原子炉格納容器内部調査装置の開発および実証形状変化型ロボット(PMORPH)による地下階調査

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カテゴリ: 第14回
1.概要
福島第一原子力発電所の廃止措置に向け、資源エネル ギー庁の発電用原子炉等事故対応関連開発費補助事業の 一環として、格納容器(PCV)内部を調査するための装置 を開発している。PCV内は極めて放射線量が高く、放射性 物質の飛散防止の観点から、内部へアクセスするための 開口部は極力小さくする必要があり、装置の小型化が必 要となる[1]。また、内部での調査時はグレーチング上を 走行するため、高い踏破性が求められる。そこで、アク セス時の配管の通過と、調査時のグレーチング上の平面 走行を両立させるため、形状が変化可能なロボットを開 発した[2]。PCV 内部調査は、炉心から溶融し地下階に拡 散したと想定される燃料デブリの分布を調査することを 最終目的としている。初めに、2015 年4 月に1号機の1 階のグレーチング上の調査(B1 調査)を実施し、環境情報 や機器の損傷状況等を調査した[3]。今回、2017年3月に 実施した地下階の状況調査(B2 調査)について、調査装置 の開発から調査結果まで一連の結果[4]を報告する。
2.格納容器内部の調査概要 2.1 調査対象と既調査の結果 図1に、PCV 内部の概要および調査ルートの概要を示 す。PCV 内部調査は、ペデスタル外地下階に拡散してい ると想定されている燃料デブリを調査することを最終 目的としており、B1 調査は、B2 調査装置の開発に必要 な情報を取得することを目的として、ペデスタル外側の 映像、温度、放射線量率等の環境情報を取得した。図中 の X-100B ペネ(ガイドパイプ)から挿入し、1階グレー チング上を移動し、ペデスタル外周の調査を実施した。 B1 調査の結果、ペデスタル外のグレーチング上は、線量 率が4~10Sv/h、温度が17~21°Cであること、既設構造 物に大きな損傷が無いことが確認された。また、B1調査 後に取得された X-100B 下部の水中映像によると、地下 階には浮遊性の堆積物があり、移動時の視認性低下の観 点から地下を走行するのは困難であることが分った。
図1.PCV内部の概要と調査ルート
2.2 B2 調査の概要 図2にB2調査のコンセプトを示す。B2調査の目的は、 ペデスタル外への燃料デブリの広がり状況と、燃料デブ リがPCVの内壁に到達しているかを把握することにある。 2.1節に示した、B1調査の結果から、水中に調査装置を 降下させることは可能だが、走行することは難しいと判 断した。そこで、図2に示す様に、B1調査と同様に1階 グレーチング上を走行し、予め設定した計測ポイントに おいて線量計とカメラを内包した計測ユニットを降下 させて調査することとした。 B1装置 到達地点 B2装置 到達目標 計測ユニット燃料デブリ(想定) 図2.B2調査のコンセプト 3.B2 調査ロボットの開発 3.1 B2 調査用ロボット(PMORPH-2)の概要 2.1 節に示したとおり、PCV 内部は、極めて高い放射 線環境であるため、使用する機器には、耐放射線性能が 求められる。図3に、B2 調査用に開発した PMORPH-2 の 概要、表1に、仕様を示す。PMORPH-2 は、B1 調査用に 開発した PMORPH-1 と同様に、ガイドパイプ内の走行と グレーチング上の走行を両立するため、本体に対し2つ のクローラを直角に配置した形状と、本体と2つのクロ ーラを直線に配置した形状の2つの形状を自在に変形 可能としている。さらに、B2調査固有の機構として、計 測ユニットを昇降させるウインチ機構を B1 調査時の調 査用カメラの位置に設置した。 作業員 アクセス口 カイドパイプ通過用カメラ 図3.PMORPH-2 の概要 表1 PMORPH-2の仕様 項目 仕様 本体寸法 ガイドハ?イフ?走行時:699×72×93mm ク゛レーチング走行時: 316×286×93mm 重量 約10kg 計測 ユニット 線量計(内部) 走行用カメラ LED計測用カメラ 直径20×高さ40mm、ケーブル長さ3.5m 計測用カメラ、放射線線量計 本体 カメラ 走行用×2、ウインチ確認用×1 ガイドパイプ通過用×1 耐放射線性 1000Sv以上 可動部 走行用クローラ×2、ウインチ×1 - 430 - クローラ ウインチ機構 (内部:ウインチ確認用カメラ) 100mm (a)ガイドパイプ走行形状 計測ユニット (b)グレーチング上走行形状 3.2 モックアップ試験による動作確認 3.2.1 エントリの確認 図4に、モックアップ試験の概要を示す。B2 調査は、大きく分けて3つの動作により、実現させるものである。初 めに、X-100B ペネに設置されたガイドパイプから、PCV 内部にエントリし、降下して1階のグレーチング上に着座す る。次に、グレーチング上を走行し、調査を実施するポイントまで走行する。最後に、計測ユニットを降下させ、線 量率、映像を取得することで、燃料デブリの広がりや PCV 内壁への燃料デブリの到達を調査する。以下、各模擬体を 用いた試験の結果を示す。 A?? ???????? ?????? ? ????????? ? SB???? ????????SB) 図4.モックアップ試験の概要 3.2.2 エントリ回収確認試験 図4に示した「高さ模擬体」を用いて、調査装置のエ ントリおよび回収動作の手順と、放射性物質飛散防止装 置(シールボックス(SB))の操作性等を確認した。SBは 放射性物質の飛散境界(バウンダリ)となるもので、SB の外から、SBの内部に配置した調査装置や各種治具を操 作する。試験の結果、1階グレーチングを模擬したピッ ト内に着座させ、さらに回収可能であることを確認した。 3.2.3 グレーチング上走行確認 図4に示した「平面模擬体」を用いて、グレーチング 上の走行確認試験を実施した。調査装置着座後、グレー チング上の時計回り移動を中心として、走行確認を実施 した。 ????????? ?????? ? ??????? ??? ? ??????? 3.2.4 地下階への計測ユニット降下試験 図5に、「地下階模擬体」を用いて、地下階への計測 ユニット降下試験を実施した状況を示す。グレーチング の隙間を通過し、地下階底部まで降下可能であることを 確認した。 ?????????????? ? ???????? ? ??????? ?B2??????????? ???????GP) PC?B2?? ?? 1??????? ????????? ????? ????????? (a)グレーチング上の調査装置 (b)計測ユニット降下時の状況 図5.計測ユニット降下試験 - 431 - ????????? ???????? A?? ?????? ?D2?????? 3.2.5 放射線検出性能試験 センサユニット内に設置した放射線検出器は、ガンマ 線が当ると、ガンマ線の強さに応じて、光子を出力する タイプのものであり、光ファイバにより、出力信号が伝 送される。図6に、放射線検出器の性能を示す。横軸は 線量率、縦軸は光子のカウント数を意味している。この 結果から、使用したセンサは、高い直線性を有し、精度 の良い測定が可能であることを確認した。 図6.放射線検出器の性能 4.現地実証試験の結果 4.1 実証試験の概要 第3章で示した形状変化型ロボットを、2017年3月18 日~22日に、福島第一原子力発電所1号機の原子炉格納 容器(PCV)内部に投入し、ペデスタル外の地下階部分を 調査する実証試験(B2調査)を行った。図7に、調査を 実施した計測点を示す。図7は、1階グレーチング上の 鳥瞰図であり、図中のD0~D3、BGにおいて、計測ユニッ トを降下させ、地下階の線量率、映像を取得した。表2 に、各計測点で得られた情報を元に推定する内容を示す。 BGは、放射線および映像としてのバックグランドを把握 する。D0はドレインサンプからの燃料デブリの拡散の有 無、D1~D3は、開口部(作業員アクセス口)からの燃料デ ブリの広がり状態や、PCV内壁への燃料デブリの到達状況 を推定することを目的として設定した。 表2 B2調査の計測点詳細 計測点 推定する内容等 D0 ドレインサンプからの燃料デブリの 拡散有無の推定 BG D0~D3の測定に対する バックグランドレベルの把握 D1,D2 開口部からの燃料デブリの 拡散有無の推定 D3 PCVシェルに燃料デブリが到達している 可能性があるかの推定 - 432 - 図7.B2 調査の計測点 4.2 実証試験で得られた情報 図8および図9に、調査結果の抜粋を示す。図8は、 各計測において、最下部までセンサユニットを降下させ た時の画像を示す。この結果から、地下階の落下物や堆 積物の状況を把握することができた。また、図9は各計 測点における線量率を、床面からの距離をパラメータと して示している。実際には、堆積物があり、床面までの データは取得できなかったが、堆積物表面に近づくほど、 線量率が高くなることが明らかとなった。 計測ユニットの影 既設 ヘ?デスタル PCV 開口部 構造物 落下物 図8 各計測点での最下部降下時の画像 水面 床面からの距離(m) グレーチング面 図9 各計測点で計測した線量率 落下物 5.まとめ 以上、福島第一原子力発電所の廃止措置に向け、資源 エネルギー庁の発電用原子炉等事故対応関連開発費補助 事業の一環として開発した、格納容器(PCV)内部を調査 するための装置について、開発内容、性能検証試験、実 機実証試験の結果について示した。 調査装置は、高い放射線環境下である PCV 内部を調査 するために開発した形状変化型ロボットに、地下階を調 査するためのウインチ機構を取付けた、「PMORPH-2」を用 いた。モックアップ試験による機能検証後、福島第一原 子力発電所1号機の PCV 内部調査に適用した結果、ペデ スタル外地下階の状況を把握することができた。今回、 開発した技術、得られた情報に基づき、今後、更なる詳 細調査を実施すべく開発を進める。 謝辞 PMORPH-2の開発は、平成25年度補正予算「廃炉・汚染 水対策事業費補助金(原子炉格納容器内部調査技術の開 発)」、平成26年度補正予算「廃炉・汚染水対策事業費補 助金(原子炉格納容器内部調査技術の開発)」として実施 したものである。 参考文献 [1] 岡田聡、“高放射線環境下の調査に用いる形状可変 ロボット”, 放射性物質対策技術,NTS,2015. [2] 日立製作所,日立GEニュークリア・エナジー株式会 社,“福島第一原子力発電所での燃料取り出しに向 けた調査用の水中走行遊泳型ロボット・形状変化型 ロボットを開発”,2014.3.10,日立製作所HP, http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2014 /03/0310e.html [3] 岡田聡,石澤幸治,高橋良知,遠藤洋:原子炉格納 容器内部調査装置の開発および実証~形状変化型ロ ボット?,保全学,保全学会, Vol.14,No.3,2015. [4] 東京電力株式会社,“1号機原子炉格納容器内部調 査について”,東京電力HP,2017.3.27, http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handout s/2017/images1/handouts_170327_14-j.pdf - 433 -“ “原子炉格納容器内部調査装置の開発および実証形状変化型ロボット(PMORPH)による地下階調査“ “岡田 聡,Satoshi OKADA,石澤 幸治,Koji ISHIZAWA,村井 洋一,Youichi MURAI
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