保全学におけるリスク
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1.リスクと保全学の関係
寿命が正確に予測でき、予測されたその寿命に至るまで設備は絶対に故障しないというのであれば、稼動中に設備が故障する懸念は全くないのだから、そこにリスクの概念を持ち込む余地はない。
またリスクとはISO/IECガイド73でも述べるように、人が危険性を蒙る可能性とその危険性が与える危害の最大強度を組み合わせたものであるから、故障が発生しないのであれば被害が発生する懸念は一切ないからである。
また保全の役割を単に設備の補修や整備、或いは故障させないための改良処方の開発に限る場合も保全はリスクと無関係で、あったとしても設備が故障するかも知れないことに対して保全の担当者が自らの出来栄えを1人称で懸念する場合しか存在しない。
保全現場で活用すべきリスクは、保全が装置の設置目的を達成する活動の一環として位置付けられ、生産活動の側から設備に求める要件が保全側に明確に伝達された時、その要求に対する設備性能の充足度として評価された指標であり、それ故に生産活動に携わる全ての人達が関心を払う共通の指標となる。
そしてこの様な共通認識の確立は、生産活動に直接携わる人達の間の意思疎通だけでなく、事業者や保全担当責任者、一般市民など設備に係わる全ての人達の間に共通の価値観を醸成し、設備の運用や保全に関する昨今の後追い的な議論をなくすることにも効果があると思われる。
「リスクベースの保全」とは、この様に装置に係わりを持つ全ての人達の関与、協力を得ながら、総合的な見地から装置の設置目的を効果的に達成することを目指すものであり、その実現のために次のような課題を解決し発展させていくのが、社会科学と自然科学の双方を踏まえた保全学の趣旨であろうかと考えている。
① 摘出した不安要因が、装置に含まれる全ての不安要因であると説得できる摘出方法の開発
② 人それぞれが感ずる不安の大きさを客観的かつ定量的に評価する評価尺度の確立
③ 専門家ではない人達にも容易に技術的な運営内容が理解できる説明方法の開発
2.リスク評価に不向きな運営体制
(1)ノウホワイデータが届かない保全現場
装置を安全・安定・安価に運用するために設備側が確保すべき要件を、保全や詳細設計の側から独自に学習するのは、概念設計、基本設計、詳細設計と順を追って進める時には容易に理解できるものが、かなりの負担を強いる対応となる。
例えば熱交換器が内部漏れを起こしたり、予定の熱交換ができなくなったりした場合でも、その熱交換器の役割が予め周知されておれば、それが何処でどの様な影響として現れるのか、それがどの程度深刻なものかが容易に理解でき、保全計画にも反映させることができるが、それが無いままに下流側で独自にその役割を模索しようとすると、検討の範囲が広がり過ぎて負担が過大になるからである。
本来、設計や運転、保全などの業務は、自然科学的な繋がりで見ればそこには何の仕切りもなく、これを的確、最適に運営しようとする時には、それらを一体のものとして理解していることが前提になるが、現状は充分意思疎通が図られないままに分断され、あってもマニュアル文化の特徴である皮相的な情報交換をベースに運営されるのが常態になっている。
このような分断された運営の短が、例えば一般市民との対話においても、"いくら説明しても他に何か不安要因が隠されているのではないか"と云う様な憶測を生み、不信感を残す原因になっているようにも想像される。
しかし、「リスクベースの保全」を実現するためには、これらのノウホワイデータ(Know why data 「何故かを知る」)の取得が不可欠で、そのためにはこの逆問題を解くことが不可避的に必要となり、その便法は後ほど「最適化保全」として述べるが、理想的にはこれを設計業務の進展に合わせ順問題として、保全技術者を含む関係者に説明をし、議論を交わし、理解を深め最適解を得ていくことが王道になる。
(2)最適操業を確保する対策の決定現場
自然科学上の概念である装置の作動原理やメカニズムは、概念設計(化学装置などではプロセス設計)、基本設計、詳細設計を経て実体化され製造装置として完成されるが、その過程で生産活動で必要となる設備側への要求事項が明確にされ、それに基づいて詳細な設備仕様が決められていく。
参考までに「リスクベースの保全」を進める際に前提的な理解として必要となる、各設計段階の対応業務の内容を示すと概略次のようになる。
① 装置が新設される時には、最初に装置が必要とされた目的に照らしてどの様なメカニズムや作動原理が一番有利かが検討され得失が評価されて、新設装置に採用する製造法の基本骨格が決定される。
概念設計はこの様な段階を対応領域とする設計で、それは既存の技術を利用する場合には候補技術からの最適な製造法の選定であり、製法を自ら作り上げて用いる場合には技術開発部門と連携した製造技術の構築となる。
例えば電力を得ることが設備新設の目的であれば、概念設計ではその為にはどの様な製造法が選ばれるべきか、原子力か火力か、また火力であればLNGか石炭か、コンバインドサイクルであればガスタービンの燃焼温度は何度にするかなど、多くの選択肢の中で利害得失が評価され、そこで必要になる技術面の支援が行なわれる。
このようにして製造法が決定されると、それと同時に生産現場にはその製造法が持つ優位性と共に固有の危険性も持ち込まれ、次の段階でそれらによる被害の発生を抑えながら有益なものだけを効率的に取り出すための各種の対策が計画されることになる。
② 基本設計では、この様にして選定された製造法が生産現場に持ち込む種々の課題を、運用段階で遭遇する全ての局面を想定しながら綿密に摘出し、製造法が有する優位性を最高に発揮させ、弱点を顕在化させないための対策を検討し、そこで必要となる要件を設備の構成や仕様、運転方法として具体化することが行なわれる。
即ち採用した製造法が持つ弱点は、この段階において例えば設計圧力や温度、使用材料等の選定として、また予備機や監視設備、安全装置等の損失回避設備の配備として補完され、それが設備の基本仕様や運転指針等に盛り込まれて、優れた生産性と安全性を兼備した製造装置の基本計画として仕上げられる。
③ 詳細設計では、採用した製造法を実体化するために基本設計段階で個々の設備に課した要件を確実・安価に具体化するための方策を、設備の詳細構造や製作方法などとして、使用条件下での耐性を見透かしながら検討し、その結果を詳細仕様として決定することが行なわれる。
以上のことから分かるように「リスクベースの保全」で必要となる情報は、その大部分が概念設計と基本設計の段階で創出されており、これを遺漏なく入手するためには、これらのノウホワイデータが確実に伝承される、例えばサプライチェーンマネジメントのような発想を導入した恒常的な運営体制を確立することが重要になるように思われる。
(3)設備の成り立ちを理解した保全の重要性
現在の保全は大抵の場合、保全対象として与えられた装置を、主として設備の性能維持だけを目的として詳細設計的な視点で展開されており、設備が設置された目的にまで遡った理解のもとに生産活動の一環として運営されている例は少ない。
そのため現状の保全では、リスク評価の概念は設備故障の発生懸念を定量表現する方法として利用される程度で、課せられた役割を設備が充足する程度を評価する方法として活用する迄には至らず、結果として保全業務が一般社会や事業主の関心とは縁の遠い所業の様なイメージを与えてしまっているように思われる。
これは我が国の装置産業が生産技術の大部分を海外に頼り、国内ではエンジニアリング会社が導入された基本技術を基に詳細設計のみを実施する構図で展開されてきたために、折からのマニュアル文化の流行とも相俟って、ノウホワイに遡る技術が醸成され難く、保全もその延長線上に位置して運営されてきたことに遠因があるように思われる。
しかし本来的な保全の役割は、盲目的に設備の修理や整備をするのではなく、設備が設置された目的を最も効果的に達成する行為の一環として、また一般市民と交わした「より良い人間社会」の構築に向けての暗黙の盟約を着実に果たす行為の一環として認識されるべきで、そのためにはそれを果たすための運営スタンスの確立が不可欠の条件になる。
この様な保全の役割をリスクという局面で捉えると、現在の保全が対応している設備の整備や寿命の予測、診断などは、「設備故障の発生に対するリスク」低減の努力であり、一方「事業者や一般市民が求めるリスク」は彼らの期待に応えるために各設備が確保すべき信頼性のレベルを意味しているから、保全に課せられた本来の役割はこのような2つのリスクを総合的に整合させるところにあると云うことになる。
そしてこのことは
・「設備故障の発生に対するリスク」は
設備が保持している筈の信頼性の大きさ
・「事業者や一般市民が求めるリスク」は
各設備が確保すべき信頼性の大きさ、
即ち「設備に対する要求信頼性」
であり、それらは夫々「Reliability available(有効信頼性)」、「Reliability required(要求信頼性)」と表現することができるから、本来的な保全の役割は、設備の運用状態を次式で表現される状態に維持することであると云うことが出来る。
「Reliability required」≦「Reliability available」
これが「リスク評価を運営のベースとした保全」の主旨であり、これをどの様に賢く運営して行くかの智慧の源泉が「リスクの立場から見た保全学」であると考えている。
3.保全における社会科学と自然科学
(1)「リスクベースの保全」に必要な総合判断
「Reliability required」≦「Reliability available」を総合的に勘案し、それを「リスクベースの保全」に反映させるためには、前者が求め後者が達成する2つの信頼性を定量的に評価することが前提になる。
そしてこの時の「Reliability required」とは事業者や一般市民からの「設備に対する要求信頼性」であるから、その大きさは社会科学的な判断によって評価され、右辺の「Reliability available」は「故障に対する設備の耐性に対する信頼性」であるから、それは自然科学的な判断に基づく評価となる。
ここで社会科学的な判断というのは、例えば自然科学的には次元が違って同列には比較ができない、高温と高圧と、或いは爆発性の物質と有毒物質とどちらがどの位危険かと云ったことに対して、人がそれをどのように理解するかと云うような領域の判断である。
従ってその判断の根本は、人が不利な事態に陥った
時に感ずる不都合の大きさで、その不都合は事業主や社会、個人が受ける生命、財産、利益の喪失、利便、安全、福祉の制限、信用、名誉、栄達など社会的人格の毀損などに対して人が感ずる損害などで、その大きさは人それぞれの感度によって異なり、しかもそれは表-1に例示するように非常に曖昧な表現で示される。
そのためにこの社会科学的な判断は、公平さを保つためにも広く国民の支持を得た判断基準に拠ることが望ましいが、現実には関係法令や公的な規制は所轄省庁毎に分断され、個人や事業者の利害に係わる部分は最終的には倫理観に裏打ちされて行われていると信ずる以外に方法がないのが現状となっている。
(2)社会科学的判断基準は一般市民
この様な状況下で「リスクベースの保全」を実現するためには、「何が正しいかは当事者ではなく世の中が判断する」と云うことを大前提とした上で、業務運営の実態を透明化し、専門家ではない事業主や一般市民にも理解できる言葉で説明し、合意を得ていく工夫が必要になる。
勿論、「地球は回っている」と云って首を切られたり、ダイオキシンやアスベストが突然有害物質になったりするのが人間社会であり、その中で当否の判断は全て一般市民がと言い切るのも懸念が残るが代案がなく、後はこの国の成り立ちの根底を支える倫理観に頼るしか方法がない。
そしてこの時の倫理観は個々人に対してもさることながら、社会や企業が通念として育む倫理観がより大きな力を持つように思われ、その様な価値観の醸成を支援しリードしていくのも本学会の役割であって欲しいと願っている。
また設備の運用状態について専門家ではない一般市民や技術に不案内な事業主の理解を得ていくためには、結論だけではなくそれに至る経緯を含めて説明すること、説明のタイミングも計画修正や見直しが可能な時期に行なうことが、これらの人達の意見を実りある知恵に結実させていく条件の一つのように思われる。
新規に開発された飛行機に試乗するとした例を想像すると、エンジンの性能はどうで、翼の強度はこうでといくら聞かされても、遭遇するかも知れない事態をこのように見極め、その結果エンジンにはこの様なものを選んだとか、翼の形はこうしたと云うようなことを聞かないと安心できないだろうと思うからである。
このことを設備の新設の場合に置き替えて云えば、前2(2)項で述べた概念設計、基本設計、詳細設計の各段階で行なった設備化のための諸種の決定を、各業務の終了段階で関係者に説明して合意を得ること、特に保全担当を含む関係者に対しては、各設計の終了段階で現場に持ち込むことになった危険性やその抑止対策についての情報を充分説明し理解を繋ぐ機会を持つことが大切になる。
しかし、これ迄述べてきたこの様な対応は理想ではあっても、現実には企業秘密や技術ノウハウ防衛などの問題があって実現は殆ど不可能であり、従ってこの問題は自由経済という環境の中で、企業とその埒外にある関係者との間で両者のニーズをどのように調和させていくかという問題に帰結する。
そしてその解決では、両者が要求する事柄は互いに違う内容だから、建前な議論を排し両者が智慧を出し合いキメ細かく議論を重ねていけば、そこには自ずと相互に満足のいく方法がある筈で、そのような手法の確立は「会計監査」に倣う「技術監査」の体制の実現を目指す上でも非常に重要であると思っている。
神ならぬ人間の行為故、「完璧」や「絶対」と云う領域は、そこに限りなく近づき得たとしても到達は不可能で、そのような環境の中で安全や生産性を確実なものにしていくためには、設備の強靭化や故障予知等、従前から行われてきた努力に加えて、故障が及ぼす被害の重大さに応じて点検や整備の頻度を短くする等の方策を体系的に講じ、充分なレベルの信頼性が保障されていることの証査とすることが必要になる。
この様な設備運用での対応が一般社会にも理解されることになれば、設備に係わりを持つ関係者と現場を繋ぐ意思疎通の貴重な手段が手に入ることになり、両者の信頼関係も深まるのではないかと想っているところである。
4.リスクベースの保全
(1)生産活動側から設備側に求める要件の把握
設備に係わる関係者が知りたいことは、生産活動の側から設備側に求めている要求事項の背景にある「何故そうなのか」というノウホワイに関する情報である。
そしてそれは具体的には次のように、各設計段階で生産現場に持ち込まれた生産性や安全確保に係わる危険性、それに対して採られた損失回避のための対策に関する情報で、その入手には設計者から各設計の終了段階で充分な説明を受けることが必要になる。
① 概念設計終了段階:選定した製造法が生産現場に持ち込む危険性の情報
・使用材料や使用条件に含まれる化学、物理、衛生上の危険性
・経済性、環境保全性の確保等に係る特殊な配慮事項など
② 基本設計終了段階:製造法が持つ危険性抑止の考え方と具体的な対策の情報
・製造法が持つ危険性を抑止するために採られた対策と危険度等に関する背景情報
・考慮された不調、故障等の異常事態と、それに備えた危険回避の考え方、対策の情報
③ 詳細設計終了段階:採用設備の予測性能、運転操作、保全方法等に関する情報
・設備選定、安全設計、予測寿命等に関する考え方と対策の情報
・運転操作や保全方法に対する考え方と対策の情報
なお詳細設計終了段階の情報交換は、運転操作や保全、法定検査などに係わりを持つ関係者にとっては重要であるが、事業者や一般市民に対してはこの時点よりも、この交換情報に基づいて立案された運転や保全の運営計画についての情報交換が重要になる。
(2)最適化保全
「リスクベースの保全」を実施する際には、2.(3)項で述べたように「Reliability required」≦「Reliability available」の関係を総合的に評価することがその起点になるが、そのためには保全の対象となる装置の成り立ちを概念設計、基本設計にまで遡って理解することが必要になる。
しかしその様な対応は、既存の装置にあっては逆問題を解く難解な対応となり、また新設の場合でもこれ迄述べてきた各設計段階での情報交換は、理想はそうであっても現実には中々実現が困難な状態にある。
そのためにこれをカバーする何らかの便法が必要になり、その一つの工夫が筆者が提唱し第2回学術講演会前回でも紹介した「最適化保全」になる。
この「最適化保全」の方法は
「Reliability required」≦「Reliability available 」
の状態式を基本前提として
・ 左辺は「設備に対する要求信頼性」で、それは概
念設計と基本設計での決定事項を反映した指標
であるから、それを夫々「プロセス特性」と「機能
特性」で評価
・ 右辺は「設備が保持している信頼性」、即ち詳細
設計で作り込まれ保全で確保されている信頼性であるからそれを「設備特性」で評価
することとして夫々を次の方法で定量化し、説得性のある最適な保全計画を両者の整合を状態式で確認しながら立案し、展開していこうとするものである。
① リスクの評価軸
「Reliability required」
「プロセス特性」:概念設計段階で生産現場に持ち込まれた危険性の大きさの評価
「機能特性」:基本設計段階で製造法の持つ危険性を抑止するために設備に課した役割の大きさの評価
「Reliability available」
「設備特性」:詳細設計段階で作り込まれ、運用段階で対処された結果として設備が保持している、課せられた性能確保に対する信頼性の大きさの評価
② 各特性の評価方法
「プロセス特性」:
「採用した製造法が生産現場に持ち込む
危険性の大きさ」
≒ 「設備が壊れた時に発生する
直接被害の大きさ」
と捉えて、全ての危険源を評価項目として摘出
し、その大きさを評価基準を定めて横断的に定
量評価
表-2に化学装置用の評価項目の例を示す
「機能特性」:
設備に課した役割の大きさ
≒ 設備が機能を停止した時に生ずる
波及被害の大きさ
と捉え、波及被害の大きさを「プロセス特性」と
同じ評価基準で評価することにより評価
但し、そこに不具合の発生に備えたバックアップ
対策が施されている場合は、体系的に定めた
評価基準に従ってその対策状況を評価し、その
評価結果を加味
「設備特性」:
保持している信頼性の大きさ
≒ 設備の壊れ易さ(又は壊れ難さ)
と捉え、これを現状の保全活動の中で得られて
いる設備の寿命予測値の長短として評価
即ち、この様にしてこれら3つの評価軸(評価の3要素)が決定されると、上の状態式の左右両辺は
「Reliability required」
「プロセス特性」+「機能特性」(両特性の評価の中の一番大きい評価)=「使用上の重要度」
「Reliability available」 = 「設備特性」
として定量的に評価することが可能になる。
「最適化保全」とは、この様にして定量評価した左右両辺を指標にしながら、説得性のある最も有利な保全法を検討し展開するもので、そこでは例えば横軸に「使用上の重要度」、縦軸に「設備特性」を配したマトリクスを作成し、その面上で両評価の関係が不等号を挟んで最適な状態になる施策を決定し、実施していく方法などが採用される。
次図はその例で、例えば図-1は「使用上の重要度」に応じて採るべき保全の手厚さを規定した「保全管理密度」の例、図-2は改良保全を「使用上の重要度」の低い設備で試し、そこで得た改良知見を重要度の高い設備に水平展開をする際の方針を規定した「改良保全展開指針」の例である。
なお、この様なリスク評価は、装置を構成する全ての設備に対して行なわれるので、この「最適化保全」の方法を採用した場合には、その装置が保全に関してどの様な特性を持ち、その中で個々の設備がどの様な位置付けでどの様に管理されているかが、装置の管理者や一般市民など専門家ではない人達にも一目瞭然で理解できるようになる。
そしてこの様な体制の確立は、保全担当者だけではなく事業主や装置の管理責任者にとっても、従来のような観念的なレベルでの理解ではなく、保全現場の運営に責任を負う立場として具体的な情報が容易に入手でき、必要な指示や評価が適時にできる極めて有用な武器になる。
以 上
保全学におけるリスク 玉木 悠二,Yuji TAMAKI