軽水炉安全ロードマップの高度活用

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カテゴリ: 第14回
1.軽水炉安全ロードマップの概要
東京電力福島第一原子力発電所の事故の反省を踏まえ、シビアアクシデント対策や防災の課題も明確化し、軽水炉の安全性向上に向けたロードマップを策定し、運用し ている。策定作業は経済産業省の委託事業により、日本 原子力学会の「安全対策高度化技術検討特別専門委員会」により行われ、2015年6月に公開された(公式名称は「軽 水炉安全技術・人材ロードマップ」、以下RM)。公開後も原子力利用を取り巻く環境変化も踏まえ、また関係各所の取組み状況や最新知見をRMに反映するため、同学会の「軽水炉安全技術・人材ロードマップ高度 活用研究専門委員会」に活動拠点を引継ぎ、定期的な見直しを行うローリング作業を実施している。 RMは、設計から廃炉、さらに運転で得られた知見を 次世代の設計に反映するプラントライフサイクル全般の課題、また平常時に加えて過渡・事故、シビアアクシデント・防災に係る深層防護1層から5層までの課題全般をカバーしている。さらに核セキュリティ分野についても、セイフティに結びつく取組み課題を扱っている。 RMの時間軸は、2020年までを「短期」、2030年までを「中期」、2050年までを「長期」として区分し、それぞれの時期までに達成すべき課題を設定している。また、各期終了時に達成している状態を「目指す姿」として描き、その達成に向けた関係各所の取組みの見える化を図っている。これにより、RMを共有することで、原子力関係者間さらには一般社会との情報共有を促すコミュニケーションツールとしての機能も期待している。
2.ローリング活動成果例 2.1 目指す姿に対する達成度評価 RMでは、2020年の「短期」終了時の目指す姿として、 以下の5項目を定めている。 1. 科学的な規律や知見に基づき、深層防護を踏まえた 自主的安全性および信頼性の向上の取組が進むとと もに、これらに対して、国民目線でのリスクの開示 と対話が円滑になされている。 2. 事業者の新規制基準への対応が完了し、自主的安全 性向上の取組が定着化して、規制と事業者の間で更 に安全性向上を促すより良い関係構築がなされる。 3. 防災支援体制が拡充・高度化され、放射線からの人 と環境への防護のみならず、自然災害防止への取組 との調和がなされている。 4. 研究機関、産業界、関係省庁等の参画の下、本ロー ドマップの継続的なローリングが行われ、各者が自 発的に本ロードマップに従って行動することで、自 律的な安全性向上の取組を律する共通の枠組みとし て、本ロードマップの実効性が確保されている。 5. 電気事業者のみならず、日本原子力学会、原子力リ スク研究センター、原子力安全推進協会、メーカー、 関係省庁等において、軽水炉安全技術に関する科学 的な規律や知見がより確かなものとなり、適切なガ バナンスの枠組みの下で軽水炉安全技術及び人材を 継続的に維持・発展できる仕組みが構築されている。 〒100-8141東京都千代田区永田町2-10-3 株式会社三菱総合研究所 E-mail: takizawa@mri.co.jp - 324 - 立地地域自治体の職員へのヒアリングを実施し、得られ 2016年度に実施したRMのローリング作業では、これ らの2020年時点での目指す姿に対して、現状分析と達成 た意見をRMの今後の運用に反映することとした。 に向けた取組課題の提示を行った。 具体的に得られた意見として、例えば、「事業者は今後 例えば1.の目指す姿に対しては、心配や不安の払拭に 規制と渡り合っていくという姿勢がますます重要となる は至っておらず、絶え間なく取組を続ける必要があるこ こと」、「原子力業界の専門用語は分かりにくいものが多 と、国民目線でのリスクの開示と対話について、防災を く、解説等を施した丁寧な取扱いが必要であること」、「リ 中心に、取組を一層強める必要があること、福島第一原 スクの話だけをしても社会には伝わらず、ベネフィット 発事故への対応状況の国際的な共有は更に取り組む必要 と併せて語るべきであるが、そもそも国民には原子力の があることを達成に向けた今後の課題として挙げている。 ベネフィットの理解は難しいということ」、「事故が起き ることを前提に、事故が起きた後、どういった防災対策 2.2 重要度評価の見直し を講じて地元の安全を守るのか、具体方策を定めて丁寧 RMでは、上述のとおり、プラントライフサイクル全 に説明していく必要があること」、「自治体によっては、 般に係る課題、深層防護1層から5層に係る課題、核セ 原子力発電所の安全性に係る報告書を取りまとめている キュリティに係る課題を、その重要度ランクと合わせて ところもあり、プラントの工学的安全性に係る議論など、 明示している。多種多様な課題を全て解決することは望 立地自治体の知見や関心事項をきちんと把握する必要が ましいが、限られた人員や時間の中でこれら課題を解決 あること」、「産業界が実施する研究開発では、『規制で求 していく上では、安全性向上に対しての重要度を明確化 められているから』や『有識者が必要性を示しているか し、重要度に即した優先順位を定めて、関係各所がそれ ら』を理由とせず、『自らが必要と判断している』という ぞれの役割分担に即して取組んでいく必要がある。 スタンスを示さないと主体性が見えず、立地地域住民ひ 2015年6 月に公開した初版のRM に対して、ローリン いては国民に受け入れなれないこと」、等が指摘された。 グ作業では、原子力利用を取り巻く環境変化や、上述の これら得られた外部意見はRMを活用している関係者 目指す姿に対する達成度の状況を考慮し、さらに重要度 で共有し、今後の軽水炉安全の向上に向けた取組みの中 を判断するための評価指標の見直しを行った上で、重要 でしっかり意識し、活動に反映していく必要がある。 度評価の見直しを実施した。 ローリング結果を反映した2017年3月公開のRMでは、 3.まとめ 複数の課題の重要度に変化が認められた。その変化に対 RMの概要ならびにローリング結果とそれらも踏まえ しては分析を行い、例えば、課題設定の具体化が進んだ てRMを有効に活用していくあり方を示した。今後はエ テーマ、目指す達成時期が短期から中長期にシフトした ネルギー基本計画の見直しの中で、原子力の位置づけの テーマ、環境変化に即して取組むべきテーマ等の重要度 見直しもなされることから、その結果を踏まえてRMの に変化が認められた。これら最新の重要度はRMを通じ 大規模なローリングを実施する予定である。ローリング て関係者間で共有し、重要度に基づく優先度を考慮した と合わせて、RMの有効な活用のあり方についても継続 課題解決への取組みへ反映している。 して検討を進めて参りたい。 2.3 外部意見の取り込み 参考文献 RMは原子力安全の向上に取組む関係者の間で策定さ [1] 経済産業省, _軽水炉安全技術・人材ロードマップ”, れ、上述のようなローリングを行いながら活用している。 2015年 しかし、RMに対して如何に改善を図っても、ローリン http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/denkijigy グ活動や活用の範囲が内部関係者に閉じたものとなって ou/jishutekianzensei/report_002.html いては、社会からの理解や信頼を得ることは難しい。そ [2] 日本原子力学会 安全対策高度化技術検討特別専門 こで、ローリング活動においては、ロードマップの策定 委員会, _平成26年度報告書”, 2015年 や活用に直接関係していない外部有識者の意見を取込む [3] 日本原子力学会 軽水炉安全技術・人材ロードマップ ための第三者評価を実施している。2016年度のローリン 高度活用研究専門委員会, _平成28年度報告書”, 2017 グでは、規制行政経験者、他学会所属の有識者、および 年 - 325 - 企画セッション:原子炉等規制法改正に基づく検査制度の大変革 Special Session: Innovation of NRA’s Inspection by ROP based on the Improvement of Nuclear regulatory Low 北海道大学 奈良林 直 Tadashi NARABAYASHI Member 東北大学 青木 孝行 Takayuki AOKI Member 関西電力 爾見 豊 Yutaka SHIKAMI Member 東北電力 飯田 晋 Susumu IIDA Member 日立 GE 今野 隆博 Takahiro KONNO Member IAEA’s Integrated Regulatory Review Service (IRRS) team conducted review for NRA. The mission provided recommendations and suggestions for improvements in most of the areas covered by the review. include: 1) The NRA should work to attract competent and experienced staff, and enhance staff skills relevant to nuclear and radiation safety through education, training, research and enhanced international cooperation. 2) Japanese authorities should amend relevant legislation to allow NRA to perform more effective inspections of nuclear and radiation facilities. 3) The NRA and all entities it regulates should continue to strengthen the promotion of safety culture, including by fostering a questioning attitude.. Based on the IRRS recommendations, NRA started to improve the nuclear safety regulation through the innovation of regulatory rules and performance inspection will be introduced like NRC in USA. Innovative Integrated New Maintenance System for NPPs will be needed between licensees and regularly. Keywords: NRA, Performance Inspection, IAEA, I RRS, ROP、OLM 1.緒 言 本企画セッションでは、以下の4件の講演と意見交換を 予定している。(1)の規制庁の参加の有無は6月末時点で 未定である。 座長 正:奈良林 直、副 青木 孝行 (1)「我が国検査制度の見直しの基本的考え方と具体的な 仕組み」(未定) (2)「米国の検査制度の変遷とROP・OLM 奈良林 直(北海道大) (3) 検査制度見直しのポイント(事業者活動への影響の 視点から) 爾見 豊 (関西電力) (4) 重要度に応じた検査と規制の重点化 青木 孝行 (東北大学) (5) 意見交換(パネル討論・会場との意見交換 (質問はセッション講演中に受付) 以下に、順次、紹介する。(1)については、3月3日の 原子力安全合同シンポジウムの開催報告[1]の抜粋である。 2.検査制度の大変革にむけた取り組み (1) 我が国検査制度の見直しの基本的考え方と 具体的な仕組み (原子力規制庁) 今年3月3日の原子力安全合同シンポジウムにおいて、 原子力規制庁の金子修一氏より、IAEAの原子力規制評 価サービス(IRRS)の報告書の指摘に基づく、我が国の 検査制度の大幅見直しの眼目と、米国の炉監視プロセス (ROP)の紹介があった(図1)。以下、その講演概要[1] である。 IAEA(国際原子力機関)のIRRS(総合規制評価サー ビス)の評価チームのミッションレポートが2016年4月 23日にIAEAから送付されたことを受けて、原子力規制 委員会は「検査制度の見直しに関する検討チーム」を立 ち上げ、同年11月には改正の法案の骨子が定められた。 2017年2月1日に原子炉等規制法改正案が、原子力規制 委員会で承認され、2月7日安倍内閣 によって閣議決定 された。(その後、原子力発電所の検査制度見直しを柱と する改正原子炉等規制法が4月7日の参院本会議で 可決、 成立した。2020年4月1日より施行となる。) 図1原子力規制庁制度改正審議室の金子修一氏の講演 - 327 - 以上の法改正を踏まえ、原子力規制委員会の検査制度 が米国NRCのROP(Reactor Oversight Process)による巡 視型の検査に一新される。電力事業者の事業者検査や保 全活動もそれに合わせて改革することが必要となる。 【IAEA 基本安全原則SF-1】の抜粋を以下に記す。 原則1:安全に対する責任 安全のための一義的な責任は、放射線リスクを生じる 施設と活動に責任を負う個人または組織が負わなければ ならない。 原則2:政府の役割 独立した規制機関を含む安全のための効果的な法令上 及び行政上の枠組みが定められ、維持されなければなら ない。 「一義的責任」の意味するところ 「一義的」とは、広辞苑によれば最も重要な意味である とことを意味するので、「一義的責任」とは、原子力施設 の設置・運用主体が最も重要な責任と役割を果たさなけ ればならないという趣旨。規制機関を含む法的な枠組み は、これが効果的に実現されるようなものでなければな らない。 IRRS報告書の指摘(検査関係) (勧告9) 政府は、原子力規制委員会の検査官が、いつでもすべて の施設と活動にフリーアクセスができる公式の権限を持 てるように、可能な限り最も低いレベルで対応型検査に 関する原子力規制委員会としての意思決定が行えるよう にするために、検査制度を改善、簡素化すべきである。 原子力規制委員会は、等級別扱いに沿って、規制検査(予 定された検査と事前通告なしの検査を含む)の種類と頻 度を特定したすべての施設及び活動に対する検査プログ ラムを開発、実施すべきである。 (勧告10) 原子力規制委員会は、不適合に対する制裁措置又は罰 則について程度を付けて決定するための文書化された執 行の方針を基準とプロセスとともに、また、安全上重大 な事象のおそれが差し迫っている場合に是正措置を決定 する時間を最小にできるような命令を処理するための規 定を策定すべきである。 (提言10) 原子力規制委員会は、検査、関連する評価そして意思 決定に関わる能力を向上させるため、検査官の訓練及び 再訓練の改善について検討すべきである。 以上の勧告等を踏まえ、規制制度の見直しの基本理念 は、図2に示すように、事業者の安全確保に関する一義 的責任が果たされ、自らの主体性により継続的に安全性 の向上が図られること。そして事業者及び規制機関の双 - 328 - 方の努力により、より高い安全水準が実現されることで ある。規制は、事業者の適合すべき安全上の規制要求を 設定し、供用開始前は、規制要求に適合していることを 各段階において確認、供用開始後は、規制要求への適合 を確実なものとするために保安活動を監視・評価、行政 上の措置を実施することになる。 基本理念【事業者】 【規制機関】 ・事業者の安全確保に関する一義的責任が果たされ、自らの主体性により継続的に安全性の向上が図られる ・事業者及び規制機関の双方の努力により、より高い安全水準が実現される 役割と責任 規制要求への適合を実現 事業者の適合すべき安全上の規制要求を設定 その状況を確認し、かつ、維持・向上させ 供用開始前は、規制要求に適合していることを各段 ることにより、安全確保の一義的責任を果 階において確認 たす 供用開始後は、事業者の規制要求への適合を確実な 法的枠組み ものとするために保安活動を監視・評価、行政上の 措置を実施 安全確保に係る一義的責任を明確にした体 系(事業者検査の実施義務等) 規制機関の関与の体系(段階的規制の体系による供用 開始前の許認可等と、供用開始後の包括的な監視・評 価) 安全上の重要度に応じた効果的な活動を実 現するため、客観的な指標としてリスク情 報、安全確保水準データを活用 運用のポイント 情報事業者の保安活動の実績に応じた監視、安全上の重 提供 要度に応じた評価、行政上の措置を実施するため、 客観的な指標としてリスク情報、安全確保水準デー タを活用 ・学会等で議論された民間規格等を活用す るなど、保安活動の透明性を高める ・積極的な情報公開、コミュニケーション を通じて、保安活動への理解を高める ・規制判断の基準やプロセスなどの対応方針を明確に したガイド文書等を作成・公開して、規制機関によ 協調して 実施 る対応の透明性・予見性を確保し、事業者の主体的 取組みを促す ・積極的な情報公開、コミュニケーションにより、規 制機関の活動内容に対する信頼性を高める 図2 規制制度の見直しの基本的考え方 図3 米国ROPの概要と7つの分野 2000 年 4 月から NRC は、原子力発電所のパフォーマ ンス評価のために実施してきた複数の従来のプログラム を統合し、パフォーマンス指標(PI: Performance indicators) 及び検査の知見から規制対応を判断する包括的な原子炉 監督プロセス(ROP: Reactor Oversight Process)を開始し た。図3に米国ROP の概要と7つの分野を示す。この7 つの分野はコーナーストーン(CS:礎石)を示す。監視 や検査の結果、事業者のパフォーマンスの低下が確認さ れた場合、その重要度に応じ、追加検査、確認措置文書 (Confirmatory Action Letter)の発行などの措置をとる。図 4 に示すように、NRC は、事業者の安全文化醸成の取組 を安全規制の対象として扱えるようROPにおける3つの 横断的要素を取り込んだ。すなわち、1人的能力向上、 2問題の発見と解決する仕組み(CAP)、3安全第一であ る。また、NRC は表1に示す SDP(Significance Determination Process)と呼ばれる潜在的な危険性を見抜 く能力開発を検査官に対して実施している。特に、安全 またはセキュリティ上の重要度をリスク(⊿CDF:炉心損 傷確率の変化量)を抽出し、そのリスクを防止または許 容できる範囲に低下させているなどの解説があった。 図4 ROPにおける7つのCSと横断的要素 表1 SDP(重要度評価プロセス)の評価基準 原子力規制検査により保安活動の状況を確認・指摘す ることを通じて、原子力事業者等の様々な取り組みが、 実際に安全を保つことに結実し、さらによい取り組みが 促されるという、継続的な安全の向上をもたらす流れが 実現され、必要十分な保全に繋げることが重要である。 このように、「保全」は新たな検査制度と直接に関係して おり、安全上の重要性、リスクの大小という考え方が、 極めて重要な役割を果たす局面に入ってくると考えられ る。保全によりリスクを下げる、リスクの大小によって 保全の優先度を付けるなどを効果的に行うには、「リス ク」の評価がとても重要である。 表2に今後の運用検討スケジュールを示す。実運用が開 始されるまで約3年しかない。特に今年度の取り組みが 重要と考えている。リスクを定量的に評価することは難 しい。原子力規制委員会と原子力事業者等は、リスク評 価に挑戦するため、既に様々な取り組みを開始している。 リスク評価を活用した保全に関する調査・研究が進み、 実務で活用することができる知恵や研究の成果が得られ ることを期待する。 ○ NRCは、事業者の安全文化醸成の取組を 安全規制の対象として扱えるようROPに おける横断的要素を取り込み、2006年7 月1日から運用を開始。(赤枠内) ● 起因事象 ● 緩和系 に係るSDPの評価基準(基本的な基準) ● バリア健全性 SDP区分 定性的評価基準 定量的評価基準 炉心損傷頻度変化量 ⊿CDF ● 防災、従業員被ばく、公衆被ばく、物理的防護、火災防護、運転員資格再認証の性能などにつ いてはSDP評価フロー図等により評価。 大規模早期放出頻度 ⊿LERF 赤(安全又はセキュリ ティ上の高い重要度) 事業者のパフォーマンスについて、 供用できない安全裕度の低下を示し ている。なお、公衆の健康と安全に 対する過度なリスクから防止する安 全裕度は依然として存在している。 ⊿CDF>10-4 >10-5 黄(安全又はセキュリ ティ上の相当な重要 度) 事業者のパフォーマンスについて、 安全裕度の重要な低下を伴っている が、許容できる範囲であることを示 している。 10-4≧⊿CDF>10-5 10-5≧⊿LERF>10-6 白(安全又はセキュリ ティ上低~中程度の重 要度) 事業者のパフォーマンスについて、 許容範囲内であり、安全裕度の最小 限の低下を伴っている。 10-5≧⊿CDF>10-6 10-6≧⊿LERF>10-7 緑(安全又はセキュリ ティ上最も低い重要 度) 事業者のパフォーマンスについて、 許容可能であり、かつリスク及びそ 10-6≧⊿CDF 10-7≧⊿LERF の偏差上コーナーストーンの目的を 完全に満たしている。 7つの 3つの横断的 戦略的パフォーマンス分野 起因事象 要素 ヒューマン パフォーマンス のCS 事象 バリア 緊急時 公衆被ばく 従業員被ば 緩和系 健全性 対応計画 安全 く安全 的 公衆の健康と 安全の確保 安全保障 放射線防護 原子炉安全 核物質 防護 安全を重視した作業環境 問題を発見・是正する 仕組み 表2 今後の運用検討スケジュール 平成29年 平成30年 平成31年 平成32年 当面検討すべき項目 新たに事業者に義務付ける検査等に関する検討 試運用(事業者の準備状況に応 法施行 規制機関による確認時期、確認方法の検討 じて段階的に実施) 検査実施要領、規制機関及 び被規制者が行う確認時期 や内容等の具体化 規則案・運用ガイド案等の作成 (適宜)規則案・運用ガイド案等の修正 試運用版策定 制定 検査手数料等の設定の考え方 分類、水準設定の 枠組みの具体化 政令案等の作成 制度運用に向けての問題抽出と調整 監視評価の対象範囲 制度の体系・運 監視・評価の実施に係るプロセス、基準 の明確化 用の継続的改善 実のあり方 運規制判断に係るプロセス・基準の明確化 用監視・評価及び規制 開判断のプロセスの流 れの具体化 規則案・運用ガイド案等の作成 試運用(事業者の準備状況に 応じて段階的に実施) 始 基準の構造や定性的 な区分の具体化 リスク情報の活用と事業者の安全確保の実績 の反映の仕組み 米国でのPRA 実績等調査 試運用へ向け 他プラント展開、試運用時における 国内データ収集・モデル等の整備 た調整 問題点修正等 (パイロットプラントから順次) (2) 米国の検査制度の変遷とROP・OLM 奈良林 直(北海道大学) 1)3.11 までの我が国の規制の問題点 我が国の検査制度も、欧米の検査を目指してきたが、 検査の重点化や保全の最適化が進んでおらず、全ての設 備や機器を網羅的に検査しているのが現状である。これ は、実務運用上に保全や検査に膨大な人的資源(リソー ス)を必要とし、安全上重要な箇所の保全検査活動が手 薄になってしまう問題がある。網羅主義に陥ると、例え ば津波のような、潜在的に非常にリスクが高い事象を見 落とすことになる。福島第一原子力発電所は、そのよう な網羅主義、書類検査偏重主義によって防げなかったと 言っても過言ではない。事業者は、単調な分解点検をし て膨大な書類を作成していき、その書類を規制に提出し、 規制は、その書類の誤字脱字検査から開始する(誤字脱 字は報告書の品質が悪い(QMS 上の考え方)といような 規制が行われていた。駐在検査官自身も、「このように毎 日、誤字脱字も含めて入念に書類を検査しているが、こ のような繰り返しで、原子力発電所の安全性が高まると はとても思えない。」と機械学会の訪問調査の質問に回答 していた。 NRC は、検査を安全上重要なものに限定することで、 4000 人の職員で任務が遂行できているとし、全ての系統 機器の検査をしたら、職員はこの10倍の4万人が必要で あると言っている。 旧原子力安全・保安院時代に、保安規定にQMS が取り 入れられ、それが規制の厳しさを示すためのツールとな ったため、事業者の保安活動が硬直化し、膨大な資料作 成と審査が実施されてきた。規制当局、事業者とも膨大 な労力と時間を費やし、疲弊することとなった。 プラント運転実績(事業者保安活動の結果)の総合評 - 329 - 試運用の進め方含 めた体系の検討 基準設定等の詳細検討 価による規制、いわゆるパフォーマンス規制とインセン ティブ制度の導入により、検査の実効性を向上させよう としたが、効果が出る前に震災が発生し、中断。効果の 検証ができなかった。結果として、欧米からは、日本の 検査制度の後進性の指摘(安全文化の後進国)を受ける こととなった。 2)米国NRCの規制の変遷 世界の規制当局と電力が、緊張感を持った協調体制を 確立している。特にアメリカの規制は2000年のROP 採 用で、SALP という些細なことも指摘をして罰金を取るよ うな北風規制から太陽規制(ROP)に大転換した。表3 に米国の規制制度の用語を、表4に米NRCの規制の変遷 を、表5に米NRCの規制のスタンスを示す。 表3 米国の規制制度の用語 表4 米国の規制制度の変遷 表5 米NRC の規制のスタンス Dr. Nils Diaz 元NRCの委員長は、ROP 導入に当たり、 「規制当局(NRC)は、国民の健康を放射線障害から守 ることが責務。その為 NRC は電力の安全運転を監督す る。」と宣言した。一方、NEIの元会長のDr. Joe Colvin氏 は、「電力会社は、電力の安定供給及び利益確保が社会的 責務であり、その為原子力の安全運転が重要。NRCも電 力も安全運転は最重要であり、従来のように喧嘩する必 要はなく協調すべきである。」とした。ここから米国の規 制と事業者の安全への取り組みは飛躍的な進化を遂げ、 設備利用率は 90%台に向上した。我が国の原子力発電所 の近年の設備利用率は先進国のなかで最低であり、東日 本大震災後は更に、0~5%台になってしまった。 東日本大震災前でも、米国では、OLM(運転中保全(On Line Maintenance)とCBM(状態監視保全)を徹底してい る。その結果、燃料交換時の保全は 20%、運転中の保全 は80%に達している。日本は逆の80%対20%である(表 5)。 ?? ?? ????????М??90%??? ??? OLM?? 図5 日米欧の保全の適正化と設備利用率の改善 表5 震災前の我が国の規制と米国の保全の最適化 ?????????χ????Э???????????? ?δχ?? ??????????????? 米NRCは、図6に示すように、事業者の検査の適切性 ???? ??щ????????????????? φ????Pχ???P??????????????? を規制側の検査官が観察し独自に確認する姿勢 を取っ ?щ?????????????????? ?????????????????????С??? ている。NRCの検査の基本姿勢は、”We trust licensees, but ?????????щ??????χ???????????? ??????????μ???????χ???? ????щ???????щ??μ????????? ??????????????? ????щ???????????μ???????????μ? ???????????????μ????????? verify them.”, つまり、「事業者を信頼するが、検査で検証 する」であり、このためには、What is the Risk Significant”, 「何がリスクを高めているか」という絶え間ない問いか けである。より一層の観察重視型の検査やフリーアクセ - 330 - k??p? ????М??UP!! o?kt?? ktp? ktp? ktt? ktt? m??? m??? m?k? ◆??Э???????????????? ??????????????? ??????? ???????????????????? ????????????????????????? ??С?????????????? ?????μ???μ?????????????? ◆?????????????????? ??????????????p??????????? ??????????????? ?????????????????μ???????? ????????μ?χφ????????μ???? ????????????С???????????? ?????????????β?????????? ?????? ????????????????????????? ス(抜き打ち検査)を活用 し、検査に関して専門家や専 門機関の一層の活用を図っている。 図6 NRCの基本姿勢を示す2つのキーワード 3) 福島第一原子力発電所の事故の教訓 福島第一原子力発電所では、構造強度偏重の規制が行 われ、分解点検で、き裂や減肉の有無などが品質マネー ジメントシステム(QMS)の膨大な書類づくりと共に重 点的に実施された。しかし、津波による海水の浸水だけ で、工学的安全施設の多くの系統が機能喪失した。ここ で原子炉を減圧してSA機器で炉心へ注水すべきであっ たが、十分な訓練を積んでいなかったため、弁の開閉動 作に手間取り、非常用復水器(IC)の作動復旧やベント による格納容器の減圧と炉心注水が間に合わず、炉心が 空だきになって過酷事故に進展してしまった。 3号機は、復水器へ排水するメカニカルシール注水の 弁が閉じられず、炉心にほとんど注水されない状態が続 いた。2号機はベント弁の空気喪失で弁が開かず、格納 容器の内圧が高いまま、空だきの炉心に海水を注入した ために、水蒸気と水素を多量に発生して格納容器が損傷 し、放射性物質を近隣の町や村に飛散させることになっ てしまった。 図7は、補機冷却系によって冷却されている非常用機 器(第3層)と常用機器(第1層)を示す。非常用DG やECCS やRHRのポンプの軸受けの冷却など、ヒートシ ンクを絶たれると東日本大震災時の福島第2原子力発電 所のように、格納容器からの除熱ができなくなり、原災 法第15条通報に至った教訓もあり、補器冷却系やRHR 系のメンテナンスのタイミングはプラントのリスクを高 めないように行うことが重要である。定格運転中は、巨 大なヒートシンクである復水器が作動しており、プラン トの冷却はしっかり確保されている。つまり、第4層の SA機器を安全重要度のクラス1、クラス2で分類して、 定期検査時(今後は原子炉停止時)に第3層と同じ分類で 点検することは、安全重要度の共倒れを引き起こすこと になりかねない。プラント全体のリスクを考えれば、非 常用炉心冷却系などの工学的安全系の点検中にSA機器 や特重設の設備をメンテナンスすべきではない。 従って、第4層では、各種の事象を想定して、SA機器 を使いこなして過酷事故の防止または緩和操作ができる ように習熟訓練すべきで、人的なマネージメントを含め て訓練し、巡視によりその効果を確認することが必要で ある。消防車のエンジンの分解点検よりも、エンジンの 整備状態やエンジンを始動してしっかり作動状態になる ことを確認するか、人的な操作の習熟も含めてパフォー マンスを検査すべきである。 4)第3 層のDB機器と第4層のSA機器の保全 定検時は格納容器の上蓋、ハッチ、原子炉圧力容器の 上蓋が開いていて、DB(設計基準)機器の非常用炉心冷 却系(ECCS)のディーゼル発電機(DG)やポンプのメ ンテナンスを行っており、注水系の可能運転系統数の制 約がある。PWRではミッドループ運転、BWRでは制御 棒駆動装置の水圧駆動ユニット(HCU)などの点検を行 っており、燃料交換作業中では燃料落下事故に備え、 BWRでは、非常用ガス処理系(SGTS)はいつでも稼働 できる状態にしておかなければならない。残留熱除去系 (RHR)も複数系統のうち必ずいくつかは運転していな ければならない。電源車や消防ポンプが故障してもプラ ントの安全性や運転継続には影響しない。定期点検によ り、いつでも運転可能な状態にあることを操作する人間 の技量も含めて確認しておけば良い。しかし、現状の保 安規定では、深層防護第4層の消防ポンプなども安全上 重要な機器に分類されてしまっており、消防ポンプが故 障すると運転上の制限(LCO)逸脱となり、プラント停 止に追い込まれかねない。原子力発電所の安定運転が、 - 331 - 図7 補機冷却系の冷却水や空気、DC電源の重要性 一般工業製品である消防ポンプの信頼性で左右される本 末転倒の事態になりかねない。 そこで、SA機器は、常設・可搬を問わず、定格安定運 転中に保全活動をすべきである。図8は米国の非常用デ ィーゼル発電機(DG)の運転中保全の写真である。モバ イル電源車と燃料を満載したタンクローリーを横付けし ておくだけで、炉心損傷確率(⊿CDF)は低下する。第4 層のメンテナンスの思想は、人的なマネージメントが 様々な状況で実行可能かを見る、パフォーマンス検査と すべきである。第3層と同じハードウエアの機能検査を すると第3層、第4層とも設備検査になってしまい、第 4層としての保全・検査にならなくなる。SA機器の保全 重要度は、以上の観点から、第3層の安全重要度クラス1、 2 とは別にSAクラス保全重要度A,B、C、Dと定義す べきである。 図9は、米国の発電所での基本冷却ポンプ(Essential Water Pump)のOLMである。技術者が慣れた手つきでテ キパキと吐出圧、流量、モータ温度、振動などを測定し て異常のないことを確認している。 図8 非常用DG のOLM事例 図9 最終ヒートシンクの冷却ポンプのOLM事例 5) 特定事故対処設備(特重設)の保全 人の出入りが多い定検時は、テロの潜入リスクも高い 図10 可搬式熱交換ポンプ車によるヒートシンク回復 新しい検査制度は、米ROP の哲学や仕組みを相当部分 で継承すると思われる。制度やルールはできるだけ変更 せずに、そのまま導入することが好ましい。これは米国 での実績などのデータベースを共通にできるからである。 このようにしてROPが導入された場合に事業者活動がど のように変化するか、3つの面から考察する。 1)グレーディッド゛・アプローチの浸透(質が高まる) 限られた資源で高い安全レベルを達成するために必 要な考え方で、今回|、規制措置の元となる重要度の定 義が見直される。安全性を高めることと、よい検査結 果を得ることの2つの活動が一致する。 2)改善活動の促進(検査結果をインプットとした改善 が増える)により、安全上重要な事項が発見され、そ の内容が関係者に正確に伝えられる。安全上重要なこ とは、規制が関与することで確実に改善される。また、 軽微なこと(ROP の緑)は、規制が関与しないことで 自主的に速やかに効果的に改善される。これがグレー デッド・アプローチの効果である。 ことから、特重設は、万一に備えて稼働可能状態にして おくべきである。また、大々的に宣言して、メンテナン スを行うべきではない。プラント運転中に時期を示さず に、OLM で目立たないように実施すべきである。同等の 機能は図10に示すように、SA機器である移動冷却車(可 搬式熱交換ポンプ車)やモバイル電源車・ポンプ車等で 構成できるので、特重設のメンテナンス時には、SA機器 を活用してテロに対するリスクを低減できる。 - 332 - (3) 検査制度見直しのポイント(事業者活動への 影響の視点から) 爾見 豊(関西電力) 重要度に応じたグレーデットアプローチの浸透や判定 基準、改善活動の促進について,事業者活動への影響につ いて説明する。 3)安全確保のポイントの共有 ポイントを踏まえた活動が効果的に実施され、以下の 3つの利点がある。 ・検査要領書からポイントがわかる ・検査報告書からポイントがわかる ・指摘内容に関する意見交換からポイントがわかる。 図11重要度分類の尺度の種類 図12重要度分類の尺度の種類 重要度別のグレーデッド・アプローチを浸透させる上 で必要な重要度分類の尺度(図 11)、ROP で用いる重要 度分類の尺度の種類(図 12)、事業者検査で用いる重要 度の見直しとその見直し例について解説する。 ROP が導入されると、事業者に改善に必要な問題点が 正確に事業者に伝達されるので、検査報告書には、事業 者との意見交換を行なった上で、指摘の内容、重要度の 判断根拠が明確に記載される。また、報告書の内容は公 開され、多数の事業者が共有できるというメリットが生 ずる。具体的に以下に列挙する。 ・重要度の高い「黄」「白」は規制関与により確実に是正さ れる ・「白」以上は追加検査を実施。罰則ではなく必要な改善 が実施されているかの確認が目的。 ・対応策の立案は事業者が行い、規制はその内容を確認 する。 ・必要な期間以内に必要なレベルの是正処置が必ず取ら れる。 ・「緑」は事業者に改善を委ねることで、効果的に改善を 実施できる。「緑」は安全上許容できない「赤」のレベ ルの1/100以下の重要度で、対応は事業者に委ねられて いる。改善の内容に問題がないかどうかは、基本検査 の中である程度確認される。問題があれば、他に問題 が発生していないかが基本検査の中で確認される。 「緑」以上の指摘は、規制一事業者間で、事象内容や 安全上の重要度の判断等に関して意見交換が行われ、そ の後、報告書に文書化されるため、効果的な是正処置が 実施|しやすい。 「白」は深さ、「黄」に関しては、事業者が改善策を策定 するものの、是正処置の時期、広さについて規制が関与 することで、確実な改善が行われる。 「緑」に関しては、是正処置の深さ、広さ、時期等が事 業者に委ねられていることで、より柔軟で素早い対応が 可能となる。他事業者における指摘は、改善のための質 の高いインプットとなる。 青木 孝行 (東北大学) 保全学会の基本的考え方(図13)を踏まえ、機械系と 人間系によって達成される保全活動の重要性や、保全の 重要要素と相互関係・PDCA に基づく保全活動のあるべ き姿(図14)、現状課題の解決策について解説する。 図13 保全学のスコープ - 333 - このように、重要度別アプローチは、事業者の改善活 動が促進されること、それが共有されること、規制がよ りリスクの高い潜在的な危険の撲滅のために重要な案件 に絞ってリソースを振り向けることが可能になる等、メ リットが大きいと考えられる。 (4) 重要度に応じた検査と規制の重点化 図14 保全の重要要素と相互関係・PDCAによる改善 図15 過去の検査制度改革の失敗 図 16 リソースの重点投入による安全性向上の努 力を阻害する例 過去の検査制度改革がなぜ失敗したのか、その反省が 必要である(図 15)。検査制度の改革の志向する大きな 方向はよかった。しかし、規制現場では目指すものが得 られなかった。結局、網羅主義、完璧主義、ハード中心 主義などに陥ってしまった。「真の安全性重視」の意味を 十分理解していなかった。理念、考え方を実現する具体 的なやり方を間違い、稚拙であった。福島事故など、十 分すぎるほどの失敗経験を踏まえ、今度こそ失敗できな いとの覚悟で取り組む必要がある。 特に、図16に示すリソースの重点投入による安全性向 上の努力を阻害する具体例が示された。QMS が網羅主義 と完璧主義、ハードウエア中心主義から膨大な書類作り また、「補修」「取替」「改造」等の是正措置と官庁手続が 煩雑で、「補修」を行うと「特殊設計認可が必要」などの議 論もあった。従来は同種材への「取替」でも工事計画手続 が必要であった。「改造」が安全性に与える影響がほとん ど無いものもあり、米国の規制の様に手続きを合理化す る必要がある。保全の目的と重要度を踏まえ、重要度を 俯瞰的に捉える手法と保安活動の結果生じた個別的問題 の重要度評価からプラント全体の安全性を向上させる手 法(図17)を活用した実効性の高い安全性向上活動が必 要である。 IAEAのIRRSの指摘に基づき、原子力規制が米国NRC のようなパフォーマンス検査に移行する。実運用が開始 されるまで約3年しかない。特に今年度の取り組みが重 要と考えている。リスクを定量的に評価することは難し い。原子力規制委員会と原子力事業者等は、リスク評価 に挑戦するため、既に様々な取り組みを開始しているが、 PRAで用いるプラントのモデル、弁やポンプの故障確率、 人的パフォーマンスなどのデータ整備が急務であり、QMS を適切に運用できる統合保全システムの開発も必要であ る。今後の研究の進展と学会の役割が重要である。 参考文献 [1] 奈良林 直、第2回原子力安全合同シンポジウム開催報告、 保全学、Vol.16, No.2 (2017)。 [2] 奈良林 直、特集:規制関連検討会報告「我が国の検査制度 の大改革と新時代の統合保全検査システムと保全学会の役割」、 保全学 Vol.15, No.2 (2016)。 [3] 奈良林 直、特集:規制関連検討会報告「再稼働後のROP 導 入とSA機器の保全活動」、保全学、Vol.15, No.3 (2016)。 [4] 日本原子力学会事故調査委員会編、「日本原子力学会事故調 査最終報告書」(2014.3)。 [5] 東京電力、「東北地方太平洋沖地震発生当時の福島第一原子 力発電所運転記録及び事故記録の分析と影響評価について(概 要)」(2011.5.23)。 - 334 - とその書類検査に陥り、潜在的な危険性を見抜く洞察力 に欠け、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事 故を未然に防げなかった。 図17 重要度評価の俯瞰的手法と個別的手法 3.結 言 軽水炉安全ロードマップの高度活用 滝沢 真之,Masayuki TAKIZAWA
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