民間規格を活用義務化する米政府機関(1)-連邦法とその背景-
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1.民間規格とは 我が国では簡単に民間規格と言っているが、英語で は Voluntary Consensus Standards と なる。 この 定義 は、 行政 管理 予算 局(OMB)に よれ ば、(1) Openness, (2) Balance of interest, (3) Due process, (4) An appeals process, (5) Consensus を満たすことである。この条件のもとで作 成された規格を、政府機関は規制に活用することが連邦 法で定められている。 2.民間規格の活用義務化の経緯 民間規格の活用に関して 2 つの連邦法がある。まず、 行政管理予算局から、民間規格の活用の法 OMB A-119 が発行された [1]。この題目は Federal Participation in the development and use of Voluntary Consensus Standards and Conformity Assessment Activities で、まさに政府機関の民 間規格への参加を謳っている。 こ の OMBA-119 を 受 け て 国 家 技 術 移 転 促 進 法 (NTTAA: National Technology Transfer and Advancement Act, Public Law 104-113)が承認された [2]。これにより 規格の開発責任は連邦機関から民間規格開発団体に委ね られた。また、連邦機関は民間規格を優先的に使用し、 かつ、積極的に協力・参加することになった。 3.連邦法の背景 民間規格を活用する NTTAA 法は下記の背景による。 (1) 民間組織で策定された多くの規格は政府機関の目的 に利用可能で、民間規格の規制文書への採用は政府 の費用削減につながる。 (2) 民間規格の策定に政府が関与することによって、米 国民の規格策定への動機付けになる。 (3) 規格の充実により経済活動の効率化を進めること は、長期的に米国経済の成長に寄与する。 OMB- A-119 と NTTAA 法により商務省・国立標準技 術研究所(NIST)が政府機関の標準化活動への参加を 調整し、非営利民間組織である米国標準協会(ANSI) が個別規格の認定を行っている。これを図1に示す。 図 1 民間規格の活用義務化の体系 次回以降は、政府機関の責務、米国原子力規制委員会 (NRC)と米国機械学会(ASME)規格の関係について、 筆者の経験した事柄も含めて紹介したい。 参考文献 [1] Revised OMB Circular No. A-119, 2016. [2] An Act, 104th Congress Public Law 113, 1996. (平成 28 年 11 月 15 日) 著者 : 長谷川 邦夫 所属・役職:一般財団法人 発電設備技術検査協会 規格基準室 専門分野 : 破壊強度、 欠陥評価 著 者 紹 介 保全学 Vol.15-4 (2017) 28 民間規格を活用義務化する米政府機関(1)-連邦法とその背景- 長谷川 邦夫,Kunio HASEGAWA 民間規格を活用義務化する米政府機関(1)-連邦法とその背景- 長谷川 邦夫,Kunio HASEGAWA