沸騰水型原子力発電所における低炭素ステンレス鋼の応力腐食割れの経過と教訓(4)

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4 SCCが発生したプラントの維持管理
4.1 維持規格に基づくSCC管理フロー
 SCC第Ⅲ期は、プラントの総点検から大量の低炭素ステンレス鋼の応力腐食割れ(以下SCC;Stress Corrosion Cracking)データが得られる〔1〕と同時にSCCを現有するシュラウドおよび原子炉再循環系(以下PLR; Primary Loop Recirculation)配管の構造健全性確認が喫緊の問題となった。また軽微なき裂も多数あることも判り、運転後のプラントを新品同様に保つと公言し過剰なまでに予防保全を優先してきたこれ迄の管理に替えて、運転後プラントは当然劣化するので構造健全性が担保できればそのまま監視強化しながら運転できるようにする科学的で合理的な維持規格の必要性が広く理解されるようになった。
米国では1970年代初めから使用されてきた原子力発電設備の維持規格が、ようやく2003年に原子炉等      規制法が改正されて「(社)日本機械学会発電用原子
力設備規格 維持規格(2002年改定)JSME S NA1―2002(以下維持規格)」が使用できるようになり、2004年9月にはPLR配管の構造健全性評価も可能になった。
 一部私見を交え維持規格に基づくSCCの管理フローを図―4.1に示す。図中点線で囲んだ部分は一層の充実を望む分野である。
供用期間中検査(以下ISI;In Service Inspection)基準に基づき実施する非破壊検査(以下NDT;Non Destructive Test)でき裂が発見されると、詳細な調査を行い、き裂がSCCであると判明すれば、維持規格に基づく構造健全性評価を実施する。
評価の結果、例えば5年を超える寿命がある場合には運転を継続し、次回の定期検査で当該箇所の再検査を行い、き裂の進展状況を評価する。進展している場合は再度構造健全性評価をし、それ以降の検査と運転計画を判断する。進展していない場合はその後の検査計画を判断する。評価時点で構造健全性が確保されていない場合は、取り替えるあるいは修理をする。検査および調査データはプラント停止,作業員の放射線被ばく,費用等をかけて得た貴重なものであり、維持規格の追補や改定等将来のために蓄積される。NDTの信頼性は検査機器の精度および検査員の技量によって決まる。検査員の技量は認証制度(以下PD制度:Performance Demonstration制度)により維持される[2]。
図―4.1 SCCの管理フロー
4.2 シュラウドの構造健全性評価
低炭素ステンレス鋼製シュラウドのSCCは、SUS304と異なり、タイプBすなわちシュラウドリング部溶接継手に見られるノの字状の溶融境界に沿いほぼ全周にわたるき裂形態とタイプCすなわちH4胴部溶接継手の溶融境界近傍およびタイプDすなわち溶接継手部から離れた部分的な放射状のき裂形態の2種類に大別できる。
以下に維持規格に基づき2種類のき裂形態に対する健全性評価の概略を代表事例で示す〔3〕,〔4〕,〔5〕。
4.2.1 評価手法
シュラウドに求められる機能は、炉心支持構造物として燃料集合体,炉心支持板,炉心上部格子板,湿分分離器,炉心上部構造物等の支持および流路の仕切り板としてシュラウド内側の炉心部分に安定した上向きの流れを確保することである。このような構造物の荷重条件は、「日本電気協会 JEAG-4601補―1984 原子力発電所耐震設計技術指針重要度分類・許容応力編」に基づき、最も荷重が厳しくなる運転状態Ⅰ(計画的な運転状態またはこれらの間の計画的移行状態)およびⅡ(機器の単一故障、運転員の単一誤操作等の事象によって原子炉が通常運転状態から外れるような状態)において設計用限界地震(S2)が発生した場合を想定する。これは、原子炉圧力容器(以下RPV;Reactor Pressure Vessel)内部の構造物はき裂が貫通かあるいは全周かにかかわらず運転時の最も厳しい荷重に地震荷重が加わっても構造上の健全性が確保されていれば、シュラウドの機能は維持されるとの考えによっている。
評価手順は次の通りである。
① 保守性を考慮したき裂進展評価モデルを設定し、非破壊検査により確認されたき裂部分を除いてき裂がない断面積(以下残存断面積)を求める。また、き裂がないところには保守的に初期き裂を想定した上で、溶接残留応力分布,適切なSCCき裂進展速度線図および応力拡大係数(以下 )の計算式を基にSCCき裂進展評価(予測)を行って次に検査を行う時期すなわち評価期間末期(例えば5年後)の残存断面積を求める。
② 荷重条件に対して、安全率を考慮して構造健全性を確保するのに必要なシュラウドの断面積(以下最小必要断面積)を維持規格J-2-2(塑性崩壊基準)に基づき求める。
③ 両断面積を比較し、評価期間末期の残存断面積が最小必要断面積より大きければ構造健全性は維持される。
④ 中性子照射量が多い胴部に発生したき裂に対しては、中性子照射量を算定し、材料の延性低下を考慮すべき量[6]を超える場合は破壊力学基準に基づき評価する。その場合の評価対象は最長のき裂とし、そのき裂の評価期間末期の応力拡大係数 が限界応力拡大係数(以下 )を安全率で除した値より小さければ構造健全性は維持される。
4.2.2 シュラウドの溶接継手部近傍のSCCき裂進展速度
低炭素ステンレス鋼の母材部のき裂進展速度を硬化していると予想される溶接継手部近傍のき裂進展速度に使えるか確認が行なわれた。図―4.2はシュラウド胴部とリング部の部分モックアップの溶接継手部近傍の断面ビッカース硬さ分布を示す。溶融境界付近に200HVを超える箇所もあるが殆どが200HV以下で、著しい硬化は生じていない[7]。溶融境界近傍
と溶接金属からコンパクトテンション試験片を採取
図―4.2 シュラウド溶接継手部近傍の硬度分布
し求めたSCCき裂進展速度データを図―4.3に示す。いずれも従来の低炭素ステンレス鋼のSCCき裂進展速度線図に包絡され、シュラウド溶接継手部溶融境界近傍のSCCき裂進展評価には従来の低炭素ステンレス鋼のSCCき裂進展速度線図を使用できる。
図―4.3 シュラウド溶接継手部近傍のSCCき裂進展速度
 
4.2.3 リング部の構造健全性評価
リング部では全周にわたるき裂が発生していることから、図―4.4に示すように、全周に均一なき裂が存在し、それが運転後すぐに一様に進展するモデルを用いる。き裂深さにはUTで測定されたき裂深さの平均値を使用し、き裂が確認されていない部分についてもき裂が一様に存在するとして保守性を確保する。
図―4.4 リング部のき裂進展評価モデル
き裂進展評価は次のように行なった[5],[8],[9]。有限要素法(以下FEM;Finite Element Method)によりき裂が進展する部位の溶接残留応力分布を求め、き裂深さおよび溶接残留応力分布から米国石油学会API―579の式[10]を用いて、 を求める。従来の低炭素ステンレス鋼のSCCき裂進展速度線図[11]を用いて、 値に対応するSCCき裂進展速度を求め、き裂進展量(深さ)を算出する。き裂進展量(深さ)を初期き裂深さに加算し、この計算を繰り返す。
図―4.5にK-2のH7aリング部の残留応力分
布, 値およびき裂の進展状況を示す[12] 。図のようにH7aの場合は、溶接残留応力のバランスによりき裂進展は停留せずに進展する。一方、ここでは
省略するが、H6aは10年程度で進展が遅くなる。
K-2H7aの初期き裂深さは8.8mmで、これが
図―4.5 H7aのき裂進展解析例(K-2)
5年後に34.8mmに達するものの、5年後の残存断面積は3.7x10 mm あり、維持規格塑性崩壊基準から求めた最小必要断面積2.0x10 mm の1.85倍でなお構造健全性は確保される〔3〕。
4.2.4  胴部の構造健全性評価
胴部ではタイプCおよびタイプDのき裂が発生している。シュラウドの強度評価では地震時の曲げ荷重が支配的であるため、き裂を胴部断面に投影した平面き裂を想定する。また、貫通き裂は実機で確認されていないが、図―4.6の中央の図のようにき裂は全て貫通しているものとしさらにき裂の両端にシュラウドの厚みを加えたき裂長さを仮定し評価モデルに保守性を確保した。き裂が複数ある場合は、途中でき裂が重なると、それ以降一つのき裂として進展させる。
図-4.6 リング部の亀裂進展評価モデル
図―4.6 胴部のき裂進展評価モデル
胴部のき裂進展速度には、き裂発生位置の単位面積当たりの中性子照射量がIASCC感受性が現れ始める照射量 n/m (>1MeV)未満の場合は図-4.3の従来の低炭素ステンレス鋼のSCCき裂進展速度線図の上限値を、超える場合は鋭敏化ステンレス鋼のSCCき裂進展速度線図の上限値を用いる。貫通き裂の場合、単純にき裂進展速度に時間を乗じた値がSCCき裂の進展量(周方向き裂長さ)になる。
また、オーステナイト系ステンレス鋼は材料の単位面積当たりの中性子照射量が3x10 n/m (>1MeV)を超えると、延性低下の知見があり〔6〕、塑性崩壊基準が適用できない可能性がある。そのため、維持規格では、炉心領域に面して位置するH4近傍等のき裂について、評価期間末期の中性子照射量が延性低下の閾値を超えるあるいは超える恐れのある場合には、き裂が急速に成長して破断するモードに対する評価(破壊力学基準)に基づく限界欠陥から求めた最小必要断面積と、塑性崩壊基準に基づき求めた最小必要断面積と比較し、大きい方を最小必要断面積とする。モデルは初めから貫通き裂を想定するため、き裂長さで代用し比較することができる。
代表例として、K-1 H4(総点検時点での中性子照射量が n/m 、5年後には n/m )では、総点検で見つかった最大き裂長さ134mmが5年後に374mmになるが、破壊力学基準に基づく限界き裂長さ1620mmに対し十分余裕があり、5年後においても構造健全性は確保される〔3〕。
4.3  PLR配管の健全性評価
4.3.1 PLR配管の構造健全性評価の課題
PLR配管のSCCき裂は配管内面に発生するが、検査は配管外面からのUT検査に頼らざるを得ない。
超音波の溶接継手部からのエコーは複雑であるのにSCCき裂は溶接金属に向かって進展する特徴があり一層検査を難しくしている。事実、切り出した配管を切断して実測したき裂深さの方がUTで測定した深さより深い事例も見つかっており[13]、検査を慎重に行う必要がある。より信頼性の高いUT技術の開発と2006年から始まったUT検査員の技量認証制度の一層の充実が望まれる[14]。
さらに、後述するように溶接継手部溶融境界近傍に沿って形成される内部の硬化領域内(シュラウドの表面硬化層と区別して硬化領域と呼ぶ)はシュラウドと異なり、従来の低炭素ステンレス鋼のSCCき裂進展速度線図を使用できない。
このようなことから、シュラウドに約1年遅れ2004年9月に、原子力安全・保安院は省令62号第9条の2に関し、PLR配管も入れた「発電用原子力設備における破壊を引き起こすき裂その他の欠陥の解釈について」(原子力安全・保安院 NISA-163c-04-3, NISA-322c-04-4)が定められ、維持規格に基づくPLR配管の構造健全性評価が可能になった。
今後、硬化領域の現実的なSCCき裂進展速度線図やSCC発生迄の期間を考慮する等、一層科学的で合理的な構造健全性評価に向けた研究が望まれる。以下に、構造健全性評価を示す[9]。
4.3.2 PLR配管溶接継手部近傍のSCCき裂進展速度(硬化領域のSCCき裂進展速度)
 Andresen等により、強い冷間加工を受けて硬化した低炭素ステンレス鋼のSCCき裂進展速度データには従来の低炭素ステンレス鋼の進展速度を上回るものがあることが報告されている[15],[16],[17]。
図―4.7はK-1のPLR配管(600A)溶接継手部近傍の断面ビッカース硬さ分布を示す。溶接金属および溶融境界から約10mmの範囲は内部までビッカース硬度で200~300HV程度の硬化領域が形成されており、硬化領域内には従来のSCCき裂進展速度を用いることができないことがわかる。
図―4.7 K-1 PLR配管硬化領域の様子
4.3.3 配管溶接継手モックアップによるSCCき裂進展速度の評価
溶融境界近傍に形成された硬化領域のSCCき裂進展速度を確認するため、SUS316NG製600Aの配管を用いて溶接継手モックアップを製作し、硬化領域と溶接金属から試験片を採取しき裂進展試験を行なった結果を図―4.8に示す〔9〕。
図―4.8 PLR配管硬化領域のSCCき裂進展速度
硬化領域のSCCき裂進展速度データは図中下側の破線で示す従来の低炭素ステンレス鋼のSCCき裂進展速度を上回るが、上側の破線で示す鋭敏化SUS304のSCCき裂進展速度線図には余裕を持って包絡される。よって、硬化領域内のSCCき裂進展速度は、今のところは、鋭敏化ステンレス鋼のSCCき裂進展速度線図を用いて評価することが保守的となる。一方、溶融金属内のSCCき裂進展速度データは、従来の低炭素ステンレス鋼のSCCき裂進展速度線図に包絡されており、従来の低炭素ステンレス鋼のSCCき裂進展速度線図を使用できることを示している。
すなわち、図―4.9の下側の図に定義する が定まれば、き裂深さが より短い(浅い)範囲は、き裂は硬化領域内にあるので鋭敏化ステンレス鋼のSCCき裂進展速度を用い、 より長く(深く)なれば、 を超える領域に対し従来の低炭素ステンレス鋼のSCCき裂進展速度を用いればよい。
実機データから、図―4.9の上側の図に示すようにき裂発生位置 と には良い相関関係〔9〕があり、 をUTで測定することによりに破線で示す式から を求めることができる。
図―4.9  と の関係
4.3.4 SCCき裂進展の評価
初期き裂を、深さ2mm、表面の長さ20mmの半楕円とし、 が溶接端部から4.3mmの場合、 は10mmとなる。 は維持規格の平板の表面欠陥に対する式を用い、 初期き裂は硬化領域内を直ちに進展し始め、溶融境界に達するとSCCき裂進展速度を切り替えて溶接金属内を進展する。600Aの残留応力分布,応力拡大係数およびき裂進展解析結果を図―4.10の実線で示す[9][18]。
図―4.10 600APLR配管のき裂進展解析例
下側の破線は図―4.8の実線で表した暫定SCCき裂進展速度線図を用いた現実的なケース、上側の破線は溶接金属にも鋭敏化ステンレス鋼のSCCき裂進展速度線図を用いた極めて保守的なケースである。600Aの場合は、いずれのSCCき裂進展速度線図を用いても進展深さがほぼ頭打ちになり、評価上大きな問題にならない。一方、ここでは省略するが、400Aの場合はき裂が進展し続けるため、どのSCCき裂進展速度線図を用いるかにより解析結果がかなり異なってくる[9]。以上のSCC進展解析を基に、維持規格に基づき構造健全性評価[6],[7]をおこなう。
4.3.5  構造健全性評価(破壊評価)
 破壊評価は、オーステナイト系ステンレス鋼の欠陥評価に関し維持規格EB-4420 に定める3つの破壊評価法の内、溶接部に先端が位置する周方向欠陥に適用するEB-4440弾塑性破壊力学評価法を用いた。弾塑性破壊力学評価法による許容欠陥寸法および許容応力の求め方は、添付 E―9 弾塑性破壊力学評価法(以下E-9)に詳細が規定され、また許容欠陥(き裂)寸法として、欠陥深さ(き裂深さ)を肉厚の0.75また欠陥角度(き裂長さ)を60°と定めている。表―4.1に構造健全性評価例を示す[18]。
 

表―4.1 PLR配管の構造健全性評価(弾塑性破壊力学評価)例
初期き裂寸法は実機配管で確認された最大寸法で、き裂深さにはさらにUT測定誤差として4.4mmを加える。600Aの5年後のき裂深さは、図―4.10で初期き裂深さに対応する運転年数に5年を加えた年数のき裂深さから求めることができる。5年以内にき裂深さあるいはき裂長さが許容欠陥寸法に達する場合は、短い方を評価対象期間とするが、600Aは許容欠陥寸法に達するまでに5年を十分上回っているため評価期間を5年としている。一方400Aの場合、き裂は進展し続けるためいずれの許容欠陥寸法に対しても厳しく、特に許容欠陥角度については許容き裂長さに達することから評価対象期間は4.4年になる。
E-9には3通りの許容基準の算出方法が規定されている。き裂(平面欠陥)寸法を基に周方向欠陥に対する許容曲げ応力を算出する方法を用いて許容曲げ応力を求め、告示501に規定する第1種管の作用荷重が評価期間末期の配管に作用して発生する作用曲げ応力と比較する。表に示すようにき裂が許容欠陥角度に達した400Aの配管でも十分な余裕を持っている。
このようにPLR配管の構造健全性評価は許容欠陥角度(許容き裂長さ)が厳しい制限条件となっている。維持規格は、許容欠陥角度は妥当性が示される場合制限を除いても良いとしており、先端が溶融境界に達すると深さ方向の進展が低下し周方向にはそれ迄通り進展するき裂の取り扱いを検討する必要がある。
総点検で発見されたSCCの対策は、維持規格に係わる法整備と並行する時期であったため、シュラウドについては表面を削ってき裂を除去し、PLR配管についてはき裂のある溶接継手部分を切断除去し新品に取り替えたが、現在は維持規格に基づく構造健全性評価をベースにSCCの管理が行われている。
5 おわりに
   
(1)SCCの3要因は応力,環境そして材料でなく材質である。材質は応力(例えば溶接)と環境(例えばエイジング)によって影響を受けるのでSUS304の時のように一つの対策(溶接で鋭敏化しない代替材料)に頼り過ぎることなく応力と環境両面の対策も併用してSCCを確実に抑止する必要がある。
(2)トラブル対応では早く運転再開にこぎつけたいため往々にして対策先行型になりがちであるが、今回は原因究明型すなわちSUS304の時には不十分であったSCCの発生と進展の原因(ミクロメカニズム)を徹底的に究明することを関係者に期待したい。
(3)日本では、2003年にようやく維持規格を使用できるようになったところであるが、実機データを共有財産としてデータセンターに蓄積すると共にプラントの最新状況と最新技術を反映して、常に最進の維持規格を使用できるようにするいわゆる維持規格の維持システムを確立しなければならない。特にデータについては、SCC第Ⅰ期のSUS304の実機データは散逸してしまったものが多く、本稿(Ⅰ)に紹介したSUS304のSCCの写真〔19〕は不本意ながら米国のデータを引用せざるを得なかった。低炭素ステンレス鋼のSCCデータも電力会社や検査を請け負ったプラントメーカに保管されており、維持規格の維持に必要な項目を抜けなく記録し集積するシステムが出来ていない。データ集積システムの確立が望まれる。
(4)PD制度については、事業者が競争導入のため設計・製造・据付けを分離分割発注をする場合に重要な役割を果たす独立系の従って往々にして小規模な検査会社の検査員を含む制度に拡充する必要がある。
(5)維持規格に基づく運用については、徹底した予防保全を行い新品同様にプラントを維持(シュラウド取替えはその代表例)すると長年にわたり説明を受けてきた原子力発電所立地地域の方々はじめ広く社会の理解を得るよう説明を尽くす必要がある。
以上、BWRにおけるオーステナイトステンレス鋼のSCCに対する40年に及ぶ戦いの経過と教訓を4回にわたって解説してきた。本稿が今現在困難な問題に取り組んでいる方々に少しでもお役に立つことが出来たならば幸いである。本解説を終わるに当たり、最初にSCCを教えていただいた近藤達男先生とSCCを題目とした博士論文をご指導いただいた小林英男先生に改めて心からの感謝を申し上げます。
参考文献
[1]例えば、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会原子力発電設備の健全性評価等に関する小委員会で配布された資料及び参考
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[3]岡村祐一,福田俊彦,山下裕宣,二見常夫;SCCが発生した炉心シュラウド,PLR配管の構造健全性評価,圧力技術,Vol.43,No.1,p4-14 (2005)  
[4]Okamura,Y., Sakashita,A., Fukuda,T., Yamashita,H., Futami,T.; Latest Issue of Core Shroud and Recirculation Piping in Japanese BWRs,Trans. of SMiRT17, No. WG 01-1 (2003)
[5] 鈴木俊一,熊谷克彦,岡村祐一,福田俊彦,山下裕宣,山下理道;維持基準を適用した炉心シュラウドのSCC損傷評価,保全学,Vol 3, No.2, p63 (July,2004)
[6]BWR Vessel Internal Project資料
[7]Okamura, Y.; Structural integrity evaluation for IGSCC of L-grade S.S PLR piping in BWR, IAEA Technical Meeting on Reactor Pressure Vessel Internals Behavior and Technology for Repair and Replacement in Nuclear Power Plants, Erlangen Germany, pp.11-13, (Oct. 2004)
[8]Okamura,Y., Sakashita,A., Fukuda,T., Yamashita,H., Futami,T.; Latest Issue of Core Shroud and Recirculation Piping in Japanese BWRs,Trans. of SMiRT17, No. WG 01-1 (2003)
[9]Kumagai,K. ,Suzuki,S. ,Mizutani,J.,Shitara,C. ,Yonekura,K. ,Futami,T. ; Evaluation of IGSCC growth behavior of 316NG PLR piping in BWR, Proc. of 2004 ASME/JSME Pressure Vessels and Piping Conference,ASME PVP-Vol.479, pp217-223 (2004)
[10] American Petroleum Institute; Fitness-for-Service, API Recommended Practice 579, First Edition, p C-30 (Jan. 2000)
[11] 日本機械学会;発電用原子力設備規格 維持規格(2002年改訂版),JSME S NA1-2002,解説2-2-34 図-1 (2002)
[12] 東京電力(株);柏崎刈羽原子力発電所2号機シュラウド下部リング,シュラウドサポートリングおよびシュラウド中間胴等のひびについて,第7回原子力発電設備の健全性に関する小委員会 提出資料 参考7-7,p133 (平成15年3月)
[13] 原子力安全・保安院;原子炉再循環系配管の健全性評価について(Ⅰ),原子力発電設備の健全性評価等に関する小委員会資料―5-1,p21-24(平成15年2月18日)
[14]神戸弘巳;PD認証制度の発足にあたって,保全学,Vol.5 No.2,p59-62(2006年7月)
[15] Andresen,P.L.,et al.; Stress Corrosion Crack Growth Rate Behavior of Various Grades of Cold Worked Stainless Steel in High Temperature Water, Corrosion, Paper 02511 NACE, Houston,TX , p4-7 (2002)
[16] Andresen.P.L. et al., Effects of Yield Strength, Corrosion Potential, Stress Intensity Factor,Silicon and Grain Boundary Character on the SCC of Stainless Steels, Proc. of 11th International symposium on Environmental Degradation of Materials in Nuclear Power Systems-Water Reactors, pp.816-833, (Aug. 10-14 ,2003)
[17] Jenssen, A. et al.; Crack Propagation in Stainless Steels and Nickel Base Alloys in a commercial Operating BWR, Proc. 7th International Symposium on Environmental Degradation of Materials in Nuclear Power Systems-Water
[18] 鈴木俊一,熊谷克彦,設楽親,水谷淳,坂下彰浩,徳間英昭,山下裕宣;原子炉再循環系配管の損傷評価,保全学,Vol.3,No.2, p69 (2004)
[19]二見常夫;沸騰水型原子力発電所における低炭素ステンレス鋼の応力腐食割れの経過と教訓(Ⅰ),保全学,Vol.4, No.4,p29 (2006.1) 
           (平成18年7月26日)
沸騰水型原子力発電所における低炭素ステンレス鋼の応力腐食割れの経過と教訓(4) 二見 常夫,Tsuneo FUTAMI

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