マイクロ波を用いた配管広域一括探傷技術のエルボ付配管への適用性評価 Evaluation of the Applicability of a Nondestructive Testing Method using Microwaves to the Long-range Inspection of a Pipe with a Bend
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カテゴリ: 第14回
1.緒言
配管の信頼性の担保はプラントの保全活動における重要課題の一つであることを鑑み、マイクロ波を用いた配管の広域一括探傷技術が提唱・開発されている。これは配管内にマイクロ波をパルスとして入射・伝播させたとき、管壁のきずがマイクロ波を反射しうることを利用し、 入射部位において測定されるマイクロ波の反射波から管 壁の広域一括探傷を行うというものである。 これまでに管内に効率的にマイクロ波エネルギーを入射させるための技術[3]や反射波を明瞭化するための技術[4]等について開発が行われ、7mの単管に人為的に加工したスリットから明瞭な信号を得ることにも成功している[5]。しかしながらその一方、これまでの検討は直管を対象としたものが大半であり、曲がり部を有する配管に対する適用性検討[6]はほとんど行われていない。当該技術の実機適用を想定した場合、適用可能部位、探傷可能範囲検討のためには、曲がり部の影響を評価することが必要である。 本稿においては、以上の状況を鑑みて実施された、マイクロ波を用いた配管広域一括探傷技術に対する、配管の曲がり部の影響評価試験結果を報告する。 2.エルボ付き配管に対するマイクロ波探傷法適用性評価試験 2.1 試験体系及び試験条件 本研究において実施した評価試験の実験体系図をFig. 1 に示す。対象は長さ1m、内径23mmの真鍮製短管を4本フランジ接続したものであり、接続部のうち1箇所に曲率半径39.1mmの90度エルボを挿入することで、曲がり部を有する配管を模擬している。また、減肉の模擬は、図中黒三角で示したエルボ直後の箇所に、長さ50mm、 内径23もしくは25mmの短管を挿入することで行い、管端部から入射されたマイクロ波のこの減肉による反射波の評価を行った。 マイクロ波の発振と受信にはネットワークアナライザ (Agilent Technology社製E8363B)を用い、マイクロ波はフレキシブルケーブル(潤工社製MWX051)およびコネクタ ー(Anritsu社製K101F-R)内をTEMモードにて伝播した後、管端部に取り付けられたマイクロ波プローブより、管内に主としてTM01モードとして発振される。 測定は周波数領域において行い、測定された信号に対して逆フーリエ変換を施すことで、パルスとして管内に発振されたマイクロ波の反射波を評価した。測定に用いたのは10~18 GHzの1,601周波数であり、信号明瞭化のため測定信号は30回の平均化を行った。
Fig.1 Experimental setup
2.2 試験結果
得られた試験結果の一例をFig. 2に示す。図中with flaw とあるのが深さ1 mmの全周減肉に相当する内径25mm の単管を挿入した場合、without flawとあるのは配管の口径と同じ内径23mmの短管を挿入した場合の信号である。両者には約11nsにおける反射波に明瞭な差異を確認することができる。測定時のネットワークアナライザの校正条件より0nsにおける大きな反射波は管端部に取り付けられたマイクロ波プローブにおける反射であるといえ、また(マイクロ波を入射したのとは逆の)管端部を真鍮盤で封止した場合に有意な変化が確認されたことから約35ns以降のなだらかな反射波は管端部からのものということができる。よって、短管挿入位置を鑑みると11nsにおける反射波は模擬減肉からの信号としてそのTime of Flightからも妥当なものであるということができる。
Fig.2 Measured signals
3.結言
マイクロ波を用いた配管広域一括探傷技術の、曲がり部を有する配管に対する適用性評価試験を実施した。長さ約4mの配管の90度曲がり部後方に配置した模擬全周減肉からの明瞭な反射波を確認することに成功し、当該技術が直管のみならず曲がり管に対しても適用可能であることを確認した。 謝辞 本研究は科学研究費補助金(15K14298)及び日本学術振興会特別研究員奨励費(H264906)の助成を受けました。
参考文献 [1] K. Sugawara, H. Hashizume, S. Kitajima, _Development of NDT method using electromagnetic waves”, JSAEM Studies in Applied Electromagnetics and Mechanics, Vol. 10, 2001, pp. 313-316. [2] H. Hashizume, T. Shibata, K. Yuki, _Crack detection method using electromagnetic waves”. International Journal of Applied Electromagnetics and Mechanics, Vol. 20, 2004, pp. 171-178. [3] Y. Ju, L. Liu, M. Ishikawa, _Quantitative evaluation of wall thinning of metal pipes by microwaves”, Materials Science Forum, Vol. 614, 2009, pp. 111?116. [4] Y. Sakai, N. Yusa, H. Hashizume, _Nondestructive evaluation of wall thinning inside a pipe using the reflection of microwaves with the aid of signal processing”, Nondestructive Testing and Evaluation, Vol. 27, 2012, pp. 171-184. [5] K. Sasaki, T. Katagiri, N. Yusa, H. Hashizume, _Demonstration of the applicability of non-destructive microwave testing to the long-range inspection of a crack appearing at the inner surface of a pipe”, Materials Transactions, Vol. 58, 2017, pp. 692-696. [8] K. Abbasi, N.H. Motlagh, M.R. Nematollahi, H. Hashizume, _Detection of axial crack in the bend region of a pipe by high frequency electromagnetic waves”, International Journal of Pressure Vessels and Piping, Vol. 86, 2009, pp. 764-768. マイクロ波を用いた配管広域一括探傷技術のエルボ付配管への適用性評価 Evaluation of the Applicability of a Nondestructive Testing Method using Microwaves to the Long-range Inspection of a Pipe with a Bend 佐々木 幸太,Kota SASAKI,片桐 拓也,Takuya KATAGIRI,遊佐 訓孝,Noritaka YUSA,橋爪 秀利,Hidetoshi HASHIZUME
配管の信頼性の担保はプラントの保全活動における重要課題の一つであることを鑑み、マイクロ波を用いた配管の広域一括探傷技術が提唱・開発されている。これは配管内にマイクロ波をパルスとして入射・伝播させたとき、管壁のきずがマイクロ波を反射しうることを利用し、 入射部位において測定されるマイクロ波の反射波から管 壁の広域一括探傷を行うというものである。 これまでに管内に効率的にマイクロ波エネルギーを入射させるための技術[3]や反射波を明瞭化するための技術[4]等について開発が行われ、7mの単管に人為的に加工したスリットから明瞭な信号を得ることにも成功している[5]。しかしながらその一方、これまでの検討は直管を対象としたものが大半であり、曲がり部を有する配管に対する適用性検討[6]はほとんど行われていない。当該技術の実機適用を想定した場合、適用可能部位、探傷可能範囲検討のためには、曲がり部の影響を評価することが必要である。 本稿においては、以上の状況を鑑みて実施された、マイクロ波を用いた配管広域一括探傷技術に対する、配管の曲がり部の影響評価試験結果を報告する。 2.エルボ付き配管に対するマイクロ波探傷法適用性評価試験 2.1 試験体系及び試験条件 本研究において実施した評価試験の実験体系図をFig. 1 に示す。対象は長さ1m、内径23mmの真鍮製短管を4本フランジ接続したものであり、接続部のうち1箇所に曲率半径39.1mmの90度エルボを挿入することで、曲がり部を有する配管を模擬している。また、減肉の模擬は、図中黒三角で示したエルボ直後の箇所に、長さ50mm、 内径23もしくは25mmの短管を挿入することで行い、管端部から入射されたマイクロ波のこの減肉による反射波の評価を行った。 マイクロ波の発振と受信にはネットワークアナライザ (Agilent Technology社製E8363B)を用い、マイクロ波はフレキシブルケーブル(潤工社製MWX051)およびコネクタ ー(Anritsu社製K101F-R)内をTEMモードにて伝播した後、管端部に取り付けられたマイクロ波プローブより、管内に主としてTM01モードとして発振される。 測定は周波数領域において行い、測定された信号に対して逆フーリエ変換を施すことで、パルスとして管内に発振されたマイクロ波の反射波を評価した。測定に用いたのは10~18 GHzの1,601周波数であり、信号明瞭化のため測定信号は30回の平均化を行った。
Fig.1 Experimental setup
2.2 試験結果
得られた試験結果の一例をFig. 2に示す。図中with flaw とあるのが深さ1 mmの全周減肉に相当する内径25mm の単管を挿入した場合、without flawとあるのは配管の口径と同じ内径23mmの短管を挿入した場合の信号である。両者には約11nsにおける反射波に明瞭な差異を確認することができる。測定時のネットワークアナライザの校正条件より0nsにおける大きな反射波は管端部に取り付けられたマイクロ波プローブにおける反射であるといえ、また(マイクロ波を入射したのとは逆の)管端部を真鍮盤で封止した場合に有意な変化が確認されたことから約35ns以降のなだらかな反射波は管端部からのものということができる。よって、短管挿入位置を鑑みると11nsにおける反射波は模擬減肉からの信号としてそのTime of Flightからも妥当なものであるということができる。
Fig.2 Measured signals
3.結言
マイクロ波を用いた配管広域一括探傷技術の、曲がり部を有する配管に対する適用性評価試験を実施した。長さ約4mの配管の90度曲がり部後方に配置した模擬全周減肉からの明瞭な反射波を確認することに成功し、当該技術が直管のみならず曲がり管に対しても適用可能であることを確認した。 謝辞 本研究は科学研究費補助金(15K14298)及び日本学術振興会特別研究員奨励費(H264906)の助成を受けました。
参考文献 [1] K. Sugawara, H. Hashizume, S. Kitajima, _Development of NDT method using electromagnetic waves”, JSAEM Studies in Applied Electromagnetics and Mechanics, Vol. 10, 2001, pp. 313-316. [2] H. Hashizume, T. Shibata, K. Yuki, _Crack detection method using electromagnetic waves”. International Journal of Applied Electromagnetics and Mechanics, Vol. 20, 2004, pp. 171-178. [3] Y. Ju, L. Liu, M. Ishikawa, _Quantitative evaluation of wall thinning of metal pipes by microwaves”, Materials Science Forum, Vol. 614, 2009, pp. 111?116. [4] Y. Sakai, N. Yusa, H. Hashizume, _Nondestructive evaluation of wall thinning inside a pipe using the reflection of microwaves with the aid of signal processing”, Nondestructive Testing and Evaluation, Vol. 27, 2012, pp. 171-184. [5] K. Sasaki, T. Katagiri, N. Yusa, H. Hashizume, _Demonstration of the applicability of non-destructive microwave testing to the long-range inspection of a crack appearing at the inner surface of a pipe”, Materials Transactions, Vol. 58, 2017, pp. 692-696. [8] K. Abbasi, N.H. Motlagh, M.R. Nematollahi, H. Hashizume, _Detection of axial crack in the bend region of a pipe by high frequency electromagnetic waves”, International Journal of Pressure Vessels and Piping, Vol. 86, 2009, pp. 764-768. マイクロ波を用いた配管広域一括探傷技術のエルボ付配管への適用性評価 Evaluation of the Applicability of a Nondestructive Testing Method using Microwaves to the Long-range Inspection of a Pipe with a Bend 佐々木 幸太,Kota SASAKI,片桐 拓也,Takuya KATAGIRI,遊佐 訓孝,Noritaka YUSA,橋爪 秀利,Hidetoshi HASHIZUME