過酷事故時の水位計の指示誤差の回復操作と精度維持に関する研究

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カテゴリ: 第14回
1.緒言
米国スリーマイルアイランド2号機(TMI-2)と福島第一原子力発電所の過酷事故時には、いずれも水位計指示誤差が発生している。東京電力のMAAP 解析の報告によれ ば、3月12日午前0時ごろには原子炉水位は有効燃料底 部(BAF)に到達したとされる。しかし燃料域水位計の実際 の指示値は有効燃料頂部(TAF)以上を示しており、特に0 時前後には注水が行われていないにもかかわらず指示値 が一時的に上昇した。このことから、原子炉水位計の指 示値は実際の水位よりも高かったと考えられる。この現象の原因は、津波による全電源喪失と冷却失敗 による、格納容器内の温度上昇と考えられる。沸騰水型 原子炉で使用されている凝縮槽方式の水位計の模式図を Fig.1 に示す。この方式の水位計では、基準面器側配管と 炉側配管の差圧を計測することにより原子炉水位を計測 する。格納容器内温度が上昇すると基準面器配管から水 が蒸発するため、基準水位が低下し見かけ上は原子炉水 位が上昇する。過酷事故時でも水位を正確に測定するた めに、本研究では計装ラックから補水するバックフィル という対策に着目した。これは、配管内の水が蒸発した際に基準面器側配管のポンプやガス圧等により注水する ことで水位計の機能を維持する対策である。更に、配管 に断熱材を装着することで、水の蒸発を抑え、注水量を 削減することを目指した。
Fig.1 Schematic drawing of water level gauge 2.実験方法 断熱材の取り付けとバックフィルによる注水の有効性 を確認するため、凝縮槽と基準面器配管を模擬した実験 連絡先:倉 佑希 装置を製作し、加熱実験を行った。 〒060-8628 北海道札幌市北区北13条西8丁目 実験装置の模式図をFig.2に示す。基準面器配管と凝縮 北海道大学工学院 原子炉工学研究室 槽は恒温槽に収められている。恒温槽の内部は最大400度 E-mail: kura@eng.hokudai.ac.jp - 244 - まで加熱することができる。配管にはプランジャーポン プが接続されており、任意に注水することができる。凝 縮槽は蓄圧器と接続されているため、過剰に注水した場 合でも基準水位は一定に保たれる。蓄圧器内と基準面器 配管との間の差圧計が実機における燃料域水位計に相当 する。断熱材は脱着が可能である。 Fig.2 Experimental Equipment 実験では蓄圧器内部を6MPa、恒温槽内を400°Cに設定 し、恒温槽内部の各点の温度と、蓄圧器と基準面器との 差圧を測定した。蓄圧器内部の水位はほぼ一定であるた め、差圧計の変動は基準水位の変動であると考えられる。 水位が減少した後にポンプから配管に注水を行い、基準 水位が元の位置に復帰するかを確認した。 3.実験結果・考察 基準水位配管の温度測定結果をFig.3、差圧測定結果を Fig.4 に示す。恒温槽内を加熱すると、飽和温度に達した 段階で差圧が減少した。この現象は、実機における原子 炉水位が実際には変動していないにも関わらず、見かけ 上水位が上昇した現象に相当している。T3以下まで水位 が低下したことを確認し、ポンプから基準水位に注水を 行うと、差圧が元の値まで復帰した。このことから、基 準水位低下により発生した水位計の指示誤差をバックフ ィルにより復旧できることが確認できた。この際、ポン プの脈動による水位計への影響は見られなかった。ポン プによる注水後も恒温槽の温度を維持すると、再び配管 内の水が蒸発し始めた。再度ポンプから注水を行うと、1 回目の注水の時と同様に、差圧が元の値まで復帰した。 配管の断熱による効果を検証するため、配管周りに金 属断熱材を取り付けた状態でも同様の実験を行った。断 熱材を装着した場合の温度測定結果をFig.5に示す。断熱 材を装着した場合の方が時間当たりの水の蒸発量を減少 させることができた。このことは注水回数や注水用設備 の削減に寄与すると考えられる。 Fig.4 Differential Pressure Fig.5 Differential Pressure (with insulator) 4.結論・今後の課題 格納容器内の温度上昇による燃料域水位計の機能喪失 に対して、バックフィルによる注水により機能を復旧で きることを模擬実験で確認することができた。 実験装置の都合から、基準水位がより低い状態からの 注水実験や、一定量の注水を継続的に行うことにより基 準水位を一定に維持する実験が不可能だったため、今後 の実験で検証する必要がある。また、実機条件でも同様 の適用ができるか、ポンプ等の性能がどの程度必要にな るかについて、熱流動解析による検証も行う予定である。 参考文献 [1] 東京電力 n福島第一原子力発電所 ~ 号機の炉 心・格納容器の状態の推定と未解明問題に関する検討 第 回進捗報告| 平成 年 月 日 - 245 - Fig.3 Temperature 過酷事故時の水位計の指示誤差の回復操作と精度維持に関する研究 倉 佑希,Yuki KURA,奈良林 直,Tadashi NARABAYASHI,山本 泰功,Yasunori YAMAMOTO,千葉 豪,Go CHIBA
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