多核種高除染性空気浄化システム開発による作業被曝低減化研究 (2)メタルファイバーフィルターの除染係数測定

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カテゴリ: 第14回
1.緒論
福島第一原子力発電所の廃炉においては、原子炉建屋 や格納容器内の汚染は深刻で、廃炉作業を実施するためには、作業者の被曝低減と敷地外の放射性物質の漏洩防止を徹底しなくてはならない。原子炉建屋は排風機で負圧に維持し、排気中に含まれる放射性物質を除去する高除染性空気浄化システムの設置が必須で、しかも長期運転する必要がある。福島第一原子力発電所の取り出し工法は現在、検討中で、機械式切断や破砕する工法と、プラズマやレーザ加工による高温融解して切断する手法がある。更に格納容器内壁面には多量の放射性物質が付着していると考えられ、これを除染するために用いるドライアイス・ブラスト除染などでは、多核種の粉塵やエアロゾルの発生が不可避である。米国Zion発電所の廃炉作業では、プラズマカッターなどの熱が入る作業は格納容器内の線量が上がり断念し、ワイヤカッターに切り替えた。しかし、福島第一原子力発電所の廃炉作業では、遠隔加工が容易なレーザ切断工法もオプションとして残すべきと考える。本研究は、いずれの工法に対しても必要となる、空気浄化システムであり、炉内や格納容器内の状況把握から燃料デブリ取出しに至るまでの全工程で作業員の被曝低減と周辺地域への放射性物質の飛散防止に 貢献することを目的とする。
2. 多核種高除染性空気浄化システムの概要 福島第一原子力発電所の原子炉建屋や格納容器内の 汚染は深刻で、廃炉作業を実施するためには、作業 者の被曝低減と敷地外の放射性物質の漏洩防止を徹 底しなくてはならない。これが開発すべき課題であ る。本研究では、格納容器の開閉やデブリの切断加 工に伴い発生する放射性物質の塵を吸引し、排気中 に含まれる放射性物質を除去する高除染性空気浄化 システムの開発を行う。 2.1 高除染線性フィルターによる被曝低減 北海道大学にて開発した「ゼオライトを用いたヨウ 素・セシウム高除染性フィルターベントシステム」の湿 式フィルター(Fig.1)と、メタルファイバーフィルター (Fig.2)、高除染線性銀ゼオライト AgX などを組み合わせ た格納容器内の空気浄化システムについて検討する。 Fig.1 Wet-type filter Fig.2 Dry-type filter and element Fig.3 Test apparatus of filter system 特に、最も除染係数(DF: Decontamination Factor)を上 げることが困難とされる、ヒューム(プラズマカッター やレーザ切断装置などで発生するナノサイズエアロゾ ル)に対する対策として、スクラビングノズルを改良し た図2の湿式フィルターや蒸気注入により表面凝縮式さ せるフィルターなどの吸着特性等についての基礎実験を 実施し、Fig.3 の乾式フィルターについては、メタルファ イバーの線径と充填率がキーパラメータであることが明 らかとなり、除染係数DFの向上に向けた研究の糸口を見 いだした。 2.2 銀ゼオライトの細孔内の炭化水素分子の拡散係数の 測定既有の拡散係数測定装置を用いて、定容法により希ガ ス、C1 から C3 炭化水素およびヨウ化メチルの拡散係数 を実測した。Fig.4 に示す各種のゼオライトのなかから、 A 型、Ag/A 型に加えて他の候補ゼオライトである MFI などの試料を用いた。測定により、ゼオライト細孔内を 拡散する分子 1 つの移動度と、ゼオライト細孔内とゼオ ライトが接する気相中の濃度比を測定することで、細孔 内拡散の機構解析を解明した。 Fig.4 Various types of zeolite 2.4 汚染されたフィルターエレメントの多核種放射能減 衰評価に関する基礎研究 多核種高除染性空気浄化システムのフィルターエレ メントにトラップされた多核種の放射性物質の放射能の 評価解析プログラム開発とフィルターの保管・処分方法 についての検討を行った。フィルターエレメントにトラ ップされた多核種放射性物質の放射能の評価解析プログ ラムの基本構想と解析システムのハードウエアを検討し た。なお、フィルターエレメントの保管・処分について は、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所4号炉の 廃棄物処分の調査結果を踏まえて基礎的な検討を実施し た。 3. メタルファイバーフィルターのDF 測定 3.1 試験装置およびDF測定法 フィルターの放射性物質の捕捉性能を測定するため の装置を図 6 に示す。送風機から空気を吸引し、スクラ ビングプール内にスクラビングノズルから噴射する。水 溶性の塵やエアロゾルなどはこのスクラビングプールで 除去され、次いで湿文分離器(セパレータ)で水滴を除 去して、メタルファイバー(金属繊維)フィルターにデ ィフューザーと整流格子を介して均一な下降流として流 下する。メタルファイバーフィルターで模擬微粒子を濾 しとられた空気は、最終段の HEPA フィルターに流入す る。放射性物質のエアロゾルや数十ナノサイズのヒュー ムの模擬物質は最小粒径が 60nm の硫酸バリウムを用い た。メタルファイバー(MF)はステンレス箔を切削して 制作した 30μm、50μm、70μm の 3 種類の線径のものと、 同じくステンレスを引抜加工により数 μm の極細径化し た綿状フィルター(WF)と、それを焼結した板状フィル ター(NF)の3種類を用いた。MF フィルターについて は、空間に占めるステンレスファイバーの体積率(充填 率)をパラメータとして試験を実施した。充填率は2.5%、 3.0%、3.5%の 3 通りとした。メタル試験では硫酸バリウ - 426 - 2.3 銀ゼオライトを用いた放射性核種吸着脱離に関する 研究(東北大学) (1)バッチ式吸着実験装置の製作 銀ゼオライト吸着剤を用いる高除染性空気浄化システ ムは一年を通していろいろな環境の下で使用されるため、 銀ゼオライトの放射性核種吸着能を評価するには、流量、 温度、湿度等の幅広い条件下において吸着実験を行う必 要があり、流量、温度、湿度が調整可能な実験装置を製 作した。 (2) 125I トレーサーを添加したヨウ化メチルの調製と放 射能の計測sd(東北大学) 本研究では主要な放射性核種として 125I トレーサーを添 加したヨウ化メチルを用いた。これはNa125I とCH3Iを所 定時間撹拌させることによる同位体交換反応により調製 した。放射能測定は NaI シンチレーションカウンターを 用い、試料調製のための最適な撹拌時間を評価した。 ムを 25g ずつ微粒子連続供給装置(シートフィーダー) で一定時間をかけて投入し、それを4回繰り返し、計100g まで投入する間の各部の圧力・差圧・流速・温度等を測 定した。Fig.6 に試験結果を示す。除染係数 DF は、硫酸 バリウム投入量 100g を HEPA フィルターで補足した硫 酸バリウムの質量で除した値である。 Particle Feeder Separator Q Scrubbing DP02 DP02 Pool DP DP 03 03 Fig.5 Experimental equipment for Dry-type filter Fig.6 Test results of DF using MF filter 3.2 試験結果 Fig.7に線径毎に充填率を変えて得られた試験結果を 示す。縦軸は除染係数DFで、線径70μmのメタルファ イバーフィルタ(MF)については充填率が 3.5%と 3%で DF が約30 程度低い。線径が30μm、50μm のDF は充 填率を上げるに従って高くなった。なお、3.5%を超え る充填率は MF フィルターが硬いため押し付ける力が 上昇し、フィルターエレメントの組み立てが困難であ ったので、この充填率が上限である。MF フィルターは 最初(Original)は、円筒状にまるめて充填したが、間 に隙間ができてしまうためか、DF の上限は約500であ った。さらに、ファイバーをシート状に伸ばしてから 敷き詰めるように充填すると、Fig.7に示すように、DF が上昇して約 700 まで上昇することを確認した。これ は、メタルファイバーフィルター(MF)が均一に、隙 間なく充填可能になったためと考えられる。 3.3 電子顕微鏡撮影による吸着性能の分析 Fig.8に電子顕微鏡(FE-SEM)で測定した130倍と3万 倍の画像示す。このMFフィルターと通過前と通過後の P01 1899/12/3101TMF Filter P02HEPA Filter04 P04 PBlower x2600 30μm 1901/05/1450μm 70μm 400 30020010002.5 3.0 3.5 Packing factor [%] P03 P02 - 427 - P01 Fig.7 Improvement of DF by modified MF filter Fig.8 Fiber and particles photograph taken by FE-SEM HEPA フィルターで捕捉した FE-SEM 画像を、粒径分布 解析ソフトを用いて 50μm 毎の粒径範囲にある粒子数を 求めて表示したヒスト グラムを Fig.9 の(a)(b)に示す。両 図の比較から分かることは、5.0μm 以上の比較的粗い粒 子径の場合は、大部分の粒子が捕捉され、DF が 1000 く らいにあるが、0.5μm以下のサイズの粒子は、MF フィル ターをほぼ通過してしまうことが分かる。ただし、0.5μm 以下の粒子は、粒子径が小さいため、剛体球近似した場 合の1粒当たりの質量も小さい。Fig.9(b)の 0.5μm (500nm)以下の粒子は11316個あるので、質量に換算する とFig.10 に示すように、0.144g中1.22×10?3g (1.22mg)とな り、トータルのDF 上は、ほとんど誤差の範囲であるが、 例え微量であっても、体内被曝を防止するためには、更 にDF を上げる必要がある。このためには、メタルファイ バーフィルターを多段にして、第1段のフィルターはDF が小さくても、目詰まりしない MF を、第 2 段以降でよ り粒子径の小さい粒子を捕捉する、線径 10μm の綿状フ ィルターWF などを組み合わせて更なる高性能化を図る 方針である。また、ヒュームの凝集による大粒化が必要 である。 80030μm 50μm 70μm Fiber diameter of Metal fiber ■Original 円筒状に充填 700 ■ シート状に充填 Modified 6005004001900/10/262001000180001600014000 1330012000 100008000 74196000 99.7g 4000 30032000 1752868503364216178117 91 74 78 60 48 33 32 29 16 15 15 17 9 17 6 5 0 7 10 147 0 Diameter x of barium sulfate particle (x is diameter)[μm] (a) Particle distribution before MF filter 18000160001400012000 1131610000 80000.106g 6000 400021592000436220 88 42 43 26 18 10 8 7 4 6 4 2 2 2 2 1 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 0 Diameter x of barium sulfate particle (x is diameter)[μm] (b) Particle distribution before MF filter Fig.9 DF breakdown of each particle sizes 1:12:00MF303.5 0~5 μm 0:57:36DF=694 (0.144 g) 0.030.020.015.50E-03 4.96E-03 5.11E-03 3.84E-03 0x≦0.5 0.5
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