ASRポテンシャル評価のための骨材試験方法に関する評価
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カテゴリ: 第14回
1.諸言
これまで日本ではアルカリ骨材反応(ASR)によって 劣化を生じた構造物の事例は、急速膨張性を示す骨材に よるものが多数報告されてきたが、近年では遅延膨張性 骨材 1)(10 数年以上経過してからコンクリートにひび割れを生じる。)よる劣化事例が報告されている 2), 3)。 このような背景のもと、旧独立行政法人原子力安全基 盤機構(旧JNES)が、RE レポート(以下、JNES レポー ト)として、国内外の最新知見に基づき、急速膨張性骨 材及び遅延膨張性骨材に適用できる骨材のASR試験方法 を提案している 4)。Fig.1に提案されている骨材のASR試 験フローを示す。骨材が急速膨張性の場合は、従来の試 験方法(JIS 化学法、JIS モルタルバー法)で概ね判定で きるが、遅延膨張性骨材やペシマム現象(骨材が全量で はなく特定割合含まれる場合に膨張量が最も大きくなる 現象)を有する急速膨張性骨材に対してはアルカリシリ カ反応性を見逃す可能性があるため、促進条件の高い海 外の試験方法(RILEM AAR-2, RILEM AAR-4)を用いる ことが提案されている。 一方、欧米ではRILEM の規格試験が利用されているが、 日本の骨材では限られたデータしかないことが課題であ った。したがって、海外において提案されている各種試 験方法の適合性を我が国の骨材で検証する必要がある。 そこで、本研究では、国内の骨材を用いてRILEM の規格 試験を実施し、特に、遅延膨張性骨材の反応性検出法に 関して、国内外のASR試験方法を評価した。 Fig.1 Aggregate Testing Flow for ASR(proposal)4) 連絡先:江藤 淳二、株式会社三菱総合研究所、 〒100-8141東京都千代田区永田町2-10-3、 E-mail: junji_eto@mri.co.jp
2.試験方法 2.1 国内外の骨材試験方法の比較 骨材試験方法の比較試験として、国内の骨材を用いて、 従来から行われている試験方法(JIS 化学法、JIS モルタ ルバー法)と、JNESレポートで提案されている海外の試 験方法(RILEM AAR-2, RILEM AAR-3, RILEM AAR-4) を比較し、急速膨張性骨材と遅延膨張性骨材に対する有 効性を確認した。Table 1に比較試験を行った国内外の骨 材のASR試験方法、各試験方法の概要と課題を整理した。 Table 1 Aggregate Testing Metohd for ASR 試験方法・概要 課題 JIS化学法 5): 骨材を150~300μm に粒度調整 し80°C1N-NaOH溶液に24時間 浸漬 2.2 骨材及びコンクリートの調合 試験に供した国内の骨材の岩石学的特徴をTable 2に示 す。急速膨張性骨材は、安山岩でアルカリシリカ反応性 の高い鉱物が含まれていることを偏光顕微鏡観察及び粉 末X線回折によって確認した。また、遅延膨張性骨材は、 砂質ホルンフェルス、砂質片岩、緑色片岩であり、いず れの骨材も隠微晶質石英が含まれていることを確認した。 RILEM AAR-3 及びAAR-4 の調合条件は、日本におけ る標準的な調合を考慮し、Table 3に示す通りとした。ま た、RILEM AAR-3及びAAR-4 は、試験体の湿分保持と アルカリ溶脱に課題があり、試験期間中における水分の 逸散とアルカリ溶脱の影響で、膨張を過小評価している ・急速膨張性骨材に適するが、 可能性が指摘されている 8), 9), 10)。Fig.2 にアルカリ溶脱の 遅延膨張性骨材には適さな 概要を示す。そこで、本試験では、アルカリ溶脱を抑制 い。 するために、アルカリラッピング(以下、AW)を採用し JISモルタルバー法 6): ・急速膨張性骨材に適するが、 た。AW は、アルカリ溶液を含ませた不織布を試験体に モルタルバー 遅延膨張性骨材には適さな 巻き、フィルムラッピングして養生する方法である 11)。 (40×40×160mm) い。 40°C、湿空養生 ・ペシマム現象を検出できない。 AW の濃度(NaOH 濃度)は、公益社団法人日本コンクリ 促進養生6ヶ月で判定 ート工学会「ASR 診断の現状とあるべき姿研究委員会」 RILEM AAR-2 (2014 年7 月)11)で示されている方法に準じて、1.5mol/l と (ASTM C1260相当)7): モルタルバー した。 (25×25×285mm) 80°C1N-NaOH溶液に浸漬 促進養生14日で判定 (AAR-2はASTM C1260とほぼ 同等の試験方法である) ・促進条件が厳しく、多くの骨 材が反応性となる。 ・ペシマム現象を検出できない。 ・チャート、フリントは検出で きない。 ・用いる試料の粒度、試験体サ イズに選択枝があるが、その 評価が明確となっていない。 ・試験の詳細が規定されていな い RILEM AAR-37): コンクリートプリズム(CPT) (75×75×250mm) 38°C湿空養生 アルカリ量:5.5kg/m3 促進養生52週で判定 ・判定に1年要する(混合材を含 む、材齢1年でも膨張が継続 している条件では 2 年を推 奨) ・試験体の湿分保持とアルカリ 溶脱に課題がある。 ・骨材試験であり、試験におけ るコンクリート調合が国内 で用いられている調合と比 べて、単位水量が多い。 RILEM AAR-47): コンクリートプリズム(CPT) (75×75×250mm) 60°C湿空養生で工夫された養 生層/容器を使用 アルカリ量:5.5kg/m3 促進養生15週で判定 Fig.2 Schematic diagram of alkali leaching during CPT (Left:Alkali leaching from specimen) (Right:Prevention of alkali leaching by alkali wrapping) ・試験体の湿分保持とアルカリ 3.試験結果 溶脱に課題がある。 ・骨材試験であり、試験におけ 3.1 国内の骨材試験方法 るコンクリート調合が国内 で用いられている調合と比 JIS 化学法、JIS モルタルバー法、RILEM AAR-2(ASTM べて、単位水量が多い。 C 1260相当)、RILEM AAR-3及びAAR-4の結果と併せて、 アルカリシリカ反応性に関する判定結果をTable 4に示す。 Table 4において、RILEM AAR-3及びAAR-4は、最新の 2015年に発刊されたRILEM AAR 試験方法(2015)の判 定基準 7)を記した。なお、RILEM AAR-3 及びAAR-4の各 - 16 - 3.2 試験は AW を施した結果であるため、AW を行わない 海外の骨材試験方法 REILEM AAR-4の結果も合わせて示す。 Table 4の判定結果から、急速膨張性骨材は、JIS 化学法、 JIS モルタルバー法を実施すれば、有害判定となり、現行 の JIS においてこのような骨材を排除することが可能と 考えられる。しかし、アルカリシリカ反応性の高い急速 膨張性を有する骨材が少量含まれるような場合は、これ らJISの試験で無害判定となる可能性は否定できない。ア ルカリシリカ反応性の高い骨材はペシマム現象を示すこ とがあり、石灰石骨材に対して5%混入された場合にも膨 張を生じることが知られており、ペシマム割合は評価す る材齢にもよる 4)。 一方、遅延膨張性として用いた3種類の骨材は、JIS化 学法では「無害でない」と判定された骨材もあったが(骨 材 WI)、いずれの遅延膨張性骨材も判定閾値に近い値を 示したことから、これらの骨材は、同じ産地であったと しても、採取場所や採取時期、あるいはサンプリング方 法の違いなどの条件によっては判定が分かれる可能性が ある。しかし、これらの骨材はいずれもJISモルタルバー 法で「無害」判定となったことから、JISでは安全と認め られる骨材として使用可能となる。これら遅延膨張性骨 材のうち、骨材 GK は採取地周辺の構造物に劣化事例が 認められ、また骨材 HE は、劣化事例は確認されなかっ たがJISによる試験方法では、このような遅延膨張性骨材 RILEM AAR-2 は、モルタルバーを1mol/lのNaOH 溶液 に浸漬し、浸漬から14日の膨張率でアルカリシリカ反応 性を判定する方法である。また、温度及びアルカリ濃度 が高いことで、遅延膨張性骨材に含まれる反応性鉱物で ある隠微晶質石英に対しても反応し、アルカリシリカ反 応性を検出できると考えられており、遅延膨張性を含む、 すべての骨材で有害判定となった。 一方、チャート、フリントなどの骨材は1mol/lのNaOH 溶液への浸漬では骨材中の反応性鉱物が溶解し、この試 験方法では膨張を生じないことが知られている 12), 13)。ま た、この試験方法は NaOH 溶液に浸漬する厳しい試験方 法であり、RILEMでは、骨材のアルカリシリカ反応性評 価として、RILEM AAR-2 試験で反応性ありと判定された 骨材に対して、さらにRILEM AAR-3あるいはAAR-4で 反応性を確認する手順としている。これは、実際に ASR によるリスクが低い骨材までも反応性ありと判定してし まう可能性があるためである。また、2015 年に制定され たBS 規格(British Standard, BS 8500-2:2015, Minimizing the risk of damaging alkali-silica reaction in concrete)では、RILEM AAR-2 に該当するような試験は要求されず、BS 812-123 にREILEM AAR-3及びAAR-4 と同様のコンクリートプ リズム試験(以下、CPT)が制定されている。 を排除できない可能性があると考えられる。 Table 2 Petrological features of the aggregate used in this research 分類 試料名 岩石名 反応性鉱物 急速膨張性 骨材TO 骨材SI 安山岩 トリディマイト 安山岩 クリストバライト、火山ガラス 遅延膨張性 骨材WI 砂質ホルンフェルス 隠微晶質石英 骨材HE 砂質片岩 隠微晶質石英 骨材GK 緑色片岩 隠微晶質石英 Table 3 Mix proportion of concrete 骨材種類 W/C (%) s/a (%) 水 (W) 単位量(kg/m3) 混和剤量 セメント※1 細骨材※2 粗骨材(G) 減水剤※3 (C) (S) 反応性 非反応性※2 (C×%) TO(急速) 50.0 45.0 160 320 821 309 724 SI(急速) 306 724 WI(遅延) 1007 - 1.45 HE(遅延) 1030 - GK(遅延) 1042 - 注記) ※1:普通ポルトランドセメント(R2O=0.55%)を使用。※2:石灰石骨材を使用。※3:4倍希釈液としての添加率を表示。 - 17 - Table 4 Comparison of judgment results on ASR reactivity 試験方法 無害でない または有害判定 となる膨張率 急速膨張性骨材 遅延膨張性骨材 TO SI WI HE GK JIS 化学法 - 無害でない 無害でない 無害でない 無害 無害 JIS モルタル バー法 材齢26週で 0.100%以上 無害でない (0.415%)※1 無害でない (0.216%)※1 無害 (0.038%)※1 無害 (0.059%)※1 無害 (0.022%)※1 RILEM AAR-2 (ASTM C1260 相当) 材齢14日で0.2%以上 有害 (0.54%)※2 有害 (0.40%)※2 有害 (0.23%)※2 有害 (0.30%)※2 有害 (0.23%)※2 RILEM AAR-3 (AW) 材齢52週で 0.05%以上※5 有害 (0.242%)※3 有害 (0.205%)※3 有害 (0.095%)※3 有害 (0.097%)※3 無害 (0.046%)※3 RILEM AAR-4 (AW) 材齢15週で 0.03%以上※5 有害 (0.186%)※4 有害 (0.182%)※4 有害 (0.080%)※4 有害 (0.095%)※4 有害 (0.066%)※4 RILEM AAR-4 (AWなし) 材齢15週で 0.03%以上※5 有害 (0.215%)※4 - 有害 (0.037%)※4 - - (注)括弧書きの判定結果は、判定材齢前に基準値を超えた水準。 ※1:JISモルタルバー法の欄にある数値は、材齢26週における膨張率。 ※2:ASTM C1260の欄にある数値は、材齢14日(2週)における膨張率。 ※3:RILEM AAR-3の欄にある数値は、材齢1年(52週)における膨張率。 ※4:RILEM AAR-4の欄にある数値は、材齢15週における膨張率。 ※5:RILEM AAR-3/AAR-4は、最新の2015年発刊のRILEM AAR 試験法 7)の判定基準に従った。 0.35-0.050 20 40 60 80 100 120 材齢 (週) 0.35 0.30 0.25 (判定基準) 0.05%/材齢52週 0.30 0.25 TO(急速) SI(急速) 0.20 0.15 0.20 0.15 WI(遅延) HE(遅延) 0.10.1(判定基準) GK(遅延) 0.050.050.03%/材齢15週 0.00 0.00 -0.05 0 20 40 60 80 100 120 材齢 (週) (a) RILEM AAR-3 with AW (b) RILEM AAR-4 with AW Fig.3 Change with time of expansion ratio in RILEM AAR-3 and AAR-4 with AW RILEM AAR-3(AW)及びAAR-4(AW)では、遅延膨張性 の骨材GK を用いた RILEM AAR-3(AW)の判定結果のみ 無害となったが、その他の骨材は何れも有害判定となっ た。また、骨材GKは、RILEM AAR-3(AW)では無害判定 となったが、膨張率は0.046%であった。これは、判定基 準の閾値である材齢52週における膨張率0.05%に近い値 である。RILEM AAR-3 では、疑わしい判定結果の場合に は、さらに 1 年間測定を継続し膨張を確認することを推 奨している。骨材GKの膨張挙動は、Fig.3に示すように、 材齢52週以降さらに膨張が継続し、膨張率0.05%を上回 ることを確認した。このことから、試験で使用した 5 種 類の骨材はすべて有害判定とみなしてもよいと考えられ る。すなわち、JISでは検知できない遅延膨張性を有する 骨材も含めRILEM AAR-3(AW)またはAAR-4(AW)でアル カリシリカ反応性を検知できると考えられる。 RILEM AAR-3 の膨張の判定材齢は1 年(膨張が継続し ている場合や不明瞭な場合は 2 年)であるのに対し、 RILEM AAR-4の判定材齢は15週 と試験期間が短縮でき る。試験結果については、RILEM AAR-3(AW)において骨 材GK が材齢1年(52週)で判定基準に近い膨張率を示 したのに対し、RILEM AAR-4(AW)では何れも判定基準を 上回るものであった。これらのことから、RILEM AAR-4(AW)は AAR-3(AW)と比較して試験期間の短縮と ともに、遅延膨張性骨材についても確実に判定できる可 能性があると考えられる。 - 18 - 3.3 アルカリラッピングの効果 RILEM AAR-4におけるAW有無による比較をFig.4に示 す。急速膨張性の骨材TOでは、膨張率は、材齢26週ま では AW なしの方が AW を上回ったが、26 週以降では AW の方が上回り、材齢52週における膨張率は、AW な しで0.222%に対し、AWで0.262%となった。この現象は、 骨材TOはアルカリシリカ反応性が高く、AW を施すこと により生成したアルカシリカリゲルが不織布に移行し、 早期では膨張が生じにくく、AW を施さない条件では、 材齢が進むに従ってアルカリが溶脱するため、材齢26週 以後の膨張が飽和に達したものと考えられる 14)。 また、骨材 TO の質量変化率は、AW に対して AW な しの質量増加は小さく、また養生期間中の変動も大きい。 これは、AW を施さないと試験体が乾燥するためと考え られるが、AW なしにおいて試験体が乾燥を生じたにも 係わらず膨張を生じた理由は、骨材 TO はアルカリシリ カ反応性が高い急速膨張性を示す骨材であり、内部の水 分で十分に膨張を生じたためと考えられる。 一方、遅延膨張性の骨材WI では、AW の膨張率はAW なしよりも大きく、材齢52週における膨張率は、AW な しで 0.037%に対し、AW ありで 0.131%となった。また、 質量変化率も、AW では材齢が進むにつれて質量が増加 したのに対し、AW なしでは質量減少を生じた。これは、 骨材TOと同様に、AW なしでは養生期間中に試験体から のアルカリ溶脱と乾燥を生じたためであり、特に骨材WI はASR反応がゆっくり生じる遅延膨張性を示す骨材であ るため、アルカリ溶脱と乾燥の影響を強く受け、AW な しでは膨張が生じにくくなり、また、質量の増加が抑制 されたと考えられる。なお、骨材WIでは、AW なしの条 件では、AAR-4 による判定基準である材齢15週での膨張 率 0.03%を下回り、骨材のアルカリシリカ反応性を検知 できない可能性があると考えられる。 4. 結論 JISによる試験方法では、遅延膨張性骨材を排除できな い可能性がある骨材でも、RILEMによる試験方法、特に AW を施したCPT で骨材のアルカリシリカ反応性を検知 できると考えられる。また、RILEMの考え方を導入する ことで、遅延膨張性を含め骨材のアルカリシリカ反応性 は評価可能になると考えられる。 CPT であるRILEM AAR-3、RILEM AAR-4では、文献 等で確認、指摘されているように、AW を施さないと RILEM AAR-4の判定基準である材齢15週でアルカリの 溶脱と試験体の乾燥によって骨材のアルカリシリカ反応 性を検知できない場合があることを確認した。 0TO(急速)-AW TO(急速)-AWなし WI(遅延)-AW WI(遅延)-AWなし 0:00:00TO(急速)-AW TO(急速)-AWなし WI(遅延)-AW WI(遅延)-AWなし 0.30 1899/12/31 4:48:006:00:001899/12/314:48:0019:12:000.150.60.10 10 20 30 40 50 60 0 10 20 30 40 50 60 材齢 (週) 材齢 (週) (a) 膨張率 (b) 質量変化率 Fig.4 Comparison based on the presence or absence of AW in RILEM AAR-4 - 19 - 0.40.050.2謝辞 本研究は、原子力規制庁「平成28年度原子力施設等防 災対策等委託費(高経年化技術評価高度化(アルカリ骨 材反応によるコンクリート構造物の長期健全性評価に関 する研究))事業」における成果の一部である。 参考文献 [1] T. Katayama, A review of alkali-aggregate reactions in Asia ?Recent topics and future research, S. Nishibayashi, M.Kawamura (ed.), East Asia alkali-aggregate reaction seminar,Tottori, Supplementary Papers, pp. A33-A44, 1997. [2] T. Katayama et al., Late-expansive alkali-silica reaction in the Ohnyu and Furikusa headwork structures, Central Japan, Proceeding of the 12th International Conference on Alkali-Aggregate Reaction in Concrete, pp.1086-1094, 2004 [3] T. Katayama: Late-expansive ASR due to imported sand and local aggregates in Okinawa Island, southwestern Japan, Proceedings of the 13th International Conference on Alkali-Aggregate Reaction, pp.862-873, 2008 [4] 中野眞木郎、原子力用コンクリートの反応性骨材の 評価方法の提案、JNES-RE-2013-2050 (2014) [5] JIS化学法 : JIS A 1145 骨材のアルカリシリカ反応性 試験方法(化学法) [6] JIS モルタルバー法: JIS A 1146 骨材のアルカリシリ カ反応性試験方法(モルタルバー法) [7] P.J.Nixon, I.Sims, Editors : RILEM Recommendations for the Prevention of Damage by Alkali-Aggregate Reactions in New Concrete Structures, State-of-the-Art Report of the RILEM Technical Committee 219-ACS、Springer 1st ed.(2015) [8] 井上祐一郎, 佐川康貴, 川端雄一郎: “コンクリート のASR促進膨張試験結果にアルカリ溶脱が及ぼす影 響”, 土木学会年次学術講演会講演概要集 第5部, 65 巻, pp. 545-546 (2010) [9] Yamada,K et al: CPT as an evaluation method of concrete mixture for ASR expansion, Construction and Building Materials, Vol.64, pp.184-191 (2014) [10] Jason H. Ideker et al:The current state of the accelerated concrete prism test, Cement and Concrete Research 40, pp. 550?555 (2010) [11] (社)日本コンクリート工学会: ASR 診断の現状とあ るべき姿研究員会報告書, pp. 272-284 (2014) [12] 小石孝浩, 小田聡, 田中暁大, 佐川康貴, 山田一夫 小川彰一:”隠微晶質石英を含む骨材を用いたモルタ ル及びコンクリートのアルカリシリカ反応膨張挙 動に関する研究”, 平成27年度土木学会西部支部研 究発表会講演概要集, V-18 (2016) [13] 蟹谷真生, 山戸博晃, 広野真一, 鳥居和之:”遅延膨 張型堆積岩系骨材のアルカリシリカ反応性の評価”, コンクリート工学年次論文集, Vol.33, No.1, pp.959-964 (2011) [14] K. Yamada, et al.: Exact effects of temperature increase and alkali boosting concrete prism tests with alkali wrapping, Proceeding of the 15th International Conference on Alkali-Aggregate Reaction in Concrete, 203 2016 ASRポテンシャル評価のための骨材試験方法に関する評価 江藤 淳二,Junji ETOH,落合 孝正,Takamasa OCHIAI,小川 彰一,Shoiti OGAWA,渋谷 和俊,Shibuya KAZUTOSHI,丸山 一平,Ippei MARUYAMA,山田 一夫,Kazuo YAMADA,滝沢 真之,Masayuki TAKIZAWA
これまで日本ではアルカリ骨材反応(ASR)によって 劣化を生じた構造物の事例は、急速膨張性を示す骨材に よるものが多数報告されてきたが、近年では遅延膨張性 骨材 1)(10 数年以上経過してからコンクリートにひび割れを生じる。)よる劣化事例が報告されている 2), 3)。 このような背景のもと、旧独立行政法人原子力安全基 盤機構(旧JNES)が、RE レポート(以下、JNES レポー ト)として、国内外の最新知見に基づき、急速膨張性骨 材及び遅延膨張性骨材に適用できる骨材のASR試験方法 を提案している 4)。Fig.1に提案されている骨材のASR試 験フローを示す。骨材が急速膨張性の場合は、従来の試 験方法(JIS 化学法、JIS モルタルバー法)で概ね判定で きるが、遅延膨張性骨材やペシマム現象(骨材が全量で はなく特定割合含まれる場合に膨張量が最も大きくなる 現象)を有する急速膨張性骨材に対してはアルカリシリ カ反応性を見逃す可能性があるため、促進条件の高い海 外の試験方法(RILEM AAR-2, RILEM AAR-4)を用いる ことが提案されている。 一方、欧米ではRILEM の規格試験が利用されているが、 日本の骨材では限られたデータしかないことが課題であ った。したがって、海外において提案されている各種試 験方法の適合性を我が国の骨材で検証する必要がある。 そこで、本研究では、国内の骨材を用いてRILEM の規格 試験を実施し、特に、遅延膨張性骨材の反応性検出法に 関して、国内外のASR試験方法を評価した。 Fig.1 Aggregate Testing Flow for ASR(proposal)4) 連絡先:江藤 淳二、株式会社三菱総合研究所、 〒100-8141東京都千代田区永田町2-10-3、 E-mail: junji_eto@mri.co.jp
2.試験方法 2.1 国内外の骨材試験方法の比較 骨材試験方法の比較試験として、国内の骨材を用いて、 従来から行われている試験方法(JIS 化学法、JIS モルタ ルバー法)と、JNESレポートで提案されている海外の試 験方法(RILEM AAR-2, RILEM AAR-3, RILEM AAR-4) を比較し、急速膨張性骨材と遅延膨張性骨材に対する有 効性を確認した。Table 1に比較試験を行った国内外の骨 材のASR試験方法、各試験方法の概要と課題を整理した。 Table 1 Aggregate Testing Metohd for ASR 試験方法・概要 課題 JIS化学法 5): 骨材を150~300μm に粒度調整 し80°C1N-NaOH溶液に24時間 浸漬 2.2 骨材及びコンクリートの調合 試験に供した国内の骨材の岩石学的特徴をTable 2に示 す。急速膨張性骨材は、安山岩でアルカリシリカ反応性 の高い鉱物が含まれていることを偏光顕微鏡観察及び粉 末X線回折によって確認した。また、遅延膨張性骨材は、 砂質ホルンフェルス、砂質片岩、緑色片岩であり、いず れの骨材も隠微晶質石英が含まれていることを確認した。 RILEM AAR-3 及びAAR-4 の調合条件は、日本におけ る標準的な調合を考慮し、Table 3に示す通りとした。ま た、RILEM AAR-3及びAAR-4 は、試験体の湿分保持と アルカリ溶脱に課題があり、試験期間中における水分の 逸散とアルカリ溶脱の影響で、膨張を過小評価している ・急速膨張性骨材に適するが、 可能性が指摘されている 8), 9), 10)。Fig.2 にアルカリ溶脱の 遅延膨張性骨材には適さな 概要を示す。そこで、本試験では、アルカリ溶脱を抑制 い。 するために、アルカリラッピング(以下、AW)を採用し JISモルタルバー法 6): ・急速膨張性骨材に適するが、 た。AW は、アルカリ溶液を含ませた不織布を試験体に モルタルバー 遅延膨張性骨材には適さな 巻き、フィルムラッピングして養生する方法である 11)。 (40×40×160mm) い。 40°C、湿空養生 ・ペシマム現象を検出できない。 AW の濃度(NaOH 濃度)は、公益社団法人日本コンクリ 促進養生6ヶ月で判定 ート工学会「ASR 診断の現状とあるべき姿研究委員会」 RILEM AAR-2 (2014 年7 月)11)で示されている方法に準じて、1.5mol/l と (ASTM C1260相当)7): モルタルバー した。 (25×25×285mm) 80°C1N-NaOH溶液に浸漬 促進養生14日で判定 (AAR-2はASTM C1260とほぼ 同等の試験方法である) ・促進条件が厳しく、多くの骨 材が反応性となる。 ・ペシマム現象を検出できない。 ・チャート、フリントは検出で きない。 ・用いる試料の粒度、試験体サ イズに選択枝があるが、その 評価が明確となっていない。 ・試験の詳細が規定されていな い RILEM AAR-37): コンクリートプリズム(CPT) (75×75×250mm) 38°C湿空養生 アルカリ量:5.5kg/m3 促進養生52週で判定 ・判定に1年要する(混合材を含 む、材齢1年でも膨張が継続 している条件では 2 年を推 奨) ・試験体の湿分保持とアルカリ 溶脱に課題がある。 ・骨材試験であり、試験におけ るコンクリート調合が国内 で用いられている調合と比 べて、単位水量が多い。 RILEM AAR-47): コンクリートプリズム(CPT) (75×75×250mm) 60°C湿空養生で工夫された養 生層/容器を使用 アルカリ量:5.5kg/m3 促進養生15週で判定 Fig.2 Schematic diagram of alkali leaching during CPT (Left:Alkali leaching from specimen) (Right:Prevention of alkali leaching by alkali wrapping) ・試験体の湿分保持とアルカリ 3.試験結果 溶脱に課題がある。 ・骨材試験であり、試験におけ 3.1 国内の骨材試験方法 るコンクリート調合が国内 で用いられている調合と比 JIS 化学法、JIS モルタルバー法、RILEM AAR-2(ASTM べて、単位水量が多い。 C 1260相当)、RILEM AAR-3及びAAR-4の結果と併せて、 アルカリシリカ反応性に関する判定結果をTable 4に示す。 Table 4において、RILEM AAR-3及びAAR-4は、最新の 2015年に発刊されたRILEM AAR 試験方法(2015)の判 定基準 7)を記した。なお、RILEM AAR-3 及びAAR-4の各 - 16 - 3.2 試験は AW を施した結果であるため、AW を行わない 海外の骨材試験方法 REILEM AAR-4の結果も合わせて示す。 Table 4の判定結果から、急速膨張性骨材は、JIS 化学法、 JIS モルタルバー法を実施すれば、有害判定となり、現行 の JIS においてこのような骨材を排除することが可能と 考えられる。しかし、アルカリシリカ反応性の高い急速 膨張性を有する骨材が少量含まれるような場合は、これ らJISの試験で無害判定となる可能性は否定できない。ア ルカリシリカ反応性の高い骨材はペシマム現象を示すこ とがあり、石灰石骨材に対して5%混入された場合にも膨 張を生じることが知られており、ペシマム割合は評価す る材齢にもよる 4)。 一方、遅延膨張性として用いた3種類の骨材は、JIS化 学法では「無害でない」と判定された骨材もあったが(骨 材 WI)、いずれの遅延膨張性骨材も判定閾値に近い値を 示したことから、これらの骨材は、同じ産地であったと しても、採取場所や採取時期、あるいはサンプリング方 法の違いなどの条件によっては判定が分かれる可能性が ある。しかし、これらの骨材はいずれもJISモルタルバー 法で「無害」判定となったことから、JISでは安全と認め られる骨材として使用可能となる。これら遅延膨張性骨 材のうち、骨材 GK は採取地周辺の構造物に劣化事例が 認められ、また骨材 HE は、劣化事例は確認されなかっ たがJISによる試験方法では、このような遅延膨張性骨材 RILEM AAR-2 は、モルタルバーを1mol/lのNaOH 溶液 に浸漬し、浸漬から14日の膨張率でアルカリシリカ反応 性を判定する方法である。また、温度及びアルカリ濃度 が高いことで、遅延膨張性骨材に含まれる反応性鉱物で ある隠微晶質石英に対しても反応し、アルカリシリカ反 応性を検出できると考えられており、遅延膨張性を含む、 すべての骨材で有害判定となった。 一方、チャート、フリントなどの骨材は1mol/lのNaOH 溶液への浸漬では骨材中の反応性鉱物が溶解し、この試 験方法では膨張を生じないことが知られている 12), 13)。ま た、この試験方法は NaOH 溶液に浸漬する厳しい試験方 法であり、RILEMでは、骨材のアルカリシリカ反応性評 価として、RILEM AAR-2 試験で反応性ありと判定された 骨材に対して、さらにRILEM AAR-3あるいはAAR-4で 反応性を確認する手順としている。これは、実際に ASR によるリスクが低い骨材までも反応性ありと判定してし まう可能性があるためである。また、2015 年に制定され たBS 規格(British Standard, BS 8500-2:2015, Minimizing the risk of damaging alkali-silica reaction in concrete)では、RILEM AAR-2 に該当するような試験は要求されず、BS 812-123 にREILEM AAR-3及びAAR-4 と同様のコンクリートプ リズム試験(以下、CPT)が制定されている。 を排除できない可能性があると考えられる。 Table 2 Petrological features of the aggregate used in this research 分類 試料名 岩石名 反応性鉱物 急速膨張性 骨材TO 骨材SI 安山岩 トリディマイト 安山岩 クリストバライト、火山ガラス 遅延膨張性 骨材WI 砂質ホルンフェルス 隠微晶質石英 骨材HE 砂質片岩 隠微晶質石英 骨材GK 緑色片岩 隠微晶質石英 Table 3 Mix proportion of concrete 骨材種類 W/C (%) s/a (%) 水 (W) 単位量(kg/m3) 混和剤量 セメント※1 細骨材※2 粗骨材(G) 減水剤※3 (C) (S) 反応性 非反応性※2 (C×%) TO(急速) 50.0 45.0 160 320 821 309 724 SI(急速) 306 724 WI(遅延) 1007 - 1.45 HE(遅延) 1030 - GK(遅延) 1042 - 注記) ※1:普通ポルトランドセメント(R2O=0.55%)を使用。※2:石灰石骨材を使用。※3:4倍希釈液としての添加率を表示。 - 17 - Table 4 Comparison of judgment results on ASR reactivity 試験方法 無害でない または有害判定 となる膨張率 急速膨張性骨材 遅延膨張性骨材 TO SI WI HE GK JIS 化学法 - 無害でない 無害でない 無害でない 無害 無害 JIS モルタル バー法 材齢26週で 0.100%以上 無害でない (0.415%)※1 無害でない (0.216%)※1 無害 (0.038%)※1 無害 (0.059%)※1 無害 (0.022%)※1 RILEM AAR-2 (ASTM C1260 相当) 材齢14日で0.2%以上 有害 (0.54%)※2 有害 (0.40%)※2 有害 (0.23%)※2 有害 (0.30%)※2 有害 (0.23%)※2 RILEM AAR-3 (AW) 材齢52週で 0.05%以上※5 有害 (0.242%)※3 有害 (0.205%)※3 有害 (0.095%)※3 有害 (0.097%)※3 無害 (0.046%)※3 RILEM AAR-4 (AW) 材齢15週で 0.03%以上※5 有害 (0.186%)※4 有害 (0.182%)※4 有害 (0.080%)※4 有害 (0.095%)※4 有害 (0.066%)※4 RILEM AAR-4 (AWなし) 材齢15週で 0.03%以上※5 有害 (0.215%)※4 - 有害 (0.037%)※4 - - (注)括弧書きの判定結果は、判定材齢前に基準値を超えた水準。 ※1:JISモルタルバー法の欄にある数値は、材齢26週における膨張率。 ※2:ASTM C1260の欄にある数値は、材齢14日(2週)における膨張率。 ※3:RILEM AAR-3の欄にある数値は、材齢1年(52週)における膨張率。 ※4:RILEM AAR-4の欄にある数値は、材齢15週における膨張率。 ※5:RILEM AAR-3/AAR-4は、最新の2015年発刊のRILEM AAR 試験法 7)の判定基準に従った。 0.35-0.050 20 40 60 80 100 120 材齢 (週) 0.35 0.30 0.25 (判定基準) 0.05%/材齢52週 0.30 0.25 TO(急速) SI(急速) 0.20 0.15 0.20 0.15 WI(遅延) HE(遅延) 0.10.1(判定基準) GK(遅延) 0.050.050.03%/材齢15週 0.00 0.00 -0.05 0 20 40 60 80 100 120 材齢 (週) (a) RILEM AAR-3 with AW (b) RILEM AAR-4 with AW Fig.3 Change with time of expansion ratio in RILEM AAR-3 and AAR-4 with AW RILEM AAR-3(AW)及びAAR-4(AW)では、遅延膨張性 の骨材GK を用いた RILEM AAR-3(AW)の判定結果のみ 無害となったが、その他の骨材は何れも有害判定となっ た。また、骨材GKは、RILEM AAR-3(AW)では無害判定 となったが、膨張率は0.046%であった。これは、判定基 準の閾値である材齢52週における膨張率0.05%に近い値 である。RILEM AAR-3 では、疑わしい判定結果の場合に は、さらに 1 年間測定を継続し膨張を確認することを推 奨している。骨材GKの膨張挙動は、Fig.3に示すように、 材齢52週以降さらに膨張が継続し、膨張率0.05%を上回 ることを確認した。このことから、試験で使用した 5 種 類の骨材はすべて有害判定とみなしてもよいと考えられ る。すなわち、JISでは検知できない遅延膨張性を有する 骨材も含めRILEM AAR-3(AW)またはAAR-4(AW)でアル カリシリカ反応性を検知できると考えられる。 RILEM AAR-3 の膨張の判定材齢は1 年(膨張が継続し ている場合や不明瞭な場合は 2 年)であるのに対し、 RILEM AAR-4の判定材齢は15週 と試験期間が短縮でき る。試験結果については、RILEM AAR-3(AW)において骨 材GK が材齢1年(52週)で判定基準に近い膨張率を示 したのに対し、RILEM AAR-4(AW)では何れも判定基準を 上回るものであった。これらのことから、RILEM AAR-4(AW)は AAR-3(AW)と比較して試験期間の短縮と ともに、遅延膨張性骨材についても確実に判定できる可 能性があると考えられる。 - 18 - 3.3 アルカリラッピングの効果 RILEM AAR-4におけるAW有無による比較をFig.4に示 す。急速膨張性の骨材TOでは、膨張率は、材齢26週ま では AW なしの方が AW を上回ったが、26 週以降では AW の方が上回り、材齢52週における膨張率は、AW な しで0.222%に対し、AWで0.262%となった。この現象は、 骨材TOはアルカリシリカ反応性が高く、AW を施すこと により生成したアルカシリカリゲルが不織布に移行し、 早期では膨張が生じにくく、AW を施さない条件では、 材齢が進むに従ってアルカリが溶脱するため、材齢26週 以後の膨張が飽和に達したものと考えられる 14)。 また、骨材 TO の質量変化率は、AW に対して AW な しの質量増加は小さく、また養生期間中の変動も大きい。 これは、AW を施さないと試験体が乾燥するためと考え られるが、AW なしにおいて試験体が乾燥を生じたにも 係わらず膨張を生じた理由は、骨材 TO はアルカリシリ カ反応性が高い急速膨張性を示す骨材であり、内部の水 分で十分に膨張を生じたためと考えられる。 一方、遅延膨張性の骨材WI では、AW の膨張率はAW なしよりも大きく、材齢52週における膨張率は、AW な しで 0.037%に対し、AW ありで 0.131%となった。また、 質量変化率も、AW では材齢が進むにつれて質量が増加 したのに対し、AW なしでは質量減少を生じた。これは、 骨材TOと同様に、AW なしでは養生期間中に試験体から のアルカリ溶脱と乾燥を生じたためであり、特に骨材WI はASR反応がゆっくり生じる遅延膨張性を示す骨材であ るため、アルカリ溶脱と乾燥の影響を強く受け、AW な しでは膨張が生じにくくなり、また、質量の増加が抑制 されたと考えられる。なお、骨材WIでは、AW なしの条 件では、AAR-4 による判定基準である材齢15週での膨張 率 0.03%を下回り、骨材のアルカリシリカ反応性を検知 できない可能性があると考えられる。 4. 結論 JISによる試験方法では、遅延膨張性骨材を排除できな い可能性がある骨材でも、RILEMによる試験方法、特に AW を施したCPT で骨材のアルカリシリカ反応性を検知 できると考えられる。また、RILEMの考え方を導入する ことで、遅延膨張性を含め骨材のアルカリシリカ反応性 は評価可能になると考えられる。 CPT であるRILEM AAR-3、RILEM AAR-4では、文献 等で確認、指摘されているように、AW を施さないと RILEM AAR-4の判定基準である材齢15週でアルカリの 溶脱と試験体の乾燥によって骨材のアルカリシリカ反応 性を検知できない場合があることを確認した。 0TO(急速)-AW TO(急速)-AWなし WI(遅延)-AW WI(遅延)-AWなし 0:00:00TO(急速)-AW TO(急速)-AWなし WI(遅延)-AW WI(遅延)-AWなし 0.30 1899/12/31 4:48:006:00:001899/12/314:48:0019:12:000.150.60.10 10 20 30 40 50 60 0 10 20 30 40 50 60 材齢 (週) 材齢 (週) (a) 膨張率 (b) 質量変化率 Fig.4 Comparison based on the presence or absence of AW in RILEM AAR-4 - 19 - 0.40.050.2謝辞 本研究は、原子力規制庁「平成28年度原子力施設等防 災対策等委託費(高経年化技術評価高度化(アルカリ骨 材反応によるコンクリート構造物の長期健全性評価に関 する研究))事業」における成果の一部である。 参考文献 [1] T. 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