大間原子力発電所における安全強化対策について

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カテゴリ: 第14回
Keywords: new safety standards, reinforce safety, severe accidents, design basis accidents, natural phenomena
1.はじめに 現在青森県下北郡大間町にて建設中である大間原子力 発電所では,福島第一原子力発電所事故の教訓のみなら ず最新の科学的・技術的知見等も踏まえた安全対強化対 策を講じることとし,設置変更許可,工事計画認可の申 請を行っている。 大間原子力発電所の安全強化対策は,設計基準事故対 策と重大事故等対策に大別され,重大事故等対策には, 常設型及び可搬型の重大事故等対処設備及び意図的な航 空機衝突などのテロを想定した特定重大事故等対処施設, 並びに更なる安全性向上のための設備がある。 以下,大間原子力発電所の安全強化対策の概要につい て記述する。 2.安全強化対策について 2.1 設計基準事故対策 設計基準事故対策として,内部溢水,内部火災,外部 事象(火山,竜巻,外部火災)などの影響評価を行い, 設計基準事故対処設備の具体化を進めた。 主な設計基準事故対策の内容を以下に示す。 2.1.1 内部溢水対策 原子炉施設内における溢水が発生した場合においても, 原子炉の低温停止及び放射性物質の閉じ込め機能を維持 するため,以下の対策を実施する。 (i)耐震B,Cクラス設備の耐震強化による溢水防止 (ii)溢水経路(扉・貫通部等)に対する止水対策 (iii)漏えい検出による循環水ポンプ停止,復水器水室 出入口弁閉止インターロック設置 等 2.1.2 内部火災対策(Fig.1参照) 原子炉施設内の安全機能を有する構築物,系統及び機 器を火災から防護するため,以下の対策を実施する。 (i)耐震B,Cクラスの油保有機器を耐震強化すること により地震随伴火災を防止 (ii)耐火壁等の配置による安全系区分の系統分離 (安全系区分毎の火災区域の設定) (iii)機器の配置変更による合理的な火災区域の設定 (iv)火災感知器,消火設備の合理的な配置 等 連絡先:引屋敷将之,〒104-8165 東京都中央区銀座 6 丁 目15番地1号,電源開発(株)原子力事業本部原子力技術部 Fig.1 Fire protection measures
2.2 重大事故等対策 炉心の著しい損傷の防止,格納容器の破損防止,放射 性物質の拡散抑制などを行う目的で,重大事故等対処設 備を設置する。主要な重大事故等対処設備を以下に示す。 2.2.1 緊急停止失敗時に原子炉を未臨界にするた めの手段 緊急停止失敗時に原子炉を未臨界にするための手段と して,代替制御棒挿入機能,代替原子炉冷却材再循環ポ ンプトリップ機能及びほう酸水注入系を設ける。 代替制御棒挿入機能及び代替原子炉冷却材再循環ポン プトリップ機能は,原子炉緊急停止系から独立した回路 とし,原子炉圧力高又は原子炉水位低の信号により,作 動する。 2.2.2 原子炉冷却材圧力バウンダリ高圧時の冷却 手段(Fig.2参照) 設計基準事故対処設備である原子炉隔離時冷却系及び 高圧炉心注水系を代替し,原子炉が高圧状態でも注水に よる冷却が可能となるように,代替高圧注水系を設ける。 代替高圧注水系は代替交流電源である空冷式ディーゼ ル発電機からの給電により起動し,原子炉に注水するこ とで炉心の著しい損傷を防止する。 Fig.2 Cooling measures when the pressure in the reactor pressure boundary is high 2.2.3 原子炉冷却材圧力バウンダリの減圧手段 (Fig.3参照) 重大事故等時の原子炉冷却材圧力バウンダリの減圧手 段の強化として,主蒸気逃がし安全弁の駆動源である高 圧窒素ガスボンベの予備配備及び開動作に必要な窒素ガ ス供給圧力の調整機能の強化,並びに可搬型直流電源設 備の配備を実施する。さらに,電源を必要とせず駆動源 の窒素ガスのみで主蒸気逃がし安全弁を開動作可能とす るための機械式補助作動装置も設置する。 - 194 - Fig3. Depressurization measures when the pressure in the reactor pressure boundary is high 2.2.4 原子炉冷却材圧力バウンダリ低圧時の冷却 手段(Fig.4参照) 設計基準事故対処設備である残留熱除去系との多様 性・位置的分散を持たせた設備として,代替高圧注水系 及び代替低圧注水系を設ける。代替高圧注水系及び代替 低圧注水系は代替交流電源である空冷式ディーゼル発電 機からの給電により起動し,原子炉に注水することがで きる。なお,原子炉への注水手段の多様性確保の観点か ら,注水ポンプとして可搬型設備も配備する。 Fig.4 Cooling measures for such condition that pressure in the reactor pressure boundary is low 2.2.5 最終ヒートシンクへ熱を輸送する手段 (Fig.5参照) 設計基準事故対処設備である原子炉補機冷却系を代替 するため,車載式の熱交換器ユニット,ポンプ等で構成 する代替原子炉補機冷却系を設ける。熱交換器ユニット を接続するための屋外接続口は,位置的分散の観点から2 か所に設ける。 Fig.5 Fi 5T Transport t measures for the ultimate heat sink f th lti t h t i k 2.2.6 格納容器内の冷却等のための手段(Fig.6参 照) 設計基準事故対処設備である原子炉格納容器スプレイ 冷却系との多様性・位置的分散を持たせた設備として, 代替原子炉格納容器スプレイ冷却系を設ける。代替原子 炉格納容器スプレイ冷却系は代替交流電源である空冷式 ディーゼル発電機からの給電により起動し,格納容器に スプレイすることができる。なお,格納容器上部ドライ ウェルへのスプレイが必要となるまでの時間余裕がある ことから,注水ポンプとして可搬型設備も配備すること で多様性を確保する。 Fig.6 Cooling Measures for inside of the containment vessel 2.2.7 格納容器の過圧破損防止のための手段 (Fig.7参照) 炉心の著しい損傷が発生した場合であっても格納容器 の破損を防止できるよう,格納容器内の圧力及び温度を 低下させるための設備として,原子炉格納容器フィルタ ベント系を設ける。 原子炉格納容器フィルタベント系は,排気中に含まれ る放射性物質を低減することができるフィルタ装置を設 ける。また,系統内を不活性ガス(窒素ガス)で置換し た状態で待機することで,排気中に含まれる可燃性ガス による爆発を防止する。 Fig7. Measures for prevention of over-pressure failure of the containment vessel 2.2.8 格納容器下部の溶融炉心を冷却するための 手段(Fig.8参照) 炉心の著しい損傷が発生した場合であっても格納容器 の破損を防止できるよう,格納容器下部ドライウェルに 溶融し,落下した炉心を冷却するための設備として,原 子炉格納容器下部注水系を設ける。なお,格納容器下部 ドライウェルへの注水が必要となるまでの時間余裕があ ることから,注水ポンプとして可搬型設備も配備するこ とで多様性を確保する。 設計基準事故対処設備である燃料プール冷却浄化系及 び残留熱除去系との多様性・位置的分散を持たせた設備 として,燃料プールスプレイ系を設け,使用済燃料プー ル内の燃料体等を冷却し,放射線を遮へいし,及び臨界 を防止する。なお,使用済燃料プールへの注水/スプレ イが必要となるまでの時間余裕があることから,注水ポ ンプとして可搬型設備も配備することで多様性を確保す る。 2.2.10 特定重大事故等対処施設 原子炉建屋への故意による大型航空機の衝突その他の テロリズムに対してその重大事故等に対処するために必 要な機能を有する特定重大事故等対処施設を設ける。 2.2.11 更なる安全性向上のための設備 a. 代替残留熱除去系による格納容器の冷却手段 (Fig.9参照) - 195 - Fig.8 Cooling Measures for molten corium in lower part of the containment vessel 2.2.9 使用済燃料プールの冷却等のための手段 特定重大事故等対処施設は,格納容器の破損防止を目 的とし,原子炉注水機能,格納容器スプレイ機能,原子 炉減圧機能,格納容器下部注水機能,電源・計装設備等 の機能,緊急時制御室等を有した設計とする。 残留熱除去系の使用が不可能な場合においても,格納 容器の冷却手段を確保するための設備として,代替残留 熱除去系を設ける。 代替残留熱除去系は,原子炉建屋と位置的分散を確保 した専用ポンプを用いてサプレッションチェンバのプー ル水を循環冷却し,格納容器ベントの回避もしくは遅延 を可能とする。 また,最終ヒートシンクは海とし,代替RCW系機器 (熱交換器ユニット+可搬型大容量ポンプ)を使用するこ とを基本とする。 代替残留熱除去系は,重大事故等時にサプレッション チェンバを水源として,原子炉注水,格納容器スプレイ 及び格納容器下部注水の機能を併せ持っている。 Fig.9 Alternative residual heat removal system b. 溶融炉心冷却対策(Fig.10参照) 溶融デブリが格納容器下部に落下した場合の対策とし て,コリウムシールドを設置する。 コリウムシールドは,サンプを取り囲む形で耐熱材(ジ ルコニア等)を設置することで,溶融デブリがサンプへ 流入し,溶融炉心・コンクリート相互作用(MCCI)によ って格納容器破損(浸食によるRCCVライナー破損)に 至る可能性をより低減させる。 溶融デブリの冷却は,上記2.2.8 の格納容器下部への注 水で十分な対応が可能であるが,更なる安全性向上のた め,当該設備設置を計画している。 Fig.10 Corium shield c. 格納容器内のpH制御対策(Fig.11参照) 炉心の著しい損傷が発生した場合,溶融炉心に含まれ るよう素がサプレッションチェンバプールへ流入し溶解 するが,ケーブル等の放射線分解と熱分解によりサプレ ッションチェンバのプール水が酸性化する可能性がある ため,サプレッションチェンバのプール水をアルカリ性 に保つための設備として,原子炉格納容器pH制御系を 設ける。 原子炉格納容器pH制御系は,アルカリ薬液(水酸化 ナトリウム水溶液)を専用ポンプによりサプレッション プール等に注入して液性をアルカリ側に維持することに より,溶解した有機よう素の再揮発を抑制し,これによ り格納容器ベントで環境に放出される放射性物質をより 一層低減できる。 Fig.11 pH control system 3.まとめ ここでは,福島第一原子力発電所事故の教訓等を踏ま えた大間原子力発電所の安全強化策の概要について述べ た。 大間原子力発電所は,_世界最高水準の安全な原子力発 電所”を目指し,現在の安全水準に決して満足すること なく,一層の安全性の向上を不断に追求していく所存で ある。 参考文献 [1] 電源開発株式会社,「大間原子力発電所 新規制基準 への適合性審査に係る申請の概要について」,第184 回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合, 平成27年1月20日 大間原子力発電所における安全強化対策について 引屋敷 将之,Masayuki HIKIYASHIKI
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