Palo Verde 発電所と Diablo Canyon 発電所の FLEX 機器に関する事例調査

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カテゴリ: 第14回
1.序
福島第一原子力発電所の事故を受け、想定外の事象に 対する対策の重要性が周知された。米国では、このよう な想定外の事象が生じた際に、炉心を冷却したり、格納容器を守ったりすることを目的に、FLEX機器と総称され る機器を用いた戦略を立てた。 福島事故後、米国原子力規制機関(NRC)は、EA-12-049 「設計基準を超える外部事象に対する緩和戦略に関する命令」を2012年3月に発行した。これを受け、米国産業 界組織である原子力エネルギ協会(NEI)は、NEI12-06 「多様性かつ柔軟性を有する影響緩和戦略(FLEX)実施 ガイド」を作成し、これをNRCがエンドースした。このように先行して FLEX 機器を運用している米国に 対し事例調査を実施することにより、日本の FLEX 戦略 の発展に役立てる。この事例調査の一環として、米国原 子力発電所のPalo Verde発電所とDiablo Canyon発電所を 訪問し、FLEX 機器の導入経緯から設計、運用、訓練、メンテナンスに関する情報を入手するだけでなく、実際に FLEX 機器を視察した。 以下に,具体的な調査内容を報告する。
2.Palo Verde発電所のFLEX 戦略 Palo Verde発電所は、米国南西部のアリゾナ州にあり、 アリゾナ・パブリック・サービス社(APS 社)が運営し ている(図1参照)。発電所内には、CE社製のPWRが3 基あり、何れも出力 142.8 万kW である。また本発電所 は、砂漠内にあるため、グレーウォーターと呼ばれる下 水の一種を水処理したものを冷却水として用いている。 米国内では、FLEX 戦略はNEI12-06のガイダンスに基 づき作成することとなっている。FLEX戦略の第一歩とし て、各発電所で発生する外部事象を選定する必要がある が、Palo Verde発電所では、地震、洪水(局所的な雨のみ)、 極度の熱を FLEX 戦略に考慮すべき外部事象として選定 した。外部事象の選定後に、その外部事象に起因する想定事 故シナリオを検討し、そのシナリオに対する FLEX 戦略 を立案する。FLEX戦略は、ステップ1から3に分かれて おり、ステップ 1 は既存設備での対応、ステップ 2 はサ イト内の可搬式設備での対応、ステップ3はSAFERから 輸送される可搬式設備での対応となっている。本発電所 では、ステップ1では、5分以内にタービン動補助給水ポ ンプの起動、バッテリを長持ちさせるための不要負荷の 切離し等を行う戦略となっている。 - 441 - 図1 Palo Verde 発電所 また、FLEX 機器を用いた緩和戦略の事例紹介として、 FLEX 機器である蒸気発生器(SG)給水ポンプ(図 2) を用いたSG 給水経路の確保に関する説明を受けた。図3 に示す通り、既設のSG 給水系統に加えて、FLEX 機器を 用いたSG 給水系統を作り、系統の多重化を実現している。 図2 FLEX 機器のうちSG給水ポンプ 図3 FLEX機器の運用例 その1 さらに FLEX 機器であるポンプを用いた運用例の紹 介を受けた。有事に使用済み燃料プール(SFP)に注水す る場合、復水貯蔵タンク(CST)を水源として用いるた め、CSTメンテナンス時はその注水系統を利用できない。 そこで本発電所では、CST メンテナンス時に、FLEX ポ ンプを用いて純水タンク(DWST)から SFP にスプレイ する系統をつくり、SFPへの水源を確保した(図4参照)。 図4 FLEX機器の運用例 その2 本発電所でも他発電所と同様に、NEI12-06 のガイダン スに基づきFLEX 戦略を作成している。Diablo Canyon発 電所では、外部事象として地震、洪水、極度の熱を想定 しており、これらの事象に対する想定事故シナリオを全 交流電源喪失+最終ヒートシンク喪失とした。FLEX 戦略 ステップ 1 では、復水貯蔵タンク(CST)を水源とした タービン動補助給水ポンプによる給水、ステップ2では、 発電所の高台に設置した淡水貯水池(250 万ガロン)を水 源として、FLEX 機器を用いた緩和戦略を立てた。FLEX 機器の一例を図6、7に示す。各種ポンプ、電源に加えて、 モバイル通信センター、ガレキ除去機等が FLEX 機器と して発電所内に確保されている。 - 442 - 本手法は数年前に実際に実施し、FLEX 機器の優れた使用 例としてNEIより表彰を受けた。 3.Diablo Canyon 発電所のFLEX 戦略 Diablo Canyon発電所は、米国カリフォルニア州にあり、 パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック社が運営 している(図5 参照)。発電所内には、WH 製のPWR が 2 基あり、それぞれ出力は117.4 万kW、117.0 万kW で ある。また本発電所は海岸に隣接しており、そのため最 終ヒートシンクは海水である。 図5 Diablo Canyon 発電所 図6 Diablo Canyon発電所 FLEX機器その1 図7 Diablo Canyon 発電所 FLEX 機器その2 FLEX 機器の保守は、NEI12-06 とEPRI 作成のFLEX 設 備用予防保全テンプレート(EPRI 報告書3002000623)に 基づき実施している。本発電所では、1 ヶ月ごとに全 FLEX 機器に対してウォークダウンを実施、主要設備に 対しては、1 年毎に動作確認、3 年毎に性能試験を実施し ているが、分解点検はこれらに含まれていない。 4.まとめ 米国FLEX 機器の事例調査として、Palo Verde発電所と Diablo Canyon 発電所の運用例を調査した。米国では、事 業者だけでなくNRCを含む米国全体で、共通の目的であ る安全性向上に向けて FLEX 戦略をまとめあげ、これを 運用していた。 - 443 -“ “Palo Verde 発電所と Diablo Canyon 発電所の FLEX 機器に関する事例調査 “ “大久保 友輝夫,Yukio OHKUBO
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