民間規格を活用義務化する米国政府機関(3)

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カテゴリ: 解説記事
前号では、原子力規制委員会(NRC)と米国機械学 会(ASME)との関係を述べた。ここでは、筆者が見聞 した NRC が関与した規格を紹介する。 1. 判断基準を求めるNRC - 減肉 1986年のSurry-Unit 2の減肉による配管破裂を受けて、 ASME は早速減肉の規格 Code Case ( 以下、CC) N-480 を作成し、1990 年に発行した。しかし、NRC はこの規 格は減肉の管理基準であって事業者の問題であり、事故 を起こせば事業者にペナルティを課すのみ、としエン ドースしなかった。ASME は 2001 年にこの規格を廃止 し、新たに許容基準の CC N-597 を 1998 年に発行した。 NRC が求める規格は、対外的に説明できる判断基準で ある。 2. 助っ人 - 許容応力アップの攻防 ASME Sec. III は 1994 年頃に配管の許容応力を 1.5 倍 に引き上げた。NRC は、米研究機関の応援を得てこれ に反論をした。日本からも ASME 側を応援すべくチー ムを組んで対応した。長きにわたる攻防の後、NRC は 2011 年許容応力は元に戻し、その代わりに設計指数の 緩和を認め、喧嘩両成敗で落ち着いた。NRC は、大き な反論のときは米研究機関を動員して反論する。 3.お墨付き - 漏えい中のタンク クラス 3 機器のステンレス製タンクの補修が困難な場 所から漏えいが生じた。漏えいしても重大事故に至らな いことを NRC は理解し、運転許可するに当たり、クラ ス1機器の解析的評価で運転可とする IWB-3132.3 を用 いて運転継続を認めた。しかし、対外的に説明しにく いため、規格作成の要請があった。ASME はクラス 2, 3 のタンクの一時的な漏えいを許容する CC N-705 を 2006 年に発行した。NRC は、技術的に理解できても、対外 的に説明できるお墨付きを必要としている。 4.特認の規格化 - ロール拡管 BWR 原子炉圧力容器のインコアハウジングの漏え い対 策にロー ル拡管 を Relief Request ( 特認 ) として NRC は認めてきた。海外を含め 10 プラント弱に適用さ れ、問題無いことから、NRC はこれを規格化するよう ASME に要請した。これを受けて ASME はロール拡管 の CC N-769 を 2009 年に発行した。NRC は ASME 規格 を用いて審査の簡素化や省力化を図っている。 5.上院議員からの圧力 - 埋設管減肉 上院議員から地中埋設管の減肉に対し、NRC の対応 を問う書翰が届いた。NRC は急遽 ASME に規格を作成 するよう要請した。ASME はタスクを結成し、2012 年 にCC N-806を発行した。現在も、適用範囲の拡大のため、 改定が審議されている。政治家の圧力に弱いのはどこの 国も同じである。 6. NRC も解析に参加 - 管の捩り 曲げに捩りが重畳した場合のき裂配管の崩壊荷重の推 定法がなく、3 機関でパラメータを分担して FEM 解析 を行った。途中から NRC も計算をしたいと言い出して、 解析を分担した。その結果は NRC の名も入れて論文発 表した。論文には注記に NRC の立場の見解が記されて いる。なお、捩りを含めた規格は現在改定中である。 以上のことから NRC は規格のエンドースだけでなく、 どう関与しているか、理解いただけたと思う。 (平成 29 年 5 月 20 日) 著 者 紹 介 著者 : 長谷川 邦夫 所属 : 一般財団法人 発電設備技術検査協会 規格基準室 専門分野 : 破壊強度、 欠陥評価 保全学 Vol.16-2 (2017) 民間規格を活用義務化する米国政府機関(3) 長谷川 邦夫,Kunio HASEGAWA 民間規格を活用義務化する米国政府機関(3) 長谷川 邦夫,Kunio HASEGAWA
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