん道路 ピット~ 2 号炉原子炉建屋間で 4 本の追加ボーリング調 査を加え、合計 10 本のボーリング調査結果から、K 断 層と同じ逆断層の変位センスを有する破砕帯が一切ない ことを確認し、K 断層が 2 号炉原子炉建屋直下の破砕帯 のいずれにも連続していないことを確認することができ た。 図 12 ふげん道路ピット~2号炉原子炉建屋間のボーリング調査 3.4 D-1 破砕帯以外の破砕帯について 敦賀発電所敷地内破砕帯の調査においては、2.1 節に 述べたとおり、D-1 破砕帯の他に、図1に示す D-6 破砕 帯、D-5 破砕帯、H-3a 破砕帯及び D-14 破砕帯について 詳細な調査を実施した。以下にその要点を記す。 D-1 解説記事「敦賀発電所敷地内破砕帯評価について(続報)」 破砕帯 (G 断層)31 ● D-6 破砕帯 地表から約 40 mまで掘削した大深度調査坑内 において破砕部を覆う約 12 万~ 13 万年前以降の 地層に変位・変形が認められないことを確認した。 ● D-5 破砕帯 1 号炉原子炉建屋南方の剥ぎ取り調査の範囲に おいて、D-5 破砕帯は D-6 破砕帯によって変位を 受けている状況を確認した。したがって、D-5 破 砕帯の活動性については、最新活動時期が少なく とも D-6 破砕帯の最新活動時期以前と判断した。 ● H-3a 破砕帯 H-3a 追加ピットにおいて破砕部を覆う約 13 万 年前より古い地層に変位・変形が認められないこ とを確認した。 ● D-14 破砕帯 D-14 既往露頭では比較的古い堆積層が分布し ないが、破砕部を覆う少なくとも約 3 万年前の地 層に変位・変形が認められないことを確認した。 また、最新活動面の電子顕微鏡観察の結果、少 なくとも後期更新世以降の活動が認められない D-1 破砕帯、D-5 破砕帯、D-6 破砕帯及び H-3a 破 砕帯と同様、鉱物の結晶は破壊されていないこと を確認した。 なお、D-14 破砕帯は 2 号炉の耐震重要施設の 直下には分布しない。 以上のことから、D-6 破砕帯、D-5 破砕帯、H-3a 破砕 帯及び D-14 破砕帯はいずれも将来活動する可能性のあ る断層等ではないと判断される。 4. おわりに 敦賀発電所敷地内の破砕帯について、原電は、耐震バッ クチェックの意見聴取会の了承を得た追加調査計画に基 づき、調査を行ってきた。原子力規制委員会の有識者会 合の指摘にも対応し、観察事実・データの拡充を図った 結果、2 号機の原子炉建屋の直下を通る D-1 破砕帯をは じめとしたいずれも破砕帯も後期更新世以降(約 12 万 ~ 13 万年前以降)活動しておらず、したがって、「将来 活動する可能性のある断層等」には該当しないと判断で きる。外部専門家によるレビュー結果もこの判断を支持 している。 原電は 2015 年 11 月 5 日、敦賀発電所 2 号機の新規制 基準への適合性審査の申請を行った。本稿で述べた調査 保全学 Vol.14-4 (2016) 結果は、大量の観察事実やデータ等を付して申請書 [11] 砕帯の評価について ( その2)」, 2015 年 3 月 原子 に反映されている。今後は、申請書の内容に基づいて原 力規制委員会 敦賀発電所敷地内破砕帯に関する有 子力規制委員会の審査に適切に対応していく。 識者会合 https://www.nsr.go.jp/data/000101517.pdf [10] 敦賀発電所の敷地内破砕帯に係る「評価書(2015 参考文献 年 3 月 25 日)」の問題点について , 2015 年 4 月 16 [1] 敦賀発電所敷地内破砕帯評価の現況について(前 日 日本原子力発電株式会社 http://www.japc.co.jp/ 報), 保全学 Vol.12, No.2(2013), p16-22, 星野 , 古谷 news/other/2015/pdf/20150416.pdf [2] 「敦賀発電所敷地内破砕帯に関する有識者会合 評価 [11] 敦賀発電所発電用原子炉設置変更許可申請書(2号 書案に関する論点について」,2013 年 4 月 日本原子 発電用原子炉施設の変更)、2015 年 11 月 5 日、日 力発電(株)http://www.japc.co.jp/tsuruga-chousa/pdf/ 本原子力発電株式会社 press/20130424_1.pdf [3] 「敦賀発電所 敷地の地質 ・ 地質構造 D-1 破砕帯に (平成 27 年 12 月 7 日) ついて」,2013 年 4 月 日本原子力発電(株)http:// www.japc.co.jp/tsuruga-chousa/pdf/press/20130424_2. pdf [4] 「日本原子力発電株式会社 敦賀発電所の敷地内破 砕帯の評価について」, 2013 年 5 月 原子力規制委員 著者 : 堂﨑 浩二 会 敦賀発電所敷地内破砕帯に関する有識者会合 所属 : 日本原子力発電株式会社 開発計画室 https://www.nsr.go.jp/data/000047484.pdf 専門分野 : 材料力学、 規格基準、 構 [5] Interim Report of the Joint International Experts’ 造設計、 設備保全、 高速炉開発 Meeting (TRM/IRG), May 21, 2013, http://www.japc. co.jp/english/index.html [6] 「敦賀発電所 敷地の地質・地質構造 調査報告 書」,2013 年 7 月 11 日 日本原子力発電株式会社 http://www.japc.co.jp/tsuruga-chousa/20130711_list.html [7] International Review of the 2nd JAPC Report (July 2013) on Fracturing at the Tsuruga Nuclear Power Plant, August 28, 2013 http://www.japc.co.jp/tsuruga- chousa/20130801_list.html [8] 敦賀発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者 会合 ピア・レビュー会合(2014 年 12 月 10 日) 議 事 録 , 原 子 力 規 制 委 員 会 http://www.nsr.go.jp/ data/000090805.pdf [9] 「日本原子力発電株式会社 敦賀発電所の敷地内破 32著 者 紹 介 著者 : 入谷 剛 所属 : 日本原子力発電株式会社 開発計画室 専門分野 : 地質 ・ 地盤調査及び評価、 地盤 安定性評価、 地盤変位評価、 津波評価 著者 : 牟田 隆司 所属 : 日本原子力発電株式会社 発電管理室 専門分野 : 原子炉工学、 炉心 ・ 燃料 管理、 核燃料サイクル 敦賀発電所敷地内破砕帯評価について(続報) 堂崎 浩二,Koji DOZAKI,入谷 剛,Takeshi IRIYA,牟田 隆司,Ryuji MUTA 敦賀発電所敷地内破砕帯評価について(続報) 堂崎 浩二,Koji DOZAKI,入谷 剛,Takeshi IRIYA,牟田 隆司,Ryuji MUTA
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